社会福祉法人の指導監督に関する行政評価・監視結果に基づく勧告
に伴う改善措置状況(その後)の概要

〔調査の実施時期等〕
 1 実施時期 平成14年4月〜15年7月
 2 調査対象機関 厚生労働省、道府県(14)、指定都市、中核市等

〔勧告日及び勧告先〕 平成15年7月25日 厚生労働省に対し勧告

〔回答年月日〕 平成16年7月7日
〔その後の改善措置
状況に係る回答年月日〕
平成19年8月31日


〔行政評価・監視の背景事情等〕
  社会福祉法人は、社会福祉法(昭和26年法律第45号)に基づき、養護老人ホームの経営、居宅介護事業などの社会福祉事業を行うことを目的として設立
   社会福祉施設を経営する法人数、施設数、在所者数は増加
          平成4年度   平成13年度
              (法人数) 約1万1,000 約1万4,000
        (施設数) 約1万9,000 約4万1,000
        (在所者数) 約107万 約153万
  総務省は、厚生労働省に対し、平成4年6月及び9年7月、「社会福祉法人の指導監督に関する行政監察」結果に基づき、管理運営体制の適正化、会計管理の改善、社会福祉施設・設備の整備に係る補助事業の適正化等について勧告。また、平成10年11月及び12年3月、「補助金等に関する行政監察」の結果に基づき、不適正交付補助金の返還、採択審査の適正化等について勧告
  この行政評価・監視は、社会福祉法人における社会福祉事業の適正な運営を確保する観点から、社会福祉法人の運営状況及び社会福祉施設・設備の整備に係る補助事業の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施



主な勧告事項 関係省が講じた改善措置状況
1 社会福祉法人の運営の適正化
 適正な法人運営を確保する観点から、都道府県、指定都市及び中核市(以下「都道府県等」という。)に対し、以下の事項について、技術的助言を行うこと。  
1) 今回の調査の結果、役員の選任、理事会の運営、監事監査の実施、評議員会の設置・運営、定款の策定、定款記載事業の実施等、経理規程の策定、資産の管理及び契約事務について不適切な事項がみられた法人に対し、早急に改善を図るよう指導すること。
(説明) 
 
  社会福祉法人は、社会福祉法(昭和26年法律第45号。以下「法」という。)のほか、法人審査基準、法人定款準則、法人会計基準等に基づき、適正な運営を行うことが必要
  社会福祉法人に対する指導監督等
社会福祉法人に対する指導監督等
 
 調査した14道府県の142法人のうち、組織運営が不適切なもの(130法人)
   理事会に全く出席していない者を理事に選任している、理事会の議決事項であるにもかかわらず理事長が専決しているものなど    
103法人
   法人の行う事業は定款をもって定め、定款に定めた事業については実施が義務付けられているが、定款に記載されていない事業を実施している、記載されている事業を行っていないものなど          
21法人
   法人会計基準に基づいた経理規程が策定されていない、随意契約に付すことができる場合の基準に反して随意契約を行っているものなど 
94法人
「回答」時に確認した改善措置状況
「その後の回答」時に確認した改善措置状況
→○   都道府県等に対し、今回の調査の結果、役員の選任、理事会の運営、監事監査の実施、評議員会の設置・運営、定款の策定、定款記載事業の実施等、経理規程の策定、資産の管理及び契約事務について不適切な事項がみられた法人に対して早急に改善を図るよう指導することについて、「「社会福祉法人の指導監督に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」について」(平成15年9月19日付け厚生労働省雇用均等・児童家庭局長、社会・援護局長、老健局長通知。以下「3局長通知」という。)を発出し、助言したほか、社会・援護局関係主管課長会議(平成16年3月2日開催。以下「主管課長会議」という。)においても、不適切な事項がみられた法人に対しては早急に改善を図るよう、指導することについて助言
 これらを受けた是正指導の状況及び改善状況については、法人における理事会・評議員会の開催時期等を踏まえつつ、平成16年8月末までに確認のためのフォローアップ調査を実施予定
⇒○  都道府県等に対し、i3)「「社会福祉法人の指導監督に関する調査」及び「社会福祉法人の管理運営体制に関する調査」について」(平成16年8月24日付け厚生労働省社会・援護局総務課事務連絡)、ii2)「社会福祉法人の指導監督に関する再調査」(平成18年2月8日付け厚生労働省社会・援護局総務課事務連絡)、iii3)「社会福祉法人の指導監督に関する再調査」について(平成19年5月29日付け厚生労働省社会・援護局総務課事務連絡)及び「社会福祉法人の指導監督に関する再々調査」(協力依頼)について(平成19年6月6日付け厚生労働省社会・援護局総務課事務連絡)(以下、これらを総称して「平成16年8月24日付け事務連絡等」という。)により、本勧告の中で指摘されている法人運営等の問題事例に係る都道府県等の是正指導の状況及び法人等の改善状況について、フォローアップ調査を実施    
 その結果、不適切な事項がみられた130法人324件(延べ)のうち、平成16年9月時点では、改善済みが281件(86.7%)、指導中が43件(13.3%)であったが、19年6月時点で、改善済みが319件(98.5%)、指導中が5件(1.5%)。なお、指導中の5件は、土地の貸与者の同意が得られないため地上権の設定ができないなど第三者との調整が必要なものなどであるが、引き続き指導を実施

2)  法人に対し、役員の選任、理事会の運営、監事監査の実施、評議員会の設置・運営、定款の策定、定款記載事業の実施等、経理規程の作成、資産の管理及び契約事務について、法人審査基準、法人定款準則、法人会計基準又は入札契約等の取扱いに係る通知にのっとり、厳正に行うよう指導すること。
 また、法人監査に当たっては、法人に対する指導・処分を厳正に行うこと。指導・処分に従わない法人に対しては、業務停止命令、解散命令等を行うこと
(説明)
 法人審査基準においては公認会計士等による外部監査の活用を積極的に行うことが適当と明記されているが、外部監査を活用していない法人は、142法人中137法人
 所轄庁の法人監査において、不適切事例に対する指導・処分が厳正に行われていない。
   i1)所轄庁の法人監査担当職員が、法人審査基準、法人定款準則等の法令等に 不知であったこと、ii2)所轄庁が法人監査のために作成した監査調書又は法人に作成させた調書等の記載事項に不備があり、不適切事例を確認できるものとはなっていなかったことから、法人監査時に不適切事例を把握できなかったもの
24法人
   法人監査担当職員が法人監査において把握した不適切事例とこれに対する指 導・処分の内容との照合や指導・処分が適切に行われているかについての所轄庁の審査が励行されていないことから、不適切事例について、法人監査時に把握されていながら、特段の理由もなく指導・処分が行われていないもの
22法人
   当省の調査以前に行った法人監査の結果に基づき、指導・処分を行っているものの、その後の法人監査時に改善状況の確認を行っていないため、当省の調査時まで指摘事項の改善が図られていないもの
7法人
  当省の調査以前に行った法人監査の結果に基づき、指導・処分を行い、その後の法人監査においても、同じ不適切事項について口頭又は文書による指導を繰返しているものの、処分を厳正に行っていないため、当省の調査時まで指摘事項の改善が図られていないもの
13法人
→○  都道府県等に対し、法人に対して役員の選任、理事会の運営、監事監査の実施、評議員会の設置・運営、定款の策定、定款記載事業の実施等、経理規程の作成、資産の管理及び契約事務について、法人審査基準、法人定款準則、法人会計基準又は入札契約等の取扱いに係る通知にのっとり、厳正に行うよう指導することを3局長通知を発出し、助言
 また、都道府県等に対し、法人監査に当たっては、以下の措置を講ずることにより、法人に対する指導・処分を厳正に行うことについて、3局長通知を発出し、助言したほか、主管課長会議においても、法に基づく改善命令の実施等、積極的な改善に努めるよう助言
i1)
 法人監査担当職員に対し、法人審査基準、法人定款準則等の法律等に係る知識の修得を徹底させること
ii2)
 法人審査基準、法人定款準則等の法令等の遵守状況を的確に確認できるよう、所轄庁が法人監査のために作成している監査調書又は法人に作成させている調書等の記載内容を改めること
iii3)
 法人監査担当職員が法人監査において把握した不適切事項とこれに対する指導・処分の内容との照合や指導・処分が適切に行われているかについての審査を励行すること
iv4)
 法人監査の結果に基づき指導・処分を行った不適切事項については、その後の法人監査時等に、改善状況の確認を励行すること
v5)
 指導・処分に従わない法人に対しては、不適切事項の内容に則して、法第56条第2項の規定により改善を命じ、この命令に従わないときは、同条第3項の規定により期限を定めて業務の全部又は一部の停止を命じ、さらに、この業務停止命令により指導・監督の目的を達することができないときは、同条第4項の規定により解散を命ずるなど、厳正な処分を行うこと
 これらを受けた是正指導の状況及び改善状況については、法人における理事会・評議員会の開催時期等を踏まえつつ、平成16年8月末までに確認のためのフォローアップ調査を実施予定
⇒○  都道府県等に対し、平成16年8月24日付け事務連絡等により、法人に対する指導・処分の厳正化等に係る都道府県等の改善措置状況について、フォローアップ調査を実施
 その結果、都道府県等において、基準等に則った法人の厳正な運営を図るため、法人向けの説明会や研修会の開催、ホームページの作成、法人への冊子の配布、監査時の法人への周知等の取組を行うことにより、適切な指導を行っている状況を確認
 また、都道府県等による法人監査に当たって、次のような措置を講ずることにより、法人に対する指導・処分を厳正に行っている状況を確認
i1)  法人監査担当職員に対し、研修会の開催、外部の研修会の利用、資料・書籍の配布、指導監査マニュアルの作成などにより、法人監査基準、法人定款準則等の法令等に係る知識の修得の徹底
ii2)  所轄庁が法人監査のために作成している監査調書、指導監査マニュアルの記載事項に不備がないか等の見直し
  また、社会福祉法人に対して、法人・施設運営の適正化を自ら図るよう、自主点検表を作成させ徹底
  これらの取組を行うことにより、的確に、法令等の遵守状況を確認できるよう、所轄庁が法人監査のために作成している監査調書又は法人に作成させている調書等の記載内容の改善
iii3)  指導・処分漏れを防ぐために、指導内容等を記録した台帳を作成するなどにより、法人監査担当職員が法人監査において把握した不適切事項とこれに対する指導・処分の内容との照合や指導・処分が適切に行われているかについての審査を励行
iv4)  改善漏れを防ぐために、実地指導において、指摘事項の改善状況等について関係書類等により必ず確認することを徹底したり、指導内容等を記録した台帳を作成するなどにより、法人監査の結果に基づき指導・処分を行った不適切事項について、その後の法人監査時等に、改善状況の確認を励行
v5) 平成13〜15年度における問題事例に当たる25の法人に対し、社会福祉法第56条を適用し、措置命令26件、役員解職勧告4件、解散命令1件を実施。また、平成16〜18年度における問題事例に当たる24の法人に対し、社会福祉法第56条を適用し、措置命令25件を行うなど、指導・処分に従わない法人に対しては、不適切事項の内容に則して、厳正な処分を実施
 措置命令の主な内容としては、勤務実績の無い理事への高額な役員報酬の停止、不適切な支出の返還、特定の役職員による専横的な法人運営の排除、内部牽制の確保など
2 社会福祉施設・設備の整備に係る補助事業の適正化
 社会福祉施設等施設・設備整備費に係る補助事業の適正な執行を確保する観点 から、以下の事項について、都道府県等に対し技術的助言を行うこと。
1) 補助事業の採択に当たり、施設・設備の利用見込みを的確に把握し、利用が十分に見込まれるものを採択するよう厳正な審査を行うこと。また、補助金で整備した施設の交付目的に沿った使用を確保するため、補助金監査を的確に実施すること。
(説明) 
 
 社会福祉施設・設備の整備に要する費用の一部を補助
  国2分の1、都道府県4分の1
  平成13年度国庫補助金額:約1,365億円
 補助金は公正かつ効率的に使用されることが必要。補助金の交付目的に反した使用等は禁止(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金等適正化法」という。)
 社会福祉法人は、国庫補助事業を行うために締結する契約の相手方及びその関係者から寄付金等の資金提供を受けることは禁止(厚生労働省通達)
 
 調査した11道府県の57法人の中には、
 
  •  補助事業の採択に当たり、施設の利用見込みについて厳正な審査が行われていないこと等から、補助事業で整備した施設・設備が未利用、利用低調となっている例あり                        
    6法人
   ・ 老人居宅介護事業のヘルパーステーションとして整備したスペース等が未利用
   ・ ショートステイ送迎用のバスの利用は、4年間で9回
 
  •  施設整備後の補助金監査が的確に行われていないこと等から、補助事業で 整備した施設の一部を、補助金の交付目的以外に使用しているなどの例あり
    2法人
→○  都道府県等に対し、補助事業の採択に当たっては、補助金等適正化法の規定の趣旨にかんがみ、施設・設備の利用見込みを的確に把握し、利用が十分に見込まれるものを採択するよう厳正な審査を行うこと、また、補助金で整備した施設の交付目的に沿った使用を確保するため、社会福祉法人監査又は施設等の指導監査を行う際には、この点に留意するとともに、必要に応じて補助金監査を的確に実施することについて、3局長通知を発出し、助言したほか、主管課長会議においても、補助事業の採択に当たっては、施設・設備の利用見込みを的確に把握するとともに、補助金で整備した施設の交付目的に沿った使用を確保するよう管内社会福祉法人等に対して指導するよう助言
  これらを受けた是正指導の状況及び改善状況については、法人における理事会・評議員会の開催時期等を踏まえつつ、平成16年8月末までに確認のためのフォローアップ調査を実施予定
⇒○  都道府県等に対し、平成16年8月24日付け事務連絡等により、補助事業の採択に当たり、施設・設備の利用見込みを的確に把握し、利用が十分に見込まれるものを採択するよう厳正な審査を行っているか、また、補助金で整備した施設の交付目的に沿った使用を確保するため、社会福祉法人監査又は施設等の指導監査を行う際には、この点に留意するとともに、必要に応じて補助金監査を的確に実施しているかについて、フォローアップ調査を実施
 その結果、都道府県等において、補助事業の採択に係る審査基準の見直しや、利用見込みや必要性等を今まで以上に厳しく審査するなど、厳正な審査を行っていることを確認
 また、都道府県等による補助金監査の実施状況については、平成13〜15年度に12件、16〜18年度に9件の補助金交付目的に反した不適切事例があったことが報告されたが、すべての事例について、交付目的に沿った施設等の使用の指導や補助金の返還により、改善措置を行っている状況を確認


2)  補助事業に係る契約の相手方等から法人への寄付金等の資金提供を防止するため、法人監査を的確に実施すること。
(説明)
 調査した11道府県の57法人の中には、補助事業における契約に関する法人監査が的確に行われていないこと等から、補助事業により整備した施設・設備の工事請負業者等から寄付金を受け入れている例あり
3法人
→○  寄付金等については、社会福祉法人に対する不当な資金の環流が行われているとの社会的疑惑の基となることのないよう、その取扱いについては、「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費に係る契約の相手方等からの寄付金の取扱いについて」(平成13年7月19日付け社援基発第23号社会・援護局福祉基盤課長通知。以下「課長通知」という。)の規定を遵守するよう指導しているところである。しかしながら、今回の勧告を踏まえ、都道府県等に対し、補助事業に係る契約の相手方等から法人への寄付金等の資金提供を防止するため、更にその趣旨を徹底すること及び法人監査を的確に実施することについて、3局長通知を発出し、助言したほか、主管課長会議においても、寄付金等については、課長通知に基づき厳正に対応するよう法人監査を的確に実施することを助言
 これらを受けた是正指導の状況及び改善状況については、法人における理事会・評議員会の開催時期等を踏まえつつ、平成16年8月末までに確認のためのフォローアップ調査を実施予定
⇒○   都道府県等に対し、平成16年8月24日付け事務連絡等により、補助事業に係る契約の相手方等から法人への寄付金等の資金提供を防止するため、法人監査を的確に実施しているかについてフォローアップ調査を実施
 その結果、平成13〜15年度に実施された法人監査において、寄附金等の資金提供に関する7件の不適切事例があったが、すべての事例について、寄附金の返還等による改善措置を行っている状況を確認。なお、16〜18年度においては、補助事業に係る契約の相手方等から法人への寄付金等の資金提供に関する不適切事例なし