PCB廃棄物対策に関する行政評価・監視の勧告に伴う改善措置状況(その後)の概要

〔調査の実施時期等〕
1 実施時期
2 調査対象機関

平成14年8月〜15年12月
文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省、環境事業団、道府県(14)、保健所設置市(9)等
〔勧告日及び勧告先〕 平成15年12月5日 環境省に対し勧告
〔回答年月日〕 平成16年10月29日
〔その後の改善措置状況に係る回答年月日〕  平成18年3月3日

〔行政評価・監視の背景事情等〕
 PCB(ポリ塩化ビフェニル)
  •  トランス、コンデンサなどの電気機器の絶縁油、加熱・冷却の熱媒体等として幅広く使用
  •  昭和43年にカネミ油症事件が発生。昭和47年に通商産業省の行政指導により、PCBの製造中止、回収。平成12年に蛍光灯のPCB使用安定器が破裂、同種の事件が各地で発生、やけど、吐き気などの被害
 平成13年7月、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号。以下「PCB特別措置法」という。)を施行。PCB廃棄物を保管する事業者に保管及び処分状況の届出等を義務付け
 この行政評価・監視は、都道府県等における保管事業場の実態把握の的確化、PCB廃棄物の保管等の適正化等を推進する観点から、環境省及び都道府県等におけるPCB廃棄物に関する情報の収集、整理及び活用の状況、事業者におけるPCB廃棄物の保管・処分の状況とその届出状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施


主な勧告事項 関係省が講じた改善措置状況
 ポリ塩化ビフェニル廃棄物保管事業場の実態把握の的確化及び届出の励行確保

 他府省庁から保管事業場の情報を収集し、これを都道府県等のPCB特別措置法担当部局(以下「特措法担当部局」という。)に情報提供すること。

  (説明)
  •  環境省
     PCB廃棄物の確実かつ適正な処理の確保のため、PCB廃棄物に関する情報の収集、整理及び活用に努める義務あり
    (PCB特別措置法第5条)
  •  都道府県等
    •  PCB廃棄物を保管する事業者等から、毎年度、前年度のPCB廃棄物の保管等の状況について届出を受理
      (PCB特別措置法第8条)
    •  環境省は、届出漏れがないよう区域内の事業者等に確実に周知すること等について、都道府県等に通知
        平成14年1月の大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知  

 環境省は、各種の実態調査により他府省庁が把握している保管事業場に係る情報のうち、一部の情報(財団法人電気絶縁物処理協会における平成10年8月現在の調査)は収集し、都道府県等に提供しているものの、その他の情報については収集しておらず、都道府県等への情報提供を行っていない。

→:「回答」時に確認した改善措置状況
⇒:「その後の回答」時に確認した改善措置状況

→○  他府省からの情報収集については、平成15年12月、会議(注)において、各府省庁が把握している保管事業場に係る情報((1)PCB台帳による保管事業場の情報、(2)電気事業法に基づく届出及び(3)閣議了解に基づく調査)を環境省に提供するよう要請
(注) 最終処分場確保等の廃棄物対策に関する関係省庁連絡会議幹事会(平成15年12月12日開催)

 上記の情報の都道府県等への提供については、次のとおり措置
1)  PCB台帳による保管事業場の情報については、経済産業省から提供を受け、16年3月9日提供
2)  電気事業法に基づく届出については、平成15年12月担当課長会議(注)において、都道府県等に対し、経済産業省の各経済産業局から入手する方法を再度周知
(注)  平成15年12月26日開催の「PCB廃棄物処理に係る各都道府県・政令市担当課長会議」(以下同じ。)
3)  閣議了解に基づく調査による保管事業場の情報については、平成16年11月末を目途に提供するよう再度督促し、情報提供を受けた後、速やかに提供予定

⇒○  都道府県等への情報提供が未了であった3)閣議了解に基づく調査による保管事業場の情報については、平成16年10月から17年1月までの間に各府省から逐次入手し、17年1月27日までに提供
 都道府県等に対し、次の措置を講ずるよう技術的助言を行うこと。
1)  環境省から提供を受けた情報と自ら把握している保管事業場の情報との突合・整序を行い、事業場名簿の的確な整備を図ること。この事業場名簿に基づき、保管事業場に対し、届出を行うよう徹底すること。
(説明)
 調査対象23都道府県等で平成13、14年度ともにPCB特別措置法に基づく届出に係る事業場名簿に掲載されていない1,418事業場を抽出して調査
  •  平成13、14年度ともに届出義務のある23都道府県等の保管事業場744のうち、両年度ともに届出を行っていないもの
    (545事業場)

→○  都道府県等に対し、平成15年12月担当課長会議において、以下の措置を講じるよう助言
1)  PCB台帳とPCB特別措置法による届出内容とを再度突合すること。
2)  電気事業法に基づく届出による保管事業場の情報については、都道府県等が経済産業省の各経済産業局から入手し、PCB特別措置法による届出内容と突合すること。
3)  閣議了解に基づく調査による保管事業場の情報については、入手次第送付予定であり、送付された情報とPCB特別措置法による届出内容とを突合すること。
 上記の助言に基づき都道府県等が講じた措置の内容については、平成17年3月までに確認のための調査(注)を行い、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言
(注)以下「フォローアップ調査」という。

 また、保管事業場からの届出情報を管理するため、「PCB廃棄物保管及び処分状況管理システム」(以下「PCB廃棄物管理システム」という。)を構築し、平成16年5月17日から運用を開始。

⇒○  事業場名簿の的確な整備の実施については、平成17年担当部局長会議(注)において、都道府県等自らが把握している名簿と、既に送付した保管事業場の情報とを突合・整序するよう再度周知
(注) 平成17年1月21日開催の「全国都道府県及び政令指定都市等環境担当部局長会議」(以下同じ。)

 都道府県等における保管事業場の情報の突合・整序の実施状況について、平成17年3月24日、フォローアップ調査を実施。その結果、全104都道府県等(47都道府県及び57保健所設置市)のうち、1)PCB台帳による保管事業場との突合については57都道府県等、2)電気事業法に基づく届出との突合については60都道府県等、3)閣議了解に基づく調査結果との突合については84都道府県等が完了したことを確認。3項目すべての突合・整序を完了したものは、46都道府県等。事業場数が多いなどの理由から、突合・整序が未了となっている58都道府県等(3項目とも未実施のものは15都道府県等)については、平成17年度末までにすべての突合を完了する予定。
 都道府県等における突合・整序の実施状況については、平成17年度末までに再度、確認のための調査を行い、調査の結果、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言

2)  届出を行っていない保管事業場に対し、督促及びその後の励行指導を徹底すること。
(説明)
  •  調査対象23都道府県等で平成13、14年度ともにPCB特別措置法に基づく届出を行っていない545保管事業場のうち、実地調査した65保管事業場の中には、都道府県等による保管事業場の実態把握と届出の励行指導が適切に行われていないものあり
    • 届出に係る個別周知が行われていない
      (47事業場)
    • 届出に係る個別周知は行われているものの、督促が行われていない
      (15事業場)
    • 督促は行われているものの、その後の励行指導が行われていない
      (2事業場)
      届出に係る個別周知を行っていない理由は、都道府県等の情報収集の範囲が、各種の実態調査の一部に限定されていること、各種調査により把握されている情報の突合・整序による事業場名簿が作成されていないこと等による。

→○  届出を行っていない保管事業場に対する届出提出の督促指導については、平成15年9月担当課長会議等(注)において、都道府県等に対し、PCB廃棄物管理システムを活用し、その後の励行指導を徹底するよう助言
(注)  平成15年9月担当課長会議、主管課長会議平成16年6月18日開催の「全国廃棄物・リサイクル行政主管課長会議」(以下「主管課長会議」という。)及び平成16年9月担当課長会議

  上記の助言に基づき都道府県等が講じた措置の内容については、平成17年3月までにフォローアップ調査を行い、上記の助言に基づき都道府県等が講じた措置の内容については、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言

⇒○  突合・整序により新たに把握した未届出事業場に対する届出指導の実施状況について、フォローアップ調査により確認した結果、全104都道府県等において2,801事業場を未届出事業場として把握。
 これらの事業場については、都道府県等による届出指導の結果、平成17年9月末までに1,089事業場から新たに届出。届出に至っていない事業場についても、引き続き届出指導を行い、平成17年度末を目途に、把握した未届出事業場すべてに対する届出指導を完了する予定。
 都道府県等における未届出事業場に対する督促の実施状況については、平成17年度末までに再度、確認のための調査を行い、調査の結果、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言
 なお、PCB廃棄物管理システムのデータのうち、事業場の名称、所在地、保管(使用)しているPCB廃棄物の種類及び量については、平成18年1月から環境省のホームページで公開開始
 PCB廃棄物の保管等の適正化

 都道府県等に対し、次の措置を講ずるよう技術的助言を行うこと。
1)  保管事業場に対する立入検査の実施頻度や検査対象の選定に係る方針を策定し、計画的な立入検査を実施すること。また、的確な立入検査表を作成するなど立入検査の実効性を確保すること。
  (説明)
  •  廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)
    •  PCB廃棄物の保管について、特別管理産業廃棄物(注)保管基準の遵守を義務付け
      (注)PCB廃棄物は、特別管理産業廃棄物の一つとして指定されている。
    •  特別管理産業廃棄物の保管事業場ごとに管理責任者の設置を義務付け
    •  都道府県等には、特別管理産業廃棄物の保管事業場に対する立入検査等の権限あり
  •  PCB特別措置法
    •  PCB廃棄物の譲渡又は譲受は、原則、禁止
    •   都道府県等には、PCB廃棄物の保管事業場に対する立入検査等の権限あり

 調査対象23都道府県等における保管事業場に対する立入検査の実施状況
  •  立入検査の実施頻度や検査対象の選定に係る方針を策定しておらず、立入検査を実施していないもの
    (7都道府県等)
  •  立入検査を実施している16都道府県等のうち、
    •  立入検査の実施頻度や検査対象の選定に係る方針を策定しているものは10都道府県等。その立入検査実施率は22.3パーセント
       一方、同方針を策定していないものは6都道府県等。その立入検査実施率は5.5パーセント
    •  検査すべき事項が立入検査表に記載されていないことなどから、都道府県等が行っている立入検査で指摘漏れがみられるもの
      (6都道府県等(14事業場で26事項))



→○  都道府県等に対し、平成15年12月担当課長会議及び平成16年9月担当課長会議において、以下の措置を講じるよう助言
1)  立入検査の実施頻度や検査対象の選定に係る方針を策定し、計画的な立入検査を実施すること。
2)  的確な立入検査表を作成するなど立入検査の実効性を確保し、適正な保管管理を徹底させること。
 また、平成15年12月担当課長会議においては、効果的な立入検査を実施するための立入検査表の例及び立入検査のポイント等を記載した「PCB使用電気機器に関する参考資料(暫定版)」を、平成16年9月担当課長会議においては、立入検査項目をより具体的に記載した「PCB廃棄物保管事業場立入検査結果報告書(案)」を配布。
 上記の助言に基づき都道府県等が講じた措置の内容については、平成17年3月までにフォローアップ調査を行い、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言。

⇒○  都道府県等に対し、平成17年担当部局長会議において、PCB廃棄物管理システムを活用し、事業場名簿の的確な整備を行うとともに立入検査の徹底を行うよう助言。
 都道府県等における立入検査の実施方針の策定状況及び的確な立入検査表の作成状況について、フォローアップ調査により確認した結果、全104都道府県等のうち、立入検査の実施方針については61都道府県等、立入検査表については78都道府県等が策定済み。また、立入検査の実施方針等が未策定の都道府県等についても、概ね平成17年度中を目途に策定する予定。都道府県等における立入検査の実施方針等の策定状況及び立入検査の実施状況については、平成17年度末までに再度、確認のための調査を行い、調査の結果、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言。
2)  PCB廃棄物の保管事業者に対し、PCB廃棄物の保管について、PCB特別措置法の規定によるPCB廃棄物の譲渡等の禁止を厳正に遵守するよう指導すること。
 また、PCB廃棄物の保管、管理責任者の設置について、廃棄物処理法による特別管理産業廃棄物保管基準と管理責任者の設置規定を厳正に遵守するよう指導し、指導に従わない事業者に対しては、改善を命ずるなど、厳正な処分を行うこと。

(説明)
 実地調査した23都道府県等の 226事業場におけるPCB廃棄物の保管等の状況
  •  PCB廃棄物の全部を紛失しているもの
    (2事業場)
  •  自ら保管せず、電気工事業者に譲渡しているもの
    (2事業場)
  •  PCB廃棄物を自ら保管している 222事業場のうち、
    •  PCB廃棄物の一部を紛失しているもの
      (3事業場)
    •  保管基準を遵守していないもの
      (167事業場)
    •  管理責任者を適正に設置していないもの
      (152事業場)

→○  都道府県等に対し、会議(注)において、以下の措置を講ずるよう助言
1)  PCB廃棄物の保管事業者に対し、PCB廃棄物の譲渡等の禁止を厳正に遵守するよう指導すること。
2)  保管事業場を設置している事業者に対し、特別管理産業廃棄物保管基準と管理責任者の設置規定を厳正に遵守するよう指導し、指導に従わない事業者に対しては、改善を命ずるなど、厳正な処分を行うこと。
(注)  平成15年12月担当課長会議、主管課長会議及び平成16年9月担当課長会議

  上記の助言に基づき都道府県等が講じた措置の内容については、平成17年3月までにフォローアップ調査を行い、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言

⇒○  保管事業場に対する都道府県等の遵守指導等について、フォローアップ調査により確認した結果、全104都道府県等のうち、譲渡等の禁止又は管理責任者の設置の遵守指導を行ったものは、口頭指導等も含め72都道府県等(指導事業場数は延べ11,208。)であり、このうち56都道府県等(6,552事業場)については、立入検査を実施するなど、PCB特別措置法及び廃棄物処理法に定める基準を遵守するよう厳正に指導。また、立入検査による指導を行っていない都道府県等においても、届出時等において、i1)個別に口頭指導、ii2)説明会・講習会において指導、iii3)パンフレット等を配布し周知するなど、事業場に対する遵守指導措置を実施。都道府県等における保管事業場に対する譲渡等の禁止及び管理責任者の設置の遵守指導の実施状況については、平成17年度末までに再度、確認のための調査を行い、調査の結果、措置が講じられていないことが判明した場合には、その推進を図るよう助言