官庁共通経費等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告

−庁舎管理、官庁物品購入等を中心として−

 

 

 

 

 

 

平成13年4月

 

総務省

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前  書  き

  各府省は、行政事務の遂行に当たって必要な庁舎の維持管理等、物品の購入等を実施している。
  厳しい財政事情の下、各種施策の見直しに加えて、各府省に共通する庁舎の維持管理等に係る経費や、物品の購入等に係る経費についても節減合理化が求められている。
  このためには、契約における競争の導入やまとめ買いの徹底等に一層積極的に取り組んでいくことが必要である。また、大口需要者向け電力の小売自由化による事業者の新規参入や、電気通信事業者の料金競争を背景とした電話料金の各種割引制度の新設等を踏まえ、これら契約の見直しに取り組んでいくことが必要である。
  なお、政府においては、平成11年4月27日に「行政コスト削減に関する取組方針−行政の効率化を目指して−」を閣議決定し、経費の節減・合理化を推進している。
  この行政評価・監視は、各府省に共通する庁舎等の維持管理、物品購入等業務の合理化・効率化等を推進する観点から、各府省におけるこれらの契約の締結状況等を調査し、関係業務の運営の改善に資するため実施したものである。


目      次


 契約方式の見直し等
(1)  庁舎の維持管理等に係る契約の見直し
(2)  物品調達契約の見直し
 契約内容の見直し等
(1)  電力供給に係る一般競争契約の導入及び下水道料金に係る減免制度の活用
(2)  電話料金に係る料金割引制度の活用等
 契約に係る情報提供の充実
 経費節減の実効性を確保するための取組



1  契約方式の見直し等
  (1)  庁舎の維持管理等に係る契約の見直し
  国が売買、賃借、請負その他の契約を締結する場合は、機会の均等及び公正性の保持に加えて、最も有利な条件の相手方を選定するため、会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3第1項に基づき、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない(一般競争契約の原則)こととされており、指名競争及び随意契約は次の場合に限定して認められている。
  指名競争に付することが認められる場合は、会計法第29条の3第3項により、競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合及び一般競争に付することが不利と認められる場合であり、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第 165号。以下「予決令」という。)第102条の4第2号により、一般競争に付することが不利と認める理由は次の1)から3)までのいずれかに該当するときとされている。
1)  関係業者が通謀して一般競争の公正な執行を妨げるおそれがあること。
2)  特殊の構造の建築物等の工事若しくは製造又は特殊の品質の物件等の買入れであって検査が著しく困難であること。
3)  契約上の義務違反があるときは国の事業に著しく支障をきたすおそれがあること。
  また、随意契約によることが認められる場合は、会計法第29条の3第4項により、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合とされており、予決令第102条の4第4号により、その不利と認める理由は次の1)から4)までのいずれかに該当するときとされている。
1)  現に契約履行中の工事、製造又は物品の買入れに直接関連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させることが不利であること。
2)  時価に比べて著しく有利な価格をもって契約をすることができる見込みがあること。
3)  買入れを必要とする物品が多量であって、分割して買い入れなければ売惜しみその他の理由により価格を騰貴させるおそれがあること。
4)  急速に契約をしなければ、契約をする機会を失い、又は著しく不利な価格をもって契約しなければならないこととなるおそれがあること。
  なお、上記の理由にかかわらず、会計法第29条の3第5項に基づき、庁舎の維持管理契約等の役務契約で、予定価格が 200万円を超えないものについては指名競争に付することができることとされ(予決令第94条第1項第6号)、また、100万円を超えないものについては随意契約によることができることとされている(予決令第99条第7号)。さらに、予決令第99条の6に基づき、随意契約によろうとするときは、なるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならないこととされている。

  今回、17府省 287機関における庁舎の維持管理等に係る11業務 1,667 件の契約締結状況について調査した結果、次のような状況がみられた。
  随意契約が1,233件(74.0パーセント)(予定価格が100万円を超えないため随意契約としたものを除いた件数では668件(60.6パーセント))を占めており、一般競争契約は294件(17.6パーセント)、指名競争契約は140件(8.4パーセント)となっている。
  また、庁舎の維持管理に係る庁舎清掃、電気工作物保守、空調設備保守及び消防設備保守の4業務(393契約)について、契約金額が予定価格からどれだけ減額されているか(以下低減率」という。)についてみると、一般競争契約の低減率は19.6パーセントであるのに対して、指名競争契約の低減率は 8.4パーセント、随意契約の低減率は7.2パーセントにとどまっており、一般競争契約が経済性の面から最も有利な契約方式となっている。
  さらに、随意契約としているものの中には、次のとおり、一般競争契約とするなど競争原理の導入の促進や価格情報の収集等により契約金額の低減化を図る余地のあるものがみられた。
1)  業務を委託により行うこととした当初には競争契約としているなど、本来、競争になじむものでありながら、「契約の性質又は目的が競争を許さない」、あるいは「競争に付することが不利」であるとして随意契約としているもの(14府省15機関)
2)  予定価格が少額であるため随意契約としているものの中に、見積合わせを行わずに契約していたり、他の業者における履行の可能性の検討や、価格情報等の収集など契約金額の節減に向けての努力が不十分であると認められるもの(3省4機関)

  したがって、関係府省は、庁舎の維持管理等に係る契約の公正性及び経済性の一層の確保を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1)  契約の性質、内容等からみて競争になじむものでありながら随意契約としているものについては、競争契約とすることにより、契約金額の低減化を推進すること。
  (内閣府、宮内庁、金融庁、総務省、公正取引委員会、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)
2)  予定価格が少額であるため随意契約としているものについては、見積合わせを的確に実施するとともに、他の業者における履行の可能性の検討や価格情報の収集などにより、契約金額の低減化を推進すること。
  (総務省、法務省、国土交通省)
(2)  物品調達契約の見直し
  物品の調達については、原則として一般競争に付さなければならないこととされており、指名競争及び随意契約は一般競争に付することが不利と認められる場合等に限定した契約方式である。ただし、予決令第94条第1項第2号によれば、予定価格が300万円を超えない財産を買い入れるときは指名競争に付することができることとされ、また、予決令第99条第3号によれば、予定価格が160万円を超えない財産を買い入れるときは随意契約によることができることとされている。

  今回、17府省 275機関における机等の備品7品目及びコピー用紙等の消耗品7品目の調達状況について調査した結果、次のとおり、一般競争契約とする余地のあるものや、効率的かつ経済的な調達を徹底すること等により経費の節減を図る余地のあるものがみられた。
1)  特定メーカーの特定製品を指定して、随意契約により調達しているもの(5府省23機関)
2)  正当な理由がないにもかかわらず、指名競争契約又は随意契約により調達しているもの(4省7機関)
3)  消耗品の調達において、割高となる純正品のみを調達していたり、割安となるまとめ買いを実施していない等のため、調達価格が高くなっているもの(11府省32機関)
4)  普通品で足りるにもかかわらず、高品質の製品を調達しているため、調達価格が高くなっているもの(1府1機関)
5)  1契約当たりの調達数量をまとめる余地があり、これにより競争契約とすることが可能であるもの(8府省11機関)
  ちなみに、上記3)及び4)において節減が可能であったと認められる金額を合計すると約 6,700万円と推定される。
  したがって、関係府省は、物品調達契約について、契約の公正性及び経済性の一層の確保を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1)  予決令に定める予定価格の上限を超えて、随意契約又は指名競争契約としているものについては、一般競争契約の採用を徹底すること。
  (内閣府、宮内庁、法務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省)
2)  まとめ買いの徹底、調達品の品質の再検討等により効率的かつ経済的な調達を徹底し、経費の一層の節減に努めること。
  (内閣府、宮内庁、総務省、公正取引委員会、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)

  2  契約内容の見直し等
  (1)  電力供給に係る一般競争契約の導入及び下水道料金に係る減免制度の活用
  電力供給に係る一般競争契約の導入
  電力供給については、各府省は、従来、電力の使用量や使用の実態に合わせて、地域を管轄する電力会社(一般電気事業者)と契約を締結していた。
  一方、電気事業法(昭和39年法律第 170号)の一部改正(平成12年3月施行)に伴い、一定規模以上の需要者向けに電力を供給する「特定規模電気事業」が新たに認められた。
  これにより、一般電気事業者の特別高圧電線路から使用最大電力が原則として 2,000キロワット(沖縄電力株式会社にあっては2万キロワット)以上の規模で電力の供給を受けている需要者については、特定規模電気事業者(特定規模電気事業を営むことについて届出をした者)を含めた一般競争入札により電力を調達することが可能となった。
  これを受けて、経済産業省(本省)は、平成12年8月に、同年8月31日から1年間の電力供給を受ける契約をするための一般競争入札を実施し、特定規模電気事業者が2億7,945万900円で落札した。これは前年度の契約金額に比べて705万5,245円(2.35パーセント)減少したものとなっている。

  今回、17府省 362機関における電力供給契約の状況等について調査した結果、経済産業省(本省)を除く10府省の管理に属する38庁舎が一般電気事業者の特別高圧電線路から受電し、最大使用電力が2,000キロワット以上であった。
  これらの庁舎を管理する機関は、電力供給契約に当たり、現時 点では一般競争入札を行っていないが、今後の特定規模電気事業者の電力供給体制の整備に対応して一般競争入札を実施することにより、電力料金の節減を図る余地があるものと認められる。
  下水道料金に係る減免制度の活用
  水道料金は、上水道料金と下水道料金に分かれているが、下水道料金は、通常、上水道使用量と同量が下水道に流入するものと推定して、上水道の使用量を基に算定されている。
  しかし、空調用の冷却塔からの蒸発水のように、下水道に流入しない分(減水量)について正確に計測した上で、水道事業者に申請し認められたものについては、下水道料金の減免を受けることができることとなっている。

  今回、下水道料金について、17府省 362機関の支払状況について調査した結果、水道事業者に対して減水量申請が行われておらず、下水道料金の節減を図る余地のあるものが、7府省の管理に属する8庁舎においてみられた。
  ちなみに、これらの機関において、下水道に流入しない分を計測して、申請を行うことにより、約 2,700万円の節減が可能と推定される。

  したがって、関係府省は、光熱水料の一層の節減を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1)  大口需要者向けの電力小売自由化のメリットを最大限享受できるよう、電力供給契約に当たっては一般競争契約の導入を図ること。
  (防衛庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省)
2)  下水道料金の減免制度の活用を図ること。
  (内閣府、宮内庁、総務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省)

  (2)  電話料金に係る割引制度の活用等
  電話料金については、固定電話の場合、市内通話料金が3分間当たり9円になるもの、1回線当たり毎月定額の使用料を支払うことにより5分間当たり10円になるもの、国内の市外通話料金や国際電話料金については、毎月定額の使用料を支払うことによる利用金額に応じた段階的な通話料金の割引等の割引制度が設けられている(平成11年4月現在)。
  一方、携帯電話については、毎月の通話の実態に見合う料金プラン、回線ごとの支払いを一括とすることによる料金の割引、一定期間の契約の継続を約束することによる料金の割引等の割引制度が設けられている。
  また、固定電話及び携帯電話の料金制度は、事業者間の激しい料金競争を背景に頻繁に変更されているほか、各種の割引制度が次々と新設されている。
  これらの割引を受けるためには、利用者自身の選択・変更申込みが必要とされていることから、割引制度の新設・変更情報を常時収集し、より有利な契約内容となるよう適時に見直しを行うことが求められている。

  今回、17府省 329機関において、電話料金の割引制度の利用状況について調査した結果、次のとおり割引サービスの活用により電話料金の節減を図る余地のあるものがみられた。
1)  固定電話の通話料金において、各事業者の提供する大口割引サービス等を利用していないため、割高な通話料金を支払っているもの(17府省151機関)
2)  携帯電話の利用の実態に即し、最も有利な契約となるよう見直しを行っていなかったり、携帯電話の毎月の請求を一括とすること等により料金が割引となるサービスを利用していないため、割高な料金を支払っているもの(16府省150機関)
  ちなみに、割引サービスを活用することにより、固定電話においては約 4,300万円、携帯電話においては約 1,300万円の節減が可能と推定される。

  したがって、関係府省は、電話料金の一層の節減を図る観点から、事業者が提供するサービス内容及び料金の新設・変更に係る情報の収集に努め、適時適切に契約内容を見直す必要がある。
  (内閣府、宮内庁、国家公安委員会(警察庁)、防衛庁、金融庁、総務省、公正取引委員会、公害等調整委員会、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)

  契約に係る情報提供の充実
  契約担当官等は、一般競争入札を実施しようとするときは、「その入札期日の前日から起算して少なくとも10日前に官報、新聞紙、掲示その他の方法により公告しなければならない」こととされている(予決令第74条)。
  また、政府においては、現在、調達手続の電子化について、「バーチャル・エージェンシーの検討結果を踏まえた今後の取組について」(平成11年12月28日高度情報通信社会推進本部決定)に基づき、1)調達情報提供の充実及び提供情報への簡易なアクセス、2)競争契約参加資格審査基準の統一、3)入札・開札・契約の電子化等について検討が進められている。このうち、1)の調達情報の充実等については、政府調達情報のデータベースを平成12年度中に構築し、平成13年度からインターネット上で、国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令 (昭和55年政令第 300号。以下「特例政令」という。)に基づく契約(物品等の調達において予定価格が 2,100万円以上のもの)に係る情報を提供することとされている。

  今回、17府省の本府省における一般競争入札の公告方法について調査した結果、庁舎内外の1ないし2か所に掲示している場合が大半を占めており、中には会計担当課に掲示しているのみとなっている府省がみられるなど、事業者が調達情報を容易に得にくい状況となっている例がみられた。
  また、特例政令に基づく契約以外の一般競争入札に係る情報提供については、可能なものから順次提供していくとされていることもあり、ホームページ上で入札の公告を行っていたのは、4省にとどまっていた。

  したがって、関係府省は、事業者の利便向上、入札参加機会の拡大及び一層の競争性の確保を図る観点から、特例政令に基づく契約以外の一般競争入札に係る契約についてもホームページ上で入札の公告を行い、調達情報提供の一層の充実を図る必要がある。
  (内閣府、宮内庁、国家公安委員会(警察庁)、防衛庁、金融庁、 総務省、公正取引委員会、公害等調整委員会、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省)

  経費節減の実効性を確保するための取組
  政府は平成11年4月27日に「行政コスト削減に関する取組方針−行政の効率化を目指して−」を閣議決定し、業務量、定員等の政府の規模面でのダウンサイジングを目指す「行政の減量化」と限られた定員、財源を有効に活用する「行政の効率化」とを両輪として、行政コスト削減のための不断の努力を行い、平成11年度から10年間にわたり行政コストの30パーセント削減に取り組んでいくこととしている。
  上述のとおり、17府省 362機関における庁舎の維持管理及び備品・消 耗品の調達に係る契約の締結状況等について調査した結果、i)一般競争契約とすることによる契約の公正性の確保及び契約金額の低減化、ii)電話料金等に係る割引料金等有利な制度の活用、iii)効率的な物品の調達等により、更に経費節減を図る余地がみられた。
  ちなみに、平成11年度に節減を図ることが可能であったと認められる金額は、電話料金、下水道料金及び消耗品の調達に係るもので約1億5,000 万円と推定される。このうち、コピー用紙の購入に係る節減可能額が最も多く 6,500万円となっており、当該32機関のコピー用紙(A4判)の購入額(1億 7,800万円)の36.4パーセントに相当するものとなっている。
  このようなことから、各府省が全庁的な取組として調達等における経費の節減を図ることが重要である。また、印刷物の部数の削減や電灯の消灯などによる電気使用量の抑制等による経費節減対策を経常的に講ずることも求められる。
  なお、三重県及び広島県では、具体的な目標を掲げた実行計画を策定し、これに基づき、毎年度、経費節減のために必要な点検等を行う仕組みを整備し経費の節減に取り組んでいる。ちなみに、平成11年度における、三重県の対前年度経費節減額は約 6,500万円、広島県は約3億円となっている。

  したがって、各府省は、閣議決定「行政コスト削減に関する取組方針−行政の効率化を目指して−」等を踏まえつつ、物品・役務等の調達方法の工夫や光熱水料の抑制等に計画的かつ継続的に取り組み、一層の経費節減を図る必要がある。これらの取組を実効性のあるものとするため、節減のための取組内容、節減目標、節減状況の点検方法等を盛り込むなどした実施要領を策定し、これに基づき経費節減を着実に実行し得る仕組みを整備する必要がある。
  (内閣府、宮内庁、国家公安委員会(警察庁)、防衛庁、金融庁、総務省、公正取引委員会、公害等調整委員会、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)