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1. 全国のICT支援団体を対象としたアンケートの結果 へもどる
2.実証フィールドにおけるヒアリングの結果
Webアンケートによる定量的な評価に加え、すでにICT支援を積極的に実践している3地域(仙台、東京、北九州)を実証フィールドとして選定し、関連機関(仙台市障害者ITサポートセンター、東京都障害者ITサポートセンター、社団法人北九州市障害福祉ボランティア協会)との連携のもとに情報ポータル機能活用のモデルを構築し、その有効性の検証をおこなった。
上記3団体におけるICT支援の状況については、それぞれに以下のような特徴がある。
- 仙台市障害者ITサポートセンター
仙台市から特定非営利活動法人せんだいアビリティネットワーク(SAN)に業務委託している。センターの拠点は東北福祉大学におき、大学の研究者の協力が得られること、学生が支援者としてサポートするという体制の中で支援を実施している。センターへの直接の問い合わせだけでなく、市内の障害者支援の専門機関から紹介されるケースも多い。また、組織的ではないが、ケースごとに、理学療法士、作業療法士と連携し、きちんと専門家の所見を踏まえて支援している。
- 東京都障害者ITサポートセンター
東京都が、社会福祉法人東京コロニーに委託し、専門家を集めて東京都の施設で活動している。
支援機器の展示、障害者向けパソコン教室の場所も確保されており、環境的には、必要なものが揃っている。ただし、東京都全体をカバーするのは難しく、区や市町村レベルでの支援体制整備が進めば、もっと、センターの機能がさらに明確になる。他の専門機関、専門職との連携が、組織的に行われているわけではないが、中核職員のネットワークで、近隣の大学や、作業療法士等とのつながりがある。
- 社団法人北九州市障害福祉ボランティア協会
厚生労働省のメニュー事業ではない形で実施している。体制としては、地域自立生活支援センターでICT活用の相談を受けるにあたり、社団法人北九州市障害福祉ボランティア協会と連携して支援を実践するようになった。したがって、ボランティア協会では、パソコンサポーターとしての部分に特化して活動をし、障害者支援の専門家との役割分担を明確にしている。現在では、地域自立生活支援センターだけでなく、障害福祉センター等とも連携し、重度障害者への対応についても可能な対応を模索しながら、協力し合っている。最近は、障害者の当事者団体から直接ボランティア協会に相談がくるケースも増えている。
今回、実証フィールドとして選定した団体では、各団体の中に、スキルの高いコーディネーターとしての支援者が配置されていることで、きちんと他の専門職や組織とのネットワークが作り上げられている。今回の実証事業においては、各団体におけるICT支援のプロセスの中で、ポータルサイトの情報を実際に使いながら、その有用性について検証するとともに、サポート事例ならびにパソコン教室の事例を入力してもらうことで、今後の情報提供の課題を検討することとした。
- 製品情報
- 軽度の障害者が対象の場合
製品情報は、今あるものを使って支援することが多いので、新しい機器の選定を行うことがなく、あまり活用する機会はない。ただし、代替機器を探す場合はある。
- 重度の場合
機器の選定からフィッティングに関しては、専門家に任せているので、参考にはするが、自分達だけで情報を活用するわけではない。
- 事例情報
- 局面ごとに提供されるサポート事例は、支援のQ&Aとして使いやすい。
- サポートの流れ全体を事例として活用できるのは、専門的な知識をもっている場合である。
- 利用者の事例は、ニーズの把握に役立つ。
- パソコン教室の事例は、主催団体の情報とあわせて参照できるとよい。
- 製品の情報と事例情報は相互にリンクするとありがたい。
- リアルな局面とWebの情報がつながるようなセミナーも欲しい。
- 関連情報
- その他、欲しい情報
- サポーター募集のノウハウ
- 支援団体運営のノウハウ
- 管理者養成のノウハウ
- コーディネートのノウハウ
- 支援計画作成・サポート範囲決定のノウハウ
- タイムリーなイベント・セミナー等の情報
- 生きた情報が交換できる場の情報
- 医療、リハビリテーション、介護、教育等の観点も含めたサポート上のクリティカルポイントをチェックする仕組みができないか。また、これらが、利用者側からも確認できるようになるとよい。
上記から、今回のポータルサイトで提供した情報については、定量評価の結果と同様に、全体的に役立つとの評価であるが、実際にどのように使えるかという点では、まだまだ、細かな点で改善の余地がある。
また、支援者どうしでのノウハウの蓄積に対するニーズは高い。しかしながら、現場の実態に関する詳細な情報については、ホームページ上での情報共有だけでは充分ではないため、セミナーなどの情報交換の場を組み合わせるとともに、客観的、専門的観点からの考え方も示す必要がある。
今回は、サポート事例とパソコン教室の事例に限って、入力フォーマットを用意し、各団体からの情報提供を依頼した。以下、情報提供の過程で寄せられたコメントである。
- 基本的に、入力は問題ない。
ただし、障害を受けた時期、年齢、性別等については、現状では、個人情報保護の問題があるので、必要としない限り、あえて本人に確認しない。他の専門機関が関わっている場合でも、そこで収集された情報は、こちらには開示されないので、万が一必要であれば、利用者本人にとっては手間になるが、目的を明確にして再度情報収集することになる。また、必要があって収集した情報についても、センターに登録したパソコンボランティア間でも開示していないので、情報共有は非常に難しい。今回のような場で情報共有する場合には、実態の情報ではなく、一般化した情報として提供することになる。
- 局面をきりとった事例になるので、多くの支援機関が関わり、時間の経緯を踏まえて説明したい事例の場合に表現が難しい。
- サポート事例の情報は、個人情報保護との関連に十分注意すべきであり、今回のホームページに載せられない情報が重要。それをどう伝えるか。明文化できる内容だけでは十分でない。
各団体からの事例情報に関しては、個人情報に触れない形に一般化することができれば、提供可能であることがわかった。今後は、より、細かなレベル(たとえば、障害を受けた時期や年齢の入力方法の変更)で情報を入力しやすい環境を整備すれば、ノウハウの蓄積が可能である。
ただし、提供された事例情報の内容が妥当なものであるかどうか、また、ここにあげられた事例のみで対応することの危険さ、ホームページ上では表現しにくい情報などをどうフォローするのかが問題である。前項にもあげたように、支援者どうしでの情報交換や、ケーススタディによるスキルアップを図る場を作り、情報を活用する能力を向上させる必要がある。