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高度ICT人材育成に関する研究会(第2回) 議事要旨



  1.  日時
     平成19年10月19日(金) 14時00分〜16時00分

  2.  場所
     虎ノ門パストラル「ミモザ」

  3.  出席者
    (1)   構成員
      石島座長代理、大場構成員、筧構成員、斎藤構成員、重木構成員、大力構成員、中島構成員、原沢構成員、大西構成員(岩川代理)
    (2) オブザーバー
      高橋参事官(内閣官房IT担当室)(神谷代理)、藤原課長(文部科学省高等教育局専門教育課)(坂口代理)、八尋課長(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課)(永見代理)、上田情報グループ長(日本経済団体連合会産業第二本部)
    (3) 総務省
      中田政策統括官、松井官房審議官、鈴木総合政策課長、松川情報通信利用促進課長、門馬イノベーション戦略室長、小原情報通信利用促進課課長補佐

  4.  議事概要
    (1)   開会
    (2)   議題
      1) 高度人材育成に向けた経団連の取り組みについて(日本経団連)
        資料2-1に基づき日本経団連事務局上田情報グループ長より説明が行われた。

      2) 構成員プレゼンテーション
        「高度IT人材育成のための産学連携(資料2-2)」、「高度ICT人材育成に関して(資料2-3)」に基づき、それぞれ大場構成員、大力構成員により説明後、質疑応答が行われた。主な意見は以下の通り。

    医師の育成とICT人材の育成の対比は、興味深い。企業側は、ICT人材としていわば外科手術のうまい人、うまく治療ができる人が欲しいのだと思う。医学の世界では、実践的な治療に優れている人と研究的な高度なものを目指す人とを、初めから意識し教育法に違いがあるのか。あるいはバランス良く教育し、先で分かれていくのか。
    例えば東京大学の場合には、研究者は医科学研究所で研究をし、医者の資格を持たない場合も多い。一方、医者の育成に関しては、例えば医学教育国際協力研究センターのような機関が、各大学とコンタクトを取りながら、教育の内容の策定・評価などを行っている。研究者と医者の育成は2つに分かれていると思う。
    ICT分野では、大学の中で技術者を育てる必要がある、という明確な意思形成があるのだろうか。
    大学は、長年研究者育成をやってきた。今、産業界から大学にプロジェクトマネージャやアーキテクトをできる人間をどんどん出せと言っても、ちょっと難しく、産学で連携するしかないと思う。
    医学部では、基礎も実習も殆どが必須科目で、卒論がなく、就職活動に時間を取られることもない。また、臨床医が大学の講師として教えに来ている。
    日本では、工学部が大学の中で非常に規模が大きく、サイエンスの理学的な研究を始めてしまった。これにより、エンジニアリングのサイエンス化が起こり、大学の教授が教育なんか、という風潮が生まれた。個人的には、これからICTの学校を作るのであれば、既存の大学ではなく全く新しく作るのがよいと思う。
    ドイツのHPIも新しく作られた。しかし学位の問題があるので、ポツダム大学の横に設立され、1年生から5年間、学部とマスターをやっている。
    学位も作るべき。エンジニアリングサイドの学位も残さないと、若い人が魅力を感じない。
    ICT人材と医者との最大の差は、日本人には、医者は「ベンツに乗っている」「実入りが良い」という意識がある点ではないか。医学部進学希望者には、もちろん国民の健康のためにという崇高な目標の人もいるが、医者ならば将来大丈夫と思っているところがあるのではないか。
    人月単価のある世界では向上はない、というのには賛成だが、単価だけを問題にしてもうまくいかない。単価を下げても、その分工数が増えるだけという実態がある。そこでRFPで競争的な入札を行ってみたが、多くの場合は受注したベンダーが赤字になってしまった。処遇改善は奥が深い。
    医者、建築家には国家資格があるが、ITには国家資格がない。特に、給料・待遇に反映する資格がない。国家資格に基づく処遇をするのも、一つの考え。また、建築業界は設計事務所と建設会社とに分かれているが、IT産業はそうではない。IT産業は業界の歴史が浅いので、分化、分業が未成熟なのかもしれない。
    企業に入る技術者の能力のスタートラインを上げようというのはすばらしい発想であり、目指すべき方向性はここにあると思う。現在就職後に行っている部分が大学教育、大学院教育の中で済んでいれば、その分早く成長するので、企業にとっても国にとっても非常に有用な人材になっていく。そのための産学連携の高度なIT実践教育の中身、カリキュラムについて、継続的に産と学が徹底的に議論し、学校教育の中に浸透させる仕掛けを作ることが重要。それが新しいスタートラインをさらに上へと押し上げ、有用な人材を輩出するための大きなシステムとなる。
    医学との対比では、数の問題を意識しなければならない。例えば東京大学の医学部の定員は創立以来、対人口比、これだけの人数のエリートを育てるということで、多分変わっていない。しかし工学部はそうではない。戦前の旧制大学の学生が対同学年比の3〜5%であるのに対し、今は短大を含めると50%が大学卒であり、そこに同じルールを適用されるはずはないことを認識する必要がある。ICTの場合も、医学部と同様に絞り込んでエリートを育てるのであれば、その数は何人なのか、本当に1500人ずつ育成ができるのか、ということを考えた上で議論しなければならない。
    現実的には、ICT分野の人が足りないということで各大学院で定員を増やしてきているが、例えば東京大学工学部には情報学科、情報工学科がないなど、学部でICT専門学科を持っている大学はごく少数。工学部の中の、電気工学、機械などのテリトリーの中で、情報も必要だからと情報の科目を置いているのであって、情報の人は育っていない。このため、コンピュータサイエンスの基礎のアルゴリズムなどのベースがない人が、情報系の大学院に入ってくる構造になっている。そのあたりを考えた上で何をすべきかを考える必要がある。
    大学のそばに、実際にソフトウェアを作るような仕事をする場がないということが問題であり、議論すべき。
    国家試験がなくても、一生懸命勉強してきた人に対する処遇を企業がきちんとすれば、学生のインセンティブにはなると思う。
    企業では、外の資格をもつことよりも、企業の中のトラックレコードで待遇が決まっている比重のほうが高い。
    医者は、学会で事例研究を発表しないともらえない資格があると聞く。資格取得に3〜5年かかるが、そういうことをきちんとしており、そういう方がまた教育に携わったりする。そういうことをICTの中でもやる必要がある。先生をどう新陳代謝させていくかも大事である。
    インド等と同じような大学を作れば、同じように人材が育つわけではない。インドではICTの技術者は、医者と同じような給料を取り、尊敬もされている。モチベーションがあるから、自律的に自分をもっと上げていこうとする力が働く。日本の学生、社会人には、モチベーションが非常に欠けている。これを打開するため、キャリアの複線化として、課長、部長、役員というラインだけでなく、プロフェッショナルも評価されるようにしている。プロフェッショナルになると、大学で教えたり、論文を書いたり、産業界の中や大学とのコミュニティなどを作るなど、社会貢献することを求めている。プロフェッショナルの人材像を示すには、ITSSを発展させてプロフェッショナルやアーキテクトの育成の枠組みを作っていくのが、日本では最も近い。アメリカでも、産業界で成功した人が大学に戻ったり、ベンチャーを立ち上げたり、という循環ができている。
    大学でも企業出身の教員を暖かく迎えて欲しい。
    経済的な話だけでなく、ICT業界の魅力として、ICTの中身で惹き付けるところがなくてはならない。また、医学でいう基礎医学に対応する部分があるのかも重要。
    長期の連休や高い給料のほか、ICTの技術でしかできないことでの夢を語らせることができるのかということも重要。
    夢を持つためには、何かを作り上げたという喜びが大事。質・量が足りないという指摘があるが、質を上げて量を減らさない限り3Kで夢のない職場になると思う。人がたくさんいるアジアと同じ勝負をやったら日本は負ける。彼らは資金が無く投資ができないので、人を使って外貨を稼いでいるとも言える。日本は研究開発投資ができる状態であるので、徹底的に自動化を進めることが必要。自動車産業や製鉄業は、それで伸びてきた。ICT産業において1500人育成と言っても、業界全体で60万人いる中では、1500人を30年間育てても45,000人であり、非常に小さい人数。自動化により、少数精鋭で同じニーズを満たせば、処遇は上がっていくはず。
    どういう教育をどのレベル(年齢)でやるべきかを体系的にまとめることも重要。
    産業界には、今の学生は日本語の文章がきちんと書けないということを、大きな声で言って欲しい。本来は、高校まであるいは一般教育の中で、大学全体としてトレーニングされるべきであるが、できていない。

      3) 検討項目(案)
        資料2-4に基づき、事務局より説明、質疑応答後、了承された。主な意見は以下の通り。

    大学院の教育の中で、社会人を対象としたリカレント教育についても議論して欲しい。また、ナショナルセンターという意味では、産業界から講師を招いてもgood playerがgood teacherにならないこともあるので、教員の教育も含めて議論して欲しい。
    先生をどうするかは非常に重要。

    (3)   閉会
以上


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