政策評価制度の法制化に関する研究会(第4回)議事概要

 

1.日時 平成12年10月2日(月)9:30〜12:00
 
2.場所 中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室
 
3.出席者 (研究会)
  工藤敦夫座長、宇賀克也、塩野宏、田辺国昭、吉田和男の各委員
  (大蔵省)
  津田主計局次長、羽深主計局主計企画官
  (総務庁)
  塚本行政監察局長、堀江官房審議官、松村官房審議官、
鎌田企画調整課長、新井政策評価制度法制化担当室長、
若生政策評価等推進準備室長

4.議題
   (1) 法制化についての基本的な論点について
  (2) その他

5.会議経過
  (1) 前回に引き続き、法制化についての基本的な各論点に関して、大蔵省主計局からの意見聴取及び事務局からの説明の後、出席者による自由討議が行われた。
論点と討議の概要は以下のとおり。
       
  1.) 評価結果の政策・予算への反映
  (大蔵省からの意見聴取)
    (ア) 予算は、他の施策との関係や財源、政治的要素等を含めた総合判断により決められており、政策評価の結果を機械的に予算の配分額に結びつけることは難しい。また、諸外国でもそのような仕組みの例はない。
    (イ) 予算編成過程において、予算の質的改善という目的で政策評価を有効に活用するためには、各省横断的な評価方法、基準の作成が必要である。予算編成に活用するためには定量的な評価が望ましい。評価の取りまとめと予算の取りまとめを別々の行政機関が担当することとなるわが国の政策評価制度の特徴にも留意しなければならない。
    (ウ) 政策評価を予算に反映させる仕組みを確立させるためには、十分な準備期間と繰り返しの試行が必要である。米国でも6年の準備期間を置いている。
  (質疑応答)
  評価結果の活用としては、施策内容や手段の妥当性などを横断的に判断し、よりよい施策へ変えていくための材料として使っていくことになろう。各府省が自ら行った評価の結果を予算要求にフィードバックさせる側面と、政府全体として財政当局の予算編成にフィードバックさせる側面の2段階があるということであろう。さらに言えば、与党との調整にフィードバックできるかという問題があるが、政府と与党が一体となって予算を作成するわが国の手法は、主要諸外国には見られない独特のものであり、与党との調整の位置付けは難しい問題である。
  一度各府省が行った評価が、予算要求を受けた財政当局が用いる評価としては不十分であった場合、例えば追加的に評価をやり直すのか、全く別の観点から評価をし直すのか、どういった対応が考えられるかという点も今後の検討課題の一つである。
  特に実績評価における評価項目と予算項目との対比について、対応関係をうまく表現する方法を検討する必要がある。予算要求段階で各府省が提出する評価結果を公表することによりある程度明らかにはなるだろうし、より分かりやすくするために対比を解説した資料を作ることも考えられるだろう。
  国の会計を発生主義にすべきとの指摘もあるが、憲法の国会議決主義に則り国の財政統制をどう利かせるかという観点から現金主義が採用されているのであり、それを変更するという場合には、目的・趣旨など基本的考え方を整理していく必要がある。もっともこれとは別に、財務状況をどう表示し説明責任を果たすのかという観点から、行政コストの計算手法としての発生主義を導入するとの考え方はある。
  (自由討議)
  政策評価の内容としては、予算と直接大きく関わるものと予算とはあまり関係のないものがあり、政策の企画立案への反映と予算への反映が同じ扱いでよいのか検討する必要がある。また、今回の法制化にあたっては、政策評価に対して予算との関係で、当座どこまで何を期待するか、明らかにしておくことが重要である。
  はじめから予算とリンクさせた形で評価制度を考えると、評価自体が予算編成のための前さばきに過ぎないものとなってしまう恐れもある。ガイドラインの際には、この点を議論して、両者にある程度の距離を持たせる形とされた経緯がある。
  政策評価の目的としてアカウンタビリティ(説明責任)を大きく取り上げれば、予算とのリンクはあまり必要ないのかも知れないが、一方で、予算との関係がなければ各府省のインセンティブが働かなくなるのではないか、といった問題もある。
     
  2.) 他の制度との関係
  評価における国と地方との関係も色々論点があり、政策評価法制としてどう取り込むか、地方分権との関係も考慮の上考えていく必要がある。特に地方公共団体に対する資料提出要求等の扱いについて検討する必要がある。
  一方では実効ある政策評価をするためには十分な資料が必要であるという要請があり、他方では地方分権という要請がある。両者の調和を図ることが必要であり、政策評価をしようとするときに、どの程度情報収集し、どの程度の行為を地方公共団体に期待するかという観点から整理しなければならない。また、資料作成などで地方にあまり負担がかかり過ぎないように注意もしなければならない。
  地方公共団体における政策評価制度の実施に関する責務規定を入れることの適否について検討する必要がある。地方公共団体でも国に先駆けて事業評価や政策評価などに取り組んでいるところもあるが、ガイドラインで考えられているような仕組みを全て取り入れているわけではない。
     
  3.) 実施の時期に関する事項(段階的実施等)
  本法制で規定されるものが、直接国民との関係ではなく政府部内でのシステムであるというふうに理解すれば、法律的には必ずしも一斉にスタートしなければならないというわけではない。しかし放っておいては進まないという問題があり、何らかのインセンティブを考える必要がある。
  段階的実施の期限については法律的に決められるものではない。法律としては、評価が行われていないものについて、各府省に対して説明責任を徹底させることで、計画的実施を担保するとすればよいのではないか。
  GPRAのようにパイロットプロジェクトを指定して試行するという方法も考えられるが、実際に何省のどれを指定するかというところで困難になるのではないか。
  各府省にそれぞれ具体的な評価実施計画の策定を行わせる計画法制とし、段階的実施を組み込むことが現実的である。各府省が作成した計画に加えて、それを総務省がチェックして全政府レベルの計画も作成するという二段階方式も考えられるのではないか。
  段階付けの方法として既存の政策については評価の方法が確立していないことを考慮して段階的実施を図ることとし、制度導入後の新規施策については事前評価を即実施することとする、という仕組みは考えられないか。
     
  4.) その他
  <法の基本理念、目的>
  国民主権を基本理念に盛り込むことは、外国に例はないが、国民主権から即政策評価とはならないのであって、その間にガイドラインで示されているような目的の記述をはさむべきではないか。
  アカウンタビリティを果たすことが目的であり、そのための有効な「手段」の一つが政策評価である、という位置付けを念頭に法制化を考えることになるのではないか。とにかく政策評価さえすればそれでよいといったように「手段」が目的化しないよう注意する必要がある。
  「従来の手続き重視から成果重視への転換」と言うときには、公正手続きが重要ではないという意味ではなく、硬直化したルールに拘束されるのではなく、成果をあげるためにルール自体を見直す視点をもつという意味であることがはっきりと示されるよう注意しておく必要がある。
  「安価な行政」という趣旨で、費用を最小限にするということを明確にすることも考えられるのではないか。ただしその場合、評価と予算との関係を明確にしておく必要がある。
  <周辺環境の整備>
  周辺環境としては、パブリック・コメント等幅広いルートで意見を聴く仕組みの整備が重要である。ただし間接民主主義との関係で整理しておくべき点もあることに注意すべき。また、現場から積極的かつスムーズに政策やその実施の在り方についての情報があがってくるような形での現場の情報の吸い上げ・収集の仕組みを創ることも重要である。
     
  (2) 次回(第5回)研究会は、10月18日(水)に開催し、法制化全般に渡り、基本的な論点について討議することとされた。
   
以上
   
(文責:総務庁行政監察局政策評価制度法制化担当室)

 


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