不動産登記申請書添付書類の還付手続における悪用防止処理された印鑑登録証明書のコピーの謄本としての受理(概要)

《行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえたあっせん》

あっせん日:平成11年1月29日
あっせん先:法務省

 総務庁行政監察局は、下記の行政相談を受け、行政苦情救済推進会議(座長:茂串 俊)に諮り、その意見を踏まえて、平成11年1月29日、法務省に対し、改善を図るようあっせん。
 行政相談の申出要旨は、「不動産登記の手続においては、登記申請書に印鑑登録証明書等必要な書類を添付して申請を行うこととなっており、添付書類の原本は、審査終了後、その謄本を提出し還付を受けることができる。しかし、印鑑登録証明書については、複写したとき「無効」の文字が写し出されたコピーを謄本と認めてくれず、原本の還付が受けられない。このようなものも謄本と認め、その原本を還付するようにしてほしい。」というもの。(行政相談委員意見)
 当庁のあっせん内容は、行政苦情救済推進会議の意見を踏まえ、印鑑登録証明書の還付手続においては、「無効」の文字が写し出されたコピーについても、これを謄本と認め原本を還付する方向でその統一的運用を図るよう求めるもの。
資料

1 不動産登記申請手続

本申請 原本還付請求
1.登記申請書及び添付書類(原本)の提出 添付書類の謄本の提出
2.登記申請書等の審査 原本と謄本の内容が一致していることの確認
3.登記簿への申請内容の記載 謄本に原本還付した旨の記載、捺印
4.登記申請書等の保管及び登記済証の交付 原本に代えて謄本の保管及び原本の還付
(注) 申請者又はその代理人は、添付書類の謄本に、原本と相違ない旨記載し記名捺印することとされている。

2 原本還付に係る法務省の見解

 法務省は、昭和40年に、登記義務者の印鑑登録証明書の原本還付について、複写機を用いて作成したコピーを謄本として提出して、原本還付の請求があった場合、これを認めて差し支えない旨の見解を示している(昭和40年7月7日地方法務局からの照会に対する民事局長回答)。しかし、「無効」、「複写」等の文字が写し出されたコピーが提出された場合の原本還付の取扱いについては見解が示されていない。

3 印鑑登録証明書の原本還付の取扱状況(全国の13登記所を抽出調査)

(1)  「無効」の文字が写し出されたコピーを謄本と認めて原本を還付する:10登記所
(2)  「無効」の文字が写し出されたコピーを謄本と認めず原本を還付しない:3登記所

(原本を還付しない理由)
 「無効」の文字が写し出されたコピーについては、謄本としての有効性が否定されていると判断したこと。
 「無効」の文字が写し出される印鑑登録証明書を発行している市町村は、印鑑登録証明書を複写することを容認していないと判断したこと。

4 印鑑登録証明書の悪用防止加工の実施状況等(全国の152区市村を抽出調査)

(1)  悪用防止加工を実施している区市村:135区市村(88パーセント)
  1. 複写すると「無効」の文字が写し出されるもの:43区市村
    (「無効」、「複写無効」、「複製無効」、「謄写無効」)
  2. 複写すると上記以外の文字が写し出されるもの:88区市
    (「複写」、「複製」、「写し」、「COPY」、「コピー」、「複写厳禁」)
  3. その他(複写すると市の紋章等が消えるもの): 4市
(2)  「無効」の文字が写し出されたコピーの謄本としての取扱についての区市村の意見(上記(1)−1.の43区市村を調査)
  1.  謄本と認められても差し支えないとしているもの:10市
  2.  登記官等が判断すべきであるとしているもの:12区市
  3.  特に意見がないとしているもの:8市
                           以上計30区市
  4.  謄本として認めることに否定的なもの:13市村
(3)  「複写厳禁」の文字が写し出される用紙を使用している2市のうち、1市は印鑑登録証明書のコピーを謄本と認められても差し支えないとし、1市は登記官等が判断すべきであるとしており、また、両市とも当該文字には複写を禁止する意図は含まれていないとしている。