政府管掌健康保険事業等に関する行政評価・監視結果に基づく通知


 

 

 

 

 

 

平成13年9月

 

総務省行政評価局

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前  書  き

   総務省は、平成5年10月、「医療保険事業に関する行政監察−政管健保、船員保険を中心として−」の結果に基づき、政府管掌健康保険(以下「政管健保」という。)及び船員保険の未適用事業所の解消、保険給付事務の適正化・効率化等について、厚生労働省に対し勧告を行った。
   この勧告を受けて、厚生労働省は、政管健保については、1.未適用事業所の把握のため、法人登記申請書等の定期的な閲覧などの効果的な把握方法の実施及び適用手続の促進について、指導通知に基づき都道府県を指導、2.第三者行為保険事故の把握及び求償を推進するため、事務処理マニュアルを作成した上で、適正な事務処理を行うよう都道府県を指導する、また、船員保険については、傷病手当金給付事務の適正化のため、傷病手当金の支給に疑義があるものに対する文書照会及び実地調査の積極的な実施等について、指導通知に基づき都道府県を指導する等の改善措置を講じている。
   このような中、政管健保及び船員保険については、近年、その保険給付額が減少してきているものの、これは、主に平成9年9月の健康保険法(大正11年法律第70号)改正による被保険者に対する給付率の引下げによるものであり、保険給付額の更なる減少を図り、保険財政の安定的運営を図るためには、被保険者に係る保険給付事務の一層の適正化・効率化が求められるところである。
   また、平成5年の勧告以降、1.政管健保及び船員保険の適用を受けるために必要な新規適用届を提出していない事業所は依然としてかなり存在しているとみられる、2.厚生労働省が保険者として実施するレセプト点検調査については、平成10年度以降、各都道府県単位にレセプト点検事務センターを設置し、その一括処理を行ってきているが、その一層の充実・強化が求められている、3.第三者行為保険事故の求償事務については、求償額は毎年度100億円前後で推移し、求償額に対する収納割合も8割程度にとどまってきており、求償事務の更なる適正化が求められている等の状況にある。
   この行政評価・監視は、以上の状況を踏まえ、「医療保険事業に関する行政監察−政管健保、船員保険を中心として−」の結果に基づく勧告で指摘した事項に関する改善状況等を調査し、必要な改善を求めることにより保険給付事務の適正化・効率化を推進する観点から実施したものである。


目      次


 政府管掌健康保険
(1)  未適用事業所の解消
(2)  保険給付事務の適正化・効率化
 レセプト点検調査の充実・強化
 第三者行為保険事故の求償事務の的確化
 高医療費地域における医療費適正化対策の推進
 船員保険
(1)  船員保険の適用及び保険料徴収の適正化
(2)  保険給付事務等の適正化・効率化
(3)  傷病手当金給付事務の適正化


   政府管掌健康保険
(1)   未適用事業所の解消
   政府管掌健康保険(以下「政管健保」という。)は、健康保険法(大正11年法律第70号)に基づき、事業所を単位として適用することを原則とする被用者保険であり、同法が適用される一定の事業所(以下「強制適用事業所」という。)に使用される者を被保険者とし、政府を保険者とするものである。また、強制適用事業所は、国又は法人の事業所の場合は常時従業員を使用するもの、個人の事業所の場合は製造業等一定の種類の事業を行い、かつ、常時5人以上の従業員を使用するものとされており、事業主は新たに強制適用事業所となった場合には新規適用届を社会保険事務所長等に提出することとされているが、これを提出していない事業所(以下「未適用事業所」という。)がかなり存在しているとみられる。

   総務省は、平成5年10月、「医療保険事業に関する行政監察−政管健保、船員保険を中心として−」の結果に基づき、厚生労働省に対して、未適用事業所の解消について勧告したが、これに対する厚生労働省の対応は以下のとおりである。
1.   未適用事業所の把握については、商業登記申請書及び法人登記申請書の定期的な閲覧を行い、新設法人を一層的確に把握するよう都道府県を指導することを勧告した。これを受けて厚生労働省は、「政府管掌健康保険及び船員保険事業の運営の適正化について」(平成6年2月24日付け庁文発第846号社会保険庁総務部経理課長・同運営部保険指導課長連名通知。以下「6年指導通知」という。)に基づき、地方法務局等の協力を得て、商業登記申請書及び法人登記申請書の定期的な閲覧など効果的な把握方法により的確な把握を行うよう都道府県を指導している。
2.   未適用事業所に対する適用手続の促進については、当該事業所の未手続の理由等を具体的に把握・分析して類型化し、その類型別に対処方針を定めるとともに、都道府県に対し、これに基づく効果的な適用手続の促進対策を講ずるよう指導することを勧告した。これに対し、厚生労働省は、加入手続を行わない理由は、結局、事業主の保険料の負担にあり、経済状況が厳しい現状において当該原因の解消は困難であるとして、対処方針を作成していない。
3.   都道府県社会保険労務士会に委託して行う巡回説明業務(社会保険労務士が未適用事業所を巡回し保険制度の具体的内容、申請・届出の手続等を説明する業務)については、対象事業所を適切に選定するとともに、労務士会からの巡回説明の結果報告を社会保険事務所による適用手続の勧奨に活用するよう都道府県を指導するよう勧告した。これを受けて厚生労働省は、6年指導通知に基づき、対象事業所の適切な選定及び巡回説明結果の活用を行うよう都道府県を指導している。
   なお、平成12年4月から、政管健保に係る事務は地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)の施行により国の事務とされ、従来、都道府県知事に委任されていた厚生労働大臣又は社会保険庁長官の権限は、社会保険庁の地方支分部局の地方社会保険事務局長等に内部委任されている。

   今回、17の地方社会保険事務局(以下「社会保険事務局」という。)及び25の社会保険事務所について、平成11年度における未適用事業所の解消のための適用促進対策の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
1.   厚生労働省は、「平成11年度における政府管掌健康保険及び船員保険の事業運営について」(平成11年3月31日付け庁文発第892号社会保険庁運営部保険管理・保険指導課長連名通知。以下「11年運営通知」という。)において、未適用事業所に対する適用勧奨を行うに当たっては、商業登記申請書及び法人登記申請書の定期的な閲覧等の効果的把握方法により新設事業所の的確な把握に努めるべきことを定めている。
   しかし、25社会保険事務所における未適用事業所の把握方法についてみると、新設事業所を効果的に把握するための商業登記申請書及び法人登記申請書の閲覧を行っていないもの(6事務所)、閲覧は行っているが、一部の登記所管内又は一部の登記申請書に限定しているもの(2事務所)がみられた。一方、登記申請書の閲覧を実施することに加え、公共職業安定所等の他機関の資料を活用し把握しているもの(4事務所)のように一段の努力を行っている例もみられた。
2.   厚生労働省は、11年運営通知において、重点事項の一つとして、新設事業所の効果的な把握などを通じ、未適用事業所に対する適用勧奨を促進することとし、適用勧奨を行うに当たっては、社会保険事務局が委嘱した社会保険適用指導員を活用し、一層の適用の促進に努めるべきことを定めている。
   しかし、25社会保険事務所における適用勧奨の対象選定及び適用勧奨の方法についてみると、i)適用勧奨の対象として、当該年度に把握した未適用事業所に加え、過去に適用勧奨を行っているが未適用の状況にある事業所を選定しているもの(14事務所)がある一方で、当該年度に把握した未適用事業所のみを選定しているもの(5事務所)や当該年度に把握した未適用事業所の一部のみを選定しているもの(6事務所)がある、ii)適用勧奨の方法として、文書又は電話のみによる適用勧奨では自主的に適用手続を進める事業主は少ないとして、社会保険適用指導員等を活用した訪問による適用勧奨を行っているもの(20事務所)がある一方で、文書又は電話のみによる適用勧奨にとどまっているもの(5事務所)がある。
   この結果、対象選定及び勧奨方法において一段の努力を行っている社会保険事務所の中には、高い加入率となっている例がみられた。
3.   厚生労働省は、11年運営通知において、未適用事業所の適用の促進を図るため、社会保険労務士を活用し巡回説明を行う際には、社会保険事務所は対象事業所を適切に選定するとともに、社会保険労務士が行った巡回説明結果を十分に活用すべきことを定めている。
   しかし、抽出調査した17社会保険事務所における社会保険労務士による巡回説明の実施状況等についてみると、次のような状況がみられた。
i)   平成11年度の巡回説明の結果をみると、適用済みであった事業所、事業所の所在地が不明で説明ができなかった事業所など、巡回説明の対象として選定することが不適切であったものが約2割となっている。この理由は、社会保険事務所があらかじめ、未適用事業所に対する文書照会等で把握した所在地不明の事業所や、既に適用手続を行った事業所を対象事業所の中から除外する措置を講じておらず、未適用事業所の選定が必ずしも適切とは言えなかったこと(8事務所)によるためである。
   また、事業主が不在等のため説明できなかった事業所が全体の約2割となっている。この理由は、社会保険事務局の巡回説明業務の取扱方針においても、事業主が不在等であった場合に、再度の巡回説明を行うことを盛り込んでいるものが少ないこと(17社会保険事務局のうち5事務局)によるためである。
ii)   巡回説明の結果、加入に積極的な反応を示した旨の報告が行われているにもかかわらず、当該事業所に対して適用勧奨を実施していないもの(8事務所)があり、巡回説明結果は十分に活用されていない。

   したがって、厚生労働省は、政管健保の未適用事業所の適用の促進を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   未適用事業所の把握については、商業登記申請書及び法人登記申請書の定期的な閲覧の積極的な実施、雇用保険適用事業所名簿等の他機関の資料の活用を行うことにより、効率的に実施すること。
2.   未適用事業所に対する適用勧奨については、勧奨対象とする未適用事業所を限定することなく実施するとともに、その方法について、社会保険適用指導員を活用した訪問などにより効果的に実施すること。
3.   社会保険労務士に委託する巡回説明業務については、対象事業所の選定を適切に行うとともに、巡回説明を実施できなかった選定事業所に対しては再度の巡回説明を行うべきことを徹底させること。
   また、巡回説明の結果を適用勧奨に積極的に活用するよう徹底を図ること。

(2)   保険給付事務の適正化・効率化
   レセプト点検調査の充実・強化
   保険者は、健康保険法第43条の9第4項において、被保険者又は被扶養者の傷病に関し、治療等のために要した費用について、保険医療機関等から診療報酬請求書に診療報酬明細書・調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添えて請求があったときは、これらについての審査(以下「レセプト審査」という。)を行った上で診療報酬を支払うものとするとされており、同条第5項に基づき、厚生労働省はこれらの審査・支払業務を社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)に委託している。
   また、保険者は、支払基金によるレセプト審査後、医療費適正化対策として更に審査(以下「レセプト点検調査」という。)を行っており、このレセプト点検調査においては、1)被保険者・被扶養者の資格の有無等に係る点検(以下「資格点検」という。)、ii)診察、投薬、検査等の診療内容に係る点検(以下「内容点検」という。内容点検には、同一被保険者の複数月に係るレセプトを突合して重複請求の有無等を点検する「縦覧点検」、1か月分の全レセプトについて診療内容の算定の適否を点検する「単月点検」及び電算処理により把握した重複請求の疑いのあるレセプト等の情報に基づき該当レセプトを点検する「特定点検」がある。)、iii)レセプトの記載内容に関し、保険給付の対象となった傷病が交通事故など第三者の行為に起因するものか否か等の給付発生原因の点検(以下「外傷点検」という。)が行われている。
   厚生労働省は、従来、社会保険事務所ごとに行っていたレセプト点検調査について、その効率化等を目的として、平成10年度から、レセプト点検事務センター(以下「センター」という。)を各都道府県に1か所(東京都及び大阪府はそれぞれ4か所、愛知県、広島県及び福岡県はそれぞれ2か所)設置し、一括して処理する方式に改めており、多くのセンターにおいて、点検担当者が増加し、審査体制は強化されてきている。
   また、厚生労働省は、「診療報酬明細書等の点検調査について」(平成10年6月23日付け庁保険発第11号社会保険庁運営部保険指導課長通知)により「診療報酬明細書等の点検調査要綱」(以下「調査要綱」という。)を定め、これに基づき、資格点検、内容点検及び外傷点検の各調査の充実を図ることとしている。

   今回、17センターについて、平成11年度のレセプト点検調査の実施状況をみると、次のような状況がみられた。
1.   資格点検については、すべてのセンターにおいて電算機を活用した処理が行われており、17センターにおける資格点検の実施率(レセプト受付件数に占める点検実施件数の割合)は、100パーセントとなっている。
2.   内容点検については、点検の対象が全レセプトであり、点検対象が非常に多くなること、手作業による点検が主となることから、以下のとおり、センターの中には内容点検の実施が低調なものがあり、更に点検の充実・強化を図る余地があるものがみられる。
i)   単月点検については、抽出した13センターのうち、実施率が60パーセント以上に達しているものが6センターある一方で、20パーセント程度と低いものが2センター、2パーセントにも満たないものが1センターであり、また、点検担当者1人当たりの実施件数でみても、20万件以上実施しているものが2センターある一方で、6万件以下と少ないものが4センターあるなど、センターによって単月点検の実施状況には相当な較差がみられる。
ii)   縦覧点検については、抽出した11センターのうち、実施率が10パーセント以上のものが3センターある一方で、3パーセント以下と低いものが6センターあり、また、点検担当者1人当たりの実施件数でみても、2万件以上実施しているものが3センターある一方で、5,000件以下と少ないものが6センターあるなど、センターによって実施状況には相当な較差がみられる。
iii)   特定点検については、抽出した16センターのうち、調査要綱において定められた方法によって点検を実施しているものが12センターある一方で、これを全く実施していないものが4センターある。
3.   外傷点検は、レセプトの中から第三者の不法行為に起因する事故に関係するとみられるものを把握し、被保険者への照会、事故原因者等への求償を行うための手がかりとするものである。しかし、これらの点検は、手作業により実施するものであることから、点検対象を、外傷性の傷病に係るもの、診療報酬点数を5,000点以上としているものや1,000点以上としているものなど一定以上の診療報酬点数により絞って点検を実施しているセンターが多い。この結果、外傷点検については、抽出した12センターのうち、実施件数が500万件以上に達しているものが2センターある一方で、200万件以下のものが2センターであり、また、点検担当者1人当たりの実施件数でみても、20万件以上のものが5センターある一方で、約10万件のものが2センターあるなど、センターによって実施状況に相当な較差があり、更に点検の充実・強化を図る余地があるものがみられる。

   したがって、厚生労働省は、医療費の適正化対策を推進する観点から、内容点検及び外傷点検の実施の向上を図る必要がある。

   第三者行為保険事故の求償事務の的確化
   被保険者等が療養費の支給を受ける負傷等が交通事故等第三者の不法行為に起因するもの(以下「第三者行為保険事故」という。)による場合、被保険者は、健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)第52条に基づき、その事実、加害者の氏名・住所、疾病・負傷の状況についての届け(以下「第三者行為傷病届」という。)を遅滞なく社会保険事務所長等に提出することとされている。
   一方、保険者は、第三者行為保険事故について、被保険者等に対し保険給付を行った場合、健康保険法第67条に基づき、その給付価額を限度とし、被保険者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得するとされている。
   保険者が代位取得した損害賠償請求権は、民法(明治29年法律第89号)に基づき、損害及び加害者を知った時から3年以内に行使しない場合には時効により消滅し、また、会計法(昭和22年法律第35号)等に基づき、債務者に対して納入の告知を行い時効が中断した場合でも、納入の履行期限が経過した時は時効が再び進行する。このため、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号。以下 「債権管理法」という。)第13条第2項等に基づき、歳入徴収官(社会保険事務所長等)は、債権が指定期限内に納入されない場合には、債務者に対してその履行を督促するなど債権を適正に管理しなければならないとされている。

   総務省は、平成5年に、第三者行為保険事故の求償事務について、第三者行為保険事故の的確な把握方法等を定めた事務処理マニュアルを作成し、都道府県に対して、これに基づき適正な事務処理を行うことについて指導するよう勧告した。これを受けて厚生労働省は、平成6年3月に「健康保険における第三者行為保険事故の求償の実務」(以下「事務処理マニュアル」という。)を作成し、都道府県に対して、これに基づき適正な事務処理を行うよう指導している。
  今回、17センター及び25社会保険事務所について、第三者行為保険事故の把握状況及び債権の管理状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
1.   第三者行為保険事故については、その早期把握に資するため、11年運営通知において、被保険者に対し、センターへ第三者行為傷病届を早期に提出するよう指導し、その的確な把握を行うべきことを定めている。
   また、事務処理マニュアルにおいて、センターがレセプトの外傷点検等により第三者行為保険事故の疑いがある請求を把握した場合は、被保険者等に対して負傷原因に関する照会文書を送付し、その回答等により、傷病の原因が第三者の行為によるものであると判明した場合には、被保険者等に第三者行為傷病届を提出させ、損害賠償請求権の内容を確認した上で、損害保険会社や加害者に対して求償を行うこととされている。
   しかし、i)平成11年度のセンターにおける第三者行為保険事故の把握状況についてみると、抽出した6センターにおいて、被保険者への照会に至ることなく提出された第三者行為傷病届により把握できたものは、第三者行為保険事故として判明した件数の半数に満たない(44.8パーセント)状況にあり、第三者行為傷病届の早期提出のより一層の励行の余地がみられる。また、ii)第三者行為傷病届の提出を求めるための事務処理についてみると、センターが、被保険者等に対する負傷原因の文書による照会・再照会の結果、回答がないものに対する確認等を行っていない例があるもの(5センター)、第三者行為保険事故と判明した場合に、第三者行為傷病届を未提出の被保険者に対して提出の督促を行っていない例があるもの(1センター)がみられる。
2.   債権の求償は、代位弁済の場合は損害保険会社等に対して行うことが原則とされているが、事務処理マニュアルにおいて、センターは、損害保険会社等に対する保険金等の支払状況についての照会の結果、加害者等に保険金が支払済みとなっており、かつ、その支払済額が損害保険金の限度額に達している場合には、直接加害者等に求償するとされている。
   しかし、17センターにおける求償事務の実施状況についてみると、加害者個人に債権を直接求償しなければならない事案について、加害者からの徴収の見込みが薄いことを理由として、求償していないもの(2センター)等があるなど、債権の求償を的確に実施していないセンターがある。
   なお、社会保険事務局の非常勤顧問弁護士の活用を図り、求償事務の支援等に当たらせているもの(3センター)がみられた。
3.   債権の管理については、事務処理マニュアルにおいて、社会保険事務所は、i)納入告知書の発送後、納入されない場合は速やかに督促を行い、督促を行っても納入されない場合は、少なくとも年1回以上催告すること、ii)催告後6か月以内に裁判上の請求を行うか、債務者から債務の承認を得る等により時効を中断する措置を採ることとされている。
   しかし、25社会保険事務所における債権管理事務の実施状況についてみると、i)納入告知書で指定した履行期限を徒過しても長期にわたって督促を行っていないもの(7事務所で62件)、ii)直近の督促(催告)から1年以上経過しているにもかかわらず、催告を行っていないもの(4事務所で9件)、iii)督促状況等の経緯を記す債権管理簿が整備されていないもの(1事務所)、iv)事務処理マニュアルにおいて、債権の時効消滅のおそれがある場合の具体的な対応措置が示されていないこともあり、社会保険事務所が適切な時効中断措置を採っていないため、債権が時効消滅しているもの(19事務所で156件(債権額9,089万4,637円))があるなど、債権管理が適正に実施されていない状況にある。

   したがって、厚生労働省は、政管健保の第三者行為保険事故に係る求償の的確化及び債権の管理の適正化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   第三者行為保険事故の把握については、
i)   第三者行為傷病届の励行について、被保険者に対する効果的な周知の推進を図ること、
ii)   レセプト点検等により第三者の行為に起因する傷病のレセプトを把握した場合には、事務処理マニュアルの定めのとおり、被保険者等に対する負傷原因の照会、確認及び第三者行為傷病届の提出の督促を的確に実施すること。
2.   求償事務については、損害保険会社等の保険金が支払済みとなっている場合の加害者個人への求償を的確に行うこと。
   また、顧問弁護士の社会保険事務所及びセンターにおける活用を拡大して、求償事務の推進を図ること。
3.   債権の管理については、
i)   債権管理簿の整備を徹底した上で、納入履行期限が徒過した場合の督促、催告の措置を的確に講ずること、
ii)   時効中断のための具体的な対応措置を事務処理マニュアル等において明示した上で、当該措置の徹底を図ること。

   高医療費地域における医療費適正化対策の推進
   厚生労働省は、国民医療費の増大傾向を踏まえ、「政府管掌健康保険及び船員保険の高医療費地域における医療費適正化対策の実施について」(昭和63年11月4日付け庁保発第37号社会保険庁運営部長通知)等に基づき、昭和63年度から政管健保等について、被保険者1人当たりの医療費が高い都道府県(上位15県)を高医療費地域として指定し、平成11年度からは、その指定の要件を、政管健保の加入者1人当たり医療費又はレセプト1件当たり医療費が高い都道府県(おおむね各々上位10県)に変更し、当該地域における医療費適正化対策(以下「高医療費地域対策」という。)を実施している。
   総務省は、平成5年に、高医療費地域対策について勧告したが、これに対する厚生労働省の措置内容は以下のとおりである。
1.   指定された都道府県(以下「指定都道府県」という。)における高医療費の要因分析結果を踏まえた具体的な医療費適正化対策の作成を促進するため、当該対策の作成手順・内容等を速やかに指定都道府県に対し示すよう勧告した。これを受けて厚生労働省は、平成7年度に指定都道府県の特性に応じた医療費適正化対策の実施内容・方法等について見直し、平成8年度から、その見直した内容等について実施するよう都道府県を指導している。
2.   指定都道府県等に対し、個別指導の対象となる被保険者等の十分な把握並びに被保険者等に対する個別指導及び事業所に対する健康教育・巡回指導の積極的な実施について指導するよう勧告した。これを受けて厚生労働省は、電子計算機の活用によりレセプトから得た情報で、受診率の高い事業所等を把握し、事業所に対する健康教育・巡回指導の積極的な実施について、平成7年1月に開催した全国保険・国民年金主管課(部)長会議(以下「7年課長会議」という。)等により、都道府県を指導している。

   今回、高医療費地域として指定されている都道府県を管轄する7社会保険事務局等(6社会保険事務局及び1センター)について、平成11年度の高医療費地域対策の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   厚生労働省は、11年運営通知において、高医療費地域における重点的な医療費適正化対策については、レセプト情報等に基づき医療費の高い要因を把握し、その解消に向けた対策を実施するべきことを定めている。
   また、この運営通知に併せて発出した「政府管掌健康保険及び船員保険の高医療費地域における医療費適正化対策の実施について」(平成11年3月31日付け庁保険発第12号社会保険庁運営部保険指導課長通知)により「高医療費地域における医療費適正化対策実施要領」(以下「実施要領」という。)を定め、これにおいて、高医療費地域対策として、i)レセプト点検調査、ii)被保険者指導及びiii)事業所指導の事業種別を示すとともに、各事業別の実施内容を例示しており、社会保険事務局等は、これを参考として実施計画を作成の上、高医療費地域対策を推進することとされている。
   しかし、調査した7社会保険事務局等においては、高医療費解消のための要因分析及びその解消に向けた具体的な対策に相当するものを特に実施していない。社会保険事務局等では、実施要領に示されている事項の中から、比較的容易に実施できる事項を取り上げる形で、i)レセプト点検調査のうち、医療費の高い医療機関をレセプト点検調査の対象に加え点検を行っているもの(7事務局)、ii)被保険者指導について、多受診、重複受診等により受診率の高い被保険者に対し、適正受診のための文書指導(リーフレットの送付)を行っているもの(5事務局)、iii)事業所指導のうち、受診率の高い事業所に対し被保険者の健康管理等の認識を喚起させるため、リーフレットの送付を行っているもの(6事務局)がある一方で、より効果的とみられる事項を取り上げる形で、i)レセプト点検調査において、レセプトと医療機関の施設基準との突合点検等を実施しているもの(1事務局)、ii)事業所指導において、受診率の高い事業所に対して、保健婦による巡回指導を行っているもの(3事務局)、健康診断の受診勧奨を行っているもの(0)は少ない状況にある。

   したがって、厚生労働省は、高医療費地域対策の効果的な推進を図る観点から、高医療費地域ごとに高医療費の要因の把握分析を行った上で、高医療費解消に向けた効果的な対策を的確に実施する必要がある。


   船員保険
(1)   船員保険の適用及び保険料徴収の適正化
   船員保険は、船員保険法(昭和14年法律第73号)に基づく被用者保険であり、船員法(昭和22年法律第100号)第1条に基づく船員として船舶所有者に使用される者を被保険者とし、政府を保険者とするものである。
   船舶所有者は、船員保険法施行規則(昭和15年厚生省令第5号)第5条に基づき、船舶所有者に該当するに至った日から10日以内に社会保険事務局長等に対し、船舶所有者の氏名・住所等の届書を提出(以下「適用手続」という。)するとされている。
   また、被保険者に係る保険料は、報酬月額を基に算定した標準報酬によることとされ、船舶所有者は、船員保険法第21条の2に基づき届け出た被保険者の報酬月額に変更があった場合には報酬月額変更届を社会保険事務局長等に提出するとされている(船員保険法施行規則第9条)。また、船員の報酬については、商船等汽船に乗り込む船員の場合は乗船中と下船中で賃金が異なること、漁船に乗り込む船員の場合は歩合給が多いことなど複雑であることから、厚生労働省は、「船員保険の標準報酬適正化の推進について」(昭和50年5月31日付け庁保発第18号社会保険庁医療保険部長通知)により、都道府県に対し、各船舶所有者について少なくとも年1回「標準報酬実態調査」を行い、船舶所有者から届出のあった被保険者に係る報酬月額について関係帳簿・書類等との照合による確認を行うよう指導している。

   総務省は、平成5年に、船員保険の適用及び保険料徴収の適正化の推進について勧告したが、これに対する厚生労働省の対応は以下のとおりである。
1.   船舶所有者の把握については、地方運輸局等関係機関と連携を密にして、関係資料の入手・活用に努めること等により、適用すべき船舶所有者を積極的に把握するよう都道府県を指導することを勧告した。これを受けて厚生労働省は、前述の7年課長会議等において、船員法適用船舶所有者名簿の活用及び報酬の実態調査時における賃金台帳等の活用により、船舶所有者の把握の推進を行うよう都道府県を指導している。
2.   船舶所有者による船員保険の適用手続の促進については、未手続の理由等を具体的に把握・分析して類型化し、その類型別に対処方針を作成するよう勧告した。これに対し、厚生労働省は、加入手続を行わない理由は、結局、船舶所有者の保険料の負担にあり、経済状況が厳しい現状において当該原因の解消は困難であるとして、対処方針を作成していない。
3.   被保険者の報酬月額の的確な把握については、船舶所有者に対する標準報酬実態調査の毎年の実施を徹底するよう都道府県を指導することを勧告した。これを受けて厚生労働省は、前述の6年指導通知等により、全船舶所有者に対し年1回行う標準報酬実態調査の確実な実施に努めるよう都道府県を指導している。

   今回、9社会保険事務局等(4社会保険事務局及び5社会保険事務所)について、船員保険の適用状況及び標準報酬実態調査の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
1.   船舶所有者の適用については、前述の11年運営通知において、船員法適用船舶所有者名簿を活用する等により適用対象の船舶所有者を的確に把握し、その適用促進に努めるべきことを定めている。
   しかし、社会保険事務局等における適用対象船舶所有者の把握状況及び適用勧奨状況についてみると、i)船員法適用船舶所有者名簿との突合による適用対象船舶所有者の把握を行っていないもの(1事務局)がある、ii)把握した適用対象船舶所有者の一部についてしか適用勧奨を行っていないもの(3事務局)がある、iii)適用勧奨の方法として、大半の社会保険事務局等では訪問により適用の促進に努めているものの、訪問による方法を全く採っていないもの(1事務局)がみられた。このため、これらの社会保険事務局等においては、未適用となっている船舶所有者が多く存在している。
2.   標準報酬実態調査については、厚生労働省は11年運営通知等により、賃金台帳等による未適用被保険者の的確な把握と報酬月額の適正把握に努め、船舶所有者につき少なくとも年1回実施することとしている。
   しかし、社会保険事務局等における標準報酬実態調査の実施状況をみると、i)年1回の標準報酬実態調査の実施を励行していないもの(8事務局)があり、この中には、同調査を長期にわたり実施していないもの(4事務局)もあり、実際に支払われた給与とは異なる標準報酬月額に基づき保険料が長期間適用されている、ii)通達に定められた標準報酬実態調査記録のうち汽船に係る台帳を整備していないもの(1事務局)がある。

   したがって、厚生労働省は、船員保険の適用対象船舶所有者による適用手続及び保険料の徴収の適正化を推進する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   船員法適用船舶所有者名簿の活用を励行させることにより、適用対象船舶所有者の把握を的確に行うとともに、把握した船舶所有者については、訪問などのより効果的な適用勧奨方法により、適用の促進を図ること。
2.   標準報酬実態調査の毎年の実施を徹底すること。
   また、標準報酬実態調査記録台帳の整備を徹底すること

(2)   保険給付事務等の適正化・効率化
   船員保険のレセプト審査は、政管健保と同様、支払基金が保険者からの委託により行うとともに、保険者においても、支払基金によるレセプト審査後、医療費適正化対策として、更にレセプト点検調査(資格点検、内容点検及び外傷点検)を実施している。
   また、第三者行為保険事故の場合は、政管健保と同様、その的確な把握、加害者等第三者に対する保険給付に係る損害賠償請求権の迅速な行使及び債権の適正な管理を行うこととされている。
   総務省は、平成5年に、保険給付事務の適正化・効率化の推進について勧告したが、これに対する厚生労働省の対応は以下のとおりである。
1.   資格点検等については、事務処理への電子計算機の利用により事務の効率化を図るよう勧告した。これに対し厚生労働省では、レセプト枚数がそれほど多くない等として、電算化を行うまでに至っていない。
2.   第三者行為保険事故については、その的確な把握方法、債権の管理の手続等を定めた事務処理マニュアルを作成し、これに基づき適正な事務処理を行うよう都道府県を指導することを勧告した。これを受けて厚生労働省は、平成6年3月に、事務処理マニュアル(政管健保と同じ。)を作成し、これに基づき適正な事務処理を行うよう都道府県を指導している。

   今回、12社会保険事務局等(6社会保険事務局及び6社会保険事務所)及び12センターについて、船員保険の給付事務の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
   レセプト点検調査
   レセプト点検調査については、11年運営通知等において、政管健保と同様、資格点検、内容点検及び外傷点検の充実を図ることとしている。
   しかし、レセプト点検調査を実施している12センター等(3社会保険事務局及び9センター)におけるその実施状況をみると、i)資格点検について、ほとんどのセンター等が100パーセント実施しているにもかかわらず、約70パーセントの実施にとどまっているもの(1センター等)、ii)内容点検及び外傷点検を全く実施していないもの(3センター等)があるなど、一部のセンター等において、更にレセプト点検調査の充実・強化を図る余地がみられる。
   第三者行為保険事故の把握及び求償事務
   第三者行為保険事故については、11年運営通知等において、その的確な把握を行うとともに、加害者等に対する保険給付に係る損害賠償請求権の迅速な行使及び債権の適正な管理に努めるべきことを定めている。
   しかし、社会保険事務局等及びセンターにおいては、次のような状況がみられた。
1.   平成11年度のセンターにおける第三者行為保険事故の把握状況についてみると、抽出した6センターにおいて、被保険者への照会に至ることなく提出された第三者行為傷病届により把握できたものは、第三者行為保険事故として判明した件数の半数に満たない(30.9パーセント)状況にあり、第三者行為傷病届の早期提出のより一層の励行の余地がみられる。
2.   債権の求償事務及び債権の管理については、事務処理マニュアルに基づき適正に実施することとされている。
i)   9センター等(2社会保険事務局及び7センター)における求償事務の実施状況についてみると、加害者個人に求償しなければならない事案について、加害者からの徴収の見込みが薄いことを理由として、求償していないもの(1センター等)、第三者行為傷病届を受付後、長期にわたり求償の事務手続を行っていなかったため、損害賠償請求権が消滅しているもの(1センター等)があるなど、債権の求償を的確に実施していないセンター等がある。
ii)   9社会保険事務局等(4社会保険事務局及び5社会保険事務所)における債権の管理状況についてみると、事務処理マニュアルにおいて、債権の時効消滅のおそれがある場合の具体的な対応措置が示されていないこともあり、適切な時効中断措置を採っていないため、債権が時効消滅しているもの(3事務局等で3件)があるなど、債権管理が適正に実施されていない社会保険事務局等がある。

   したがって、厚生労働省は、船員保険の保険給付の適正化、第三者行為保険事故に係る求償事務の適正化等を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   資格点検、内容点検及び外傷点検の実施の徹底を図ること。
2.
i)   第三者行為傷病届の励行について、被保険者に対する効果的な周知の推進を図ること。
ii)   求償事務については、損害保険金が支払済みとなっている場合の加害者個人への求償を的確に行うこと。また、第三者行為傷病届を受付後は迅速な事務処理を行うこと。
ii)   債権の管理については、時効中断のための具体的な対応措置を事務処理マニュアル等において明示した上で、当該措置の徹底を図ること。

(3)   傷病手当金給付事務の適正化
   傷病手当金は、船員保険法第30条に基づき、被保険者が職務上又は職務外の事由により発生した傷病の治療により職務に就くことができない場合に、その療養中の生活費を補償するために支給されるものである。
   被保険者が傷病手当金を請求する場合には、船員保険法施行規則第44条等に基づき、傷病手当金支給請求書に医師の意見書等を添付して社会保険事務局長等に提出し、社会保険事務局等では、請求内容が適正か否か等についての審査を行った上で、給付の決定を行うこととされている。
   また、厚生労働省は、傷病手当金給付の適正化を図るため、「船員保険傷病手当金給付の適正化について」(昭和56年6月26日付け庁文発第1865号社会保険庁医療保険部船員保険課長通知)に基づき、i)3か月以上の長期受給者等からの申請について、療養のため職務に就けない状況の確認を行うため、請求者に対して療養状況・日常生活状況調査票(以下「療養状況等調査票」という。)を提出させること、ii)書類審査により職務不能の可否につき疑義が生じたものについては、請求者、担当医師等の関係者に対して文書照会による再確認を行うほか、必要に応じ実地調査を行うこととし、特に傷病手当金の支給開始日から3か月以上たっているもの等については、実地調査を強化することについて、社会保険事務局等に対し指導している。

   総務省は、平成5年に、傷病手当金を支給することに疑義がある場合、関係者に対する実地調査を確実に実施するとともに、長期受給者等に対しては療養状況等調査票を提出させるよう都道府県を指導することを勧告した。これを受けて厚生労働省は、6年指導通知等により、傷病手当金を支給することに疑義があるものに対する文書照会及び実地調査の積極的な実施並びに長期受給者等に対する療養状況等調査票の提出について、都道府県を指導している。

   今回、7社会保険事務局等(2社会保険事務局及び5社会保険事務所)について、傷病手当金給付事務の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。

   傷病手当金の給付事務の実施については、11年運営通知において、社会保険事務局等は「船員保険傷病手当金給付の適正化について」に基づき、i)療養状況等調査票の活用、ii)実地調査の実施等について、その一層の充実を図り、支給日数の減少等に努めるべきことを定めている。
1.   抽出した6社会保険事務局等の中には、療養状況等調査票の提出を求めても、信ぴょう性のある内容の報告が期待できないとして、同調査票の提出要求による照会の実施に消極的であるもの(4事務局等)がある。このため、当該社会保険事務局等の傷病手当金の請求の中には、療養のため職務に就けない状況の確認を行うべきであるにもかかわらず、療養状況等調査票の提出を求めていない例がみられた。
2.   関係者に対する実地調査の結果に基づき、傷病手当金の減額・不支給の決定に至った割合は、7社会保険事務局等において、14.6パーセント(平成11年度)と、実地調査の効果がある程度みられるにもかかわらず、各社会保険事務局等における実地調査の実施率(請求件数に占める実施件数の割合)は0.5パーセントないし6.5パーセント(平成11年度)と低い状況にある。このような中で、傷病手当金の請求の中には、傷病手当金の支給から3か月以上経過しているもので、書類審査のみでは職務不能の可否が判明せず、疑義があるとみられるにもかかわらず、実地調査を実施していない例がみられた。

   したがって、厚生労働省は、船員保険の保険給付の適正化を推進する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1.   長期受給者等を中心に、療養状況等調査票を提出させ、職務不能の照会・確認を徹底すること。
2.   傷病手当金を支給することに疑義のある者に対する実地調査を的確に実施すること。