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政策評価の手法等に関する研究会(第2回)議事概要

日時

平成11年9月9日(木) 14:00〜15:15

場所

中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室

出席者

(研究会)
村松岐夫座長、奥野正寛、久保惠一、田辺国昭、星野芳昭、山谷清志の各研究協力者

(発表者(研究協力者を除く。))
居戸利明三重県総務局長

(総務庁)
太田総務庁長官、東田行政監察局長、塚本官房審議官、畠中官房審議官、鎌田企画調整課長、若生政策評価等推進準備室長その他関係官

議題

  1. 総務庁長官挨拶
  2. 議事の公開の取扱について
  3. 先行事例の発表
    • 居戸三重県総務局長「三重県の事務事業評価システムについて」
  4. 研究協力者による発表
    • 奥野東京大学大学院経済学研究科教授「政策評価を行うに当たっての基本的な考え方について」
    • 田辺東京大学大学院法学政治学研究科助教授「政策評価の枠組みとその問題点について」
  5. その他

会議経過

  1. 冒頭、太田総務庁長官から次のような挨拶が行われた。
    • 政策評価は中央省庁等改革の重要なテーマの一つ。
    • 憲法の理念に照らすと、国民主権から国民に対する説明責任が不可欠であること、自由主義から政府は必要以上に関与しないこと、公務員は国民全体に奉仕するパブリック・サーバントであり、特定の分野が優遇されるべきではないこと等、政策評価の幾つかの原則が出てくる。
    • 時の勢いで政策が不適切な方向に進むべきではなく、どこかが冷静なチェックを行い、勇気を持って政策評価を行うことが必要。

  2. 議事の公開の取扱いについて話し合われ、次のような取扱いが了承された。
    • 発言者名及び発言内容は、原則として公開すること
    • 会合は、原則として非公開とすること
    • 発言者名を記し、発言内容をある程度要約した議事概要を会議終了後速やかに作成して公開すること
    • 節目節目で会合後の記者会見を行い、その際、発言者名及び発言内容を明らかにすること

  3. 先行事例の発表として、居戸三重県総務局長から、三重県の事務事業評価システムについて、以下のような説明が行われた。

    • 政策評価は、行政をよりよくするためのツール。政策の質の向上だけでなく、行政や公務員への信頼を高める上でも重要。三重県の事務事業評価システムを理解する上でのポイントは、行政改革運動全体の中の一つのツールとして捉えてもらいたいということであり、かつ、キーとなるツールである。
    • 今後の検討に当たっては、(1)何のために評価を行うのかを決めた上で、それに沿った評価方法を議論すべきこと、(2)評価システムを作ること以上にそれを実際に職員が使いこなせるようにすることは難しく、使いこなせるようなシステムの構築が重要であることに留意すべき。
    • 平成7年の北川知事の就任により、さわやか運動として行政改革運動を開始。翌8年から事務事業評価システムを導入し、3年間取り組んできたが、まだ発展途上。導入の目的は、(1)政策や行政活動の質の向上(評価結果の意思決定への反映、マネージメントツールとしての活用、政策形成能力の向上)、(2)行政の説明責任の遂行である。
    • 評価の対象は予算活動を伴う行政活動全般であり、評価の主体は内部(自己)評価、評価の時期は原則として事後であるが、新規事務事業は事前に評価。現在、情報公開総合窓口及びインターネット上で評価表を公表。
    • 三重県の総合計画の政策体系、事務事業評価システム(基本事務事業)及び予算編成の単位をできるだけ一致させるように努力中。
    • 今後の課題としては、第一に、総合計画、事務事業評価システム及び予算の結びつきを強めるとともに、例えばベンチマークスにより広報・広聴を通じて県民と繋げ、また、人事評価にも一部使えないかを検討中。第二に、公表している評価情報は細かすぎて一般県民に分かってもらえないこと。一般県民に対するアカウンタビリティのツールとして使うことと評価の精度とはトレード・オフの関係。なお、逆にすべての事務事業について網羅的に評価しているため、大規模プロジェクトに関しては精度の面で十分機能していない面がある。第三に、概ね半分近くの県庁職員が事務事業を評価していることになり、仕組作りよりも職員が実際に使いこなせるようにすることが難しく、更なる努力が必要。

  4. 居戸三重県総務局長の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (星野研究協力者)
    • 政策評価は人間が使うシステムであり、活用する者のレベルに合わせて、システムのレベルアップを図ることが大切。三重県でも活用のための教育訓練により多くのエネルギーを傾注。特に管理者(課長)研修がポイント。評価の仕組作りと教育訓練システムの整備とは車の両輪。

    (太田総務庁長官)
    • 三重県が事務事業評価システムを構築できたのは、知事の強いリーダーシップがあったからであり、トップのやる気と勇気が必要。知事は政策体系作りにどこまで関与したのか。

    (居戸三重県総務局長)
    • 政策評価への取組には、知事の強いリーダーシップと我慢強さが必要。しかし、知事は、政策体系作りの詳細までは立ち入らず、哲学やポイントを各作業段階で繰り返し指示した。

    (久保研究協力者)
    • 民間の会計には、公表用の財務会計と公表しない組織マネジメントのための管理会計とがあるが、三重県は後者のマネジメント・ツールまで公表している点が特徴。評価情報も公表目的のものと管理目的のものとを別にしてはどうか。

    (居戸三重県総務局長)
    • 行政情報は、民間と違って原則公開であり、管理ツールでもプライバシーに係る情報等以外は公開対象となる。また、2つの評価情報を別に作成すると、相当な手間とコストがかかる。

    (田辺研究協力者)
    • 指標をどう作成し、どうチェックするかのメカニズムが重要。また、指標の水準を毎年度更に良くしようとするとその達成が難しくなるのではないか。評価と予算とリンクさせることの長所短所にはどのようなものがあるのか。

    (居戸三重県総務局長)
    • 個々の事務事業は専門性が高いため、担当職員が指標を作成しており、また、指標の外部チェックも受けていない。したがって、個々の指標は玉石混合の状況。
    • 指標には、長期的にみると一定以上の向上が難しいという問題が生じるが、今のところは、達成できなかった目標でも下げずにより厳しい目標を設定し、職員に一層の取組を促している。
    • 評価結果を次年度の予算要求に反映させるためには、年度後半の事務事業は見込み評価になってしまうという問題がある。理念としては、予算要求の資料には成り下がらず、適切な評価を行うという気持ちを持っているが、一方で、予算とリンクさせないと真剣な取組が行われないという懸念もあり、どのように運営するかが悩み。

    (星野研究協力者)
    • 政策評価の本質は、企画?実施?評価のマネージメント・サイクルであり、結果を評価して次の企画に反映。予算は企画の一部であり、予算要求への反映が基本となるが、予算要求過程の中で実際に評価を行うと、どうしても予算要求ありきになってしまい評価の客観性を失う恐れ。そこで、結果評価と予算編成の時期を別々にする等の運用上の工夫が必要。
    • 研究協力者による発表として、奥野東京大学大学院経済学研究科教授から、「政策評価を行うに当たっての基本的な考え方について」、以下のような説明がなされた。
    • 政策評価の目的は、(1)アカウンタビリティの向上、(2)政策手段の効率性の向上(コスト削減、品質の高い行政の向上)に大別できる。
    • 政策評価が問題となってきた背景には、政府と国民の間の行政活動に関する情報の非対称性の問題がある。政府の行政活動が専門化し、理解のためには高度な知識が必要になるとともに、その情報量が膨大で必要な情報が国民に知らされないことにより、国民の大部分が国の政策が分からない、判断できない状況が生じている。さらに、政府の肥大化の問題も背景。
    • 政策評価のアカウンタビリティには、(1)競争がないパブリックなものであるが故に、政府自身によって政策を評価すべき義務を負わせること、(2)国民に対する政策の透明性の向上を図るという2つの意味がある。
    • アカウンタビリティを機能させる仕組の整備が必要であり、サンセット制度の導入や予算単年度主義を越えた事前・途中・事後評価を行うことの検討が必要。
    • 費用便益分析において単純に便益が費用を上回ればよいわけではなく、行政が行うためには、何らかの市場の失敗が前提となる。また、可能な限り政策による費用の増と便益の増の比較評価を行うべき。
    • 費用便益分析は、適用できる範囲が限定されることに留意すべきだが、便益評価が困難でも、できるだけ目標の明確化・客観指標化とその事後評価を行うべき。
    • その他、代替的な政策手段の検討や受益者の特定と受益者による負担の検討、市場原理の導入なども必要。
    • インセンティブの授与、事前評価を基にしたより有効で効率的な政策・政策手段の採用も重要。
    • 政策評価はそれ自体に意味があるのではなく、政策評価の仕組を作り、plan-do-seeのサイクルが一定の手続で行われて公表されることで、情報の非対称性を低くすることに意味がある。また 、政策評価の仕組を機能させるためには、情報の非対称性を低くするためのインフラストラクチャーをきちんと考えることが重要。

  5. 奥野研究協力者の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (太田総務庁長官)
    • 評価情報は国民に分かりやすくすると、あまりに簡単なものになってしまうところにジレンマが生じる。そこで、議会の役割が重要になり、議会に説明して納得の得られないものは、政策として採択されないことになる。
    • 費用便益について、絶対的な数値による定量的な比較は難しい。むしろ代替案が提案された時に、オープンにディベートしてどちらを選ぶかという手続が取られることが重要。また、判断する基準を整理し、議会や国民に提案することが必要。

    (星野研究協力者)
    • 事務事業の利害関係者の問題をオープンにすることが納税者に対するアカウンタビリティの本質。また、住民の代弁者的な立場を持つNPO等との評価情報の共有化も必要。NPOから事務事業評価を見ると、三重県の評価表の基本単位である事務事業単位でも粗いものであり、もう一段、具体的な活動単位での評価を求めているのが実態。
    • インセンティブのみならず、評価者が既得権に切り込んだ時に梯子をはずされないようなセーフティーネットが必要。

  6. 研究協力者による発表として、田辺東京大学大学院法学政治学研究科助教授から、「政策評価の枠組みとその問題点について」、以下のような説明がなされた。

    • 政策評価は3つの類型にまとめることができ、第一の「行政活動評価」は、組織のインセンティブの提供と事務の効率化が目的の中心。対象としては、全組織横並びで全てに網をかけ、年に1回、事後的にチェックし、成績点検情報を産出。その際、一覧性を持たせ、全体を見渡せるために評価の項目を絞ること、そのための指標をどう作るかが重要。例としては、三重県の事務事業評価システム、米国のGPRA(政府業績成果法)など。
    • 第二の「プロジェクト評価」は、個々のプロジェクトや規制等を評価し、事業の採否の決定、選択とその順位付けを行うことが目的。したがって、事前に評価しないと意味がないが、また、フォローアップの仕組も必要。手法としては費用便益分析や規制インパクト分析を使用。公共事業、規制及び補助金が対象となり得るが、実際には補助金の評価は難しい。
    • 第三の「政策プログラム評価」は、政策の枠組み自体を評価の対象とし、意思決定権者に対する政策改善のためのアドバイスとしての問題解決情報を提供することが目的。評価に費やすリソースの点から限定的・重点的に実施。時期は事後が中心であり、定性的なものを含めて様々な手法を使用。例としては、GAOのプログラム評価など。
    • 政策評価の3類型をどう組み合わせるかが難しい。3類型から産出される成績点検情報と問題解決のための情報は、内容も産出の経路も異なるため、別途システムを設計しないと情報の抑圧という病理現象を引き起こす可能性が高い。
    • アメリカで試みられたPPBSの失敗を教訓にして、実際に動くような政策評価制度を構築することが重要。すなわち、失敗の原因である(1)政策の効果の把握をアウトカムに集中させ、全てに費用効果分析を義務付けたこと、(2)行政官の作業負荷が極めて大きいこと、(3)評価主体は内部部局だけで、サポートシステムがうまく働かなかったこと、(4)評価と予算を直に結び付けたことを踏まえることが必要。
    • 唯一ベストな評価システムはなく、目的、資源、対象領域毎に適切なものが異なるため、過度に画一的な評価システムの導入は難しいが、極端に分権化した評価システムもチェックのメカニズムが働かない。
    • 評価の主体は、事前評価の場合は当該政策担当部局が行い、これをレビューする仕組を整えるべき。事後評価の場合は、評価の手法に関するノウハウが欠けているので、政策担当部局以外の者を加えることが必要。
    • 政策プログラム評価の把握のレベルとしては、金銭価値に置き換えることよりも、政策がどのような経路を伝わって実現されていくのか、因果的な経路や波及効果の経路を特定して評価情報に盛り込むことの方が重要な場合もある。
    • 新たな評価の手法を役所で開発することは不可能であり、既存の手法をどう組み合わせるかを考えるべき。その際、定量的=客観的=有効という図式は必ずしもあてはまらず、定性的な手法をどう採り入れるかがポイント。
    • 政策評価の情報が果たす役割や利用の形態として、(1)政策の存廃を決める、(2)政策の改良に影響を与える、(3)政策決定の前提となる情報を与える、(4)社会一般に対して教育効果を持つという4つがある。(1)が強調されるが、実践的にはむしろ(3)、(4)の機能を重視すべき。
  7.  
  8. 田辺研究協力者の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (久保研究協力者)
    • 事後や相互のチェックを行って比較するためには、三重県のように体系的な評価を行う必要があり、国民にも国際的にも理解を得られやすいのではないか。
    • 企業の監査のように、総務省の内部監査的な評価と外部者による外部監査的な評価が考えられ、相互に補完関係にある。外部者の評価はコストがかかりすぎて非効率であり、サンプリング程度しかできない。総務省は各府省と全く同じ評価を行うのではなく、評価ができる体制があるか、評価が客観的に行われたかをチェックすることができるのではないか。

    (田辺研究協力者)
    • 行政活動評価のような体系的な評価は一般受けが良く、初期導入では成功するかもしれないが、長期的にうまくいくかは疑問。地方公共団体とは異なり、国は政策が中心であり、事務事業の体系化はあまり有効ではないのではないか。個人的には、プロジェクト評価や政策プログラム評価に重点を置くべきと思うが、体系的な評価も捨て難く、これらの間のウエイトの置き方をよく考えることが必要。
    • 総務省のレビューは、各府省の政策評価に対して対抗関係を持つために重要だが、各府省が評価したことを再度評価するのは資源の無駄遣い。総務省は、全政府的見地とか複数の府省にまたがるとか、各府省とは視点の異なる評価を行うのが適切な分業体制。

    (星野研究協力者)
    • 総務省の役割は、(1)各府省がガイドラインどおりに政策評価を実施しているかをチェックすること、(2)府省横断的な政策評価を実施することである。各府省の実態をある程度踏まえながら、各府省とは異なる立場から評価することが重要。

    (村松座長)
    •  「政策の経路の特定が重要」とはどのようなことを想定しているのか。

    (田辺研究協力者)
    • 例えば、労働省が時短に関する評価を行う際に、中小企業に対する様々な関連施策がどの程度寄与したのかを明らかにすること、通産省の技術開発がどの程度世の中に還元されているかという際に、技術開発の効果の波及経路をはっきりさせることなどが事後的に役に立つ情報になるということである。

    (奥野研究協力者)
    • アメリカでは日本と違い、統計データがプライベート部分を除いて個票の形で提供されているため、研究者が政策について調査・分析できる。総務省の役割の一つは、政策をチェックできるような統計データを国民に提供する仕組みを作ることである。

  9. 次回研究会は、平成11年10月25日(月)9:30から、研究協力者による発表等を議題として開催することとされた。
  10.  
    以上
    (文責:総務庁行政監察局政策評価等推進準備室)

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