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政策評価の手法等に関する研究会(第7回)議事概要

日時

平成12年2月2日(水) 15:00〜17:30

場所

中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室

出席者

(研究会)
村松岐夫座長、奥野正寛、金本良嗣、久保惠一、田辺国昭、星野芳昭、山谷清志の各研究協力者

(発表者)
今里滋 九州大学大学院法学研究科教授

(総務庁)
東田行政監察局長、塚本官房審議官、畠中官房審議官、鎌田企画調整課長、若生政策評価等推進準備室長その他関係官

議題

  1. 意見・論点の中間整理(案)について
  2. 有識者発表「ニュージーランドにおける政策評価の動向」(今里滋 九州大学大学院法学研究科教授)
  3. その他

会議経過

  1. 「政策評価の導入に向けた意見・論点の中間整理(案)」について事務局から説明を行った後、以下のようなやりとりがあった。

    (奥野研究協力者)
    • ニュー・パブリック・マネジメント(NewPublicManagement)の立場では、効率性と有効性とは違う概念であり、政策評価導入の目的の「国民的視点に立った成果重視の行政への転換」の中に有効性という言葉を入れた方がわかりやすくなるのではないか。

    (田辺研究協力者)
    • 有効性(effectiveness)は、目標値に対してどこまで達成できたのかをみる概念であり、効率性(efficiency)は、インプットとアウトプットとの量的関係をみる概念。目的のうち、「国民本位で効率的な質の高い行政の実現」においては主に効率性のことを言っているのに対し、「国民的視点に立った成果重視の行政への転換」では有効性のことを言っているものと理解。

    (久保研究協力者)
    • 「優先性」という観点については、二次的な観点というより「必要性」の観点に吸収されるとも考えられるのではないか。

    (村松座長)
    • 必要性があるものについても優先度を議論する余地はあり、その意味で、一次的な観点をクリアしてもなお「優先性」の評価の対象となるということがあり得るのではないか。

    (奥野研究協力者)
    • 「優先性」の観点がないと、政策を行う際に必要性を満たせば、あるいは、費用が便益を上回りさえすれば政策を実施してもよいということにもなりかねず、行政の肥大化につながるおそれがあるので、「優先性」は残しておくべき。

    (田辺研究協力者)
    • 国がやるべきか否かということであれば必要性の概念に入る。優先性というのは、複数の政策プログラムのうちどれをやるのかという判断である。まず、一次的な観点として個々の政策の中で必要性などをチェックするということがあり、次に二次的な観点としてそれらのどれを先にやるのかというところでプライオリティー(優先性)が出てくるという理解。

    (久保研究協力者)
    • 政策評価の対象を「狭義の政策?施策?事務事業」という形で捉えるのは分かるが、「狭義の政策」という名称はいかにも座りが悪い。全体を「行政評価」と捉え、ピラミッドの一番上の部分を「政策」と呼べば違和感がないのではないか。

    (村松座長)
    • 三段階を包含して行政評価と表現することは解り易いが、法令上、政策評価と行政評価とは並列的に規定されており、これとの整合性を考えると全体を「行政評価」と捉えるのは難しい気がする。

    (星野研究協力者)
    • 行政活動を評価するのが一般的な行政評価であり、その中に更に政策評価が存在するというイメージ、つまり「行政評価=政策評価+政策評価以外の評価」というイメージ゙で出発したのではないか。この両者は、端的に言うと「政策の企画・立案を的確に行うための情報を産出する」という部分が異なるので、これが政策評価の厳密な定義になるのではないか。混乱を避ける意味からも、その解釈を「政策評価とは」の該当部分に記述してはどうか。

    (村松座長)
    • 「政策評価」の定義については様々な議論があり得るところであり、最終段階までに更に詰めていきたいと考えている。

    (田辺研究協力者)
    • 「政策評価の方式のイメージ」の表(別紙)の中で、プログラム評価(仮称)の欄にある「優先度を明らかにするための情報等」という表現は例えば各省庁を横断する評価において異なる施策相互間の優先度を総務省が判定するという意味に誤解される可能性があるため、削除してはどうか。GAOのレポートでも、そこまでは行われていない。

    (星野研究協力者)
    • この部分を削除すると「何を評価するか」という評価の性格についての記述が欠落してしまう。政策体系の全てを視野に入れて総合的に評価するならば優先度の問題を抜きにはできないのではないか。

    (奥野研究協力者)
    • 「優先度」の判断は個別の事業を扱うプロジェクト評価に必要なものであり、施策領域を扱うプログラム評価には入れるべきではない。

    (久保研究協力者)
    • プログラム評価の重点を事後の評価に置くのなら、優先度を捉える意味がない。優先度の判断は事前評価を実施するプロジェクト評価にこそなじむのではないか。

    (奥野研究協力者)
    • 全体の話にも関わるが、政策体系については、真ん中の部分が「プログラム」で、その上位が「ポリシー」であり、上から「ポリシー」?「プログラム」?「プロジェクト」という名称ならしっくりくる。ポリシーは国会・国民の意思決定に属するもので事後的にチェックするもの、プログラムは官(行政)の施策領域において的確に任務を遂行しているか否かをみるもの、さらにプロジェクトは個別の事業展開と捉えた方が良い。

    (山谷研究協力者)
    • 施策レベルの評価をプログラム評価と捉えるとの意見だが、一般に言われるプログラム評価には達成度評価以外の評価も含まれており、施策を実施した結果の満足度等で評価するような分野も存在する(例えば、総理府男女共同参画室の施策など)ため、ここでいう施策レベルの業績評価をプログラム評価と捉えると、そのような分野が欠落してしまうのではないか。

    (久保研究協力者)
    • 業績評価は総合的・網羅的に、「Plan?Do?See」のサイクルに組み込んで実施していくべきもので、プログラム、プロジェクトは個別評価で選択的評価という捉え方ではないか。

    (村松座長)
    • 「業績評価」という名称は言葉としてはより安定的だが、「プログラム評価」という名称については議論の余地があると思われる。このまま外部に一般的に流通することを思うと、慎重に考える必要がある。

    (星野研究協力者)
    • 評価方式の分類の切り口を評価対象のレベル(政策?施策?事務事業)と評価の視点(目標達成度評価型等)の2つに分けて捉えてはどうか。この2つの視点で整理し直してみれば、どの評価が現実的なものか見えてくるし、プログラム評価のイメージも固まるのではないか。

    (村松座長)
    • 評価に関する対象や観点については不十分な面もあるが、中間整理としては、これくらいでどうか。

    (金本研究協力者)
    • これまでのところ、プロジェクト評価の一部を除いて現実に評価の成果が出ている状況にはなかなかならないが、プログラム評価や業績評価の事例もあるので、国の政策評価として良い評価ができるか否かのイメージを明確にするためにも、一度各省庁に投げかけてみるのが大事。米国のGPRAにおいては、プログラムを大きく捉えて業績評価としてみていくという状況のようなので、これがどのように進んでいくかも見極める必要があると考えている。

    (村松座長)
    • 以上を踏まえて所要の修正を行い、意見・論点の中間整理として公表することとしたい。

  2. 九州大学大学院の今里滋教授からニュージーランドにおける政策評価の動向について発表があった。

    (今里教授)
    • ニュージーランドは、行革の先進国として世界中の行革のモデルとなってきた国だが、衛生、教育、福祉などの国の直轄事務の比重が高い。また、英国の地方自治体の運営改革を意識して取り組んでいる。地方自治体もNPM的な改革を進めてきた。地方行政制度については、1989年の地方行政改正法で大きな改革がなされた。
    • ニュージーランドにおける自治体改革の特色は、公共部門全体における改革を地方自治体の経営改革の中に取り込んでいったという点。例えば、行政改革におけるマグナカルタ的な文書となっている経済声明(1987年12月17日財務省発表)では、規制緩和や民間委託といった改革の基本的路線が打ち出され、その一環として、地方政府の機能のあらゆる側面の完全かつ全面的な改革を宣言。
    • その際に出された重要な指針として次のようなものがある。(1)規制活動と非規制活動(サービス活動)の分離(それぞれの組織形態に沿った目標の設定、情報公開による透明な意思決定、業績の評価)、(2)アカウンタビリティ・メカニズム(地方自治体への発生主義会計の導入、支出重視から目標重視の会計報告へのシフト、目標の設定や地方自治体の活動の報告について住民に意見を求めていくことの大幅な増加)、(3)ニュー・マネージメント・スキーム(アカウンタビリティの明確化のため、公選で選ばれたカウンシル(議員)など地方自治体の政治的な部門と管理運営部門を明確に分離。管理運営部門の長であるCEO(ChiefExecutiveOfficer)は、マネジメントの責任を負い、職員の雇用と人事に係る責任と権限を全面的に掌握するとともに、労働条件の面でも人事上の責任を持つ。一方、CEOの任期は最長5年だが、業績によっては途中の解雇もある。)
    • 地方自治体改革の主な内容としては、(1)地方自治体の再編成及び大幅な合併(741の自治体を92に整理統合)、(2)地方自治体の権能の拡大(受益型のサービスについて個人と同じような行為能力を持つようにする)、(3)地方自治体の事業の企業化(従来の直営方式に加え、企業的性格の強い公営企業体(LocalAuthorityTradingEnterprise)の仕組みを導入)、(4)住民に対するアカウンタビリティの強化(地方自治体の裁量による起債を可能にし、年次報告で事業の業績や結果を住民に説明し、そのプロセスで住民に意見を聴く。)、(5)機構改革(議員とCEOの役割を分離。議員は専ら地方自治体の政策的な意思決定を行い、CEOは決定された政策に即して地方自治体の効率的・効果的な運営を担うというように政治・行政を二分。)、(6)財政改革(10年単位で地方自治体の長期財政計画の策定を地方自治体に義務付け。地方自治体の財政状況を10年単位で住民にガラス張りにし、健全な財政運営を確保。)
    • ニュージーランドの地方自治体改革の方向性はそれぞれで異なり、福祉国家的な大きな政府を目指すクライストチャーチ市と違い、ハット市などでは小さな政府を目指している。5年ほど前から資産売却、民間委託、民営化の推進及び職員数の削減等により、財政再建に成功。
    • ハット市における行政経営の方策は次のとおり。(1)長期財政戦略:支出を要する諸活動について実施の理由とその見積りを明示。(2)戦略計画:長期財政戦略を組み込んだ1998?2008年の計画。財政見通しを含め議会で議決。議会の住民に対する約束の文書としてアカウンタビリティの根本となるものであると同時にその執行を任されたCEOの議会に対する約束の文書という二重の意味を持つ。なお、この計画は不変のものではなく、必要に応じて見直される。(3)年次計画:戦略計画で示された市のビジョンを1年ごとに具体化した計画と予算を一体化させたもの。まずレイト(RATE)(自治体の主たる財源となる一種の資産税)や財政状況を説明した上で、博物館の経営や市の上下水道の維持管理など市の38の活動それぞれについて収支の予測と業績の具体的な指標(PerformanceMeasure)を明示するとともに、その業績測定の主体及び測定方法も明記。(4)サービス規則(年次計画で掲げられた業績指標のうち、上水供給などサービス提供に係る40の活動についての業績評価の規則)及び資産管理計画(都市のインフラ全体に対する管理についての計画)。(5)年次報告:年次計画で掲げた業績指標がどのように達成されたか、収支が予測と比べてどうであったか、について会計年度から5か月以内に報告。
    • 住民の満足度などが指標となっている場合、その達成度を測るためにハット市では住民意識調査を実施。毎年500人を対象とする調査を民間会社に委託。
    • ハット市では、住民は戦略計画や年次計画を基に市長や議員を評価し、議会はCEOの業績を目標の達成度によって評価する。そしてそのCEOは市職員全員の業績評価と雇用管理に責任を持つ。すべての職員は、毎年自分の仕事に対する目標を設定し、その達成度について業績評価を受け、その結果が職員の処遇に直結する。また、管理職についても、3年ごとの雇用契約更新は業績評価と密接な関係を持つ。
    • ハット市における政策評価やトータルマネジメントのシステムを動かしている基本的部分は受益と負担の明確な関係である。ニュージーランドでは、自治体収入の9割を占める自主財源の中心は固定資産税であり、支出を増やせばそれだけ納税者の負担が増えるため、受益と負担の関係が非常に明確。サービスの新設や拡大の際には、真に税金による負担が必要か、行政の守備範囲として妥当かということが非常に厳しく議論される。年次報告などでは、いかに「経済的に(economy)」、「効率的に(efficiency)」かつ「有効に(effective)」という3Eで行政の運営がなされてきたかということを説明しないと住民は納得しない。

  3. 今里教授の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (星野研究協力者)
    • 国で政策の大半をカバーしているということだが、ニュージーランドの地方自治体は、例えば水道供給などを行う公営サービス事業体のようなものなのか。それとも地方自治体独自の政策というものについてはどのようなものがあるのか。

    (今里教授)
    • 「資源管理法」により自然や資源の管理については地方自治体が責任を持つこととされており、都市計画や自然保護計画のようなプランについては地方自治体が主体となるため、自治体の裁量がある。もっとも、ニュージーランドでも政府間関係については常に議論があり、福祉や教育などは自治体が担ってもよいのではないかという議論もある。

    (山谷研究協力者)
    • 政策評価をPolicyReviewとされていたが、PolicyEvaluationという用語は用いないのか。

    (今里教授)
    • 自治体の場合はPerformanceMeasurementという言葉が圧倒的に多いが、国の政策レベルでならPolicyEvaluationという言葉が用いられるかもしれない。

    (星野研究協力者)
    • パフォーマンスの捉え方について、例に挙げられた水道局のようなレベルではなく、いわゆるPolicyレベルでの目標としてはどのようなものがあるのか。また、それらの目標は、住民に数値目標で公表して、どこまで実施するかということの情報の共有化を図っているのか。

    (今里教授)
    • 例えば、一人当たりの公園面積、美術館の面積、芸術的な公演の回数など。また、人種間の融合など多様な政策をやっている所もある。ニュージーランドの場合、住民の満足度を中心に評価している傾向があるとの指摘があるが、議会は住民に対してどれだけ努力しているかを説明しなければならないし、住民も満足度抜きの客観的指標では納得しない。評価結果と住民の満足度はダイレクトに結びつくという考え方が強い。

    (村松座長)
    • CEOと契約するのは市長か、議会か。また、市長の仕事はどのようなものなのか。

    (今里教授)
    • CEOと契約するのは議会である。ハット市の場合、市長の大きな役割は市議会の議長であるとともに、諸々の契約などにおいて対外的に市を代表することである。

    (田辺研究協力者)
    • ニュージーランドでは大臣と事務次官とは契約が結ばれていて、大臣はアウトカムを見て、事務方(地方自治体ではCEO)はアウトプットの指標に関してのみ責任を負うと聞いている。

    (今里教授)
    • CEOは、政治行政二分論でいうPolicy面には立ち入らないようだ。CEOとしての政治的中立性が失われるため、あくまでも技術的な点に限定しているということらしい。しかし、実際には政治家や政策に責任があるという不満もCEOの側にはあるのではないか。

  4. 次回第8回研究会は、平成12年2月25日(金)10:00から、マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン・インクパートナーの上山信一氏による「行政評価の可能性と限界」についての発表等を議題として開催することとされた。


以上
(文責:総務庁行政監察局政策評価等推進準備室)

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