規制行政に関する調査−資格制度等−結果に基づく勧告(要旨)
勧告日 : | 平成12年9月25日 |
勧告先 : | 国家公安委員会(警察庁)、金融再生委員会、経済企画庁、 科学技術庁、環境庁、国土庁、法務省、大蔵省、文部省、 厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、 建設省、自治省 |
実施期間: | 平成10年4月〜12年9月 |
監察の背景事情 |
○ | 国の資格制度は、社会経済の複雑・高度化に伴う各種専門知識・技能保持者に対する社会的需要を背景に逐次創設。また、試験事務等の資格審査事務の民間団体への委託が進展。さらに、民間技能審査事業を国が奨励する制度(民間技能審査事業認定制度)も増加。しかしながら、実態については、全貌が必ずしも明らかでない状況 | |
○ | 国の資格制度については、資格審査事務の民間団体への一層の委託が課題。また、民間団体への委託等に際しての透明化・適正化も必要。公益法人に関するものについては「「公益法人の設立許可及び指導監督基準」及び「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」について」を閣議決定(平成8年9月20日、同9年12月16日一部改正) | |
○ | 本調査は、このような状況を踏まえ、資格制度等の現状及び各制度の運営の実態を調査し、関係行政の改善に資するために実施 | |
○ | 調査対象機関: | 国家公安委員会(警察庁)、金融再生委員会、経済企画庁、科学技術庁、環境庁、国土庁、法務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、郵政省、労働省、建設省、自治省 |
○ | 担当部局 : | 行政監察局、管区行政監察局(7)、四国行政監察支局、沖縄行政監察事務所、行政監察事務所(15) |
資格制度等の概要 |
○ | 国が法令等に基づき設けている資格制度は280資格(平成11年4月1日現在) 民間技能審査事業認定制度は26制度、173事業を認定(平成12年4月1日現在) |
○ | 所管省庁別にみると資格制度は、16省庁において設けられており、厚生省所管(医療・福祉等関係)及び労働省所管(労働安全・衛生等関係)の資格が多く、全体の半数 |
民間技能審査事業認定制度は、11省庁において設けられており、認定事業数では、文部省の認定事業が最多(認定事業全体の約6割) | |
○ | 根拠法令等は、資格制度の大半が法律、政令又は省令 民間技能審査事業認定制度の大半が告示 |
○ | 資格制度における資格審査事務の約4割が民間団体に委託等 民間技能審査事業認定制度においては、各省庁所管の公益法人が実施する事業を認定するものが約8割 |
○ | 資格制度及び認定事業ともに、受験資格又は受講資格として、一定の実務経験や学歴等を設けているものが多数(資格制度:受験資格71.1%、受講資格67.2%、認定事業:受験試験86.6%、受講資格96.8%) |
○ | 資格制度における試験等手数料については法令等に規定するか又は実施団体の申請に基づき国が認可、承認するのが通例 また、資格制度の中には、資格についての登録、技能証明に対し、登録免許税が課されるものもあり |
主な勧告事項 |
1 | 国の資格制度 | ||||
(1) | 資格審査事務の在り方の見直し、適正化 | ||||
ア | 事務の委託等の推進 | ||||
○ | 行政事務の簡素化及び効率化の観点から、資格審査事務について民間団体への委託等の推進を図る必要のあるもの | ||||
・ | 養成施設の課程を修了することにより資格が取得できるものがある一方で、養成施設の課程を修了後、改めて国が実施する試験に合格しなければならないもの(16事例) | ||||
・ | 試験事務において、受験者数が少数で、各都道府県ごとに試験問題を作成するなど事務が非効率等となっているもの(6事務) | ||||
・ | 講習事務を国が自ら実施しているが、類似する資格では民間団体が実施する講習を推薦等することにより国が実施していないもの又は試験等事務の一部が委託等されているが、委託等の範囲が限定されているもの(49事務) |
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イ | 事務の委託等・推薦等の透明化 | ||||
○ | 委託等又は推薦等の根拠・基準等の定めが上記閣議決定の趣旨、内容に沿っていないものがみられる | ||||
・ | 委託等の根拠が法律に定められていないもの(32資格45事務)、委託等法人の選定に当たっての審査基準等の基本的事項が法律に定められていないもの(46資格66事務)、委託等法人が法律又は政省令によって指定されていないもの(99資格146事務) | ||||
・ | 推薦等が法律又は政省令に基づかないもの(12資格15事務)、推薦等を行う際の基準が法律又は政省令に定められていないもの(30資格37事務)、推薦等法人が法律又は政省令によって指定されていないもの(32資格41事務) | ||||
・ | 各省庁が委託等又は推薦等を行う法人の約8割は当該省庁が所管する公益法人等であり、資格審査事務の委託等を目的に設立されたものもあり |
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ウ | 会計処理の適正化 | ||||
○ | 委託等法人又は推薦等法人において会計処理が適切でない状況あり | ||||
・ | 収支決算書等において、委託等事務又は推薦等事務の収支を他の事務と一括して経理するなど区分経理が行われていないものが 254事務のうち 142事務(55.9パーセント )。 | ||||
・ | 試験手数料等収入の運用益、剰余金等を他の事務・事業会計に繰り入れているものや相当額の積立金を留保しているが、その使途、積立限度額等の資産管理に関する規定や具体的計画が策定されていないもの(22事例) | ||||
なお、平成9年9月の指定法人等の指導監督に関する行政監察結果に基づく勧告において、各省庁に対し、指定事業等の会計処理の基本的事項(区分経理の方法、剰余金の基準・取扱方法等)を定めた基準を策定・公表するとともに、その徹底を図ることを指摘 |
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エ | 指導監督の徹底 | ||||
○ | 委託等法人又は推薦等法人から徴収する資格審査事務に係る業務報告書類の審査基準が未策定など指導監督について不十分な状況 | ||||
・ | 徴収した資格審査事務に係る業務報告書類について、事務の実施状況及び財務・会計の状況を的確に確認・審査する基準・方法等が定められていないものが223事務のうち94事務(42.2パーセント) | ||||
・ | また、平成5年度から9年度において立入検査がまったく実施されていないものが45事務(20.2パーセント) |
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(2) | 資格要件、資格審査方法等の見直し、適正化 | ||||
ア | 資格要件等の見直し | ||||
○ | 資格要件、受験(受講)資格として、学歴、実務経験、年齢などの定めあり(延べ282資格) | ||||
○ | 資格要件、受験(受講)資格が合理的な設定となっていないものなど | ||||
・ | 同一資格において、下位資格の取得方法によって上位資格の取得方法が異なり、上位資格の資格取得機会が制限されているもの(1資格) | ||||
・ | 同一水準の試験でも年齢制限を設けているものと設けていないものがあり、受験資格が相違するもの(1資格) | ||||
・ | 受験資格として、一定の資格者の下で実務補習、業務補助等を求めることにより、資格取得機会が必要以上に制限されるおそれのあるもの(2資格) | ||||
・ | 一定の資格を有する者の中から管理・監督者たる資格者を選任することとされているものについて、選任する際の要件ではなく、選任の対象となる資格者の要件又は受験資格として実務経験が設けられているもの(8資格) | ||||
○ | 公務員として特定の業務に一定期間従事した経験があれば、所管大臣の認定により資格が付与されるなどの公務員特例制度において、その根拠及び認定基準が法令上明確になっていないものや、所管省庁において公務員特例制度により認定した者の数が明らかになっていないもの(6資格) |
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イ | 資格審査の実施方法等の見直し、試験問題等の公表の推進 | ||||
○ | 試験、講習等の実施方法が不適切なものなど | ||||
・ | 試験が全く未実施又は継続して休止されているもの(2資格) | ||||
・ | 数種類の出題内容の試験問題が繰り返し使用されるなど試験が形骸化しているもの(1資格) | ||||
・ | 各都道府県において同一内容の学科試験が実施されているものの、実技試験の受験が学科試験に合格した都道府県に限定されているもの(1資格) | ||||
・ | 試験において、特定の講習の修了者に対してのみ、試験の一部を免除する措置が講じられているもの(1資格) | ||||
・ |
国が指定するカリキュラムが実務の要請等に則していないため、養成施設において、指定カリキュラムの内容どおりの養成が行われていないもの又は困難となっているもの(2資格) |
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・ | 試験合格(養成施設卒業)以外に特段の免許要件又は登録要件がないにもかかわらず、試験合格証等の交付のほか、別途の申請手続により免許証(免状)又は登録証の交付を必要としているもの(4資格) | ||||
・ | 試験問題の事後公表又は合否基準の公表が行われていないもの(156資格) |
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ウ | 試験等手数料の適正化 | ||||
○ | 試験手数料、講習手数料、免許・登録手数料の設定・見直しが不適切な状況 | ||||
・ | 明確な積算根拠なしに手数料の額を設定しているもの(83手数料) | ||||
・ | 手数料収入の超過により相当額の剰余金が生じているにもかかわらず、更に手数料を増額改定しているもの又は手数料の額を据え置いているもの(45手数料) | ||||
・ | 実際には支出されていない経費の算入又は過大な経費の算定による積算により、手数料の額を算出・設定しているもの(27手数料) | ||||
・ | 免除措置による一部受験者が大半であるにもかかわらず、それらの者も全て受験するものとして手数料の額が算出・設定されているもの(3手数料) | ||||
・ | 認可又は承認に係る手数料について、その審査基準が定められていないもの(16手数料) | ||||
なお、上記指定法人等の指導監督に関する行政監察結果に基づく勧告において、各省庁に対し、委託等事務又は推薦等事務に係る手数料の設定・見直しについて、手数料等の設定・見直しの基本基本的事項(積算方法、改訂方法など)を定めた基準を策定・公表するとともに、政省令料金及び認可料金について、業務量の推移、収支状況等を勘案し的確な見直しを行うことを指摘 |
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エ | 申請手続等の簡素化 | ||||
・ | 免許申請に際して、他の申請書類等で確認可能な事項について、別途書類を提出させているもの、法令に規定がないか又は内容が形式的なものにとどまる書類を提出させているものなど(延べ114資格) |
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(3) | 資格者の業務範囲等の見直し | ||||
○ | 資格者の業務範囲、業務内容、資格制度の根拠等の見直しを要する状況 | ||||
・ | 資格者の業務範囲が限定されているため、資格に対する社会的需要が乏しいもの、創設時と背景事情が変化し、資格者が行う業務内容の有用性が乏しくなっているもの(2資格) |
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2 | 民間技能審査事業認定制度 認定制度の在り方の見直し及び認定事業の運営の適正化 |
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○ | 所管省庁では、認定制度の目的に照らし社会的に奨励する必要があるか否かを判断する明確な基準を有していない状況(11省庁26制度 173事業) | ||||
○ | 事業認定制度の運営が不適切、見直しが不十分等の状況 | ||||
・ | 認定事業の中には、そもそも国が奨励すべきものとして認定する必要性に欠けるもの、認定に当たっての審査・方法が不適切なもの、事業が未実施なもの等(延べ67事業) | ||||
なお、現在、各省庁では、「行政委託型法人等の総点検の推進について」(平成10年12月4日公益法人等の指導監督に関する関係閣僚会議幹事会申合せ)に基づき、公益法人を中心に、認定事業についても、その的確な見直しを図る等の観点から総点検を実施 |
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