産業活動活性化に関する行政評価・監視(中小企業に係る経営革新・創業の推進を中心として)
結果に基づく勧告に伴う改善措置状況(その後)の概要

【調査の実施時期等】 実施時期:平成14年4月〜16年1月
調査対象機関: 財務省、文部科学省、経済産業省
【勧告日及び勧告先】 平成16年1月19日。財務省、文部科学省及び経済産業省に対し勧告
【回答年月日】
財務省:平成16年8月26日、 文部科学省:平成16年8月17日、 経済産業省:平成16年8月16日
【その後の改善措置
状況回答年月日】
財務省:平成18年2月8日、 文部科学省:平成18年1月27日、 経済産業省:平成18年1月31日

 【行政評価・監視の背景事情等】
 我が国の産業の基盤を形成している中小企業は、企業数の減少、経済環境の変化への対応の遅れ、国内産業の空洞化等により活力が低下
 国は、経営革新と創業の推進を中小企業に係る基本的施策の一つとして位置付け、種々の立法措置(注)等により中小企業の経営革新及び創業を支援する事業の実施、中小企業支援センター等の支援体制を整備
 中小企業の事業所数等の減少傾向は続き、依然として厳しい状況
 この調査は、以上のような状況を踏まえ、中小企業に係る経営革新・創業の推進や関係事業の効果的かつ効率的な実施等を図る観点から、経営革新・創業支援対策に係る事業の実施状況、経営革新・創業に関する投融資事業等の実施状況、中小企業支援事業の実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施
   (注)
  • 中小企業経営革新支援法(平成11年法律第18号。以下「経営革新法」という。)
  • 中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法(平成7年法律第47号。以下「創造法」という。)
  • 新事業創出促進法(平成10年法律第152号)
     上記3法律は、平成17年4月に施行された中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(平成17年法律第30号)に整理統合されたことにより、廃止されている。
  • 大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(平成10年法律第52号。以下「技術移転促進法」という。)
  • 中小企業指導法(昭和38年法律第147号)を中小企業支援法へと抜本改正(平成12年法律第43号)


主な勧告事項 関係府省が講じた改善措置状況
 経営革新支援の的確な実施
(勧告)
 経済産業省は、中小企業者等の経営革新の計画的かつ着実な推進及び経営革新補助金の効果的かつ効率的な使用の確保を図る観点から、以下の措置を講ずることが必要
1)  経営革新計画の承認事業者に対し各種支援措置を重点的かつ総合的に行うため、承認と支援の計画的実施などの具体的方策を充実すること。また、都道府県に対し、これに基づき、技術的助言を行うこと。
2)  経営革新補助金について、都道府県が補助事業終了後における事業の進ちょく状況を把握・分析・評価し、その結果に基づき企業化への指導及び助言が行えるよう補助金交付要綱等の内容を充実すること。また、都道府県に対し、これらに基づき中小企業者等に対し適切な指導及び助言を実施するよう指導すること。
 (説明)
 都道府県知事等は、中小企業者等が作成・申請した経営革新計画を審査・承認。国、都道府県等は、経営革新計画の承認を受けた事業者に対し、経営革新補助金等の各種支援措置を実施
  •  経営革新法に基づく経営革新計画の承認件数は9,582件(平成14年度末現在)
    •  平成11年度:1,348件、12年度:2,594件、13年度:2,299件、14年度:3,341件
    •  国の目標(平成13年6月産業構造改革・雇用対策本部決定)「3年間で2万社の経営革新を実施」
  •  調査した承認130事業者(計画進行中のもの)のうち、計画どおり事業が進ちょくしているものは53事業者(41%)
 都道府県は、経営革新補助金の交付を受けた事業の実施状況を把握し、その企業化への必要な指導・助言を行う。
  •  調査した経営革新補助金の交付を受けた86事業者のうち、製品の販売に至ったものは41事業者(48%)、うち利益を上げているものは10事業者(12%)
  •  調査した24都道府県のうち、経営革新補助金の交付を受けた事業者に対し、企業化への指導・助言を行っているのは3県

→:「回答」時に確認した改善措置状況
⇒:「その後の回答」時に確認した改善措置状況

→1)  経営革新計画の承認事業者に対する支援については、勧告に基づき、平成16年6月に、「中小企業の経営革新への対応について」(平成13年9月20日付け事務連絡)を改正し都道府県に対し通知
 この通知に基づく支援内容の拡充に向けての各都道府県の取組状況を把握するため、17年9月の地方経済産業局担当官会議において、ヒアリングを行った。これを基に各経済産業局担当者に対し、円滑かつ効率的に取り組んでいる事例(注)については、各経済産業局から都道府県に対して今後の業務遂行に当たっての参考として紹介するよう要請
 (注)都道府県の具体的な取組例
  •  経営革新計画承認時に、中小企業診断士等外部有識者による承認審査会を設置して審査を行う。
  •  経営革新計画終了時に終了企業に対する調査を実施し、目標を達成した企業等の事例をとりまとめ、ホームページ上で公開する。
⇒2)  経営革新補助金については、地方経済産業局担当官会議(平成16年9月)において、新たな様式の補助事業成果報告書(注)について説明するとともに、これに基づき補助事業者に適切な指導及び助言を行うことを周知
(注)  「補助事業成果報告書」に「企業化への課題」及び「その解決方策」を記載する欄を追加

 創業支援の的確な実施
(勧告)
 経済産業省は、中小企業者等の創業の計画的かつ着実な推進及び創造補助金の効果的かつ効率的な使用の確保を図る観点から、以下の措置を講ずることが必要
1)  研究開発等事業計画の認定事業者に対し各種支援措置を重点的かつ総合的に行うため、認定と支援の計画的実施などの具体的方策を充実すること。また、都道府県に対し、これに基づき、技術的助言を行うこと。
2)  創造補助金について、補助事業の進ちょく状況の把握結果を活用する等により都道府県が企業化への指導及び助言が行えるよう補助金交付要綱等の内容を充実すること。また、都道府県に対し、これに基づき中小企業者等に対し適切な指導及び助言を実施するよう指導すること。
 (説明)
 都道府県知事は、中小企業者等又は事業を営んでいない個人が作成・申請した研究開発等事業計画を審査・認定。国、都道府県等は研究開発等事業計画の認定を受けた事業者に対し、創造補助金等の各種支援措置を実施
  •  創造法に基づく研究開発等事業計画の認定件数は9,875件(平成14年度末現在)
    •  平成11年度:1,545件、12年度:1,251件、13年度:1,174件、14年度:1,110件
    •  国の目標(平成13年9月産業構造改革・雇用対策本部決定)「開業・創業を5年で倍増(本部決定時18万社/年)」
  •  調査した認定271事業者(計画期間が終了したもの)のうち、計画を達成したものは122事業者(45%)
 都道府県は、創造補助金の交付を受けた事業の実施状況を把握し、その事業の企業化への必要な指導・助言を行う。
  •  調査した創造補助金の交付を受けた217事業者のうち、製品の販売に至ったものは84事業者(39%)、うち利益を上げているものは16事業者(7%)
  •  調査した24都道府県のうち、創造補助金の交付を受けた事業者に対し、企業化への指導・助言を行っているのは5道府県



→1)  研究開発等事業計画の認定事業者に対する支援については、平成16年4月、「中小企業の創造的事業活動の促進に関する臨時措置法における都道府県の事務等について(都道府県担当部局のためのマニュアル)2004年版」に支援方策等を盛り込み、都道府県に通知
 平成17年4月、創業と経営革新等に対する支援の枠組みの中で、研究開発からその成果の事業化・市場化までを一貫して支援することを目的とする、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(平成17年法律第30号)の施行により、創造法は廃止

→2)  創造補助金については、平成16年4月、補助金実施要領に、関係機関における情報の共有化等を盛り込むなど見直しを行い、都道府県に通知
 創造法の廃止により、創造補助金についても、平成16年度で終了

 経営革新・創業に関する投融資事業、信用保険事業等の的確な実施等
(1) ベンチャー創出支援事業
(勧告)
 経済産業省は、中小企業者の創業・開業を効率的に推進する観点から、ベンチャー財団に対し、投資先の経営内容等を的確に把握し、その結果に対応した的確な措置を講ずるよう指導すること。
(説明)
 中小企業総合事業団は、ベンチャー財団が社債又は株式の引受けにより、創造的な事業活動を行う中小企業者に対し資金支援(投資)を行う場合、当該ベンチャー財団に資金を融通するベンチャー創出支援事業を実施(平成13年度末現在の累積投資額は270億円)
 調査した投資後3年経過した企業(145事業者)の経営は、深刻な状況(破たん:26事業者、3年連続当期損失:21事業者、累積欠損が減少傾向にない:15事業者)
 国は、ベンチャー財団に対し、投資先企業の実態等を把握するよう求めた以外は、経営内容を常態的に把握・分析・評価し、その結果に応じた的確な措置を講ずる旨の指導は、特段実施せず

(2) 信用保険事業
(勧告)
 経済産業省は、経営革新・創業関連の特別保証事業及び特別保険事業の安定的かつ効率的な実施を図る観点から、次の措置を講ずることが必要
1)  保証協会に対し、金融機関との連携を強化し、債務の履行状況報告等を通じ、特に必要と認められる保証委託者については、期中管理を一層充実させるとともに、代位弁済が生じた場合には、求償権の回収促進を図ることについて指導すること。
2)  中小企業総合事業団に対し、保証協会における代位弁済金の回収促進が図られるよう必要な措置を講ずることにより、信用保険部門の財務の健全性の確保を図るよう指導すること。
(説明)
 国は、中小企業の信用を補完するため、保証協会が債務保証する信用保証制度、中小企業総合事業団が保証協会の債務保証に保険を付す信用保険制度を整備(中小企業の経営革新・創業の推進を目的とした特別保証は、10種類)
 調査した23保証協会における特別保証の代位弁済は増加(平成11年度:14億円→13年度:37億円)
 求償権の回収額の割合は低下(平成12年度:2.6%→13年度:1.8%)
 代位弁済の発生回避を目的に、保証委託者に対して積極的な指導・助言を行っている保証協会は半数程度
 中小企業総合事業団の信用保険制度に係る特別保険の収支の赤字が増加(平成11年度:▲マイナス13億円→13年度:▲マイナス35億円)





 創造的中小企業創出支援事業については、ベンチャー財団に対し、平成16年1月の創造的中小企業創出支援事業担当者会議において、投資先の経営内容等の把握とその結果に対応した措置等の実施について、的確に対応するよう指示
 平成17年3月から4月にかけて全国のベンチャー財団を対象に創造的中小企業創出支援事業に係る調査を行った結果、16年1月の指示を踏まえて22ベンチャー財団において、投資先企業のフォロー方法を改善。このうち、投資先企業への訪問頻度を増加させたベンチャー財団は10財団から18財団に増加し、投資先企業のより詳細な経営内容等の把握が可能となり、更に的確な対策の立案・措置を実施







→1)  平成16年2月に、各保証協会に対し、具体的対応策を検討するよう指示
 この指示を受けて、各保証協会において、平成17年8月までに、次のような具体的対応策を実施済み。
 i1)期中管理の一層の充実については、金融機関との連携強化による債務の返済に係る的確な状況把握と早期の対応(40協会)、ii2)求償権の回収促進については、サービサー(債権回収専門会社)との連携強化(42協会)、不動産担保の任意処分の促進(33協会)等、個々の中小企業者の実情に応じたきめ細かな対応を実施

→2)  平成16年2月に、中小企業総合事業団に対し、具体的対応策について検討するよう指示
 この指示を受けて、中小企業金融公庫(平成16年7月1日付けで中小企業総合事業団保険部門を統合)において、保証協会における代位弁済金の回収促進を図るため、次の取組を実施
  •  平成16年度において、46保証協会を対象に現地調査を実施。このうち19保証協会に対しては、回収促進を重点として調査し、回収向上策の具体的内容及び回収好調・不調要因について意見交換を行い、更なる回収向上を要請。この結果は他の保証協会にも周知
  •  保証協会の回収担当者を対象に、求償権回収を進める上で必要となる法制面を中心とした知識の習得や回収促進に対する意識の高揚を図ることを目的とし、「新破産法」をテーマとした法務講演会を全国信用保証協会連合会との共催により実施したほか、サービサーの職員を対象に「新破産法のポイント」等について法務講演会を実施
 経営革新・創業に関する技術的支援等の的確な実施
(勧告)
 文部科学省及び経済産業省は、承認TLOにおける特定研究成果の民間事業者に対する移転を促進する観点から、承認TLOから報告される実施状況報告書等の内容を分析・評価し、これを踏まえた重点的かつ効果的な指導を行うことができるよう仕組みの整備・改善を行い、これに基づき、活動が低調な承認TLOに対し、改善策を講ずるよう指導及び助言を行うこと。
(説明)
 国は、技術移転促進法に基づき、特許権等の譲渡により、大学等における技術に関する研究成果を民間事業者に移転しようとする機関(TLO)のうち、事業実施計画が国の基準に合致するものを承認し、特許料の減免や補助金交付等の助成措置を実施
 承認TLOは、毎年度、事業実施状況報告書を提出
  •  承認後2年以上経過した17承認TLOをみると、ライセンス収入の費用に対する割合は低い(40%超:3機関、40%以下5%以上:8機関、5%未満:6機関)
 承認TLOに対する指導・助言の実施状況をみると、1)文部科学省では民間事業者への研究成果の移転についての指導等は行っておらず、2)経済産業省では重点的に指導対象とする機関の選定が十分に行われていないなど、不十分な状況


 我が国の技術移転体制を抜本的に強化する上での課題を明らかにすることを目的として、経済産業省において「国立大学の法人化等を踏まえた今後の技術移転体制の在り方に関する検討委員会」を開催し、承認TLOによる特定研究成果の民間事業者に対する移転を促進するために必要な取組等を取りまとめ。本取りまとめは、経済産業省と文部科学省との連携・協力により実施し、活動が低調な承認TLOに対して適切な指導及び助言を実施