これは、基調講演1の講演資料、表紙から28ページ目までをテキスト化したものです。

(表紙)
総務省「平成20年4月12日(水) 障害者のICTを活用した社会参加推進セミナー」
デジタル・ディバイドのないICT社会の実現に向けて
総務省情報通信政策局情報通信利用促進課長
松川 憲行

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1. 我が国のICT戦略の動向

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我が国のICT戦略の歩み
e-Japan戦略(2001年1月) ブロードバンド・インフラ等の基盤整備
e-Japan戦略II2(2003年7月)IT利活用重視(先導7分野)
e-Japan戦略II2加速化パッケージ(2004年2月)
IT政策パッケージ(2005年2月)
IT新改革戦略(2006年1月)
IT新改革戦略政策パッケージ(2007年4月)

(3ページ)
「u-Japan政策」の理念
理念:u-Japanは、次の特質を備えた2010年の次世代ICT社会
u-Japan(ユビキタスネット・ジャパン)とは、
Ubiquitous(ユビキタス)
あらゆる人や物が結びつく
Universal(ユニバーサル)
人に優しい心と心の触れ合い
User-oriented(ユーザ)
利用者の視点が融けこむ
Unique(ユニーク)
個性ある活力が湧き上がる
の4つのU=For Youから成り立つ

(4ページ)
2. 障害者におけるICT利活用の状況
(5ページ)
障害者におけるICT利活用の状況
内閣府の調査によれば、障害者のインターネット利用率は46.4%となっており、国内全体の利用率(74.9%)と比較すると依然大きな格差がある。
さらに利用者の半数は「利用して困ったことがある」と回答。

(6ページ)
高齢者・障害者のICT利活用の重要性
「近年の急速な技術進歩、社会のICT化の進展」や「ユニバーサルデザイン化されたICT社会の実現=情報バリアフリーの実現」により「高齢者や障害者も含め誰でもICT機器やサービスを利用できるようになる」。よって、高齢者・障害者の新たな社会参加の可能性がある
例、
・全盲の視覚障害者でも健常者と同じタイミングで新聞が読むことができる
・外出が困難な肢体不自由者でもオンラインショッピングで買い物ができる
・電話での音声通話が難しい難聴者でも携帯電話のメール機能でコミュニケーションがとれる

(7ページ、8ページ)
重点施策実施5カ年計画(関連部分)
障害者基本計画の後期5年間(平成20年度〜24年度)において、重点的に取り組むべき課題について、施策項目、数値目標、達成期間等を定めたもの。(平成191225日障害者施策推進本部決定)
I1重点的に実施する施策及びその達成目標
1啓発・広報
2生活支援
3生活環境
4教育・育成
5雇用・就業
6保健・医療
7情報・コミュニケーション
●基本方針
IT(情報通信技術)の活用により障害者の個々の能力を引き出し、自立・社会参加を支援するとともに、障害特性に対応した情報提供の充実を図り、障害によりデジタル・ディバイドが生じないようにするための施策を積極的に推進する。

1)情報バリアフリー化の推進
○障害者IT総合推進事業の実施の促進
○障害者が使いやすい情報通信機器、システム等の開発・普及支援
障害者が使いやすい情報通信機器、システム等の開発・普及支援を行うとともに、情報通信機器等のユニバーサルデザイン化の促進を図る。
○障害者の利用するIT機器に関するJIS規格の適切な見直し
○ホームページ等のバリアフリー化に係る普及・啓発の推進
ホームページ等のバリアフリー化の推進のための普及・啓発を推進する。
○政府広報関連ウェブサイトの障害者対応推進
○関係行政機関による障害者にとって分かりやすい広報の推進

2)社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及
○電子投票の実施の促進
○日常生活用具給付等事業の適正な運用の促進
○テレワークの普及・啓発の推進
○ユビキタスネット技術の研究開発の推進
○障害者が障害を意識することなく使える情報コミュニケーション機器の研究開発

3)情報提供の充実
○聴覚障害者情報提供施設の整備の促進
○字幕番組、解説番組及び手話番組の制作の促進
NHK総合及び在京キー5局等において、字幕付与可能なすべての放送番組に字幕を付与する。
また、NHK総合及び在京キー5局等において、対象の放送番組の10%、NHK教育において、対象の放送番組の15%に解説を付与する。
(数値目標・達成期間)
○字幕放送時間の割合
NHK総合100%、在京キー5局平均77.8%〔18年度〕
※現行指針における字幕付与可能な放送時間(生放送番組など技術的に字幕を付すことができない放送番組等を除く7時から24時までの新たに放送するすべての放送番組の放送時間)に占める字幕放送時間の割合→100%〔29年度〕
※新たな指針においては、字幕付与可能な放送番組の範囲を拡大し、その中に占める字幕放送時間の割合
○解説放送時間の割合
NHK総合3.7%、NHK教育8.8%、在京キー5局平均0.3%〔18年度〕
※総放送時間に占める解説放送時間の割合→NHK総合及び在京キー5局等10%、NHK教育15%〔29年度〕
※対象放送番組の放送時間に占める解説放送時間の割合

イ 字幕番組、解説番組及び手話番組の制作費に対する必要な助成を行う。
○映画の字幕付与の促進
○視覚障害者用図書情報ネットワーク運営事業等の利用の促進
○視覚障害者を対象とした広報の充実
○障害者の自立した食生活の実現に資する情報提供の推進
○障害者の情報へのアクセスに配慮した著作権制度の在り方の検討

4)コミュニケーション支援体制の充実
○手話通訳者等の養成、派遣の促進

II2計画の推進方策

(9ページ)
3. 総務省における取組について

10ページ)
総務省における取組の方向性
ユニバーサルデザインをベースとし、さらに、高齢者や障害者が持つ個別の特性やニーズに対応する個別支援を組み合わせることにより、利用者それぞれに合わせたICT利活用を推進。
利用環境のユニバーサル化
高齢者・障害者を含めた誰もがICTを活用しやすい環境の整備
情報通信におけるアクセシビリティの確保
・情報通信機器・ウェブコンテンツに関する指針等の策定、周知普及
・地方公共団体のウェブコンテンツのアクセシビリティ確保等

11ページ)
電気通信機器・サービスのアクセシビリティに関する取組
高齢者や障害者が使いやすい電気通信機器・サービスの開発等を促すガイドラインの策定や普及促進を支援。
平成1010月:障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針(郵政省告示)
平成12年7月:障害者等電気通信設備アクセシビリティガイドライン(第1版)
平成16年5月:高齢者・障害者等に配慮した電気通信アクセシビリティガイドライン(第2版)
平成1710月:高齢者・障害者等配慮設計指針(第4部:電気通信機器)がJIS化(日本工業規格JIS X8341-4)
平成19年1月:高齢者・障害者に対する電気通信アクセシビリティガイドライン(ITU-T勧告)が国際標準化

12ページ)
電気通信アクセシビリティガイドラインの国際標準化
ITU-Tにおいて日本提案により審議が進められてきた電気通信アクセシビリティガイドラインが、平成19年1月にITU-Tの勧告として承認
○国内の体制等
情報通信アクセス協議会における検討・原案作成における総務省の積極的なサポート
○ガイドラインの概要
高齢者や障害者が、障害や心身の機能の状態にかかわらず、電気通信機器・サービスを円滑に利用できるよう、電気通信機器・サービスの提供者が企画・開発・設計・提供等を行う際に配慮すべき事項を示したもの。
○今後の取組
国内に向けた本ガイドラインの周知・普及活動の一環として、情報通信アクセス協議会と連携し、平成19年3月26日に東京でシンポジウムを開催。今後も、電気通信分野のアクセシビリティの一層の向上のため、引き続き、国内に向けた本ガイドラインの周知・普及に関する取組を実施。

13ページ)
ウェブアクセシビリティに関する取組
高齢者や障害者が使いやすいウェブコンテンツの作成を促す指針の策定や普及促進を支援
平成11年5月:ウェブアクセシビリティガイドライン(WCAG Version1.0)
平成11年5月:インターネットにおけるアクセシブルなコンテンツの作成方法に関する指針(郵政省、厚生省)
平成2年6月(平成12年6月改定):情報通信機器アクセシビリティ指針(通産省告示)
これらを踏まえ
平成16年6月:高齢者・障害者等配慮設計指針(第3部:ウェブコンテンツ)(日本工業規格JIS X8341-3)にてJIS化
平成1712月:みんなの公共サイト運用モデル(総務省)

14ページ)
地方公共団体のウェブコンテンツのアクセシビリティ確保
高齢者や障害者を含む誰もが地方公共分野のホームページやウェブシステムを利用することができるよう、「公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会」を開催し、平成17年12月に報告書を公表。地方公共団体向けのセミナー等を活用し普及促進。

15ページ、16ページ)
地方公共団体におけるウェブアクセシビリティへの取組状況
平成19年9月、地方公共団体におけるアクセシビリティへの取組状況についてアンケート調査を実施。
1 「みんなの公共サイト運用モデル」を活用しているとする地方公共団体は10.6%だが、「内容を知っている」「聞いたことがある」を含めると認知度は76.9%。
2 既に十分取り組んでいるとする地方公共団体は8.9%だが、平成17年調査の2.6%からは上昇。また、「今後進める予定」を含めると90.7%。
3 ウェブアクセシビリティへの取組は全体的には進んできているが、具体的な取組状況はまだ十分ではない。
4 「みんなの公共サイト運用モデル」を活用しているとする地方公共団体の多くは、アクセシビリティの取組が進展している。

17ページ)
総務省における取組の方向性
利用環境のユニバーサル化
高齢者・障害者を含めた誰もがICTを利用しやすい環境の整備
放送におけるアクセシビリティの確保

18ページ)
視聴覚障害者向け放送の充実に向けた取組
視聴覚障害者等が放送を通して情報を取得し、社会参加をしていく上で必要な字幕番組・解説番組等の普及策を推進
総務省の取組
○視聴覚障害者向け放送の放送努力義務化
視聴覚障害者向け番組の放送努力義務の創設等を内容とする放送法等の一部改正(1997年)
○字幕放送普及目標の策定、進捗状況の公表
2007年までに字幕付与可能な放送番組について字幕を付す」ことを目標とする行政上の指針「字幕放送普及目標」を策定(1997年)
字幕放送等の実績を毎年度とりまとめ、公表。
○字幕番組・解説番組等制作費の一部助成
字幕番組・解説番組の助成制度を創設(1993年)
助成対象に手話番組を追加(1999年)

各放送局の自主的な取組の促進
字幕拡充計画の策定
2001年 NHK・民法キー5局
2003年 在阪準キー4局
2004年 テレビ大阪、在名広域4局、テレビ愛知

19ページ)
デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会
今後のデジタル放送技術・サービスの進展を踏まえた、字幕放送、手話放送、解説放送の推進に向けた検討を行い、平成19年3月に報告書を取りまとめ・公表。

20ページ)
「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」の策定(平成1910月)
平成20年度以降の視聴覚障害者向け放送の普及拡大に向けて、平成20年度〜平成29年度までの目標を定めた「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」を策定
字幕放送については平成9年策定の行政指針の内容を拡大
解説放送については新たに行政指針を策定

21ページ)
総務省における取組の方向性
個別ニーズ支援
高齢者・障害者特有の障壁を取り除いた環境(情報バリアフリー)の整備
個別ニーズに対応した機器・サービスの普及・促進
高齢者・障害者向け機器・サービスの開発・提供に対する助成

22ページ)
高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成
高齢者・障害者の利便の増進に資する通信・放送サービスの開発を行うための通信・放送技術の研究開発を行う者に対する助成を、独立行政法人情報通信研究機構が実施。(助成率(上限):1/2)
○助成成果の例
株式会社エクセレントサービス:パソコン用「超大型・防水・防塵キーボード」(助成年度:平成17年度)

23ページ)
身体障害者向け通信・放送役務の提供、開発等の推進
身体障害者向け通信・放送役務の提供又は開発を行う者に対する助成を、独立行政法人情報通信研究機構を通じて実施。(助成率(上限):1/2)
○助成成果の例
株式会社プラスヴォイス:聴覚障害者のための代理電話サービス(助成年度:平成1619年度)

24ページ)
総務省における取組の方向性
個別ニーズ支援
高齢者・障害者特有の障壁を取り除いた環境(情報バリアフリー)の整備
個別ニーズに対応した支援の促進
情報提供体制の整備、支援人材等の能力向上など

25ページ)
情報提供体制の整備
障害者のIT利活用を総合的にサポートする体制のモデルを確立するため、平成16年5月から「障害者のIT利活用支援の在り方に関する研究会」(座長:高橋紘士立教大学教授)を開催。計7回の会合を経て、平成17年9月に報告書を公表。
→研究会提言を受け、障害者のICT利活用支援の基盤となる情報収集・提供機能に関する実証評価を実施。

26ページ)
支援人材の育成への取組
情報通信人材研修事業
情報通信分野の専門的人材を育成する研修事業に対し、当該事業に必要な経費の一部を国が助成(平成13年度から実施)
障害者向けのプログラムの実績(平成16年度〜18年度の累計)
48件、987人が受講
支援者向けのプログラムの実績
NPO法人 e-AT利用促進協会:障害者のためのIT上級サポーター養成講座(17,18,19年度)

27ページ)
高齢者・障害者のICT利活用の評価及び普及に関する調査研究
概要:高齢者・障害者がICTを用いて活躍する事例の収集やその評価・分析等を通じて、必要な支援等の在り方を検討するとともに、これら成果の普及を図ることで、国民の理解や地方公共団体等の取組を促進する。
調査期間:平成18年度〜19年度

28ページ)
さいごに
私たちが目指す社会
2010年を目途として、我が国が「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」つながるネットワーク社会となることを目指す(U-Japan戦略)
年齢や身体的な条件に関わりなく誰もがICTの利活用を通じて社会参加できる社会の実現が重要
そのために今必要なのは・・・
行政による高齢者・障害者に向けた施策だけでなく、日本社会の全てが高齢者・障害者の社会参加を促進するために関わっているということを理解し、これに取り組むことが重要

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