平成12年(2000年)12月

政策評価制度の在り方に関する最終報告(概要)

政策評価の手法等に関する研究会

はじめに
 政策評価の基本となる枠組みを「政策評価の基本的な在り方」と「政策評価の標準的な方式の導入及び実施の在り方」の二つの柱立てで提示。
 全政府的に政策評価に取り組むための標準的な指針を示す「標準的ガイドライン」に基づき来年1月から導入・実施される政策評価制度の運営の中でいかされることを期待。
政策評価導入の目的
○ 国民に対する行政の説明責任(アカウンタビリティ)の徹底
○ 国民本位の効率的で質の高い行政の実現
○ 国民的視点に立った成果重視の行政への転換
2 政策評価の基本的な枠組み
 (1) 「政策評価」の概念…国の行政機関が主体となり、政策の効果に関し測定・分析し、客観的な判断を行うことにより、政策の企画立案やそれに基づく実施を的確に行うための情報を提供すること。
 (2) 政策評価の対象としての政策は、一般に、「政策」、「施策」、「事務事業」に区分され、それらは相互に目的と手段の関係を保ちながら、全体として一つの体系を形成。政策評価を実施する際には、評価対象に関する目的と手段の関係を明確にすることが必要。
 (3) 政策評価の主体としては、まず、各府省が自らその所掌する政策について、必要に応じ第三者等を活用しつつ評価を行うことが基本。その上で、総務省がさらに評価の総合性及び厳格な客観性を担保するため評価。その際、政策評価・独立行政法人評価委員会が評価の中立性・公正性を確保。
(4) 政策評価の時点
1 政策の採択等に有用な情報の提供が可能な事前評価
2 政策の効果について、実証的な評価が可能な事後評価
3 政策の達成状況の把握が可能な途中の評価
を適切に実施。
(5) 政策評価の観点等
   「必要性」、「効率性」、「有効性」、「公平性」等の観点と、これらの観点からの評価を踏まえた「優先性」の観点について、適切なものを選択し、総合的に評価を実施。
   政策評価を実施するにあたり、各府省及び総務省は、次のような各観点ごとの評価の一般基準を踏まえ、具体的な評価基準を設定。
・ 必要性: 政策の目的は妥当か、行政の関与の在り方から見て行政が担う必要があるか 等
・ 効率性: 投入された資源量に見合った効果が得られているか 等
・ 有効性: 政策の実施により、期待される効果が得られているか 等
・ 公平性: 政策の目的に照らして、効果の受益や費用の負担が公平に分配されているか 等
・ 優先性: 他の政策よりも優先的に実施すべきか 等
政策評価の結果の反映
  政策の性質等に応じ、1予算(定員を含む。)への反映、2法令等による制度の新設・改廃等への反映、3各種中長期計画の策定等への反映など適切な方法を用いて反映させていくことが重要。
  予算への反映については、まず各府省において評価結果に基づく政策の改善・見直しを予算要求に反映。予算編成過程においても、財政当局で評価情報を適切に活用し予算に反映することを期待。
政策評価の結果等の公表
  公表すべき事項としては、評価の結論のほか、1評価実施主体、2評価対象とした政策の目的、内容、実現手段、3評価の際に用いたデータや仮定を含む評価過程等に関する情報、4評価結果の反映状況など。
  国民に対する分かりやすさを確保するとともに、専門的な視点から評価内容等のチェックを可能とすることが重要。また、インターネット等の活用による公表を推進。
  国民から出される意見・要望を受け付ける仕組みを各府省及び総務省において整備。
政策評価の方式
政策評価制度の的確な運用を確保するため、標準的な評価方式として、「事業評価」、「実績評価」、「総合評価」の三つの方式を提示(各方式の概要などは次頁を参照)。
三つの標準的な評価方式の長所や特性等を十分に認識した上で、これらを合目的的に組み合わせて導入することが必要。
政策評価の手法
費用効果分析などの各種の調査や分析の手法については、評価の目的や評価対象の性質等に応じて適用可能で合理的なものを選択することが必要。
政策評価制度の定着・発展に向けた課題
 政策評価制度導入後においても、制度の定着・発展に向けた取組が必要であり、以下の課題について、政府が積極的に取り組むことを強く期待。特に制度運用の基本を担う総務省がそのような取組における要として的確に役割を果たすことが求められる。
1 職員の意識改革:個々の職員に対する啓発活動等を通じて導入の目的等を組織全体に浸透させることが必要。特に、幹部職員のリーダーシップの発揮が必要。
2 成果重視の徹底とインセンティブの付与:制度の一層の発展を図るため、給与、予算執行、組織管理等に関するルールの柔軟な適用を認めるなどのインセンティブの付与について検討。
3 人事管理との関係:成果重視の考え方を浸透させていくため、政策評価と実績主義に基づく人事管理との関連付けを検討。
4 情報・データの整備:政策評価に必要な情報・データを外部の者も含めて容易に利用できるようデータベースの整備及びその相互利用等につき制度的な問題も含め速やかに検討。
5 予算との関係:予算編成作業の実態、予算編成の制度的特徴に応じた政策評価と予算との適切な関係付け、そのために必要となる評価手法等につきさらに検討。
6 行政活動に伴うコストの把握:公会計の在り方も含め、各行政活動に伴うコストの総額を把握するための仕組みの整備について検討。
7 研究開発の推進、教育研究の展開:総務省及び各府省が連携し、大学、非営利研究機関等の協力も得ながら研究開発を推進。評価関連の教育研究展開のための環境整備が必要。
8 多元的な評価:政策やその評価に関する情報を提供し、国会や会計検査院、外部の各種機関・団体、専門家など多元的な主体による評価が行われるような環境が醸成されることが重要。

(参 考)
 事業評価実績評価 総合評価
概 要
 事前の時点で評価を行い、途中や事後の時点での検証を行うことにより、事業等の採否、選択等に資する情報を提供することを主眼とした方式。
 行政の幅広い分野において、あらかじめ達成すべき目標を設定し、それに対する実績を測定し評価することにより、政策の達成状況についての情報を提供することを主眼とした方式。
 時々の課題に対応するために特定のテーマを設定し、様々な角度から掘り下げて総合的に評価を行い、政策の効果を明らかにしたり、問題点の解決に資する多様な情報を提供することを主眼とした方式。
評価対象
 事務事業が中心(おおむね施策程度の活動のまとまりも対象)。
 おおむね施策程度の活動のまとまりを対象。各府省の主要な課題につき幅広く達成すべき目標を設定。
 おおむね政策や施策ととらえられる行政活動のまとまりを対象。
評価時点
 事前の時点で評価を実施し、途中や事後の時点で検証を行う。
 あらかじめ達成すべき目標を設定し、目標に対する実績を定期的・継続的に測定。
 目標期間終了時に当該期間全体における実績を評価。
 政策・施策が実施された後で、実際の効果等に関する情報・データ等の収集が可能となった時点において実施。
 場合によっては、実施前の時点で実施。
評価の内容等
 事前の時点で、あらかじめ期待される効果やそれらに要する費用などを分析・検討。
 途中・事後の時点で、上記評価内容等を検証。
 公共事業、研究開発事業及びODA事業については評価の取組の一層の改善・充実。規制については実施可能なものから順次評価。補助事業や新規に開始しようとする事業等についても評価の実施等を検討。
 主要な施策等に関し、成果(アウトカム)に着目した「基本目標」を設定。その達成状況を測定するため、「達成目標」を設定。
 おおむね1年ごとに達成目標に対する実績を測定。
 基本目標の目標期間(5年程度)が終了した時点で、目標期間全体を総括し、基本目標の達成状況を評価。
 時々の課題に対応して、選択的・重点的に実施。
 政策・施策の効果を様々な角度から具体的に明らかにする。政策・施策とその効果との因果関係、外部要因の影響、波及効果等を掘り下げて分析。
 政策・施策の問題点とその原因を分析し、その解決に資する情報を提供。