実施庁に係る実績評価に関する
調査結果に基づく通知





平成16年7月

総務省行政評価局




前書き

  実施庁は、中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)等に基づき導入された主として政策の実施機能を担う組織として、平成13年1月の省庁再編時に、7省庁に9実施庁が設置された。その後、平成15年4月の日本郵政公社の設立に伴い郵政事業庁が廃止されたため、16年3月末現在、6省庁に8実施庁が設置されている。
  実施庁については、その業務の効率化を図るとともに自律性を高めるため、中央省庁等改革基本法において、府省の長は、実施庁の所掌する事務に係る権限を当該実施庁の長に委任し、当該権限委任事務の実施基準等を定め公表するとともに、実施庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を評価して公表することとされている。
  実施庁に係る実績評価については、現在、各省庁において、個々の実施庁の業務の特性に応じた方法によって行われている状況にあるが、これを一層的確かつ効果的に実施するため、各省庁においては、現行の評価方法等を不断に見直し、評価内容を一層充実したものにしていくことが求められている。
  この調査は、実施庁の業務の効率化とその自律性の向上を推進する観点から、実施庁に係る実績評価の実施及び評価結果の活用の状況等を調査し、当該評価の的確かつ効果的な実施に資するため行ったものである。
  今回の調査結果報告書の取りまとめに当たっては、実施庁に係る実績評価の実施状況を明らかにするとともに、実施庁に関する中央省庁等改革の趣旨を踏まえ、各省庁が講じている評価方法等についての各種の工夫例を取り上げることとした。今後、関係省庁において、本調査結果が十分活用されることを期待するものである。




目次

1  実施庁に係る実績評価の枠組み

2  実施庁に係る実績評価の現状と課題

    (1)  事務の実施基準等の制定・公表

  (2)  目標の設定及び実績の評価
  ア   目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する規程類の整備

  イ   目標の設定及び実績の評価の的確かつ効果的な実施
1)  目標の設定状況

2)  実績の評価の実施状況

3)  有識者等第三者の知見の活用状況

  (3)  公表等の推進

  (4)  評価結果等の活用




  実施庁に係る実績評価の枠組み
  実施庁は、中央省庁等改革の一環として、政策の企画立案機能と実施機能を組織的に分離してそれぞれの機能の高度化を図るため、政策の企画立案機能は主として本省に、実施機能については可能な限り外局、独立行政法人等の組織に分離するとの考え方(行政改革会議最終報告(平成9年12月3日)。以下「最終報告」という。)に基づき導入されたものである。
  平成13年1月、7省庁に9実施庁(注)が設置され、15年4月の日本郵政公社の設立に伴い郵政事業庁が廃止されたことにより、16年3月末現在、6省庁に8実施庁が設置されている。
(注)   7省庁9実施庁の内訳
   防衛庁(防衛施設庁)、総務省(郵政事業庁)、法務省(公安調査庁)、財務省(国税庁)、厚生労働省(社会保険庁)、経済産業省(特許庁)、国土交通省(気象庁、海上保安庁及び海難審判庁)
    個々の実施庁が担っている機能は様々である。実施庁の所掌事務に関する政策の企画立案に関する事務について、これを実施庁が担当しているものが5実施庁(公安調査庁、特許庁、気象庁、海上保安庁及び海難審判庁)、省の内部部局が担当しているものが3実施庁(郵政事業庁、国税庁及び社会保険庁)及び庁の内部部局(官房)と実施庁で分担しているものが1実施庁(防衛施設庁)となっている。

  実施庁については、最終報告において、業務実施の効率化を図り、自律性を高めるため、その制度設計に当たって、i1)実施庁の長に対する業務実施権限の法律による明確な付与、ii2)目標の設定、評価による管理手法の導入等の措置を講ずることが必要とされている。また、実施部門に係る目標の設定と達成度評価といった仕組みの導入は、評価機能の充実方策の一環と位置付けられている。
  これを受けて制定された中央省庁等改革基本法(平成10年法律第103号)第16条第6項の規定においては、i1)府省の長の権限のうち、実施庁の所掌する事務に係るものを当該実施庁の長に委任すること、ii2)府省の長は、実施庁の長にその権限が委任された事務の実施基準その他当該事務の実施に必要な準則(以下「事務の実施基準等」という。)を定めて公表するとともに、実施庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を評価して公表することとされている。
  さらに、「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定。以下「中央省庁等改革方針」という。)において、1)事務の実施基準等の制定及び公表については、実施庁の自律性を高める観点から、可能な限り具体的かつ客観的な基準とすることを基本とし、また、2)目標の設定と目標に対する実績の評価・公表については、その目標は、より客観的な評価が可能となるよう設定することを基本とし、それぞれ、それらの具体的な内容は、個々の実施庁の担当する業務に応じて、今後さらに検討することとされた。その後、中央省庁等改革推進本部事務局及び各省庁での検討の結果、個々の実施庁における事務の実施基準等、目標の設定及び実績の評価の在り方は、それぞれの実施庁が担当する業務内容に従って個別に検討すべきものであり、同本部事務局が統一的なひな形を示すのは適当でなく、各省庁において検討することとなった。このため、実施庁に係る実績評価については、各省庁が個々の実施庁の実施業務の内容に応じて個別に実施している状況にある。
  なお、政策の企画立案機能から分離して実施機能を果たすものとして設立された独立行政法人については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)において、i1)主務大臣は、独立行政法人が達成すべき中期目標を設定・公表すること、ii2)独立行政法人は、中期目標に基づき中期計画及び年度計画を作成・公表すること、また、業務の実績について独立行政法人評価委員会の評価を受けることなどが定められている。
  また、行政機関が行う政策については、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号。以下「評価法」という。)において、行政機関の長は、i1)政策評価の実施方針、政策効果の把握、学識経験者の知見の活用、政策評価結果の政策への反映等に関する事項を定めた政策評価に関する基本計画及び1年ごとの事後評価の実施計画を策定・公表した上で、事後評価を行うこと、ii2)評価書を作成したときは、速やかに、これを総務大臣に送付するとともに、当該評価書及びその要旨を公表することなどが定められている。
  このように、独立行政法人の業務の実績に関する評価及び行政機関が行う政策評価については、それぞれ、全省庁共通の枠組みの下に行われている。

  実施庁に係る実績評価の現状と課題
(1)   事務の実施基準等の制定・公表
  事務の実施基準等は、上記1のとおり、省庁の長に対しその制定・公表が義務付けられている。また、中央省庁等改革方針において、事務の実施基準等の制定及び公表については、可能な限り具体的かつ客観的な基準とすることを基本としている。
  今回調査した7省庁9実施庁について、事務の実施基準等の制定・公表状況をみると、次のとおりとなっている。
  なお、調査対象とした郵政事業庁は平成15年4月の日本郵政公社の設立に伴い廃止されたことから、他の6省庁8実施庁について主に記述することとし、郵政事業庁については、13年度及び14年度にその実績評価に関して総務省が行った工夫を参考として記述する(以下同じ)。
  事務の実施基準等は、6省庁のすべてにおいて、平成13年1月から3月までの間に個々の実施庁ごとに訓令又は大臣決定として制定・公表されている。
  事務の実施基準等の内容としては、すべての実施庁において、所掌事務の実施に当たり基本となる事項や留意すべき事項などが規定されている。
  事務の実施基準等については、6省庁中防衛庁、法務省、厚生労働省及び経済産業省において、本省庁の実施庁に係る実績評価の担当部局(政策評価担当部局)が制定しているが、財務省及び国土交通省においては、実施庁に係る実績評価の担当部局と異なる部局(財務省は大臣官房文書課企画調整室、国土交通省は大臣官房総務課)が制定している。

(2)   目標の設定及び実績の評価
  目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する規程類の整備
  実施庁が達成すべき目標(以下「目標」という。)の設定及び目標に対する実績の評価について、これらを体系的かつ継続的に実施し、透明性及び客観性の確保を図るため、目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する規程類を整備し、これに則し実施することが重要である。
  調査対象6省庁8実施庁について、目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する規程類の整備状況をみると、次のとおりとなっている。
1)   目標の設定及び実績の評価について、各省庁は、基本的に、i1)目標の設定・公表、ii2)目標期間終了後における目標の達成状況(実績)の取りまとめ、iii3)目標の達成状況(実績)の評価・公表という方法、手順で行っている(詳細は、後述の2(2)イ参照。)。
i1 ) 目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順の一連の手続について規程類を定めているものは、2省庁である。
  防衛庁は、「防衛庁政策評価及び実績評価実施要領」(平成13年2月14日防官文第1062号)において政策評価及び実施庁の実績評価に関し必要な事項をそれぞれ定めている。実施庁の実績評価に関しては、その目的、担当課等、実施手続(目標の設定手順及び実績評価書の作成手順)、業務への反映、評価結果の公表方法、国民の意見・要望の受付窓口の整備について、具体的に定められている。
  財務省は、「政策評価に関する基本計画」(平成14年3月29日大臣決定)の項目の一つとして、「国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価」を設けている。同項目においては、財務省の政策評価における実績評価と国税庁の実施庁としての実績の評価とは、評価手法の観点からは実質的に異なるところはないため、国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価については、実施庁の実績の評価としての性格を踏まえつつ、この基本計画の定めるところに準じて実施するとされ、実施スケジュールが定められている。また、実績評価の実施の項目において、評価基準及び評価マニュアルとともに、実施計画(目標の設定を含む。)及び実績評価書の内容や作成のための具体的な作業手順等が定められている。
  また、財務省は、同基本計画に基づき、事務年度(7月から翌年6月まで)の目標と指標、実施スケジュール、実施要領等を内容とする「国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価に関する実施計画」を毎事務年度策定し公表している。
  さらに、国税庁は、本庁並びに国税局及び税務署における当該実績の評価に関する実施体制、事務処理手順等について、毎事務年度、「国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価に関する事務の実施について」(平成13事務年度から15事務年度までの国税庁長官指示)を各国税局長等に発出している。

ii2 ) 目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順のうち、その一部について規程類を定めているものは、2省である。
  厚生労働省は、「厚生労働省における政策評価に関する基本計画」(平成14年4月1日大臣決定)において、社会保険庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を評価して公表することとしている。また、同基本計画に基づき毎年度策定する「厚生労働省における事後評価の実施に関する計画」において、社会保険庁の事務の実施状況についての本省への報告時期及び評価結果の公表時期を定めているが、目標の設定のための実施手順、実績の評価の担当部局等については定めていない。
  法務省は、「法務省政策評価基本計画」(平成14年3月28日大臣決定)において、公安調査庁について、政策評価のほか、「法務省政策評価基本計画」に定める実績評価方式に準じて、中央省庁等改革基本法第16条第6項の規定に基づく評価を実施することとしている。しかし、「法務省政策評価基本計画」においては、実績評価方式の基本的性格、評価対象のとらえ方(施策等を一個の単位として評価)、評価の時点(目標期間終了後に達成度を評価)及び実績評価方式を使用する政策について定められているのみで、実施庁に係る実績評価の具体的な実施手順、実績評価の担当部局等は定められていない。

参考)総務省は、「総務省政策評価基本計画」(平成14年3月27日訓令第41号)において、郵政事業庁の評価に関する事項を設け、目標の設定及び実績の評価担当部局、実績の評価の実施方法、手順、実施庁への評価結果の通知時期、公表の時期・方法等の基本に係る事項(目標の設定のための実施手順を除く。)を定めていた(注)。
(注 )総務省政策評価基本計画の該当部分の規定は、日本郵政公社の設立に伴う郵政事業庁の廃止に併せて、削除されている。

iii3 ) 経済産業省及び国土交通省は、目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する明文の規程類を整備していない。

2)   上記1)の規程類を定めている4省庁のうち、実績評価書の作成及び公表の時期について定めているのは3省庁(防衛庁、財務省及び厚生労働省)で、1省(法務省)は定めていない。また、目標期間の終了から実績評価書の作成又は公表までの期間については、2省庁(防衛庁及び財務省)は3か月、1省(厚生労働省)は約5か月と定めている。
i1 ) 防衛庁は、評価結果の取りまとめを迅速かつ計画的に行うため、評価対象年度終了後3か月を超えない時期までに防衛庁長官の承認を得て速やかに公表するとしている。
ii2 ) 財務省は、政策評価における実績評価の実施スケジュールに準じて実施するとの理由から、3か月の取りまとめ期間を設け9月末目途に実績評価書を策定し速やかに公表するとしている。
iii3 ) 厚生労働省は、6月末までに社会保険庁から実施状況報告を受け、評価結果を8月末目途に公表するとしている。

参考)総務省は、実績評価書を8月中旬までに郵政事業庁に通知し、総務省の政策評価結果を公表する際に併せて公表するとしていた。

  したがって、関係省庁は、実施庁に係る実績評価の的確かつ効果的な実施を推進する観点から、各省庁の実施状況を参考に、目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する規程類の整備や充実を図る必要がある。

  目標の設定及び実績の評価の的確かつ効果的な実施
  実施庁に係る実績評価は、実施庁の業務実施の効率化を図り、その自律性を高めるため、あらかじめ達成すべき目標を設定し、これに対する実績を測定して目標の達成度合いについて評価していくものである。
  中央省庁等改革方針において、目標はより客観的な評価が可能となるよう設定することが基本とされており、目標の設定に当たっては、達成状況を可能な限り客観的に測定できる指標を用い、具体的な目標とすることが重要である。
  また、目標の達成度合いについての判定は、国民への説明責任の観点から、明確な判定基準に基づき実施されるとともに、具体的に分かりやすく公表されることが望ましい。
  さらに、実績評価の客観性を確保するとともにその質の向上を図るため、実施庁の業務の内容に応じて有識者等第三者の知見の活用を図ることが有益である。

  調査対象6省庁8実施庁について、平成13年度から15年度までの目標の設定状況並びに13年度及び14年度の目標に対する実績の評価の実施状況(有識者等第三者の知見の活用状況を含む。)をみると、次のとおりとなっている。
1)  目標の設定状況
    i1 ) 各省庁は目標の設定について、できるだけ定量的な指標(数値目標)を設定することが望ましく、今後、継続して、定量的な指標の設定について検討していきたいとしている。
  各省庁が実施庁の業務に関し設定した目標については、個々の実施庁の業務内容が異なることを考慮する必要がある。
  平成15年度の場合、次のとおり、掲げられた目標のすべてについて定量的な指標が設定され達成すべき水準が数値化されているもの(3実施庁)のほか、目標の一部について定量的な指標が設定され達成すべき水準が数値化されているもの等(5実施庁)がみられる。
  すべての目標について達成すべき水準が数値化されているもの
  特許庁については6目標が設定され、その内容は、例えば、「出願件数が増加している中、早期の権利保護を図るため、オンライン出願書類の方式審査の通常処理期間を受付日から1週間以内とするよう努めること」となっているなど、掲げられた目標のすべてについて定量的な指標が設定され達成すべき水準が数値化されている。同様に、気象庁の4目標及び海難審判庁の3目標のすべてについて、いずれも定量的な指標が設定され達成すべき水準が数値化されている。
  目標の一部について達成すべき水準が数値化されているもの
  海上保安庁については4目標中2目標、国税庁については10目標中4目標、防衛施設庁については38目標中10目標、社会保険庁については21目標中5目標に関し、それぞれ定量的な指標が設定され達成すべき水準が数値化されている。なお、公安調査庁については、公共の安全確保を図るなどの業務特性もあり、2目標のいずれも定量的な指標が設定されていない。
  しかし、定量的な指標の設定にかかわらず達成すべき水準が数値化されていない目標の中には、例えば、自衛隊施設に供される行政財産の所管換、用途廃止等に係る事務手続の処理期間(防衛庁)、国税に関する異議申立案件の3か月以内の処理件数割合や審査請求案件の1年以内の処理件数割合(財務省)、政府管掌健康保険事業・船員保険事業・厚生年金保険事業の適用率(厚生労働省)、地震活動の監視観測地点数(国土交通省)など、定量的な目標を設定することが可能とみられるものがある。

ii2 ) 目標は、すべての実施庁について、1年間を基本として設定され(注)毎年改定されているが、中には、特許庁のように中・長期的な目標及び当該目標を踏まえた1年間の目標を示しているものや、国税庁、気象庁及び海上保安庁のように、目標の一部について2年から3年後の中期的な目標を示した上で当面の1年間の目標を示しているものがある。
(注 )国税庁は、7月から翌年6月までの事務年度に合わせた目標期間となっている。その他の実施庁はすべて4月から翌年3月までの会計年度に合わせた目標期間となっている。

2)  実績の評価の実施状況
  各省庁の実績の評価の実施状況は、次のとおりである。
    i1 ) 財務省は、評価基準及び評価マニュアルを定めて実績を評価している。具体的には、評価を行うに当たり、[i1]指標等に照らした目標の達成度、[ii]2目標達成のための事務運営プロセスの適切性・有効性・効率性、[iii]3結果分析の的確性、[iv]4当該政策自体の改善等についての有効かつ積極的な提言の有無等の4つの観点を評価基準として定めている。また、各目標について実績の評価を実施する際、その判断の根拠として、評価基準をより具体化した18の評価事項(例えば、指標等に照らした目標等の達成度についての評価事項は、[i]1達成度、[ii2]達成度を把握できるような指標の設定の適切性、[iii3]目標の必要性)と評価事項を判断するに当たっての30のチェック・ポイントを内容とする評価マニュアルを定め、それに従って評価している。評価結果については、評価基準ごとに「達成した」、「ほぼ達成した」などのパターン化した文言(注)を用いて整理している。また、平成14事務年度の国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価に当たり、評価基準の明確化・厳格化を図るため、「「平成14事務年度 国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価書」における評価に当たっての基本的な考え方」を整理し、目標全体の中の指標の位置付けや施策に係る客観的な実績(成果)を基本として、実績の評価の審査結果欄の記載の充実を図っている。
(注 )例えば、指標等に照らした目標の達成度については、平成14事務年度の目標に対する実績の評価では、「達成した」、「達成に向けて非常に大きな進展があった」、「達成に向けて相当の進展があった」、「達成に向けて一部進展があった」、「進展しなかった」の5つのパターンで整理しており、評価基準ごとにパターン化した文言を定めている。

ii2 ) 国土交通省は、前述2−(2)−ア−1)−iii3)のとおり、目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する明文の規程類は整備していないが、評価結果を所管する3実施庁共通の方式として、「目標どおり達成したと認められる」、「目標達成に向けて概ね順調に推移していると認められる」、「目標には達していないが相当の実績が上がっていることが認められる」、「目標は達成されておらず一層の努力が必要である」のほぼ4つのパターン化した文言を用いて評価結果を整理(注)し、併せて、所見を記述している。ただし、パターン化した文言については、どのような場合にどの文言を使うのかという判定基準は明確にされていない。
(注 )国土交通省は、これを「評定」と称している。

iii3 ) 防衛庁は、評価の実施段階で、掲げられた目標のすべてについて、達成度合いを評価するための確認項目と測定方法を定めている。評価結果については、目標のすべてについて達成度(%(パーセント))を記述するとともに、基本的には、チェックシートの確認項目の達成度合いが100%であれば「目標は達成された」、80%以上であれば「目標はおおむね達成された」、80%未満であれば「目標は達成されたと評価することはできなかった」との3つのパターン化した文言を用いて評価結果を整理しているが、明文の規定はない。
  また、達成度が100%に至らなかった目標については、その原因を分析し、達成度向上のために何が必要かを今後の処理方針として実績評価書の中に記述している。

iv4 ) 厚生労働省は、定量的な指標が設定され達成すべき水準が数値化されている目標(平成14年度の目標数は4)については、目標と実績を定量的に比較することにより目標の達成度合いを明らかにしている。
  一方、定量的な指標が設定されているが達成すべき水準が数値化されていない目標(平成14年度の目標数は17)については、ほとんどの場合、「全体的な取組としては適正に実施されている」又は「概ね適正に実施されている」との評価が行われている。例えば、「年金受給権者に対し、適正な届出の周知等を確実に行うこと」という目標について、「平成14年度における庁の取組状況は、パンフレット配布数、説明会の開催数、その参加者数ともに前年度を上回る規模で各種届出励行の周知活動を実施しており、全体的な取組としては適正に実施されていると言える」と評価している。このように、掲げた目標に対する実施庁の取組状況については評価しているが、目標の達成度合いについては判定していない。

v5 ) 経済産業省は、前述2−(2)−ア−1)−iii3)のとおり、目標の設定及び実績の評価の実施方法、手順に関する明文の規程類は整備していないが、すべての単年度目標に定量的な指標が設定され達成すべき水準が数値化されており、この目標に対する実績を定量的に比較することにより目標の達成度合いを明らかにしている。具体的には、「特許・実用新案に関する早期審査・早期審理の申出から1年以内に一次審査結果の発送又は審決を行う」という目標(平成14年度目標)に対し、「一次審査結果を発送した4,024件のうち1年以内の処理件数は4,018件であり、99.9%が目標を達成した」と記述している。

vi6 ) 法務省は、公安調査庁の業務特性を勘案し、目標(平成14年度の目標数は2)については定量的な指標が設定されておらず達成すべき水準を数値化していないが、目標ごとの達成度合いの測定方法等を定めている。例えば、「観察処分の実施を通じてオウム真理教の活動状況を明らかにする」という目標について、教団の組織、活動の実態、危険性の解明度合い(基礎的な指標として、立入検査の実施状況(実施施設数、公安調査官の動員数、検査時間)を把握)に基づき評価することとしている。これにより、評価結果として、「立入検査などの実施により教団の活動実態を相当程度解明した」としている。

参考)総務省においては、「目標は達成されている」、「目標は達成されなかった」の2つのパターン化した文言を用いて評価結果を整理していた。

3)  有識者等第三者の知見の活用状況
  目標の設定や実績の評価について、客観性を確保し、評価の質を高めるため、有識者等第三者の意見等を聴く機会を設けているものは、2省(法務省及び財務省)である。両省は、次のとおり、いずれも、評価法第3条第2項第2号に基づき開催した各界有識者からなる政策評価に関する懇談会を活用しているが、その他の4省庁では、第三者の意見を聴取する機会を設けていない。
    i1 ) 法務省は、その政策及び政策評価の実施計画、評価方法等について、民間の有識者等の意見等を聴取するために開催している「政策評価懇談会」に、公安調査庁が達成すべき目標の内容及び実績評価結果を付議し、意見等を聴取している。

ii2 ) 財務省は、どのように政策評価を行い、活用していくか等について、各界の有識者の意見等を幅広く聴取するため、「財務省の政策評価の在り方に関する懇談会」を開催している。また、財務省は、国税庁に係る実績評価の客観性を確保し、評価の質を高めるため、国税庁が達成すべき目標及び実績評価結果を同懇談会に付議し、意見等を聴取している。そこで出された意見は、国税庁の実績評価書に「講評」として記載され、指標の見直し等に反映されている。具体的には、平成13事務年度の実績評価結果に関して、同懇談会は、「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収」という目標の達成状況について、「納税者に対するサービス提供に関する評価は、その方式また実績においてもおおむね良好であると考えるが、適正かつ公平な賦課・徴収については、指標を工夫する余地があるのではないか」、「滞納税額と併せて滞納割合の情報を指標とすべきではないか」との意見を付している。この意見を踏まえ、財務省は、平成15事務年度の「国税庁が達成すべき目標に対する実績の評価に関する実施計画」の策定に当たり、国税庁が重点的に取り組むこととしている滞納の圧縮に関する施策において、新たな指標として「国税の滞納発生割合」を設定するとともに、「滞納整理中の税額」に係る既存指標についても、新規発生滞納額と整理済額を新たに加える等の指標の充実を行っている。

  したがって、関係省庁は、実施庁に係る実績評価の的確かつ効果的な実施を推進する観点から、所管する個々の実施庁の業務内容を勘案しつつ、各省庁の実施状況を参考に、次の措置を講ずる必要がある。
1)   目標に関し達成する水準が明確にされていないものがある省庁においては、可能な限り具体的かつ定量的な目標の設定に努めること。
2)   目標の達成度合いの判定に当たっては、その基準を設定するなどにより、判定方法の明確化に努めること。
3)   目標の設定や実績の評価を行う際に、有識者等第三者の知見の活用に努めること。

(3)   公表等の推進
  実施庁に係る実績評価の実施により、国民に対する説明責任を徹底し、行政の透明性を確保するためには、各省庁が行った評価結果等を積極的に公表することが重要である。「行政改革大綱」(平成12年12月1日閣議決定)では、各府省において、実施庁の長に権限が委任された事務の実施基準等を定めて公表するとともに、実施庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を毎年評価して公表するとされている。
  実施庁に係る実績評価に関する情報を公表するに当たっては、国民に対する分かりやすさを確保するなど、国民の理解を得るよう努力することが重要である。このため、評価結果等の要旨を作成するなどにより、簡潔で分かりやすい形で公表することが望ましい。また、国民が情報を迅速かつ容易に入手できるようインターネットの活用による公表を推進するとともに、評価の実効性や客観性を高めるため、評価結果等に対する国民からの意見・要望を受け付ける仕組みを整備することも重要である。

  調査対象6省庁8実施庁について、事務の実施基準等、平成13年度から15年度の目標並びに13年度及び14年度の目標に対する実績評価書の公表状況等をみると、次のとおりとなっている。
1)   事務の実施基準等は、目標の設定及び目標期間の開始時期までに制定し速やかに公表することが重要である。6省庁すべてが、平成13年度の目標設定及び目標期間の開始時期までに制定し公表している。

2)   同様に、目標は、目標期間の開始時期までに設定し速やかに公表することが肝要である。6省庁すべてが、毎年度の目標期間の開始時期までに設定し、速やかに公表している。

3)   実績評価書は、目標期間終了後速やかに作成し、公表することが重要である。平成14年度の目標期間が終了してから実績評価書の公表までに要した期間をみると、最も短いものが1.5か月(国土交通省)、次いで3か月(防衛庁及び財務省)、約4か月(法務省)、約7か月(厚生労働省)で、最も長いものは約8か月(経済産業省)となっている。このうち、実績評価書の作成又は公表時期を定めている防衛庁、財務省及び厚生労働省については、防衛庁及び財務省が期限を遵守しているのに対し、厚生労働省は約5か月の期限を2年連続(平成13年度及び14年度)で約2か月超過している。
  また、実績評価書の要旨を作成し公表している省庁はみられない。

参考)総務省は、国民に対する分かりやすさを確保するため、実績評価書本文のほかにその概要(要旨)を作成し、公表していた。

4)   目標及び実績評価書の公表は、6省庁すべてが、インターネット・ホームページ(以下「HP」という。)への掲載により行っている。この他、記者発表及び来庁者への配付を行っているのは1省(財務省)、情報公開室への備置きを行っているのは1庁(防衛庁)である。

参考)総務省は、HP及び記者配布により公表していた。

i1 ) HPへの掲載に関しては、少なくとも目標の設定や実績の評価の実施主体である本省庁のHPへの掲載が基本であると考えられるが、経済産業省では、特許庁のHPにのみ掲載している(注)。
(注 )平成16年度から、本省HPに掲載している。

ii2 ) 国民が容易に情報を入手できるようにするため、実施庁自らのHPから本省庁のHPの該当箇所へのアクセスを可能としているのは、3実施庁(防衛施設庁、国税庁及び気象庁)のみである。また、同様の理由で、4省庁(防衛庁、法務省、財務省及び厚生労働省)では、政策評価と同一の箇所に掲載している(注)。
(注 )経済産業省においては、平成16年度から、本省HPの政策評価と同一の箇所に掲載し、特許庁HPからもアクセスが可能となっている。

iii3 ) 国民の実績評価結果に対する理解を促進するため、目標や評価書は複数年度分をHPに掲載し経年比較できるようにすることが重要である。目標について、複数年度分を掲載しているのは4省庁(防衛庁、財務省、厚生労働省及び国土交通省)であり、他の2省(法務省及び経済産業省)では、HPの容量の制約や、評価書において目標に対応する形で評価結果が掲載されていること等を理由に、最新の1年間の目標のみを掲載している。また、評価書について、複数年度分を掲載しているのは5省庁(防衛庁、法務省、財務省、厚生労働省及び経済産業省)であり、他の1省(国土交通省)では、HPの容量の制約を理由に、最新の1年間の評価書のみを掲載している。

5)   評価結果等に対する国民からの意見・要望の受付は、6省庁すべてが行っており、自らのHP上でその方法を明らかにしている。具体的には、電子メールによる受付は5省庁(防衛庁、法務省、財務省、厚生労働省及び経済産業省)が採用しており、他に電話が2省(経済産業省及び国土交通省)、郵便が2省庁(防衛庁及び経済産業省)、ファックスが3省(財務省、経済産業省及び国土交通省)となっている。
  なお、これまで、実施庁に係る実績評価に関する国民からの意見・要望の受付実績はない。

  したがって、関係省庁は、目標、評価結果等を公表するに当たっては、国民が分かりやすい情報を迅速かつ容易に入手できるようにするため、次の措置を講ずる必要がある。
1)   実績評価書の作成・公表の早期化を図ること。
2)   実績評価書の要旨の作成・公表に努めること。
3)   目標、実績評価書等のHPへの掲載に当たっては、複数年度分の掲載に努めること。
4)   その他、各省庁における目標、評価結果等の公表に関する工夫例を参考に、一層積極的な公表に努めること。

(4)   評価結果等の活用
  最終報告において、「政策立案過程への実施段階の情報の提供や問題点の反映が不可欠であり、一方、実施部門においては、政策の企画立案過程における意図と目的が十分に伝えられ、的確な行政の実施が図られなければならないこと。実施段階での実情や問題点の把握は、政策評価の一部と考えられ、これらの情報が政策立案部門に適切に提供される必要があること。」とされている。また、中央省庁等改革基本法第4条(中央省庁等改革の基本方針)において、政策の企画立案部門と実施部門の緊密な連携の確保を図ることとされている。このように、評価結果については、次年度の目標の設定に反映するとともに、政策の企画立案作業等における重要な情報として活用することが求められている。
  調査対象6省庁8実施庁について、平成13年度から15年度までの実施庁に係る実績評価結果等の活用状況等をみると、次のとおりとなっている。
  財務省では、「政策評価に関する基本計画」において、評価結果を政策の企画立案作業、目標の設定等に反映させるとの実績評価結果の活用に関する方針が明らかにされている。防衛庁では、「防衛庁政策評価及び実績評価実施要領」において、実績評価書の内容を踏まえ、防衛施設庁の業務の効率化を図ることとする方針が示されているものの、政策の企画立案作業等に反映させることについては示されていない。その他の4省(法務省、厚生労働省、経済産業省及び国土交通省)ではこのような方針は明らかにされていない。ただし、実績評価結果や目標の達成見通し等については、6省庁すべてにおいて、次年度の目標の設定に際しての重要な情報として活用しているとしている。
  また、当省が平成14年度の各省庁の実施庁に係る実績評価結果等の活用状況を調査した結果によれば、実績評価結果を、政策の企画立案、翌年度の予算要求や機構・定員要求に反映している例は4省(法務省、財務省、厚生労働省及び国土交通省)で6事例、政策評価に活用している例は2省庁(防衛庁及び国土交通省)で3事例となっている。

参考)総務省においても政策評価に活用している例がみられた。

  したがって、関係省庁は、実施庁に係る実績評価結果等の活用を一層推進するため、その方針等を明らかにした上で政策の企画立案部門及び実施部門への周知を図るよう努める必要がある。