麻薬・覚せい剤等に関する実態調査の勧告に伴う改善措置状況の概要

【調査の実施時期等】  

実地調査時期: 平成9年4月〜7月

調査対象機関: 国家公安委員会(警察庁)、総務庁、法務省、外務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林水産省、通商産業省、運輸省、 郵政省、労働省、建設省、自治省、都道府県、都道府県公安委員会、都道府県教育委員会、市町村、市町村教育委員会、 関係団体等
【勧告日及び勧告先】  平成10年5月18日、国家公安委員会(警察庁)、文部省、厚生省等薬物乱用対策推進本部を構成する13省庁に対し勧告
【回答年月日】  
国家公安委員会 (警察庁)  : 平成11年2月3日、  総務庁  : 平成11年1月26日
法 務 省  : 平成10年12月1日、 外 務 省  : 平成10年12月17日、 大 蔵 省  : 平成11年1月22日
文 部 省  : 平成10年12月7日、 厚 生 省  : 平成10年12月24日、 通商産業省 : 平成10年11月27日
運 輸 省  : 平成10年12月11日、 郵 政 省  : 平成11年1月29日、 労 働 省  : 平成11年2月15日
建 設 省  : 平成10年11月30日、 自 治 省  : 平成10年12月22日  
【その後の改善措置状況回答年月日】  
国家公安委員会 (警察庁)  : 平成12年8月9日、  総務庁  : 平成12年8月31日
法 務 省  : 平成12年7月28日、 外 務 省  : 平成12年7月18日、 大 蔵 省  : 平成12年10月10日
文 部 省  : 平成12年7月21日、 厚 生 省  : 平成12年8月1日、 通商産業省 : 平成12年7月13日
運 輸 省  : 平成12年8月22日、 郵 政 省  : 平成12年7月26日、 労 働 省  : 平成12年9月19日
建 設 省  : 平成12年9月13日、 自 治 省  : 平成12年7月19日  

[調査の背景事情]
薬物乱用の増大
  覚せい剤事犯の検挙者数が3年連続で増加(平成9年にはほぼ2万人)
特に、少年を始めとする初犯者の検挙が増加し、末端乱用のすそ野が拡大→第三次覚せい剤乱用期に突入
政府の対応
  薬物乱用対策推進本部(平成9年1月17日閣議決定で格上げ設置)
本部長:内閣総理大臣、本部員:内閣官房長官ほか関係13大臣
平成9年4月には「青少年の薬物乱用問題に対する緊急対策」決定
この調査は、以上のような状況を踏まえ、麻薬等薬物乱用防止対策の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施

主な勧告事項
関係省庁が講じた措置状況
1 教育の強化
 (勧告)
 指導時間の確保等授業の充実、薬物乱用防止教室の開催等専門家の積極的な活用、指導資料・教材の充実等により、多角的に薬物乱用防止教育の充実を図ること。
(文部省)

(説 明)
   文部省が全国の中学校及び高等学校に配布している「喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する指導の手引」では、3年間で4〜5時間の授業を例示
指導時間が全学年計で1時間以下  中学校:調査対象30校中12校
 高等学校:調査対象30校中5校
 
 薬物乱用防止教室の開催  中学校:調査対象30校中4校
 高等学校:調査対象30校中7校



平成10年度に学習指導要領を改訂し、新たに小学校から薬物乱用防止教育(体育)を行うとともに、中学校及び高等学校については、薬物の依存性について授業に取り上げる等薬物乱用防止教育(保健体育)を充実


 平成10年6月5日付けの文部事務次官通知「児童生徒の覚せい剤等の薬物乱用防止について」により、今後すべての高等学校及び中学校において、年に1回は薬物乱用防止教室を開催するよう努めるとともに、地域の実情に応じて小学校においても同教室を開催すること等を都道府県教育委員会等に対し指導


 平成11年度から薬物乱用防止教室の指導者(講師)を養成する研修会を開催するとともに、指導方法等を掲載したマニュアルを作成・配布
2 相談・医療・社会復帰対策の確立
  (1) 相談体制の整備と関係機関との連携の推進
 (勧告)
 薬物問題に関する専門相談及び薬物依存・中毒者の家族に対する指導・助言等を行うための家族教室を精神保健福祉センターの業務として明確に位置付け、すべての精神保健福祉センターで実施するよう指導
(厚生省)
(説 明)
   精神保健福祉センターの薬物問題に関する業務は、「精神保健福祉センター運営要領」の「精神保健福祉における複雑困難な相談指導等を行うこと」との規定に基づき実施されているが、その位置付けがあいまい
専門相談を実施: 調査対象15センター中3センター
家族教室を実施: 調査対象15センター中3センター




 平成11年7月9日付けの厚生省医薬安全局長通知「薬物乱用防止対策事業の実施について」により、薬物関連問題の発生の予防、薬物依存者の社会復帰の促進を図ることを目的として、以下の事業を精神保健福祉センターの事業として位置付けるとともに、11年度から当該事業に関する経費を国庫補助することとした。(精神医療適正化対策費等補助金 薬物乱用対策費のうち薬物関連問題相談事業に係る経費 平成11年度約3千5百万円)
1.  保健所等関係諸機関に対する技術指導及び技術援助
2.  薬物関連問題に関する家族教室の実施
3.  薬物による精神障害者やその家族に対する個別相談指導等
  (2) 薬物による中毒性精神病患者等に対する医療の確立
 (勧告)
 国立精神療養所等を中心に専門の病棟・病床の整備を進め、国立病院・療養所等における中毒性精神病患者等の医療の確保を図ること。また、公的医療機関及び民間病院における専門の病棟・病床の整備を進めるための措置を講ずること。
 さらに、医師等医療スタッフに対する研修を充実すること。
(厚生省)

(説 明)

国立精神療養所等(21)のうち、専門病棟・病床があるのは3病院
   一般の病院では薬物患者の受入れを断る傾向。5病院から連続して拒否された例あり
   国(国立精神・神経センター)が行う医療スタッフに対する専門的な研修は年1回の医師研修会(35名)のみ


 平成11年3月の国立病院・療養所の再編成計画の見直しに基づき、国立精神・神経センターを中心とした精神疾患政策医療ネットワークを構築し、薬物依存症の患者の積極的な受入れに努力。
 また、国立病院・療養所における中毒性精神病患者等の専門病床の確保のため、平成11年4月に、国立下総療養所の専門病棟の整備(病床数32床→40床)を始めとして、診療体制の充実に努力


 公的医療機関及び民間病院における専門の病床の整備については、平成11年度から非営利法人が設置する精神病院の薬物専門病棟・病床の整備を施設整備に係る国庫補助の対象に追加


 薬物依存臨床医師研修会のほかに、平成11年度から新たに薬物依存臨床看護研修会を開始(参加者52名)し、国立病院・療養所に勤務する職員以外の者を含めた医師、看護婦に対する研修を充実

  (3) 薬物依存・中毒者に対する社会復帰対策の確立
 (勧告)
 薬物依存・中毒者を対象とした民間リハビリテーション施設への助成や公的リハビリテーション施設の整備等アフターケア対策の在り方について検討すること。
 また、民間リハビリテーション施設に通う生活保護者について、通所費の支給要件を具体的に示すこと。
(厚生省)

(説 明)

 薬物依存・中毒者の社会復帰対策が確立されておらず、リハビリテーション施設は民間の施設のみ
   生活保護者の通所費を移送費の支給対象とすることを要望する例



 平成12年度から、厚生科学研究費において、精神病院等(民間リハビリテーション施設を含む。)の設備構造及び人事配置の在り方の研究や薬物依存・中毒者のアフターケアに関する研究を行うとともに、薬物乱用対策推進本部及びその下に設けられている再乱用対策ワーキンググループにおける情報交換の実施等によって、より具体的な研究を推進


 平成11年3月に、民間リハビリテーション施設に通う生活保護者の通所費用について、支給要件を明確化
3 取締りの強化
  (1) 水際における取締体制の強化
 (勧告)
 密輸入情報の相互利用等情報収集活動の効果的な実施等
(国家公安委員会(警察庁)、大蔵省、厚生省及び運輸省)

(説 明)

 関係取締機関の保有している情報の中には、これらの機関間で共有することにより取締に効果が期待できるものあり
     
   税関、海上保安本部、県警本部の合同訓練の実施 調査対象12県中3県




 平成12年1月に、大蔵省、警察、厚生省及び海上保安庁の実務担当者で構成される薬物対策関係取締機関情報交換会を設置し、関係省庁連携の下、情報交換体制を一層強化(平成12年には4回実施予定)


 税関、警察、海上保安庁等関係取締機関との合同によるコントロールド・デリバリー(いわゆる「泳がせ捜査」)の訓練、洋上取引を想定した訓練を平成11年度に15回実施。
 その結果、平成11年10月には、漁船を利用して密輸入を企てた565 キログラムの覚せい剤事犯を合同で摘発
  (2) 麻薬取締業務の見直し
 (勧告)
 厚生省麻薬取締官事務所(以下「麻取事務所」という。)の捜査業務については、専門性をいかした方向に特化するなどその在り方を再検討
(厚生省)

(説 明)

 近年の覚せい剤の検挙者数:警察は4年間で3割増だが、麻取事務所は横ばい



 麻取事務所の捜査において、その専門性(広域性等)をいかして、インターネットを介してMDMA等の麻薬等の密売を行っていた者の検挙等実績を上げており、今後とも捜査業務の在り方について検討するとともに、麻薬取締協議会等の会議の場を通じ、更なる連携強化に努力
4 啓発活動の充実
 (勧告)
 薬物乱用対策推進本部の場を活用するなどにより、効果的な広報、啓発方策について検討
(推進本部を構成する13省庁)

(説 明)

 当庁が実施したアンケート調査結果
6割以上の者が薬物乱用の増加原因を「薬害の知識・認識の不足」と回答
4割以上の者が薬物乱用対策として「広報活動の充実」を指摘


 薬物乱用対策推進本部の場を活用するなどにより、効果的な広報、啓発活動を実施(警察庁等13省庁)
(例)
 「薬物乱用防止キャラバンカー」を6台の稼働体制にするとともに、政府を挙げての啓発活動であることを示すため、キャラバンカーに「薬物乱用対策推進本部」等の名称を掲示(厚生省)
 平成11年に、中・高校生の保護者を対象とした薬物乱用防止読本を作成し、文部省の協力を得て学校を通じ約900万部を家庭に配布(厚生省)