外国人児童生徒等の教育に関する行政評価・監視結果に基づく局長通知
に伴う改善措置状況(その後)の概要
 

〔調査の実施時期等〕  
 1 実施時期   平成13年12月〜15年8月
 2 調査対象機関   文部科学省、道府県教育委員会(12)、市町教育委員会(43)、小・中学校等
〔通知日及び通知先〕   平成15年8月7日 文部科学省に対し局長通知
〔回答年月日〕   平成16年6月15日
〔その後の改善措置状
 況に係る回答年月日 〕
  平成18年4月19日


 〔行政評価・監視の背景事情等〕
我が国に在留する外国人及び我が国の義務教育対象年齢の外国人子女は、近年増加傾向
 外国人登録者数  平成6年 約135万人⇒平成13年 約178万人(⇒平成16年 約197万人)
 義務教育対象年齢の外国人子女数
  平成6年 約10万2,000人⇒平成13年 約10万6,000人(⇒平成16年 約10万8,000人)(当省推計)
 外国人子女については、我が国の義務教育への就学義務は課せられていないが、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(昭和54年条約第6号)に基づき、入学を希望する者については、公立の義務教育諸学校への受入れを保障
 総務省は、「外国人子女及び帰国子女の教育に関する行政監察」の結果に基づき、平成8年12月、文部科学省に対し、外国人子女の円滑な受入れの促進、受入れ学校における教育指導の充実等について勧告
 文部科学省は所要の改善措置に取り組んできているところであるが、外国人子女の就学機会の確保等に向けた一層の取組が求められているところ
 この行政評価・監視は、外国人児童生徒等の公立の義務教育諸学校への受入れ推進等を図る観点から、就学の案内の実施状況、就学援助制度の周知状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施


主な通知事項 関係省が講じた改善措置状況
1 就学の案内等の徹底
 学齢相当の外国人子女の公立の義務教育諸学校への受入れを推進する観点から、国際的に公用語として取り扱われている英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語による就学案内の例文を就学ガイドブック等に掲載し、都道府県教育委員会(以下「県教委」という。)及び市町村教育委員会(以下「市教委」という。)に提供するとともに、県教委に対し、市教委に次の措置を講ずるよう助言すること。
(1)  中学校新入学相当年齢の外国人子女の保護者に対し、就学案内のきめ細かな発給を行うこと。
(2)  就学案内については、外国人の居住状況等をも踏まえつつ、英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語によるものも作成し発給すること。
(3)  学齢相当の外国人子女が転入した場合には、外国人登録窓口に対し市教委の編入学手続窓口を教示するよう要請し、その保護者に対する編入学の案内を積極的に行うこと。
(説明)
・   文部科学省は、県教委を通じ市教委に対し、公立の義務教育諸学校への入学を希望する外国人子女がその機会を逸することがないよう、小・中学校への就学予定者に相当する年齢の子女の保護者に対し、入学に関する事項を記載した案内(以下「就学案内」という。)を発給するよう指導
・   市教委は、外国人子女の保護者に就学案内を発給

○   調査した12道府県の43市教委のうち、公立小学校に在籍していない外国人子女の保護者に対しても公立中学校への就学案内を発給している市教委は19
 公立小学校に在籍している外国人児童の保護者に対してのみ就学案内を発給している市教委は24
○   公立小学校に在籍していない外国人子女の保護者に対しても就学案内を発給することによって、公立中学校への入学機会の確保につながっている例あり。
○   外国語による就学案内を発給している市教委は、小学校への就学案内で15、中学校への就学案内で11
 その他の市教委は日本語による就学案内しか発給していない。
○   文部科学省が作成している外国語による就学ガイドブック(注)には、就学案内の例文が記載されていない。
(注)  「就学ガイドブック」:我が国の教育制度、入学手続等の概要を説明した資料であり、県教委・市教委に提供されている。日本語のほか、ポルトガル語、スペイン語、中国語、英語、韓国・朝鮮語、ヴェトナム語及びフィリピノ語の各版がある。
○   転入してきた学齢相当の外国人子女の保護者が市の外国人登録窓口を訪れた際に、市教委の編入学手続窓口を教示するよう、市の外国人登録窓口に要請していない市教委が、43市教委中4。このため、編入学の時期が、外国人登録の4か月後(新学期開始の3週間後)となっている例あり。

→:「回答」時に確認した改善措置状況
⇒:「その後の回答」時に確認した改善措置状況




→○  就学案内の例文については、現在、更新を進めている「就学ガイドブック」において、国際的に公用語として取り扱われている英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語(ポルトガル語、中国語、スペイン語、フィリピノ語、韓国・朝鮮語及びヴェトナム語)による就学案内の例文を掲載し、平成16年中に県教委及び市教委に提供する予定
⇒○  上記「就学ガイドブック」を平成17年4月に更新し、県教委及び市教委に提供するとともに、文部科学省ホームページに掲載
(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/kiko_zi0.html)

→○  就学案内等に係る市教委への助言については、平成16年2月2日開催の文部科学省初等中等教育局所管事項説明会において、県教委に対し、1)中学校新入学相当年齢の外国人子女の保護者に対し、就学案内のきめ細かな発給を行うこと、2)就学案内については、外国人の居住状況等をも踏まえつつ、国際的に公用語として取り扱われている英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語によるものも作成し発給すること、3)学齢相当の外国人子女が転入した場合には、外国人登録窓口に対し市教委の編入学手続窓口を教示するよう要請し、その保護者に対する編入学の案内を積極的に行うことについて、域内の市教委に助言するよう周知した。
⇒○  平成17年8月8日開催の帰国・外国人児童生徒研究協議会(注)において、県教委及び市教委に対し、上記と同様の事項を周知した。なお、その際、「就学ガイドブック」を参考とするよう説明
 さらに、平成18年1月25日及び27日開催の文部科学省初等中等教育局所管事項説明会において、県教委に対し同様に周知した。
 今後とも、県教委に対し、外国人子女の保護者に対する就学の案内等を徹底するよう、域内の市教委に対し助言するよう周知する。
(注)  毎年、文部科学省初等中等教育局国際教育課が開催している会議。県教委及び市教委の帰国・外国人児童生徒教育担当者を対象として、帰国・外国人児童生徒教育に関する指導・助言を行う。

2 就学援助制度の周知の的確化
 学齢相当の外国人子女の公立の義務教育諸学校への受入れを推進する観点から、国際的に公用語として取り扱われている英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語による就学援助制度の案内を就学ガイドブック等に掲載し、県教委及び市教委に提供するとともに、県教委に対し、市教委に次の措置を講ずるよう助言すること。
(1)  就学援助制度の周知については、新入学相当年齢の外国人子女及び学齢相当の外国人子女の保護者が入学を決定する前の適時に行うことにも配慮すること。
(2)  就学援助制度を説明する資料の作成に当たっては、外国人の居住状況等をも踏まえつつ、英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語を用いることにも配慮すること。

(説明)
 市町村は、学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づき、経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対し、必要な援助を実施。国は、市町村に対し、就学援助に要する経費(学用品費、学校給食費等)の一部を補助
 文部科学省は市町村に対し、i1)外国人児童生徒に対する就学援助については、日本人と同様に取り扱うこと、ii2)保護者に対する制度の周知を図ること、を指導

就学援助制度の周知の時期
 新入学の場合には、43市教委すべてが、外国人子女の保護者が入学を決定した後(入学前の健康診断や入学説明の際、入学後の適期)
 編入学の場合には、27市教委が、外国人子女の保護者から照会がある場合を除き、編入学後
 外国人子女の保護者の中には、公立小・中学校に入学することによって多額の経済的負担を強いられると誤解している者あり。
 外国語による就学援助制度の案内パンフレットを配布している市教委は11
その他の市教委は日本語による案内パンフレットしか配布していない。
 外国語による就学ガイドブックには、就学援助制度の案内が記載されていない。


→○  就学援助制度の案内については、現在、更新を進めている「就学ガイドブック」において、国際的に公用語として取り扱われている英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語による就学援助制度の案内を掲載し、平成16年中に県教委及び市教委に提供する予定
⇒○  上記「就学ガイドブック」を平成17年4月に更新し、県教委及び市教委に提供するとともに、文部科学省ホームページに掲載

→○  就学援助制度の周知等に係る市教委への助言については、平成15年9月16日開催の文部科学省初等中等教育局所管事項説明会において、県教委に対し、1)就学援助制度の周知については、外国人子女の保護者が入学を決定する前の適時に行うことにも配慮すること、2)就学援助制度を説明する資料の作成に当たっては、外国人の居住状況等をも踏まえつつ、国際的に公用語として取り扱われている英語や外国人登録の多い国籍(出身地)の者が日常生活で使用する言語を用いることにも配慮することについて、域内の市教委に助言するよう要請
 また、平成15年度の当該補助金の事務処理要領(注)において、県教委に対し、上記の内容を通知
(注)  「平成15年度要保護及準要保護児童生徒援助費補助金の事務処理について」(平成15年10月3日付け15文科初第703号文部科学省初等中等教育局長、スポーツ・青少年局長連名通知)
⇒○  平成18年1月25日及び27日開催の文部科学省初等中等教育局所管事項説明会、平成17年度の当該補助金の事務処理要領(注)において、県教委に対し、上記事項を要請。なお、その際、「就学ガイドブック」を参考とするよう説明
 今後とも、県教委に対し、外国人子女の保護者に対する就学援助制度の的確な周知が行われるよう、域内の市教委に対し助言するよう要請
(注)  「平成17年度要保護児童生徒援助費補助金の事務処理について」(平成17年8月17日付け17文科初第606号文部科学省初等中等教育局長、スポーツ・青少年局長連名通知)

3 日本語指導体制が整備された学校への受入れ推進
 外国人児童生徒に対する日本語指導の充実を図る観点から、外国人児童生徒の居住地の通学区域内に日本語指導体制が整備されている学校がない場合には、地域の実情に応じ、通学区域外でかつ通学が可能な日本語指導体制が整備されている学校への通学を認めることについて、市教委に対して周知すること。

(説明)
 文部科学省は、日本語指導が必要な児童生徒が在籍する小・中学校の一部に対して日本語指導専任教員(以下「専任教員」という。)を配置するために必要な経費の二分の一を負担(平成14年度 989人)
 文部科学省は、県教委に対し、通学区域制度の運用について、地域の実情に即し、保護者の意向に十分配慮した多様な工夫を行うこと等について、市教委に周知するよう通知。また、外国人児童生徒の個別事情に配慮した取扱いの事例等を掲載した事例集を平成9年からこれまで3回にわたり作成し、県教委・市教委に配布
 市教委は、児童生徒が就学する学校を指定し保護者に通知。保護者の申立により、変更が相当と認められるときは、学校の指定を変更することができる。

 43市教委のうち、外国人児童生徒の入学を受け入れる学校の指定の変更を認めていない市教委は11
 11市教委管内の学校の中には、外国人児童生徒の居住地の近隣に、日本語指導専任教員が配置され日本語指導体制が整備されている学校があり、これらの学校への通学が十分可能な状態にあるにもかかわらず、日本語指導体制が整備されていない受入れ学校の指定を受けた学校に転・編入学している児童生徒の例あり。


→○  通学区域制度の弾力的運用については、現在、更新を進めている「就学ガイドブック」において、外国人児童生徒の居住地の通学区域内に日本語指導体制が整備されている学校がない場合には、地域の実情に応じ、通学区域外でかつ通学が可能な日本語指導体制が整備されている学校への通学を認めることについて、その趣旨を踏まえた内容のものを掲載し、平成16年中に県教委及び市教委に提供する予定
⇒○  上記事項を盛り込んだ「就学ガイドブック」を平成17年4月に更新し、県教委及び市教委に提供するとともに、文部科学省ホームページに掲載

→○  また、平成16年2月2日開催の文部科学省初等中等教育局所管事項説明会において、県教委に対し、上記の内容について、域内の市教委に助言するよう要請
⇒○  また、平成17年8月8日開催の帰国・外国人児童生徒研究協議会において、県教委及び市教委に対し、上記の内容について周知した。
 さらに、平成18年1月25日及び27日開催の文部科学省初等中等教育局所管事項説明会において、県教委に対し同様に周知した。
 今後とも、県教委に対し、上記の内容について、域内の市教委に対し指導・助言するよう要請