広島政策評価フォーラム 2005/12/7
  新村保子

政策評価制度の新展開       規制影響分析の導入


[はじめに]
4年目を迎えた政策評価制度
   義務付け3分野と広範な政策評価の導入
      ODA,公共投資、研究開発   政策評価年報
   一応の成果、「見直しの方向性」
残された課題
   政策としての規制の評価
   義務付けの要件

[規制影響分析]
  • 規制とは何か
  • なぜ規制影響分析による規制政策評価が必要か
      政策としての規制は政策評価の対象であるべき
  • 基本的な考え方は他の政策評価と同じ
      1)  目的
    よりよき政策立案のための資料
    国民への説明責任
     2)  評価基準
    費用は便益を正当化するか
  • 政策としての規制の特殊性
      1)  予算で毎年度見直される支出政策と異なり一度決めると改革ニーズが出てこない限り継続される。
     2)  便益も費用も通常は金銭で計測されていない。
     3)  支出政策よりも国民の権利の制限、民間活動の制限など大きくかつ金銭で通常は計らない大きな負担をもたらす可能性がある。
     4)  影響する範囲が広く確定的でない。
  • 規制影響分析はどのように分析するか
      1) 諸外国の例 (研究会報告「規制影響評価のフロンティア」)
       所管部局による詳細なガイドライン 
        費用・便益要素の定量化、金銭価値化の推奨
       現実には評価事例を見ると
    (i1 便益については、定性的記述で整理する事例も
    (ii2 費用については、可能な範囲で金銭価値化
    (iii3 厳密な費用・便益の値の算出が目的ではなく「規制がもたらす便益は、その費用を正当化し得る」ことを示すことが目的
    •  精緻なモデル等を用いた高度な経済分析を追求するより、政策の意思 決定・合意形成過程で活用することを念頭に置いた、政策実務上で行われている実用的な分析
    •  規制制定過程の早期から分析に着手。検討の進捗に併せて徐々に分析内容が充実。
    •  対象範囲として、 1)法律及び下位法令を対象とするもの又は法律を除き下位法令を対象とするもの、 2)経済的影響の大きいものを対象とするものなどの例がある。
     2) 規制影響分析の試行
  • 規制影響分析の機能
       よりよき規制のために
       合意形成のツール
       諸外国の例
[日本での導入の問題点]
    従来型官僚組織における意思決定との決定的な相違
    情報公開とオープンな議論による政策決定

官僚文化の変革を目指して



規制の事前評価の在り方について(中間報告)のポイント

規制の政策評価に関する研究会
 行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)の枠組みの下での規制の事前評価の義務付けに向けた取組を進めるに当たって、規制の事前評価の在り方を検討するため、平成17年9月、総務省行政評価局に設置され、この度、中間的な整理を行った。


1 これまでの取組
 累次の閣議決定において、規制の政策評価の積極的な実施や規制影響分析(*1RIA:Regulatory Impact Analysis)の導入を推進することを決定。諸外国でも、多数の先行的取組例あり。
 各府省は平成16年10月1日から、RIAを試行的に実施(本年6月10日までに79件(10月1日現在で103件))。

2 規制の事前評価の枠組みについて
(1)目的・意義
 規制について適切な合意形成を図る観点から、規制の事前評価を行うことは、
  1)規制に関する政策の質の向上に資するとともに
  2)説明責任を果たし、国民・利害関係者の理解等に資する
と考えられる。 
 規制の事前評価を進めていくことで、規制の新設、改廃に係る評価作業における分析内容等が、広く議論の共通の土台として活用されることが期待。

(2)評価法との関係
 各府省のこれまでの取組の実績・成果を踏まえると、全ての規制ではなく、規制のうち一定のものを対象とし、何らかの限定をかけることにより、同法の枠組みの下で、規制の事前評価を義務付けるべき段階が到来。
 そのため、事前評価の義務付けに向け、必要な対応についての検討を早急に行う必要。

(3)対象
1)  事前評価の義務付け対象としては、評価になじまないもの、分析を行う意義に乏しいものを除くことなどが適当。今後、法制的な整理も進めながら、具体化の作業を進めることが必要。
2)  評価の対象については、規制に関する規定が置かれる法令のレベルとの関係についての検討も行うことが必要。現在までの議論は以下のとおり。
  •  内閣提出の法律による規制の新設、改廃は事前評価を行うべき。
  •  下位法令で規定されるものは、規制による具体的な負担や効果が下位法令で明らかになるものがある一方、行政実務上のフィージビリティの確保にも配慮する必要があること等に留意すべき。
3)  上記により事前評価の義務付けの対象とした規制以外の規制について、各府省が評価法上の政策評価として取り組むことを促進するための方策も検討する必要。

(4)手法等

 規制の事前評価は、平成16年度から試行されているRIAの手法や諸外国の取組例を踏まえて実施していくことが必要。
 さらに、事前評価の進め方、タイミング、規制制定過程での活用などについてのガイドライン等を作成することが必要。

(5)取組に当たっての考え方
 客観的な分析によって、効率性等の観点から評価を行うためには、負担面及び効果面での影響をできる限り定量化(可能であれば金銭価値化)して分析することが求められる。
 ただし、諸外国の先行例と同様、当初から、精緻な分析を画一的に求めるのではなく、各府省の評価経験、評価事例の継続的な蓄積によって徐々に分析のレベルを上げていくという取組の基本的なスタンスを持つことが適切。 

(6)留意事項等

 事前評価は、将来的な予測を行うという特性上、効果について精度の高い分析は困難な場合が多いため、ガイドライン等で留意事項、取組の工夫例等を示すことも重要。

(7)規制制定過程における位置付け
  •  RIAは、できる限り早期に開始することが有効。
  •  政策評価担当組織と政策所管部局、政策評価担当組織と法令の取りまとめ部局等の連携を進めていくことが重要。
  •  規制制定過程の客観性と透明性の一層の向上を図るため、学識経験者や利害関係者の側から必要なデータ、情報の提供や意見を受けることが望ましい。
(8)評価書の公表の時点等
  •  法律案の企画立案を伴う場合は、少なくとも法律案の閣議決定までに公表を行うべき。このことにより、国会の審議に有用な情報が提供されることに資する面もあり。
  •  下位法令の企画立案を伴う場合は、行政手続法の意見公募手続において、命令等の案とともに、評価書を公示すべき。
  •  規制の事前評価については、規制改革・民間開放推進3か年計画等に基づいて行われている関係機関の新設審査において活用されることが重要。
3 今後の取組について
 当研究会としては、規制の事前評価の早期義務付けと義務付け後の適切な評価の実施に向け、 1)対象範囲の詳細な検討、 2)評価を行うユニット、 3)ガイドラインなどについて、今後更に検討を進めていきたい。



*1 RIA:規制の導入や修正に際し、実施に当たって想定されるコストや便益といった影響を客観的に分析し、公表することにより、規制制定過程における客観性と透明性の向上を目指す手法
「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」