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政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会(3月17日開催)議事録

日時

平成21年3月17日(火)14時00分から15時00分

場所

中央合同庁舎第2号館 総務省第3特別会議室

出席者

(分科会所属委員)
金本良嗣政策評価分科会長、森泉陽子委員、青山彰久臨時委員、上田孝行臨時委員、小峰隆夫臨時委員、佐藤主光臨時委員、白石小百合臨時委員、高橋伸子臨時委員、立花宏臨時委員、田辺国昭臨時委員、谷藤悦史臨時委員、中泉拓也臨時委員、森田朗臨時委員
(総務省)
関行政評価局長、新井審議官、渡会審議官、新井総務課長、松林政策評価官、杉浦評価監視官、羽室政策評価審議室長、新井調査官

議題

  1. 各府省が実施した政策評価の点検結果について
  2. 平成21年度行政評価等プログラムにおける政策評価テーマ等について

資料

会議経過

【金本分科会長】 それでは、ただいまから政策評価・独立行政法人評価委員会政策評価分科会を開会させていただきます。
 本日は議題が2つでございます。まず最初に、議題1の各府省が実施した政策評価の点検結果について新井調査官から御説明をお願いして、その後審議をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【新井調査官】 調査官の新井でございます。
 お手元の資料1を基に御説明差し上げたいと思います。
 まず1ページ目ですが、各省が行いました政策評価につきまして、総務省による内容点検ということで、下の流れ図で申しますと、各省が政策評価を実施し、その事実関係の把握・整理というものにつきましては、2月17日にこの分科会で中間報告をさせていただきました。その際にいただきました御指摘など踏まえましてさらに各省と議論を重ねまして、関係府省に対する通知・公表を年度内に予定しておりますが、本日最終報告ということで、改めてお諮りさせていただくということに至っております。
 内容について、2ページになりますが、本年度につきましては評価に疑問のある52件ということで11府省にまたがりますが、これにつきまして事実関係を整理し、改善の方向を指摘するということを考えております。
 まず公共事業につきましては22件となってございます。この内容ですけれども、総務省の指摘を踏まえまして、各省において改善措置が講じられるものが18件でございます。この中には、総務省が提示しました疑義につきまして必ずしも評価をやり直すということではないんですけれども、やはり専門性あるいは学術性というよりは一般国民が見た分かりやすさという点で透明性の向上を重視するということで整理をいたしたものを含んでおります。その18件は、ここにありますように需要予測の妥当性の疑義、評価方法の妥当性の疑義、データの信頼性の疑義、マニュアルの適用の妥当性の疑義といったものに分類されます。
 それから、4件につきましては今後改善を求めるとしておりますけれども、需要予測の妥当性、あるいは評価方法の妥当性につきまして、総務省が提示しました疑問点を各省と議論をいたしてまいりましたが、結果としまして見解の一致が見られませんで、ただし我々としてはやはりこの点検活動を年度内を目掛けてやってまいりましたので、この時点で両者の見解をいわば両論併記をいたしました。ただ、そこに対して今後の対応方針というものをお示しして、また今後分科会とも御相談しながら引き続き各省に改善を求めていきたいというものが4件ございます。これは例年と比べますと初めての扱いになりますが、今年度はこういうことでお諮りをしたいと思っております。
 また一般政策30件ですが、これは中間報告で付議させていただきましたものすべてにつきまして、総務省の指摘を踏まえて改善措置が講じられるとなっております。内容は、目標の達成度合いに対する原因分析、あるいは指標の設定といったものであります。
 今申し上げました指摘を踏まえて改善措置が講じられるものにつきましては、中間報告でも申し上げておりますので、基本的には一番下にあります、それらから見出されました一般的な課題の整理を行っておりますので、最後にどのような課題があったかということをまとめて御紹介させていただきたいと思っております。
 一方、今後改善を求めるものという4件について、御説明をさせていただきたいと思っております。
 資料1の18ページをおめくりください。こちらに今後改善を求めるもの4件を掲げております。
 ではまず第1点目の水道水源の開発施設整備ということで、北海道の当別ダム。これは厚生労働省の補助事業になります。こちらにつきましては、中間報告で申し上げました疑問点といたしまして、札幌市の給水人口が平成32年度以降減少に転じる一方、1日当たりの需要水量が平成47年度まで増加し続けるという予測になっております。このラグというものにつきましてやり取りをしたんですが、結果、厚生労働省としては、1人当たりの1日使用水量が増加し続けるということでこのような推計をしているということが分かりました。
 ただ、その推計につきまして我々が見ますと、過去30年の実績値を用いているということになっておりますけれども、近年の実績値というのは増加幅が大きく減少しているということが見受けられます。厚生労働省はべき曲線式を用いて引き続き増加するという推計を行っているわけですが、このべき曲線は過去30年のうち最初の20年間はある程度伸びが見られるんですが、ここ10年は増加幅が鈍化しておりまして、むしろ減少している年もあります。また、実際の実績データによると、平成12年、13年辺りは減少しています。このような最近の減少トレンドではカーブも相当変わっておりますので、前の20年と足し合わせて推計しますと、やはりゆがみが生じるのではないかと。
 実際にはこの10年間の一人一日使用量は増減を繰り返しており、これに対し厚生労働省は、べき曲線式ですと、この10年間については値ごとの相関係数が非常に低い値になってしまう、したがいまして10年でこの推計を行うのは困難という回答ですが、やはり我々が見ますと、このような変化をたどっている以上はそのような考え方をとるのはむしろ困難であり、一定期間をとりましてその平均値を用いて直線で伸ばすというやり方で行く方が妥当なのではないかと。その方が最近の傾向を的確に反映しうるのではないかという問題意識を持っております。
 ただ平均値をとる際にどの幅をとるかによりまして推計は変わってきます。厚生労働省としても核家族化の進展で1世帯当たりの水道水量が増加するという全国的な傾向があるとしておりまして、必ずしも横ばいになる、あるいは減ると断じ切るのは今の時点では困難かと思いますが、いずれにしても我々としてはこの最近の傾向を踏まえた分析を行っていただきたいということを申し上げたいと思っております。
 厚生労働省からはその検証は進めることとしたいという回答が得られておりますが、依然としまして明確な回答が得られておりませんので、今後の対応方針にありますように、この推計方法についてさらに検証を進め、必要な改善を行うことを求めるということで行きたいと思っております。
 第2点目ですが、農林水産省の海岸保全施設、高潮対策の整備事業です。これは福島県の村上地区になります。村上海岸は、県の東岸のやや北部に位置しております。この海岸につきまして、今回の評価におきましてはいわゆるCVMで海岸利用便益というものをとっているんですが、事前調査が行われていませんで、その上で県全域をアンケート調査の対象としております。非常に広範な範囲になっているということもありまして、我々はこの点で問題意識を持ったわけです。
 まず、先ほど集計範囲が福島県全域ということが論点だと申し上げました。これが第1点。第2点は、アンケートの設問においてこの計画が実施された際「あなたは1万円であれば寄付をしてもよいと思いますか」という聞き方をしている点。これはやはり慈善バイアスがかかるということがよく言われておりますので、やはり慎重に対応すべきであったのではないかというのが、第2の論点でありました。
 これを農林水産省と議論いたしまして、まず右側の「各府省の見解」というところの一番上にありますが、CVMによる調査の実施に当たりましては、事前調査あるいはそれに替わる既存の調査事例を参考にするという仕方につきまして、費用便益分析指針ではそのような考え方が示されているのですが、運用に当たりましてそれが不徹底であったということが、今回のような事例につながった面があるのではないかということで、今回のやり取りを踏まえまして、今後このような点に留意するように関係部局に対して周知徹底をしたいという認識を示されております。
 ただし慈善バイアスがかかる点につきましては、先ほど見ていただきました下に「この寄付によりあなたの家計に使えるお金が減ることをお忘れなく」という注意がしてあって、一応慈善バイアスの回避の配慮がなされているということです。それから実際にアンケートをした結果を見ますと、この村上海岸を福島県内で知っていて、かつそこに行ったことがあるという人の割合は全体で62%。これを高いと見るか低いと見るか、我々は事前調査を行っていないことからしますと必ずしも高いとは断定できないとにらんではおりますけれども、農林水産省としては、利用者が低調とまでは言えないのではないかということを言っております。それからこの海岸整備事業につきましては、実際に防波堤ができましたら海岸の浸食防止効果も見られますので、仮にこのCVMの海岸利用便益を除いたとしましてもB/Cが1を下回ることはないということで、一応農林水産省サイドとしては、今後の改善をきちっとやっていきたいということは示されております。
 我々としても、このようなやり取りを通じまして最終的に今後の改善が示されましたことは重要なことだと思っておりまして、本件につきましてはやり直しを求めるというよりもむしろ、この改善の状況をきちっと注視していくことが、より実質的にこの改善につながるという面もあろうと思いますので、これにつきましてはどのように改善をするのかということをきちっと注視していく、あるいは分科会にも注視いただくというところが重要ではないかと思っております。
 3点目ですが、国土交通省の太田川水系の直轄総合水系環境整備事業でございます。  これにつきまして、実際の環境効果ということをアンケート調査でCVM手法を用いております。実際の調査票の中では「この写真を見て回答してください」というコーナーがあり、マリーナについて「整備概要と期待する効果」ということで写真が4枚付されております。そのうち2枚について、ここに期待する効果といたしまして、洪水時の流れを阻害する船がなくなって、広島市街地の治水安全度が向上するということで、環境効果というよりは治水安全度、治水効果ということが記されていると。これを基に支払意思額を回答することになりますと、ある程度それを踏まえた形で回答することになるのではないかと考えております。
 この評価につきましては、我々の疑問点の一番下の段落になりますが、治水効果につきましては別途、確率規模ごとの被害額から年平均の被害軽減期待額という形で算定されておりまして、そうしますとCVMで再び治水効果に相当する便益が含まれて算定されているということは、重複して算定されることになるのではないかということで、我々としてはこのアンケート調査票の設計を改善すべきではないかという問題意識を投げ掛けたわけです。
 国土交通省としましては、今回のCVMアンケートは環境整備に関するものだと明記しておりますし、治水効果として求めたものは今回のこのCVMでの安全度と重複しないと言っておりますが、我々としてはその点は解明されていないと思っておりまして、やはりこのアンケート調査票に関する改善を求めていく必要があるのではないかと思っております。
 もう1点、熱海港の海岸整備になりますが、これも国土交通省の関係です。今回評価では渚地区と多賀地区の2地区が対象となっておりますが、渚地区は市役所に近い観光地なんですけれども、南の多賀地区は相当落ち着いた、周辺住民が利用する海岸です。この多賀地区が参考にしたという渚地区ですが、そのアンケートで実際に出た値は596円という支払意思額として出ました。これを聞くに当たりまして、200円から3万円までの幅で刻みをつくって設定をした上で数パターンで聞いておりますので、このような値が出たということです。しかし、それを参考にしたという今回の多賀地区は、実際には5,000円、1万円、2万円という1パターンの設定のみであります。最初の提示額は1万円ということですが、渚地区の提示額200円から3万円のちょうど中間に近い値ということで参考にしたというのが国土交通省の言い分です。しかしそのような大幅な刻みでは、実際に596円という渚地区の平均値をとるには近似していないのではないかと。実際に出た結果も6,559円になっております。この点、やはり適切に参考にしたとは言えないというのが我々の問題意識なんですが、国交省としては、実際の利用実態が違うので結果が違うのはしょうがないと言うんですが、それであればやはり参考にはしがたいのではないか、やはり元に戻って事前調査をしっかりしていただくことが必要ではないかというのがこの件の問題意識でして、その点の改善が必要と思っています。
 以上4件が、今後対応を求める案件であります。
 最後に39ページ、40ページに、先ほど申し上げました各事例から見出されます一般的な課題というものを整理しております。
 公共事業につきましては、便益算定の前提となります需要予測の現実性、あるいは前提条件のフィージビリティーというところが今回課題として見られたかと思っております。
 それからやはりCVM手法。今見ていただいた4件のうち3つを占めておりますが、これにつきましては精度の厳格性を確保することが重要ということが求められていると思います。調査範囲、支払意思額の設定、質問方法というところを中心に、ここを引き続き改善を求めていくことが必要と思っております。あとはデータの算定範囲といった問題もあろうと思います。
 一般政策につきましては、評価の設計時点におきましてその指標の設定。単にどのような政策を実施したかということだけではなくて、その政策効果が把握できるように設定をする。それから目標の設定も、関連する政府の計画と整合性のとれたものにする。改善はなされておりますけれども、類似事業でもやっていただきたいと。それから評価時点におきまして目標が未達成の場合、原因分析が不徹底なものが多かったと思われます。
 こういった点を中心にこの課題も共通的に提示をいたしまして、全体の評価の底上げも図ってまいりたいと思っております。
 以上、御説明をした内容で、年度内に通知・公表するものはし、引き続き分科会と御相談するものは注視をしていくということで進めさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【金本分科会長】 どうもありがとうございました。
 それではただいまの御説明につきまして、御質問や御意見をお願いいたします。
 1つ気付いたんですが、非常に大きなバイアスを生じるのが、アンケート調査をするとサンプルで幾らというのが出てきますが、それにどれだけの地域のどういう人口を掛けるか、その掛け算のところでどういう範囲をとるかで、すぐに10倍ぐらいに跳ね上がることがあります。この辺はきちっと明示をしておいた方がいいのかなと思います。

【新井調査官】 共通課題のところでも。その辺は含めさせていただきます。

【青山委員】 専門家ではないのでもしかしたら印象論になるかもしれませんが、2つほど思ったんですが、この4つの案件は特に、初めて意見が衝突したということで注目をしてよく読んでみたんですけれども、やはりCVM、仮想市場法の運用の仕方が本当に確立されているのかどうか疑問だなという印象を受けるんですよね。これを濫用する場合、B/Cの数値をかさ上げする技術に転じてしまうものだろうなと思います。国土交通省、農林水産省はCVMを取り入れる基準をおつくりになっているんでしょうが、これが本当になじみ、定着している技術なのかどうなのか、かなり疑問じゃないかなと思うので、むしろ極端なことを言えば、これは補助資料として考えるべきものであって、本当にB/Cの中に入れ込んでいいのかどうかと思うぐらいなので、この先行政評価局も、現実に事例がたくさん起きてきているわけだから、それを分析しながら研究する必要があるんじゃないかなと思いました。
 もう1つ。今度はちょっと難しい話で、先生方にちょっと御意見を聞きたいんですが、この指摘を受けている事業で、言うことを聞いたところと言うことを聞いていないところと両方合わせてみても直轄事業は非常に少なくて、補助事業になっているわけですよね。評価者はそれぞれ国土交通省とか農林水産省という表記になっているんですが、実態は事業主体である地方自治体が評価をして、それを認める形で窓口になってやっているという形態かと思うんですが、ここが非常にややこしいんじゃないかと思います。国の税金を使う使途についての意味では、それぞれの各省が3分の1でも説明責任を負っていると思うんですが、事業全体の責任は地方自治体が負っているわけですよね。問題は、地方自治体は責任持ってやっているが、各省は実はやっていないわけですね。その場合、総務省から疑義が挟まれて意見が違った場合、全く政策評価上の問題であるならばそれはいいと思うんですが、実は物の考え方の違いでずっと対立した場合、だれがどっちに従うものなのかということになりかねない。本当ならば評価を実際にやった地方自治体と総務省行政評価局が直接話ができれば一番いいでしょうけれど、そんなことはこの筋から言えばあり得ない。ということになると、非常に面倒くさい問題を本当ははらんでいるんじゃないかなと。昔の総務庁行政監察局のときにはそう大きな問題にならなかったような気がするんですが、評価をするという主体のことを考えると、ちょっとややこしい問題じゃないのかなと。
 言ってみると、やり方とすれば、こういうふうに意見が対立した場合は、もちろん最終的には国が補助金を引き上げるということがあると思うんですが、そういう混乱を避けるとするなら、この先の課題として理論的に考えれば、総務省の評価は直轄事業に限定すると。これが難しいのであれば、少なくとも費用の2分の1以上出している、主体責任を持っている事業に限定するというやり方も多分あるかなと。あるいはそれもなかなか実態に合わないとなれば、仮に事業の3分の1を出していても自分たちでちゃんと、それぞれの農政局なり整備局がきちんと、自ら責任を持てるように評価するということも考えられるような。難しい問題ではないかと思うんですが。

【金本分科会長】 多分その問題は整理できていると思います。事務局の方から言っていただいた方がいいかもしれませんが。

【新井調査官】 評価法上の補助事業が取り上げております考え方ですが、評価法上の対象機関というのは国になっているわけですけれども、国としてその事業に対して補助を行うことの妥当性があるかどうかを評価するのが、この国として評価を行う意義になろうかと思います。そうしますと、実際に補助を行う立場でその事業の効果、これはやはり全体を見ないといけないわけですが、これにつきましては実際に自治体で行われております一時的な評価の活動を活用しながら、最終的には国の責任で補助を行うかどうかを判断するということに、最終的にはなるんだと思います。
 ですから、国として補助をするかどうかの問題になりますので、それ以上の元の事業をどうするかというのは、別途事業主体である自治体の判断なので、一応そこの責任としては切り分けて整理がなされているというのが、評価の整理ということではございます。

【金本分科会長】 要するに、本来補助をやる省はちゃんと審査をして、費用便益等々をやる責任がある。で、それをちゃんとやっているかどうかをこちら側で見ていくと。そういう話になります。
 それが適正でないとなるとどうなるかというのは、最終的な場合は補助を取りやめということになり得て、その場合は地方がやりたければ地方単独でやると。そんな話ですね。

【青山委員】 よく分かりました。1点だけ確認すると、例えば今度の案件でいくと、福島のケースと静岡のケースですよね、補助事業の場合でいくと。これはそれぞれの出先機関の整備局なり農政局が自ら、自分でこの事業について独自に評価をしていたんですか。いないですよね。

【金本分科会長】 いや、それは補助を出す場合に地方公共団体から評価を、こういうマニュアルに従って評価をせよと言っていて、それが出ているんですね。それを見て審査をして、補助をつけているはずだという話になります。それをちゃんとやっているかどうかというのが我々の見ている部分です。

【青山委員】 分かりました。
 1点だけ、もう1回言うと、行政評価上の技術の未熟で修正されるのは、私はそれはそれでいいと思うんですよね。ただこの福島のケースを見ていると、CVMの範囲が広過ぎるんじゃないかという御指摘ですよね。本来はもっと地元に便益が固定するんだから、分母を小さくした方がいいんじゃないかという議論になりますよね。そのとき非常に面倒なのは、福島県庁とすれば県庁のお金を使うんだから、ただ単に1つの町のためにやるんじゃないんだという意識がもし働けば、そういう大きな分母にしてしまうということがあり得るんだろうなと思ったんです。問題は行政評価上の技術の問題だけじゃなくて、ちょっと話を混乱させてしまうかもしれませんけれども、今の国と地方の財政関係から見てそれ以外の、何て言うんですか国に従わなきゃ事業はできないからということでやっていった場合、そうしたら各自治体がやっている行政評価の主体性とは一体どういうことになるんだろうということを、やや想像したわけです。

【金本分科会長】 国は補助事業の採択基準というのをいろいろ出していまして、国なりの立場でこういう具合に評価をして出しなさいと言っているはずなんですね。公共団体はそれなりの立場で判断をしているかもしれない。でも補助事業でやるのならば、国の基準で計算をしたものを出さなきゃいけない。それが国としてオーケーならば補助を出す。そういう話になっているわけですね。ですからこの辺は完璧に整理ができていると、私は思っていますが。

【青山委員】 これ以上言いませんけれど、1点だけ言うと、さっきも言ったように3分の1の財源しか出さない人がすべてのことに強い権限を持つというのは、今までの日本がさまざまな社会基盤整備を一生懸命やった時代ならばそれはそれでよかったと思うんですが、この先、3分の1の財源でそこまで言えるのかという議論がこれから出てくる可能性があるのではないかと思うんです。

【金本分科会長】 いや、それは3分の1が要らなければ地方で単独でやればいいという話で、3分の1が欲しければ出しなさいと、そういう話にすぎないですよね。それで地方から出してこなくなれば補助金も必要なくなって、補助の予算項目もなくなっていくと。
 最初の点について、事務局から。

【新井調査官】 最初のCVMの御指摘につきましては相当、やはりまだまだ改善が必要ということで、各省におきましてもマニュアルの見直しですとかそういったことが進められているということは承知しております。我々としても正にそういう観点で、今年度の内容点検も少しシリーズ的といいますか集中的に取り上げていることもありますし、やはり引き続き各省の見直しの動向も踏まえながら、今後の点検活動ですとか、あるいは各種のレベルアップのための研修ですとか、そういう場もございますので、そういった場で我々なりに、それは国も地方公共団体の人も対象にしてやっておりますから、そういった形でもこういった問題点が伝わるように、場を活用して進めていきたいと思っております。

【金本分科会長】 CVMで一番難しいのは、幾ら払う意思があるかと聞くだけで、これが本当に正しい回答になっているかどうか、本当に払ってくれるかどうか。8,000円と出ているとき、本当に払えと言ったとき8,000円払うかということを確かめる手段がないんですね。ほかのいろいろな手法ですと、研究を積み重ねていけばこれがどの程度正しいかというのが原則として可能だと。もちろん実際にはほとんど難しいんですけれども、そういうふうに迫っていくことは可能だということはあるんですね。CVMの問題はそれが原理的にできない。ですからこの数字が正しいか正しくないかということについても、最後のところは胸に手を当てて、これがリーズナブルかどうかと聞くしかない。そういうところが一番の弱点になります。
 それを前提にどう考えるかというのはなかなか難しいところで、補助資料にとどめるというのも1つの見識ですが、ただ、それをやると全然評価できないものがたくさん出てくる。そういうものは無視していいのかということになると、またいろいろな議論が出てくるというところで、まだきちんとした見解が出ていない状況かなと思います。

【青山委員】 直観的にこれを見てちょっと気になるのは、例えば実際には寄付でつくる施設でもないのに、寄付という言葉を使う。本来財政資金ってそういうものじゃないですよね。そこは非常に割り切れないんでしょうけれど、極めてアメリカ的な考え方だなと思います。税金と寄付というのは根本的に違うわけですね。自発的に払うものと強制的に取られる金を政治が配分するものという、本当は決定的に違いがあるような気がするんですが、あまりにも分かりやす過ぎる表現を使うことによって、まるでこれが寄付でできる、あるいは利用料金だけでできるんじゃないかという誤解を生むんだろうなという印象を持ちました。私は専門家じゃないのでこれ以上もう言いませんけれど。

【上田委員】 ほかの先生が説明されるかもしれないので、先に私が先走って言わせていただくと、今言われたCVMには幾つかの聞き方がありまして、「寄付で」という場合と、「今納める税金は変わりません。その中でこれにお金を使うと、別のものに使えるお金がなくなってサービスが落ちたりしますよ。それでもあなたはこのプロジェクトに対して、今払っている税金の中から幾ら分そっちに振り分けていいですか」と、そういう聞き方もありますし、いろいろな聞き方のバリエーションがあります。ただ「寄付だけ」の方はどうしてもみんなが想像しやすいものですから、実際に現場でCVMをやるときにはこの簡単な聞き方が一番使われているんだろうとは思います。
 先ほどバイアスといいますか随分ずれがあって、公共事業を、便益をよくしてどんどん正当化するのに安易に使われないかというと、その可能性は当然あります。一方で逆に過小評価になっている場合もあります。環境被害だと。今度は環境の被害を過剰にみんなが答えてしまうと、本来やるべきプロジェクトが過剰なバイアスによって逆に否決されてしまうという可能性もあるわけですね。
 ですからCVMは基本的には聞き方で、先ほど金本分科会長が言われたように交通とか土地の値段がどうだというと、ドンピシャではないですけれどある程度第三者が後で客観的に観測したもので検証ができる。CVMもある方法であれば、全部ができないわけではないと私は思っていますけれど、やり方によっては例えば「幾ら払ってあなたは使いますか」という聞き方をしたら、実際にその施設なり公園なり、場所を使った後の実体的な数字と合わせれば、ある程度の検証ができる方法は多分あるだろうと思います。
 ただほかの方法が絶対いいとは言いませんが、どうしても計測のやり方で非常に敏感なものですから、参考値というよりは、我々国土交通省のマニュアルを検討したときも、やはりほかの今までの実績で信頼性の高い方法が使えるのであれば、まずそちらをやりましょうと。で、かなりいろいろなものを検討したいけれどお金もないし、参考値とは言わないけれどある程度の数字や情報が欲しいというときは、CVMを可能な限り丁寧にやってくださいと。
 ただCVMは、大体相場にもよりますけれど、1人分のアンケートをとって最終処理するまでに、今は大分単価が安くなっていると思いますが、1つ個票をとって分析すると大体1万円前後かかるんです。ですから十分なサンプル数を数百とってCVM調査を1回やると、これだけで数百万から1,000万円かかってしまう場合がある。そうすると地方であまりそういう調査予算を持たないところでは、なかなかそれだけ十分なことをやらずに、やはり安かろう悪かろうの調査になってしまうと。その傾向はあります。
 それから、先ほど地方の評価と中央の評価という議論をされましたが、それについても私は基本的にさっきの議論はそのとおりだと思うんですが、ただ実際の評価の計算とか手法の問題で言うと、地方自治体では中央省庁のこういうマニュアルどおりでうるさいと言われても、私が見せていただくと、表面上はちゃんと要求された数字が出ているけれど、やり方としてはかなりいい加減といいますか、さっき言った安かろう悪かろうで、本当なら何百万かかけて計算しなきゃいけないところを、多分役所の中の若い人が電卓はじいてやっちゃったんじゃないかなという程度の、非常にレベルの違いやばらつきがあって。そういう意味ではある程度クオリティーの高い調査なり評価を要求するのであれば、地方の隅々まで十分な調査や評価ができるだけの、調査のための予算が確保されることが必要だろうと思います。

【金本分科会長】 今の寄付がどうこうという議論になっているのは、「幾ら寄付しますか」という聞き方はあんまりよくないというのが大体定説になっていて、これをつくるには犠牲にしなきゃいけない何かがあって、そういったものを2つとか幾つか並べてどっちを選びますかと。そういった格好で、特にこれには幾ら払うかというのでない聞き方をした方がいいというのが大体の定説になっています。
 もう1つは、税金でどうこうと言うと寄付よりももっと高めに出る。税金は自分が払うと思っていない人が多いということなので。そういったいろいろな議論がございます。
 そのほかに何かございますか。

【田辺委員】 2点ございまして、CVMの議論というのは今おっしゃっていただいたとおりだと思いますけれども、これをいつ使うべきなのか、簡単に言うとできるだけ使わないでできないかということで、CVMの精度自体を上げることよりも、ほかのやり方でやった方が早い場合が結構多いと思いますので、環境価値だけは仕方がないのかもしれませんので、もう環境価値みたいなところに限定して、ほかのものはほかでやると、ダブルカウントしないようにというところは、もう少し明確にしておいた方がいいのかなというのが1点目です。
 2点目は、改善を求めるものの1件目のところでございますけれども、これは簡単に言うとトレンドで推計しているだけですので、そのトレンドがどういう形で構成されるのか。逆にいうと過去の1人当たりの平均の上限額というのは、トレンドだけじゃなくて例えば生活の別の、何で増えたかとか分解すれば出てくると思うので、それを将来にはこういう需要があるからという形で積み上げてできるのではないのかなと思っています。
 1つはこういう形でトレンドを使って、しかも30年で伸びるところでやられていて、それが全国マニュアルの中に入っているといたしますと、切るとは言いませんけれど、全体としてかなりの底上げになってしまいますので、そういった点も考えていただければと思います。トレンドがどうこうの部分よりも、ほかのやり方で将来推計をやった方がいいのではないかというのが、この部分です。
 それから2番目は、将来にかかわることですから、簡単に言うとどうなるか分かりませんので、1つのこの値だけじゃなくてやはり複数出しておいて、これのときはこう、これのときはこうと。それでB/Cを計算して、これでもクリアしていますよという形で出した方が、将来推計で不確実が高い場合にはいいのではないかなと思っています。そういった点で一般的な方向として打ち出せるんでしたら、お願いしたい点でございます。

【金本分科会長】 それでは年度内に通知・公表すべきものは準備を進め、今後改善を求める4件については来年度、分科会で各府省からヒアリングを行いたいと思います。そのほか何かございますでしょうか。
 それでは次の議題に入らせていただきたいと思います。平成21年度の政策評価テーマ等についてということで、事務局から説明をお願いいたします。

【新井総務課長】 それではお手元の資料2「平成21年度行政評価等プログラムにおける政策評価テーマ等について」というもので御説明申し上げたいと思います。
 1ページめくっていただいて、ここに出ているものは前回お示ししたものと同じでございます。政策評価につきましては、平成21年度に実施するものとして児童虐待の防止、平成22年度・23年度の実施予定のものとしてヒートアイランド対策、食育の推進、法曹養成と、この4本を提示しているところでございます。また、行政評価・監視としましては、その下に8本を御紹介したところでございます。
 前回の分科会で御審議いただきましたが、その後関係方面とも調整を行い、またそれぞれこれら政策評価、行政評価・監視のテーマについて、2月24日から3月10日の間におきましてパブリックコメントに付したところでございます。パブリックコメントの結果といたしましては、政策評価関係について申し上げれば、食育の推進について1件、法曹養成について2件、行政評価・監視関係では4件の御意見があったところでございます。
 食育の推進に対する御意見といたしましては「国が税金を使ってまで推進する施策なのか疑問であり、厳しくチェックをすべき」という御意見でございました。これは評価の設計の話ということでございまして、我々としてもそういった費用に見合うような効果が出ているかといった観点からも評価を行ってまいるよう、設計していきたいと考えているところでございます。
 それから、法科大学院の教育と司法試験等との連携等、いわゆる法曹養成の関係に対しましては、2件の御意見がございました。要約いたしますと、1つは、関係機関が連携して制度の改善、充実に取り組んでいるというところであり、評価のタイミングとしては時期尚早ではないかという点。それから効率性という観点から評価を実施することは、教育への影響が懸念されるので、評価方法については慎重に検討すべきではないかという点。それから法曹養成は、法科大学院と司法試験だけではなくて、司法修習とか資格取得後の研修といったところまで視野に入れながら検討すべきということで、もうちょっと広い観点での議論が必要ではないかという御意見でございました。
 これらにつきまして、いろいろ検討の余地はあると思います。ただ、この法曹養成の関係につきましては、平成21年度に評価を実施するという予定ではなく、22年度・23年度ということでございますので、今回いただいた御意見、御懸念といったものを十分念頭に置きまして、今回の行政評価等プログラムに掲載しますが、さまざまな方面からまた御意見を伺いながら、評価の内容、実施時期といったものについて引き続き検討してまいりたいと考えているところでございます。
 今回この分科会を経まして大臣の決裁をいただきましたら、この内容につきましては行政評価等プログラムということで公表する予定でございます。また前回も申し上げましたが、それぞれのテーマの具体的な評価の設計はまだいろいろ検討中でございますし、これから詰めていくところでございます。実際に評価するタイミングが近くなったところで、さらに詳細な評価設計につきまして御説明の上、御意見を承り、評価を行っていきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

【金本分科会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明につきまして御質問とか御意見がございましたらお願いいたします。

【田辺委員】 前回も意見を申し上げさせていただきましたが、この法曹養成制度に関しては難しいのではないかなと思っています。お考えいただきたい点というのは、この行政評価局の評価として行うということと、ほかでもいろいろ評価のフレームがありますので、そこで行われていることとの間の関係をどういう形で考え、整理するのかということでございます。要するにほかのところで評価を出されているものに関してもう1回出てくるということが、評価資源の効率的な利用になるのかどうかといった点は、お考えいただきたいと思っております。
 2番目は、この政策評価がどこまでとは言いませんけれど、何が適切であるかということでございます。例えば教育の中身に関して手を突っ込むとなりますと、行政評価局で行うよりはむしろピアレビュー等を通じてやった方が効率的であるし、また生産的であろうと思われるわけであります。ある意味では出ていかない方がいいものという部分を、今後の選択の場合にもいろいろ影響があるかと思いますので、ある種の規範としてお考えいただきたいというのが2番目でございます。
 それから3番目は、行ってどうなるかという部分だと思うんです。行うからにはまず評価としていいものを出すというのと、別に評価のために評価を行うわけではありませんので、次の制度改革に結びつくことなのだろうと思います。法曹養成に関して言うと、あまり私がこれに賛成でないのは、おそらく今月の末ぐらいに、今の何校かある中で個別の評価が行われていますので、ここのところは不適格だよという情報がもう出るわけですね。それと同時に定員の改正というのもおそらくは進行すると。それが終わった後で今まで行ってきた評価情報を出して何が直せるかというと、既に直されている可能性がありますので、タイミングでいうと制度改革に向けて最も、ある意味では情報がいかされる部分、タイミングというものをできるだけお考えいただきたいということでございます。
 以上、3点ほど意見を申し上げさせていただきました。

【金本分科会長】 事務局から何かありますでしょうか。

【新井総務課長】 ただいまいただいた御意見も踏まえまして、また考えてまいりたいと考えております。行政評価局が行う評価について、出ていかないようなところもおのずから出てくると思いますので、何が評価できるのか、何が役に立つのかということも含めて考えてまいりたいと思います。

【金本分科会長】 そのほかございますでしょうか。

【青山委員】 児童虐待は新年度からやるということ、やりたいということですね。

【新井総務課長】 スケジュール的には、これから評価の設計を行いまして、大体本年の12月ぐらいから本格的な本省の調査、それから地方を使った調査ということを考えておりまして、これから設計を行うという段階でございます。

【青山委員】 私は大変いいことだと思うから言うのですが、一般論ですけれども、この児童虐待を受けている、あるいはせざるを得ない階層というのはもともと政治的な発言力が非常に弱いところなので、相当意識的に現実をすくっていかないと本当のことが見えてこない問題だと思うのですね。私たちの知る限りは、この法律ができて建前はいいのですが、児童相談所がほとんどパンク状態になるぐらい、養育拒否というかネグレクトがものすごく進んでいると。私などが取材している限りでは、とにかく命の危険があるかないかを聞いて、すぐ死なないとなれば後回しとなるぐらいに大変な事態が進んでいるようです。ですから、言わずもがなかもしれませんけれども、実態に迫るというか現実に何が起きているかという努力、その把握に力を尽くしていただきたいなと。なぜなら児童虐待しちゃいけないよという啓発活動などしても、それが効果があるかないか、これはどうでもいいことというか、もっと言えばその啓発を受けるよりも、したくなくても虐待をせざるを得ないところまで追い詰められている階層が非常に多いということなので、むしろその救済のところ、本当に救済ができているのかどうかというところにしっかり着目をする必要があるのではないかというお願いをしておきたいと思います。

【新井総務課長】 これから設計する段階でございますので、いろいろな方面の御意見を聞きながら進めてまいりたいと思います。

【佐藤委員】 食育なのですが、これはほかの3点と多分ちょっと違うので。現状を把握するというのがほかの3点のスタートポイントだと思うのですけれども、こちらの食育は、どちらかというと追いかけていかないと、食は健康状態だとか生活習慣にどんな影響を与えるかということですから、これは具体的にどんなアプローチを考えていらっしゃるのか。何かサンプルを拾ってきて、あるいは過去の研究か何かのサンプルを拾ってきて、その追跡調査みたいなことを考えられているのか。何か具体的なアプローチというのを、教えていただければ。

【杉浦評価監視官】 食育に関してはおっしゃるとおり、サンプル調査等を行っていくのももちろんあると思うのですけれども、これはあくまで政策評価として行う場合、各省が既に講じている施策がきちんと効果を発揮しているかどうか。先ほどのパブリックコメントにもありましたように税金を使ってやる価値があるのかどうか、もしくは効率的にできているのかどうか。こういう追い方をしてみたいと思っております。

【金本分科会長】 そのほかございますでしょうか。
 それでは、時間でございますのでここまでにさせていただきたいと思います。
 次回以降について、事務局から御説明をお願いいたします。

【松林政策評価官】 次回、年度内最後になりますけれども、3月27日金曜日の午後4時からこの場所で、平成20年度の重要対象分野の評価設計につきまして、関係府省からヒアリングを行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【金本分科会長】 それではこれで分科会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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政策評価分科会
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