海上災害対策に関する行政評価・監視−油等流出災害を中心として−の勧告に伴う改善措置状況(その後)の概要



  
【調査の実施時期等】  1 実施時期 平成13年12月〜15年4月
   2 調査対象機関 内閣府、総務省(消防庁)、国土交通省等

【勧告日及び勧告先】     平成15年4月18日、内閣府、総務省(消防庁)及び国土交通省に対し勧告

【回答年月日】    内閣府 平成16年2月9日
   総務省(消防庁) 平成16年1月15日
   国土交通省 平成16年2月19日

【その後の改善措置状況に係る回答年月日】   内閣府 平成17年8月31日
   総務省(消防庁) 平成17年8月31日
   国土交通省 平成17年9月5日

【行政評価・監視の背景事情等】

 ○  平成9年1月、ナホトカ号海難・流出油災害が発生し、日本海側9府県に大被害。こうした油等流出による海上災害の発生の予防や災害発生時の対応を含め、総合的で即応性のある体制を整備することが極めて重要

 ○  平成9年6月、中央防災会議は、防災基本計画に海上災害対策編を追加し、海上災害に関して災害予防や応急対策等の段階ごとに実施すべき措置、施策等を規定

 ○  この行政評価・監視は、このような状況を踏まえ、実効ある海上災害対策の実施を確保する観点から、事故防止対策の実施状況や災害発生時対策の実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施

主な勧告事項 関係府省が講じた改善措置状況
1 事故防止対策の的確な実施


(勧告)
1)  寄港国による外国船舶の監督(ポートステートコントロール。以下「PSC」という。)の外国船舶監督実施要領(以下「実施要領」という。)を改正し、軽度であっても繰り返し違反を犯している船舶について是正状況の確認を行うとともに、指摘事項数が多い船舶等に対し、技術基準適合命令を積極的に発出すること。
(国土交通省)
2)  外国船舶監督基本方針(以下「基本方針」という。)にPSCを重点的に実施すべき外国船舶の旗国及び船種並びに検査すべき事項を具体的に定めるとともに、旗国や船種を的確に選定してPSCを実施すること。
(国土交通省)

(説明)
《制度・仕組み》
 防災基本計画において、人的要因・船舶の構造設備等に係る海難事故防止等の観点から、PSCの積極的な実施を推進
 国土交通省は、PSCの実施のため実施要領を策定。地方運輸局等は、同要領に基づき基本方針を策定
《現状・実態》
 繰り返し同種の指摘を受けている船舶について、是正状況の確認が不十分
 現行の実施要領上、軽度の欠陥等については、その指摘事項数が多い場合等を除き、是正状況の確認義務なし
 繰り返し同種の指摘(軽度の欠陥等)を受けている船舶97隻のうち75隻については是正状況の確認が行われていない。
 地方運輸局等の中には、実施要領及び自らが定める基本方針を励行していないものあり
 重点的にPSCを実施すべき船舶について、基本方針において実施すべき旗国を定めていない地方運輸局等あり(10地方運輸局等中2地方運輸局等)。うち1局は実施すべき船種及び重点的に検査すべき事項についても規定なし
 油タンカーについて、PSCの実績が皆無の地方運輸局等あり
→:「回答」時に確認した改善措置状況
⇒:「その後の回答」時に確認した改善措置状況

(国土交通省)
→1)  外国船舶監督実施要領(平成11年3月1日付け海検第7号・海基第42号・海職第86号海上技術安全局検査測度課長・船員部労働基準課長・同船舶職員課長連名決定。以下「実施要領」という。)を改正し、外国船舶監督担当官が、寄港国による外国船舶の監督(以下「PSC」という。)を実施するに際して、当該船舶の過去2回分の検査実績の調査を行い、その検査において類似の欠陥を指摘されている船舶についてはその是正状況を確認する旨を同要領に定め、平成15年6月、地方運輸局等に対して海事局長通知を発出し周知した。
 また、PSCの実施に当たって、過去に軽度であっても複数回にわたり類似の欠陥の指摘を受けた実績があり、その欠陥が是正されていない船舶に対しては、すべての欠陥が出港前に是正されるよう、技術基準適合命令の発出に関する手続の一つである詳細検査の対象とする旨を実施要領に定め、地方運輸局等に対して平成15年6月、海事局長通知により周知した。
⇒1)  地方運輸局等では、PSCの実施に際して、平成12年に導入したPSC検査情報ネットワークシステム(以下「APCIS」という。)により、過去2回分の検査実績を調査し、当該検査において類似の欠陥が指摘されている船舶については、その是正状況を現場で確認している。
 なお、技術基準適合命令の発出件数は、平成14年度では526件、15年度では696件、16年度では532件である。

→2)  地方運輸局等の定める「外国船舶監督基本方針」(以下「基本方針」という。)において、PSCを重点的に実施すべき外国船舶及び重点的に検査すべき事項を具体的に定めるよう、平成15年3月と4月に事務連絡を発出して指導した。これらを受け、地方運輸局等では、平成15年度の基本方針に、前年度実績等を踏まえPSCを重点的に実施する外国船舶及び重点的に検査すべき事項を定め、PSCの適切な実施に努めている。
 また、平成15年6月、地方運輸局等に対して海事局長通知を発出し、処分率や船齢等を考慮してPSCの対象船舶を決定すること等の徹底を指示した。
⇒2)  基本方針にPSCを重点的に実施すべき外国船舶の旗国及び船種並びに重点的に検査すべき事項を定めていなかった東北運輸局においては、平成15年度からこれらを具体的に定め、これに沿った運用を行った結果、14年のPSC実施による欠陥・不備の指摘率が75.0パーセントに対し、15年の同指摘率が82.5パーセントとなり、基本方針にPSCを重点的に実施すべき外国船舶の旗国及び船種を定めていなかった中国運輸局においては、平成15年度からこれを具体的に定め、これに沿った運用を行った結果、14年のPSC実施による欠陥・不備の指摘率が74.5パーセントに対し、15年の同指摘率が82.1パーセントとなり、それぞれ一定の効果が認められた。
2 漂着油等への適切な対応
(勧告)
1)  漂着油等への対応に係る地域防災計画の規定状況等を把握し、都道府県に対して、都道府県及び市町村の地域防災計画に漂着油等への対応など海上災害対策を的確に規定するよう指導・助言すること。
 (総務省)
2)  総務省による上記の把握結果を踏まえ、防災基本計画の修正の必要性を検討すること。
(内閣府)
3)  関係市町村に対して、排出油防除計画の内容を周知すること。
(国土交通省)

(説明)
《制度・仕組み》
 国及び地方公共団体は、油の海岸等への漂着に対処するため、直ちに関係行政機関と協力の上、油の防除等必要な措置を講ずること(防災基本計画)。都道府県、市町村は地域防災計画を作成(災害対策基本法(昭和36年法律第223号))
 海岸等に油が漂着した場合、海上保安庁(管区海上保安本部(以下「管区本部」という。)等)は、海岸・港湾・漁港管理者、地方公共団体等と連携(排出油防除計画(海上保安庁が、全国16の海域ごとに作成))。市町村が漂着油の除去を適切に実施するためには排出油防除計画を承知しておく必要
《現状・実態》
 漂着油等への対応を含め、地域防災計画における海上災害対策の規定が不十分
 実地調査した23都道府県中3都道府県、55市町村中26市町村では漂着油等に対処する規定なし。これら3都道府県26市町村のうち2都道府県16市町村が、国の防災基本計画に漂着油等の除去に関する責務と役割分担とを明確に規定する必要ありとの意見
 23都道府県中21都道府県内の沿岸域を有する市町村の4割が海上災害対策を規定していない(残り2都道府県は市町村の規定状況を未把握)。
 関係する排出油防除計画の内容が市町村に知られていない。
 沿岸域を有する55市町村中41市町村が内容を承知せず

(総務省(消防庁))
→1)  各都道府県防災主管部長に対して「総務省行政評価局による海上災害対策に関する評価・監視結果に基づく勧告について」(平成15年5月15日付け消防災第107号・消防特第86号消防庁防災課長・特殊災害室長連名通知)を発出し、今後の地域防災計画の見直しに当たって漂着油等への対応を含めた海上災害対策について的確な規定となるように配慮するよう通知し、管内市町村に対してもその旨周知徹底されるよう併せて通知した。
 また、各都道府県防災主管部長に対して「地域防災計画における海上災害対策の規定状況等に関する調査について」(平成15年6月26日付け消防特第125号消防庁特殊災害室長通知)を発出し、地域防災計画における海上災害対策の規定状況調査を実施した。
 調査の結果、沿岸海域を有する39都道府県及び1,007市町村のうち、i1)地域防災計画に海上災害対策に係る規定を置いていないものが1都道府県及び378市町村(37.5パーセント)、ii2)地域防災計画に海上災害対策に係る規定を置いているものの、漂着油等への対応について規定していないものが1都道府県及び248市町村(24.6パーセント)であった。
 このため、「海上災害対策に関する地域防災計画の見直しの促進について」(平成15年10月22日付け消防災第197号・消防特第206号消防庁防災課長・特殊災害室長連名通知)を各都道府県防災主管部長に対して発出し、管内の沿岸海域を有する市町村に対し、市町村地域防災計画に漂着油等への対応を含めた海上災害対策が的確に規定されるよう適切な指導・助言をするよう通知した。また、都道府県地域防災計画において漂着油等への対応について規定がないか明確に規定されていない都道府県に対しては、個別に指導・助言を行っていくこととしている。
(総務省(行政評価局)注)
 消防庁では、上記の調査結果について、「地域防災計画における海上災害対策の規定状況調査の結果について」(平成15年10月22日付け消防災第198号・消防特第207号消防庁防災課長・特殊災害室長連名通知(以下「平成15年海上災害対策の規定状況調査結果」という。)により、関係府省に対して通知を行っている。
⇒1)  各都道府県防災主管部長に対して「地域防災計画における海上災害対策の規定状況等に関する調査について」(平成16年12月9日付け消防特第238号消防庁特殊災害室長通知)を発出し、再度調査を実施した。調査の結果、沿岸海域を有する39都道府県及び930市町村(市町村合併に伴い、調査の対象と市町村数は、平成15年6月時点に比べ減少)のうち、i1)地域防災計画に海上災害対策に係る規定を置いていないものが1都道府県及び320市町村(34.4パーセント)、ii2)地域防災計画に海上災害対策に係る規定を置いているものの、漂着油等への対応について規定していないものが254市町村(27.3パーセント)であった。
 このように、必ずしも地域防災計画に漂着油等への対応を含めた海上災害対策を的確に規定することが促進されていないことから、「地域防災計画における海上災害対策の規定状況調査の結果について」(平成17年3月10日付け消防災第32号・消防特第52号消防庁防災課長・特殊災害室長連名通知)を各都道府県防災主管部長に対して発出し、引き続き、管内の沿岸海域を有する市町村に対し、市町村地域防災計画に漂着油等への対応を含めた海上災害対策が的確に規定されるよう適切な指導・助言をするよう通知した。
 また、都道府県地域防災計画において漂着油等への対応について規定がない1都道府県に対しては、平成17年4月から実施している地域防災計画の修正協議において個別に指導・助言を行っている。

(内閣府)
→2)  現在、総務省(消防庁)から通知を受けた平成15年海上災害対策の規定状況調査結果を踏まえ、関係市町村の地域防災計画に漂着油等への対応を含めた海上災害対策が規定されていない理由の詳細について平成15年度内を目途に確認しているところであり、確認の結果、具体的な課題が明らかになった場合は、防災基本計画の修正の必要性について検討を行う。
⇒2)  上記平成17年3月10日付けの総務省(消防庁)調査の結果によれば、地域防災計画において漂着油等の除去に関する規定のない市町村が全体の6割と、必ずしも漂着油等の対応を含めた海上災害対策を的確に規定することが促進されていない。このため、漂着油等の対応を含めた海上災害対策の規定化が促進されていない理由を踏まえつつ、対応が促進されるよう、17年度以降の防災基本計画の修正の機会を捉えて、関係省庁と連携しつつ修正内容に関する検討を進めることとしている。

(国土交通省)
→3)  管区海上保安本部(以下「管区本部」という。)に対して「海上災害対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告に対する改善措置について」(平成15年6月6日付け保警環第25号・海上保安庁警備救難部環境防災課長通知。以下「15年6月6日環境防災課長通知」という。)を発出し、関係市町村に対して排出油防除計画(計16海域)の内容を周知するよう指示するとともに、平成15年6月に開催した管区救難・環境防災課長会議(以下「平成15年6月の管区本部関係課長会議」という。)の場においても同様の指導を行った。
 管区本部等においては、これらを受けて、それぞれ海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)第43条の3に基づく排出油防除協議会の総会や地方防災会議(都道府県防災会議又は市町村防災会議)等の場を活用し、関係市町村に対して、排出油防除計画の内容の周知を徹底していくこととしている。
 また、15年12月25日に排出油防除計画を修正したところであり、その内容については、海上保安庁ホームページに掲載する等により関係市町村を含めた関係機関に対して周知することとしている。
⇒3)  平成16年5月及び17年6月に開催した管区救難・環境防災課長会議において、流出油が海岸に漂着した場合に災害対策基本法上の応急措置をとることとなる関係市町村に対して排出油防除計画(計16海域)の内容を周知するよう再度指導した。
 また、平成16年2月から海上保安庁ホームページに排出油防除計画を掲載した。
3 油防除の迅速かつ的確な実施
(1)初動体制等の整備
(勧告)
1)  排出油防除協議会が組織されていない海域について、その組織化を進めること。
(国土交通省)
2)  防除活動マニュアルを作成していない海域について、早急にこれを整備すること。また、マニュアルの内容を、関係機関の役割分担等を明記した的確なものとすること。
(国土交通省)
3)  排出油防除資材に係る排出油防除計画の内容を適時適切に見直すこと。また、保安部署において、資材の保有量及び提供可能な量の把握を的確に行うこと。
(国土交通省)

(説明)
《制度・仕組み》
 油防除には、関係機関の連携が重要。海上保安庁は、排出油防除協議会の組織化を推進
 油防除に当たっては、防除活動マニュアル(海域の実情に応じ具体的な防除活動の実施内容等を明記したもの)が重要
 関係機関による排出油防除資材(油回収船、油回収装置、オイルフェンス等)の整備と効果的な使用が重要
《現状・実態》
 排出油防除協議会の組織化が行われていない海域を有する海上保安(監)部及び海上保安署(以下「保安部署」という。)あり
 全国の119保安部署中5保安部署
 防除活動マニュアルが作成されていない海域を有する管区海上保安本部(以下「管区本部」という。)等あり
 調査した10管区本部中4管区本部、44保安部署中10保安部署
 防除活動マニュアルの内容が不十分なものあり
 排出油防除協議会会員の役割、防除措置の実施内容等が具体的に定められていない(4管区本部、5海上保安部)。
 排出油防除資材の整備量が的確に把握されていない。
 提供可能な量を把握していないもの(44保安部署中37保安部署)や保有機関の把握漏れがある。
 排出油防除資材の保有量の変更が、排出油防除計画に的確に反映されていない。


(国土交通省)
→1)  排出油防除協議会が設置されていない海域について、関係機関への働きかけを行い、その組織化を進めるよう、管区本部に対し15年6月6日環境防災課長通知を発出し、平成15年6月の管区本部関係課長会議において指示した。
 管区本部等では、これらを受けて、排出油防除協議会が設置されていない海域について、その組織化に向けて関係機関に働きかけを行っている。
⇒1)  排出油防除協議会が設置されていなかった海域の小笠原地区、対馬地区、壱岐地区においてそれぞれ排出油防除協議会が設置された。
 その他の排出油防除協議会が設置されていない海域(下田保安部が管轄している東京都大島支庁、三宅支庁及び八丈支庁の区域)については、平成16年5月及び17年6月に開催した管区救難・環境防災課長会議において、その組織化を進めるよう再度指示した。

→2)  管区本部に対し、全国の保安部署における防除活動マニュアルの作成状況を把握するよう指導するとともに、平成15年6月6日環境防災課長通知及び平成15年6月の管区本部関係課長会議において、防除活動マニュアルを作成していない保安部署等に対して早急にこれを作成するよう指示した結果、防除活動マニュアルを作成していなかった16保安部署(指摘を受けた10保安部署を含む。)のうち、3保安部署については、15年6月までに当該保安部署の管轄海域に係る防除活動マニュアルの作成を終えている。また、残りの13保安部署においては、作成作業に着手している。
 また、勧告を踏まえ、防除活動マニュアルの内容を点検し、必要に応じて修正することにより的確なものとするよう、管区本部に対し15年6月6日環境防災課長通知を発出するとともに、平成15年6月の管区本部関係課長会議において指示した。
これらを受けて、管区本部等が15年9月までにすべての防除活動マニュアルの点検を行った結果、35マニュアルについて不明確な記述、不足箇所等があったため、必要な改定を行っている。
⇒2)  防除活動マニュアルを作成していなかった13保安部署については、全ての部署において平成17年3月までに当該保安部署の管轄海域に係る防除活動マニュアルを作成した。
 不明確な記述、不足箇所等があった35マニュアルについては、17年3月末現在、28マニュアルが修正を完了したところであり、残りの7マニュアルについても17年度中には修正する予定である。

→3)  排出油防除資材等の保有量及び提供可能量の把握を保安部署において的確に行わせるよう、管区本部に対し15年6月6日環境防災課長通知を発出し、平成15年6月の管区本部関係課長会議において指示した。これらの指示を受けて、管区本部等において、各海域の排出油防除資材等の保有状況等の把握を行い、その結果等を踏まえ、15年12月25日に排出油防除計画を修正した。
⇒3)  現在、管区本部等において、平成17年3月末現在の排出油防除資材等の保有量及び提供可能量について、調査・集計中である。この排出油防除資材等の保有量及び提供可能量の調査結果については、平成17年度中に排出油防除協議会の定例総会等で関係市町村を含めた関係機関に対して周知を図る予定であり、今後とも、適時適切に見直し、必要に応じ、排出防除計画の修正を行っていくこととする。
(2)広域対応体制の整備
(勧告)
1)  油防除の対象海域の広域化を更に進めること。 
 (国土交通省)
2)  排出油防除資材等の調達等について、管区本部相互間の事前の連携等を図ること。また、各排出油防除計画に全国の外洋対応型排出油防除資材等の整備状況を盛り込むこと。
(国土交通省)
3)  広域的油流出災害への対応を含め、訓練の実施と内容の充実を図ること。
(国土交通省)

(説明)
《制度・仕組み》
 広域的な油流出災害に対応する体制の整備が必要(排出油防除計画等)
 排出油防除協議会の対象海域の広域化の推進
 広域的な連携による排出油防除資材の調達
 外洋、荒天下、広域等現実的な条件の下での訓練の実施の検討
《現状・実態》
 油防除の対象海域の広域化を行っているものは一部(11管区本部中6管区本部、119保安部署中7保安部署)
 排出油防除協議会の連合組織、隣接する協議会相互の応援協定などによる。
 排出油防除資材の必要量を充足していない海域あり
 油吸着材・油処理剤は16海域のすべて、油回収船等は4海域で未充足。しかし、資材の調査に係る事前の連携・調整を行っている管区本部は皆無
 大規模な油流出事故の際には、高粘度油対応資材を中心に、外洋対応型排出油防除資材を全国から投入する必要あり。しかし、全国16の排出油防除計画には、当該海域内の排出油資材のみを掲出
 油防除の訓練について、排出油防除計画の複数の海域にまたがる訓練が行われているのは16海域中5海域。外洋での事故を想定した訓練の実施は2管区本部のみ




(国土交通省)
→1)  排出油防除協議会の広域連合体の組織、隣接する排出油防除協議会相互間の連携等により油防除の対象海域の広域化を更に進めるよう、管区本部に対し15年6月6日環境防災課長通知を発出し、平成15年6月の管区本部関係課長会議において指示した。
 管区本部等では、複数の協議会の統合、隣接協議会の応援協力体制の構築等海域の実情に応じた形態で広域化を進めている。
⇒1)  管区本部等においては、8か所の排出油防除協議会が4組の広域連合体を組織し、油防除の対象海域の広域化を図った。
 また、32か所の排出油防除防協議会において、隣接の排出油防除協議会と相互応援を実施する旨の防除活動マニュアルの修正等を行い、活動海域の広域化を図った。

→2)
i1 )管轄する海域における排出油防除資材の保有状況を確認し、迅速に調達可能なものについて関係管区間での輸送方法等を検討するよう、管区本部に対し15年6月6日環境防災課長通知を発出し、平成15年6月の管区本部関係課長会議において指示した。
 また、15年12月25日に行った排出油防除計画の修正の作業過程で各海域の排出油防除資材等の保有状況等の把握を行った。排出油防除資材の調達、輸送方法等については、この結果等を参考にして、近隣の管区本部相互間において、事前の連携及び調整が図られるよう、海上保安庁本庁及び管区本部等において、検討を行っている。
ii2 )上記の排出油防除計画の修正に併せ、各海域の排出油防除計画の資料編に全国の外洋対応型排出油防除資材等の整備状況を盛り込んだ。
⇒2)
i1 )排出油防除資材の調達、輸送方法等に関する管区本部相互間の事前の連携及び調整については、油汚染事故は発生場所、積載油量、発生時の気象海象等により、そのケースに応じた防除措置をその都度検討し、措置する必要があり、それに応じ使用する防除資材も異なることから、防除措置に効果的かつ実践的な計画を策定することは困難であるとの結論を得た。このため、平成15年6月から、沿岸域情報管理システムにより、任意の海域周辺にある排出油防除資材等を検索し、その結果を利用し調達する等の活用が可能となるような運用方法等について検討している。
ii2 )排出油防除計画の資料編に掲載している全国の外洋対応型排出油防除資材等の整備状況については、排出油防除資材等の保有量等調査に基づき、平成16年3月末現在の整備状況を把握しており、防除資材等の保有量及び提供可能量の海上保安庁ホームページへの掲載に併せ、17年度の可能な限り早い時期に、関係市町村を含めた関係機関に対して広く周知する予定である。

→3)  管区本部に対し、排出油の防除に関する防災訓練を管区本部等において毎年1回以上実施するよう、15年6月6日環境防災課長通知を発出し、平成15年6月の管区本部関係課長会議において指示・指導した。
 管区本部等では、これらを受けて、排出油の防除に関する防災訓練を毎年1回以上実施できるよう取り組んでいる。
 また、複数の排出油防除計画の海域にまたがる広域的な被害を及ぼす油流出事故及び外洋での油流出事故への対応等、その内容の充実を図るよう、管区本部に対し15年6月6日環境防災課長通知を発出し、平成15年6月の管区本部関係課長会議において指示・指導した。
⇒3)  各管区本部等において、年1回以上、平成15年度は計149回、16年度には計93回の防災訓練、実働訓練等の排出油の防除に関する防災訓練を実施するとともに、以下のような連携した訓練を実施した。
i1 )平成15年12月17日に内閣官房主催、海上保安庁他12省庁が参加し、北海道積丹沖における原油タンカーと貨物船の衝突事故を想定した大規模流出油災害対応訓練(図上訓練)を実施。その一環として全管区を対象とした排出油防除資材の動員手続訓練を実施。
ii2 )16年9月27日から29日に第九管区海上保安本部において実施した外洋での油流出事故への対応訓練においては、管轄区域内の関係機関が参加し、隣接管区に対しても情報伝達を実施。