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「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」
第5回会合 議事要旨


1    日時
 平成16年11月4日(木) 18時00分〜20時20分

 場所
 総務省第1特別会議室(中央合同庁舎2号館8階)

 出席者
(1 )調査研究会構成員(敬称略、五十音順)
伊東晋、隈部紀生、小塚荘一郎、塩野宏、篠原俊行、野村敦子、
羽鳥光俊、舟田正之、村井純、山下東子(10名)
(2 )ヒアリング対象者
株式会社電通:松下メディア・コンテンツ計画局長
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ:中村メディア環境研究所長
社団法人日本新聞協会:箕浦メディア開発委員会委員長
フューチャー・パイレーツ株式会社:高城代表取締役社長
(3 )総務省側
堀江情報通信政策局長、福岡総務課長、安藤放送政策課長、浅見放送技術課長、南地上放送課長、今林衛星放送課長、江村地域放送課長、
小笠原放送政策課企画官、今泉放送政策課課長補佐

 議事
(1) 開会
(2) 議題
  デジタル化への取組みと課題について
(3) 閉会

 議事の概要
(本文中の記号の意味は、以下のとおり。
   ●…構成員の発言 ○…ヒアリング対象者の発言)

デジタル化への取組みと課題について
(1) 株式会社電通からの発表
  株式会社電通松下メディア・コンテンツ計画局長より、地上デジタル放送に関する普及PR活動、広告取引環境の整備への取組等ブランド訴求媒体としてのBSデジタル放送等について説明が行われた。

(2) 株式会社博報堂DYメディアパートナーズからの発表
  株式会社博報堂DYメディアパートナーズ中村メディア環境研究所長より、地上デジタル放送浸透度調査の結果と分析及び地上デジタル放送の広告ビジネス上の課題について説明が行われた。

(3) (1)(2)に関する質疑応答
  主な内容は以下のとおり。

地上デジタルになった場合のローカルの広告マーケットの将来をどのように予測しているか。また、広告の時間枠のセールスについて、ローカル局が独自に取引をしていく余地が現実的にどの程度あるのか、あるいは今後どのようになっていくと思われるか。
ローカルの広告マーケットの市場価値が急速に拡大するということは残念ながら考えられない。ローカルエリアの市場の活性化のため、広告会社が広告主に、ローカルエリアに関するエリアマーケティングの必要性を積極的に働きかけることが必要。
  ローカルセールスで申し上げると、よりコストのかからない番組開発を多チャンネル編成の中でやっていくというのが、私が個人的に持っている考え方。

地上デジタルの普及に伴い、BSと地上のデジタルのマーケットが仮に2つの違ったマーケットとして生きていくという可能性があるとした場合に、その計り方はどう考えればいいのか。
編成がBSデジタルと地上波では多少異なっているところに企業がどういう価値を見いだしていくかであると思うが、基本的には接触、すなわち視聴率が基準になっていくのは変わらないと思っている。

資料中の「地上波は視聴率、BSは視聴質」というのは、どういう証拠に基づいてこのように言えるのか。
直感の部分が大きい。お得意様と提供する番組のブランドイメージが合わないケースも結構あり、その部分をBSが担うというのは、裏付けを探せば見いだせると思う。
そういうことを促進するための処方箋のひとつとして、地上波とBSの総合編成が挙げられている。一方でBSの経営主体がもっと違った方がいいのではないかという意見もあるが、これが唯一の処方箋とお考えか。
BSデジタル放送の普及が1000万世帯くらいになると、広告主も注目してくると思う。そうなると、地上波キー局の主導だからこそ、その編成的棲み分けが切実なものと考えられる訳で、これが新規参入事業者ということになると、目標としては地上波を凌駕するというところに経営方針を置かざるを得ないのではないか。
テレビ番組の制作能力で言うと、日本ではキー局が圧倒的な力を持っている。キー局の制作能力の高さをもっと生かした方が、コスト的にもメリットがあるのではないか。

デジタル情報の環境というのはもっと詳細なマーケットの把握に貢献できるのではないかと考えるが、広告主、広告、あるいは今の民放のビジネスモデルにおいて、将来像に大きく期待をするような部分があるか。
デジタル放送が普及し、かなり当たり前のものになったときに例えば視聴者情報等の把握が可能になるのは確かであろうし、少なくとも広告主からはそういう要望が高まると思う。
デジタル化になればいわゆるターゲットにぴたりと当てるような広告も現実には可能になっていくと思う。ただ、それだけではない面もあり、広告会社にとってはデータのコストもかさみ、システムも作らなくてはならないため、なかなか大変というふうに受け止めている。
蓄積型の放送サービスに関連して、地上波で放送されている部分とは別に例えば個人個人でCMを差し替えるという研究は徐々に始めている。

本日ご説明のあった1セグメント放送、携帯電話を使っての地上デジタル放送の利用意向調査結果は、きちっとしたモノを見れば、利用意向は大きく違うのではないか。
2点目に、タイムシフト視聴を重視していくようでないと、視聴率から重要なファクターが落ちることになるのではないか。
3点目に、ヨーロッパで見たNHKの放送にコマーシャルが出てきたが、あれは日本の国内でできないことをヨーロッパでやっているのか。
3点目はたぶんNHKの海外番組販売であり、それに海外の民放がコマーシャルを入れているということではないか。
最初の携帯については、同感。実態をしっかり認知していない回答になっているのであろうと思う。
携帯について実際に見せながら調査をやったことがあり、かなり視聴意向は高かった。また、言葉では視聴意向が計れない。
タイムシフト視聴について、日本の場合どうするかはこれから議論しなくてはいけない。民放連、広告主協会、広告業等で問題意識を持って協議を始めている。

視聴質のデータに関して、どういう新しい調査手法やデータがあるのか。
視聴質といっても色々な捉え方があり、一般的には番組のクオリティと捉えられがちであるが、見られ方の捉え方もある。デジタル時代といえども視聴質の計測というのを客観的な尺度として作っていくのは非常に困難なことだと思っている。
新しい質的な調査データを整備するための調査手法が開発の途上にあるということではないのか。
開発の途上にある。我々の重要な研究テーマではある。

(4) 社団法人日本新聞協会からの発表
  社団法人日本新聞協会メディア開発委員会箕浦委員長より、デジタル時代の公共放送と二元体制、受信料制度と有料サービス、インターネットを利用した新しいサービス等について説明が行われた。
  続いて、当該発表に関する質疑応答が行われた。主な内容は次のとおり。

放送概念は堅持すべきか。
放送概念については、調査研究会の方で色々議論して、必要に応じて変更するというのであればやぶさかではない。現在我々の方では既成の概念で考えている。
放送概念は放送政策研究会の残された課題として置いている。今後とも放送概念については今までのものでよいかを議論させていただきたいが、それでよろしいか。
NHKの放送概念については放送法に業務範囲が定められているので、それを前提に考えるべき。放送と通信の融合あるいはその中間領域の部分にNHKが出て行こうとしていること、それがこれまでの放送概念から従来的な放送とその周辺業務という仕分けではもう間に合わなくなっているということについての現実の認識はある。

前の放送政策研究会では、NHKのインターネットについて3年間は遠慮するという提言であったが、放送のデータチャンネルを生かすためにはインターネットの通信機能も使う必要があるので、見直して欲しい。

NHKが新しいサービスをするとき、仮に有料サービスとして行い、きちんと投資コストを回収するならばよいのか。
例えばNHKの受信料で作ったコンテンツをインターネットで流す場合、投資コストにそのコンテンツの制作費まで入れたら回収できない。投資の回収というのは非常に計算するのが難しい。

マスメディア集中排除原則の緩和というのは、三事業支配禁止の原則を撤廃し、県域放送も1局でよいという趣旨の発言か。
マスメディア集中排除原則というのは、あくまでも市場の原理に則ってというのが基本にある。できるだけ緩和していく方がデジタル化の時代には合うのではないか。
メディア集中排除の原則は市場原理に対抗してできた原理。集中排除原則の抜本的な緩和ということになると、慎重に議論しなければならないと思うが、それでよいか。
慎重に議論してよい。あくまで視聴者の選択の幅を狭めないと言うことがひとつのメルクマールになろうかと思う。

インターネット利用のガイドラインの「放送番組の二次利用」及び「番組関連情報」の拡大解釈とはどのようなことか。
ローカルニュースとかそういうものについては、どう考えても「二次利用」とか「番組関連情報」という枠内では収まらないと考えている。
ガイドラインで「放送番組の二次利用」あるいは「番組関連情報」に限ったこと自体には賛成、それを前提とした上でその解釈がおかしい、という主張か。
ガイドラインを作った時点は反対の意見を出していたが、ガイドラインができてそれで動いているので、それに則った上での解釈。

マスメディア集中排除原則の根幹にあるのは、電波というのが限られた公共の財産であって、それをあまりいくつも使うなという点。電波が限られていながらも潤沢になった現在は、マスメディア集中排除原則の緩和、抜本的な制度の見直しについて非常にいいタイミングではないか。

(5) 高城剛氏からの発表
  フューチャー・パイレーツ株式会社高城代表取締役より、デジタル時代におけるコンテンツ制作の課題に関し、コンテンツに係る権利処理等を専門に担当するエージェントの可能性や著作権保護の在り方等について説明が行われた。
  続いて、当該発表に関する質疑応答が行われた。主な内容は次のとおり。

一点目に、デジタル放送について、著作権の保護をはじめ、複雑なシステムを導入すればするほど使われなくなる、ということが繰り返し指摘されている。利用者にとってわかりやすいシステムとすることが最も重要であり、そうした観点から今後のシステムを作っていくことが必要という理解でよいか。 二点目。アジアの中で、日本のコンテンツの知的所有権の侵害が顕著となっており、だからこそ一層の著作権保護の強化が必要という指摘がされることが多い。しかしながら、日本のコンテンツのグローバルなマーケットへの展開という視点から見た時には、この問題はどのように解釈すればよいのか。

一点目について。例えば、BSテレビは使えるテレビであると言われているが、実際には、使うのが大変で使われないテレビとなっていると考える。デジタルテレビについて、こうしたことを避けるため、どうすれば利用者に受け入れられるか、実証実験を行っていくことが必要である。
二点目について。アメリカでは、違法コピーされることが多いものほど実際には売り上げがあがっているという指摘もある。すなわち、違法コピーは、クリエーターにとって最大の宣伝の場と捉えることも可能ではないか。そのような観点も踏まえて、コンテンツの保護を考えていくことが必要ではないか。

著作権の処理が大変だということだが、著作権料で生きていくことをやめて、代替的に収入が得られるような方法がないか。
アメリカでそのような新しいビジネスモデルを考えている人がエージェントである。日本にはそういったモデルを考える人がおらず、それが最大の問題となっている。

なぜ日本でエージェントが出てこないのか、制度上の障壁と言われているものがあるのか。また、エージェントの活動にどれくらいの手数料を取るのか。
日本ではあまりにもテレビ局の力が強くなりすぎて、このようなものが育っていないのが現実。2点目については、キャスティングの場合であれば、10%以上。ビジネスチャンスとしては大変大きい。
テレビ業界が強いのか、それとも広告代理店が強いのか。
両方とも強いと思っている。

法律的保護より道徳心を高める具体的戦略が必要ということであるが、これは、法律的保護の議論は不要であるということか。
そういう趣旨ではない。法律的保護に係わる検討とあわせて、道徳心を高める戦略についても、併行して考えていくことが必要という趣旨である。


  次回会合は、平成16年11月16日(火)9時30分から。


以上


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