ピックアップ!ふるさと納税

東京都 墨田区 北斎の美術館を魅力あるまちづくりの拠点に。

建設中の「すみだ 北斎美術館」の写真<東京都墨田区に建設中の「すみだ 北斎美術館」は、外観の鏡面アルミパネルにまちの風景が映り込むデザインが特徴。
平成28年11月22日開館予定。>

東京都23区の東部に位置する墨田区は、西に隅田川、北から東には荒川が流れる川のまちです。
江戸切子(えどきりこ)をはじめとする江戸時代からの職人文化が受け継がれており、
ものづくりのまちとしても知られています。浮世絵師の葛飾北斎(かつしかほくさい)もこのまちで生まれ、
生涯のほとんどを墨田区で過ごし、数多くの作品を残しました。
北斎ゆかりの地である墨田区に「すみだ 北斎美術館」が平成28年11月22日オープンします。
念願の美術館完成に向けて、まちは活気づいています。

【区長からのメッセージ】

墨田区は、隅田川をはじめとする豊かな水辺に恵まれ、墨堤の桜や隅田川の花火、両国の相撲など江戸時代からの歴史と伝統文化が今に受け継がれるまちであり、優れた技術力が集積する「ものづくりのまち」として発展してきました。
このような歴史と伝統に育まれた墨田区は、政治や文学、スポーツ、芸術など様々な分野にわたり偉人を多数輩出しており、日本が誇る世界的な絵師・葛飾北斎(1760-1849)もその一人です。
平成28年11月、郷土の偉人である北斎を末永く顕彰し、北斎の偉業や作品を広く世界に向けて発信する「すみだ 北斎美術館」が、生誕の地である墨田区亀沢にオープンします。
「国際文化観光都市」づくりを推進する墨田区にとって、北斎美術館の開館は、東京スカイツリー®に続く観光スポットの誕生です。北斎美術館のほど近くには江戸東京博物館や相撲博物館、たばこと塩の博物館、区内に点在する小さな博物館、そして平成29年度に開館予定の刀剣博物館などがあり、江戸文化や「ものづくり」の精神が息づく「すみだ」の魅力を満喫していただけるものと思っています。
世界に誇る優れた作品を多くの皆様に御鑑賞いただきますよう、人々に愛される「すみだ 北斎美術館」づくりを進めていきますので、全国の皆様のあたたかい御支援をよろしくお願いいたします。

ふるさと納税の状況

「冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」などで世界的にも知られる葛飾北斎は、宝暦10(1760)年に本所割下水(ほんじょわりげすい、現在の墨田区亀沢辺り)に生まれ、隅田川をはじめとしたまちの風景を数多く描きました。墨田区では、郷土の誇りである北斎の功績を永く伝え表彰すると共に、観光や産業へも寄与する地域活性化の拠点として「すみだ 北斎美術館」の開設準備を進めています。そこで平成26年度から「すみだ 北斎美術館」の事業に限定して「北斎ふるさと納税」を募ることとしました。「すみだ 北斎美術館」は墨田区民をはじめとして、多くの方に「世界の北斎」を知ってもらうための文化施設であることから、全国の寄附者から応援をいただき、広く北斎を発信し続ける美術館にしたい、という思いがありました。同時に、全国に向けて寄附を募ることによって、北斎と墨田区のつながりを広く周知したいと考え、「すみだ 北斎美術館」の事業に限定した「北斎ふるさと納税」を導入することとしました。
墨田区では平成26年度から開館の平成28年度までの3年で5億円の寄附を集めることを目標としました。
「北斎ふるさと納税」を始めた初年度は、区内にゆかりのある企業や団体等を中心に取組の主旨を説明し、ご支援をお願いしました。美術館に来て楽しんでいただけるように、美術館内の寄附者銘板に名前を掲載する「絵画一口オーナー」や1年間有効の入館無料パスを進呈する「北斎サポーター」などを募ったところ、全国から2億円を超える寄附が寄せられました。また、2年目には、インターネットによる寄附募集を行い、全国各地から更なる多くの寄附が寄せられました。
区役所まで足を運び「待ち望んでいました。これを使ってください」と言って、ふるさと納税をされる方もいるほどです。
寄附者の方々には、北斎に関する情報を紹介する季刊紙「北斎かわらばん」を送付しています。北斎にまつわる様々なエピソードを取り上げて学芸員が書くコラムなど、子どもたちも楽しく読める冊子です。建設工事の進捗状況も紹介し、完成への期待感の高まりを寄附者の方々と共有しています。
墨田区では「北斎ふるさと納税」を通じて、全国の皆様から応援を得ながら長く愛される美術館としての運営に寄附金を活用していきたいと考えています。

「北斎ふるさと納税」の寄附金額と件数の実績(平成28年2月末現在)
年度 件数 寄附金額
合計 3,452件 383,769,330円
平成26年度 493件 218,287,210円
平成27年度 2,959件 165,482,120円
「北斎ふるさと納税」のパンフレット写真

「北斎ふるさと納税」のパンフレット。墨田区役所1階の情報コーナーに設置しています。

「北斎かわらばん」の写真

寄附者に毎号送付している
「北斎かわらばん」

「北斎かわらばん」の中身「北斎かわらばん」では、北斎自身のことや作品についての情報が毎号、読みやすい文章で紹介されています。

北斎ゆかりの地に美術館を建設する、念願のプロジェクト。
「すみだ 北斎美術館事業」

区民や協力者の思いに応えるために。

すみだ北斎美術館の建設は、平成元年度に墨田区で計画されたプロジェクトでした。しかし、平成3年以降のバブル崩壊で区の財政状況が厳しくなり、財政が好転したときに再始動する事業に位置づけられました。その後、平成18年3月には東京スカイツリー®が墨田区に建設されることが決定したのを契機に、墨田区の最上位計画である基本計画の中で、本プロジェクトが位置付けられました。再始動後は、建設地の変更や東日本大震災の影響等もあり、平成26年7月に建設着工となったのです。

26年におよぶ歳月を経てプロジェクトを推進してきた、その原動力となったのは「区民や協力者の思いに応える」という一念でした。建設時点で既に、約1,500点のコレクションが墨田区の財産としてありました。その中心となるのが北斎のコレクターで研究者としても知られる故ピーター・モース氏のコレクションです。平成5年のモース氏の急逝後、コレクションの散逸を惜しまれたご遺族の理解を得て、約600点を「資料を散逸させない」目的で墨田区が購入しました。また「公立の美術館をつくるのなら」と作品を寄贈してくださった浮世絵の専門家もいます。さらに一昨年には、100年ぶりに発見されて英国で競売に出された「隅田川両岸景色図巻(すみだがわりょうがんけしきずかん)」という北斎の肉筆画を、区内の篤志家(とくしか)からの寄附により墨田区で購入することができました。こうした方々の思いに必ず応えなければならない、という責務が墨田区にはあったのです。
建設前は、他の施策に予算を回してはどうか、といった意見も区民の間にはありました。しかし、平成26年度からふるさと納税という目で見える形で全国から支援が集まり、美術館完成への期待が区内で高まっていきました。さらに北斎ゆかりのまちで、魅力的なまちづくりの拠点として美術館を造ることへの理解も区民の間で広がっていきました。
こうした機運を盛り上げる力の1つになっているのが、墨田区と北斎とのつながりや北斎の魅力を発信する多様なイベントです。北斎作品をモチーフにしたモザイクアートやサンドアートを地元の高校生が中心となって制作したり、北斎作品の奇抜な格好をした絵図を手本にヨガをするワークショップを開くなど、パフォーマーやアーティストと協力して北斎の様々な魅力に焦点を当てたイベントを開催しています。こうして北斎を核としたネットワークを強化・拡大することによって、美術館完成後も文化都市としての墨田区のまちづくりを発展させていきたいと区では考えています。

「冨嶽三十六景 神奈川沖波裏」「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」
墨田区蔵。北斎作品の中でもとりわけ有名な作品。

「雪月花隅田」「雪月花隅田(せつげつかすみだ)」墨田区蔵。
北斎が晩年に描いた墨田区の風景画のひとつ。

  • 「すみだ 北斎美術館」の建築模型墨田区役所1階アトリウムに設置されている「すみだ 北斎美術館」の建築模型。
    完成への期待が高まっています。
  • 墨田区の北斎美術館開設担当の方の写真「世界中の方に興味を持っていただける特長のある美術館にし、長く愛される運営を目指していきたいと考えています」。
    墨田区の北斎美術館開設担当

美術館を核として、まちに賑わいを生む。

「すみだ 北斎美術館」は平成28年3月現在、墨田区の「北斎通り」に面した「緑町公園」内で建設が進んでいます。北斎の生誕地と伝えられるこの地域は、江戸時代に堀割(ほりわり)があり、それを埋め立てた道路が現在「北斎通り」の愛称で親しまれています。美術館の完成によって、「北斎通り」を中心にさらにまちに賑わいが増すのではないかと期待が寄せられています。
建設が進む「すみだ 北斎美術館」は、地上4階地下1階の建物です。公園や地域と一体となった美術館を設計コンセプトとして、外観の淡い鏡面アルミパネルにまちの風景が映り込むデザインです。1階の4方向から入館でき、建物全体に「裏」がない開かれた美術館です。設計を手がけたのは、「金沢21世紀美術館」などの設計で知られる建築家の妹島和世(せじまかずよ)氏です。
北斎の作品である版画や肉筆画は、光や熱、温度に脆弱であるため、長期間館内で展示することはできません。そこで1か月ほどの短い期間での展示替えが予定されています。訪れるたびに新たな北斎の作品を見ることができ、楽しむことができます。また、88年の生涯で3万点以上の作品を描いたと言われる北斎の作品は、風景画や美人画など多彩であることから、様々な切り口からの企画展が考えられます。

建設中の「すみだ 北斎美術館」の写真建設が進む「すみだ 北斎美術館」(撮影:平成28年2月)。貴重な作品群の保存展示に適した機能や設備を備えています。

北斎の生きた江戸時代から職人文化が息づく墨田区は、長くものづくりのまちとして発展してきました。町工場が多く、高度経済成長期の頃までは、墨田区に住み墨田区で仕事をしていた人が8割を超える職住隣接のまちでした。しかし、ものづくりの拠点が国内から海外へ移る中で、町工場は次々に閉鎖されていきました。そして東京駅から電車で約10分という利便性から工場跡地にマンションの建設が進み、現在は新しい墨田区民が急増しています。こうした変化の中で、墨田区を住みたいまち、働きたいまちにするためには、産業振興のみならず、文化面での魅力も増していかなければならないと墨田区では考えています。「すみだ 北斎美術館」をその核として、魅力あるまちづくりを目指す墨田区のこれからに期待が膨らみます。

  • 子どもたちの作品が飾られている工事中の仮囲い工事中の仮囲いには、区内の15の保育園の子どもたちが描いたエネルギーあふれる作品が飾られています。
  • 「北斎通り」の写真両国駅と錦糸町駅を結ぶ通りが「北斎通り」。
    約1キロメートルの通り沿いにはお店が並び、電線類の地中化によって景観の向上も進んでいます。

取材を振り返って

葛飾北斎は90年の生涯のほとんどを墨田区内で暮らし、お酒もたばこもたしなむことなく、ただひたすらに画を描き続けたそうです。下町人情にあふれた墨田区はよほど居心地が良かったのでしょう。墨田区はまさに、北斎自身のふるさとです。そして北斎のふるさとに、全国からの応援を得て間もなく美術館が誕生します。人口減少や少子高齢化で財政難に苦しむ地方のまちに比べれば、恵まれた環境にある首都圏。そのまちの事業ではありますが、北斎のふるさとを応援してくださる寄附者の方は全国に数多くいらっしゃいます。ふるさと納税の力強さを実感する取材となりました。

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