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情報通信ネットワークのコスト分析に関する研究会(第3回)議事要旨



1.日時   平成14年4月12日(金)14時00分〜16時00分

2.場所   経済産業省別館8F 各省庁共用846号会議室

3.出席者
(1)委員(50音順、敬称略)
    伊東 晋、大久保利之、黒川和美、齋藤義男、志村近史
(2)総務省
    中田情報通信政策局総合政策課長、泉総合政策課企画官ほか

4.議事概要
(1)ネットワーク整備のコスト分析手法及び試行結果について
  情報通信ネットワークにコスト分析を導入するための具体的方策案、及び当案で実際にコスト分析を試行した結果について、志村委員から資料に基づき説明があり、続いて意見交換が行われた。
(2)研究会報告書の骨子について
  これまでの議論を踏まえて研究会として報告書で提言すべき内容について、事務局作成の骨子案を元に意見交換が行われた。

5.主な議論
情報通信ネットワークの整備によって市町村合併が進み、結果として行政コストが削減といった効果は大きい。そのような、コスト分析だけでは明らかにならない効果についても十分配慮すべき。
代替財として通信サービスを想定する場合に、通信サービスは速度や料金が多種多様なので、市場価格だけでなくその地域固有の事情も踏まえて価値を計算できるようにしておくべき。
非常時や防災に関する便益も測定できるよう検討してほしい。
BSデジタルテレビでもローカル情報はデータ放送として提供されている。ラジオやテレビについて便益が過大にならないよう十分注意が必要。
極端に費用便益比が低いときには、放送であれば地上波ではなく衛星放送の受信を支援するといった別の仕組みも考えたほうがよい。
地方に対しては、コスト分析についてのコンサルティングはしっかりやってほしい。
事業によっては、一定規模以下では費用便益比が基準を下回るといったことの予測がつくので、そういう事業についてあらかじめ指標を示してあげることが必要ではないか。
コスト分析について、極端に画一的な解釈をすべきでない。それ以外の要素も考慮して判断すべき。
地域によって固有の事情があるのは考慮すべき、ただし、費用便益比が0.5しかないようなところにまで配慮するのは問題。
便益が基準に満たない地域について、自分で努力して特別の便益を測定したのなら総便益の算定時に考慮できるような仕組みにすべき。
その事業で導入される技術がベストであるか、オーバースペックでないかについても検討すべき。その上でコスト分析を行うべきである。
IT分野は民間主導が原則であり、民間がやらないところを国が整備するような場合に、他の事業と同様に費用便益比を1.5以上とする必要はないのではないか。
条件不利地域における公共事業について採択基準を1.0以上としている例もある筈。
便益の種類や計算手法等についての情報を、コスト分析マニュアルを作るときに分かりやすい形で記述しておいてほしい。


 【配付資料】
資料1 「情報通信ネットワークのコスト分析に関する研究会」第2回議事要旨
資料2ネットワーク整備のコスト分析手法及び試行結果について
(志村委員説明資料)
(PDF)
資料3「情報通信ネットワークのコスト分析に関する研究会」報告書骨子(案)





資料1


「情報通信ネットワークのコスト分析に関する研究会」第2回議事要旨



1.日時   平成14年3月7日(木)16時00分〜18時00分

2.場所   経済産業省別館11F 各省庁共用1115号会議室

3.出席者
(1)委員(50音順、敬称略)
    伊東 晋、大久保利之、黒川和美、齋藤義男、志村近史
(2)総務省
    中田情報通信政策局総合政策課長、泉総合政策課企画官ほか

4.議事概要
(1)ネットワークの整備コスト分析の具体的手法
  情報通信ネットワークにコスト分析を導入するための具体的方策について、志村委員から資料に基づき説明があり、続いて意見交換が行われた。
(2)コスト分析モデルの試行
  今回の議論を踏まえて具体的な分析モデルを事務局において策定し、分析手法をより信頼性の高いものとする観点から、ネットワークを整備済みの地域において実際にコスト分析モデルを試行することとなった。

5.主な議論

代替法は便益を積み上げる手法であり、分かりやすく、かつ便益が計算しやすくないといけない。現在価値を計算するための割引率については他省の事例も参考にする必要がある。
BSラジオを聞くためにBSの受信設備を設置する人はほとんどいない。ラジオを聞けることの便益をBSラジオで代替するのは無理がある。
民放ラジオの受信障害解消の便益については、レジャーの際にもラジオが聞こえることや、防災の観点からの便益についても検討する必要がある。
民放ラジオの受信障害解消の便益として、固定受信だけでなく、携帯受信や移動受信も考えられる。
地域イントラネット基盤施設整備事業については、当初の設置費用以外に、回線の借り上げや設置等に係る費用を考慮する必要がある。
地域イントラの公共面での便益については、単に公共機関を接続することによる便益以外のものも存在する筈である。
移動通信用鉄塔施設整備事業について、山での遭難防止など、安全対策の観点からの便益等も検討すべきではないか。
デジタルデバイドが相当深刻な地域にこそ、情報通信ネットワークの価値がある。そういう地域について、例えばテレビやラジオの難視聴や携帯電話の不感を総合的に解消できるような設備、事業があってもいいのではないか。
とりあえず代替法を基本とし、次に消費者余剰計測法やCVMに期待するのがいいのではないか。トラベルコスト法はこの事業には使いにくい。
分析モデルを試行する際には、その事業にどのような社会的な意味があると考えるか、現場でヒヤリングをお願いしたい。
(以上)





資料3


「情報通信ネットワークのコスト分析に関する研究会」報告書骨子(案)



Iいち  コスト分析を導入する背景
1.情報通信基盤の社会資本性の認知
       ・ 平成3年度より、公的資金により情報通信ネットワークを整備する事業を開始。
       ・ 平成13年度より、情報通信ネットワーク整備を公共事業として整備開始。情報通信ネットワークが21世紀の社会資本として認知。
       ・ 研究会で検討対象となった事業の概要説明。

2.政策評価導入の動き
       ・ 平成13年1月より政策評価制度を全政府的に導入。平成14年度から法律に基づき実施。
       ・ 公共事業関係省庁は、総理指示を踏まえ公共事業に対する費用対効果分析の活用を開始。

3.情報通信ネットワークへのコスト分析の必要性
       ・ 情報通信ネットワーク整備についても、国民への説明責任や効率的な執行を担保する観点から、コスト分析(費用便益分析)の導入を図ることが望ましい。

IIに  コスト分析を導入するための課題
1.社会資本としての情報通信ネットワークの特徴
       ・ 情報通信ネットワークには、時間と空間を超越する効果があり、既存の交通手段を代替する。
       ・ ネットワーク単独ではなく、その上で提供されるアプリケーションと一体となって効果を発揮する。
       ・ IT分野は技術革新が激しい。。
       ・ IT分野は民間主導が原則であり、公的主体がネットワークを整備する場合には当原則との調和が必要。

2.情報通信ネットワークにコスト分析を導入する際の課題
       ・ 波及効果の大きい情報通信ネットワークの整備効果(便益)を全て測定することは困難
       ・ 効率性のみを追求し過ぎると、デジタル・ディバイドを拡大させる可能性がある。
       ・ 技術革新等を踏まえた評価基準を作る必要がある。

IIIさん  具体的手法の検討
1.分析手法の種類・特色
       ・ 具体的な分析手法として、代替法、消費者余剰計測法、ヘドニック法、CVM(仮想的市場法)、トラベルコスト法を適用することが想定される。

2.情報通信ネットワークに対する各評価手法の適用
       ・ 情報通信ネットワーク整備に対してコスト分析を行う場合には、現時点では代替法を中心とし、必要に応じ他の手法も補完的に用いることが妥当である。

3.具体的評価手順
       ・ 地域イントラネット基盤施設整備事業については、
1) 自治体の行政手続等をオンライン化する際にデータの送受信が可能となることによる便益(情報流通便益)、
2) 整備地域にインターネットに接続する民間の高速ネットワークインフラ(バックボーン)が存在しない場合に、地域イントラネットの一部を民間に開放し、バックボーンとして活用することにより、従来不可能であった高速インターネット接続サービスを当該地域において提供することが可能となる便益(高速インターネット利用便益)
3) 地域イントラネットを利用した公的アプリケーションに係る便益
を想定し、代替法により費用便益分析を実施する。
       ・ 移動通信用鉄塔施設整備事業については、当事業により便益を受ける客体を居住者、就業者、観光客及び通過客とし、各客体について公衆電話を探さずに電話できる発信便益といつでも連絡が受けられる便益(受発信便益)を想定し、代替法により費用便益分析を実施する。なお、通話内容から得られる便益(通話便益)については、便益の計測について引き続き検討を進める。
       ・ 民放テレビ・ラジオ放送難視聴等解消施設整備事業については、1)民放テレビ・ラジオを視聴することができる便益(視聴便益)、2)放送される番組内容から得られる便益(番組便益)を想定し、代替法により費用便益分析を実施する。

IVよん  運用にあたっての留意事項
1.分析を実施する機会の拡大
       ・ 公共事業を実施する具体的地域を決定する際の事前評価に活用されることを期待。
       ・ 事前評価に合わせ、事後評価にもコスト分析を活用すべき。
       ・ 評価モデルがより良いものとなるよう、検討を続けるべき。

2.具体的な分析を踏まえた最終判断のあり方
       ・ 他の公共事業にならい、特段の事情がない限りはB/Cが1.5以上であることを採択の条件とすべき。
       ・ 情報通信分野での適用事例がほとんどないことに鑑み、極端に画一的な解釈・判断をすることには慎重であるべき。

      ※ 具体的なコスト分析の手順をマニュアル化し、報告書に添付



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