認可法人に関する調査結果(要旨)

勧告日: 平成11年3月5日
勧告先: 総理府、国家公安委員会(警察庁)、金融再生委員会、経済企画庁、科学技術庁、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省

【調査の目的・背景事情等】

 
認可法人における財務諸表等のディスクロージャーを推進する
 
  •  民間部門(株式会社)では、商法(明治32年法律第48号)及び証券取引法(昭和23年法律第25号)により、財務諸表等の作成・公開(ディスクロージャー)が義務付け
  •  特殊法人については、累次の閣議決定、さらに行政監察結果を踏まえた財務諸表等の作成及び公開の推進に関する法律(平成9年法律第 103号)の制定等により、規定を統一的に整備し推進
     また、公益法人の財務諸表等については、「公益法人の設立許可及び指導監督基準の一部改正について」(平成9年12月16日閣議決定)により、一般の閲覧に供することを決定
  •  認可法人は、特殊法人や公益法人と同様に公共的・公益的性格が強いが、これらに比べ財務諸表等のディスクロージャーへの取組が遅れている状況
  •  また、認可法人の組織、事務・事業等の全体像については、必ずしも明らかでない状況

【調査対象機関等】

実地調査期間: 平成9年12月〜10年7月
調査対象機関: 総理府、国家公安委員会(警察庁)、経済企画庁、科学技術庁、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省
全認可法人86法人(平成11年2月1日現在)

【認可法人の概要】

 認可法人には、公共的・公益的業務を行い、かつ国からの出資金、補助金等に収入の相当部分を依存しているいわゆる「行政代行型法人」のほか、国・地方の公務員等の共済組合(46法人)や特定の会員・団体により構成されている法人など、様々な特性を持った法人が混在
 認可法人の職員数等(平成10年11月1日現在)
 職員数: 約8万8,000人 (日本赤十字社5万2,559人、国家公務員共済組合連合会1万2,536人、その他の共済組合1万1,669人、日本銀行5,791人 等)
 役員数: 1,217人
 政府出資の状況(平成9年度末)
 出資法人数: 25法人
 出資総額: 約1兆 900億円 (基盤技術研究促進センター 2,499億円、海洋科学技術センター 1,896億円 等)  
 国庫補助金等の状況(平成9年度実績)
 交付対象法人数: 60法人
 国庫補助金等額: 約1,000億円 (空港周辺整備機構 188億円等)
他に共済組合への負担金等(29組合)約1兆 1,800億円
  〔参考〕
 認可法人については、実定法上の定義はないが、行政実務上、一般的に、特別の法律に基づき、数を限定して設立される法人で、民間等の関係者が発起人となって自主的に設立されるものであるが、その設立につき又は設立の際の定款等につき主務大臣の認可にかからしめているものとされている。

【勧告の概要】

財務内容等に関する書類の作成・公開の義務付け

 民間部門(株式会社)では、商法及び証券取引法により、財務諸表等の作成・公開が義務付け
 特殊法人については、累次の閣議決定や行政監察結果を踏まえた一括法の制定等により、財務内容等に関する書類の作成・公開が進捗中。また、公益法人の財務諸表等については、閣議決定により、一般の閲覧に供することを決定

 財務内容等に関する書類の作成・公開について法律上の義務付けが行われていない法人がある。また、必要なすべての書類等についての義務付けを行っている法人は皆無
作成義務付けなし 公開義務付けなし
公告義務付けなし 事務所備付け義務付けなし
貸借対照表 10法人 84法人 26法人
損益計算書 13法人 84法人 29法人
事業報告書 65法人 69法人
附属説明書類 85法人 85法人
監事の意見書 53法人 85法人
 財務内容等に関する書類の作成・公開が行われていない法人がみられる。
未作成 未公開
未公告 事務所未備付け
貸借対照表 2法人 69法人 7法人
損益計算書 8法人(注) 70法人 9法人
事業報告書 2法人 2法人
附属説明書類 9法人 28法人
監事の意見書 0法人 49法人

(注)8法人は、特定の会員・団体により構成され、また活動に営利性・事業性が薄いことから、会計処理もおおむね公益法人会計基準に準拠している法人であり、損益計算書に代え収支計算書を作成
 財産目録の作成が法律上義務付けられ作成を行っている76法人のうち、4法人は事務所備付け未実施。また、決算報告書の作成が法律上義務付けられ作成を行っている29法人のうち、3法人は事務所備付け未実施
 備付けによる公開が主たる事務所のみで行われ、従たる事務所で行われていないもの:従たる事務所を有する16法人中4法人
<勧告要旨>
 貸借対照表、損益計算書、事業報告書、附属説明書類及び監事の意見書の作成及び事務所備付け(従たる事務所を含む。)等による国民一般への公開を指導するとともに、その作成・公開の統一的・制度的な推進を図るため法律上の義務付けを行うこと
 また、財産目録及び決算報告書の作成が法律上義務付けられその作成を行っているものの、 備付けを行っていない法人に対し、事務所(従たる事務所を含む。)への備付けによる国民一般への公開を指導するとともに、法律上の義務付けを行うこと
 財務内容等に関する書類の公開の適正化
(1) 事務所備付け期間の標準化
 
民間部門 (株式会社) では、(1)商法において、計算書類等を本店で5年、支店に3年備え置くこと、(2)証券取引法において、有価証券報告書を本店及び支店に5年備え置くことが求められている。また、特殊法人については、事務所備付け期間を5年間とし、関係省令の改正等を統一的に整備
 財務内容等に関する書類の事務所備付け期間は区々となっており、また、これを法令上規定している法人は皆無
貸借対照表  事務所備付けを行っている79法人中27法人が5年未満の備付け、うち10法人が1年
損益計算書  事務所備付けを行っている77法人中27法人が5年未満の備付け、うち10法人が1年
<勧告要旨>
 財務内容等に関する書類を5年間備え付けるよう指導するとともに、府省令の規定整備を行うこと

(2) 公開時期の早期化
 
特殊法人においては、各省庁申合せ(平成9年3月31日)により、原則として翌事業年度の8月末までに公開
 公開が翌事業年度の10月以降となっているもの:公開している78法人中16法人、うち5法人は決算期の翌年以降
<勧告要旨>
 財務内容等に関する書類について、原則として8月末までに公開するよう指導すること
 財務内容に関する書類の記載内容の適正化
 
国の出資又は運営費等補助金を受けている特殊法人及び認可法人の財務諸表の作成においては、原則として特殊法人等会計処理基準に基づき適正に記載することが必要
 利益処分(損失処理)内容について、損益計算書への注記又は利益処分(損失処理)計算書の作成のいずれも行っていないもの:国会関係等共済組合4法人を除いた82法人中11法人
 損益計算書に経常損益と特別損益の区分表示をしていないもの:国会関係等共済組合4法人 及び損益計算書未作成等9法人を除いた73法人中7法人
 貸借対照表、損益計算書における重要な会計方針に関する注記を行っていない、又は記載内容が不十分なもの:国会関係等共済組合等6法人(注)を除いた80法人中74法人
 (注)調査対象とした勘定が制度改正により廃止された2法人を含む。
<勧告要旨>
 記載内容が不十分な認可法人に対し、次の指導を行うこと
  1.  利益処分(損失処理)内容を損益計算書に注記させ又は利益処分(損失処理)計算書を作成させること
  2.  損益計算書について、経常損益と特別損益の区分表示をさせること
  3.  貸借対照表、損益計算書における重要な会計方針に関する注記の徹底及びその記載方法の適正化を図ること
 事業報告書・附属説明書類の記載事項の標準化
 
特殊法人においては、財務内容や事業活動実績、関係会社等の状況について、的確で統一的な情報公開を図るためこれらを必要的記載事項として関係省令等に明定するなど、所要の規定を整備
 事業報告書(貸借対照表や損益計算書の内容を補足し、文書による情報によって法人の事業活動の実態を説明するための書類)の記載内容が不十分
 事業内容  共済組合を除く40法人のうち、事業報告書を作成・公開している29法人中14法人が未記載
 資本金の状況  上記29法人のうち、資本金を有する21法人中19法人が未記載
 役員の状況  上記29法人中24法人が未記載
 附属説明書類(貸借対照表や損益計算書の内容を補足し、資金の増減や費用の明細を説明するための書類)の記載内容が不十分
 引当金の明細  附属説明書類を作成・公開している52法人のうち、引当金を有する45法人中6法人が未記載
 国庫補助金収入等  上記52法人のうち、国庫補助金等を受け入れている34法人中22法人が未記載
 関係会社又は関連公益法人を有する認可法人において、関係会社等の情報開示が不十分
 資金供給業務以外で関係会社等を有する法人のうち、関係会社等に関する情報を事業報告書に記載していないもの:関係会社等を有する13法人中10法人
 資金供給業務で関係会社を有する法人のうち、関係会社に関する情報を事業報告書に記載していないもの:関係会社を有する6法人中2法人
<勧告要旨>
 事業報告書及び附属説明書類において、財務内容や事業活動実績、関係会社等に関する情報等を必要的記載事項として記載し開示するよう指導するとともに、府省令の規定整備を行うこと