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高度ICT人材育成に関する研究会(第5回) 議事要旨



  1.  日時
     平成20年1月25日(金) 14時00分〜16時00分

  2.  場所
     経済産業省別館 1014会議室

  3.  出席者
    (1)   構成員
      村岡座長、石島座長代理、大西構成員、大場構成員、筧構成員、佐久間構成員、斎藤構成員(田中代理)、重木構成員、大力構成員、中島構成員、原沢構成員
    (2) オブザーバー
      高橋参事官(内閣官房IT担当室)、 藤原課長(文部科学省高等教育局専門教育課)(坂口代理)、 八尋課長(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課)(奥家代理)、上田グループ長(日本経済団体連合会事務局)
    (3) 総務省
      中田政策統括官、松井官房審議官、鈴木総合政策課長、松川情報通信利用促進課長、門馬イノベーション戦略室長、小原情報通信利用促進課課長補佐

  4.  議事概要
    (1) 開会
    (2) 議題
     
    1) 資料5-1に基づき、事務局から「大学・大学院の「情報」関連人材の状況」について説明が行われた。
    2) 資料5-2に基づき、事務局から「論点整理」について説明が行われた。主な意見は以下の通り。
      【「2 高度ICT人材育成の現状と課題 (1)高度ICT人材育成の現状と課題」について】
    • (1)1)(ア)に「業務の多忙等」とあるが、この産業だけが多忙な訳ではない。ICT産業は製造業や鉄鋼業のような装備産業ではないため、全社員が業務を通じて利益を生み出す必要があり、そういう業界構造が勉強の時間を奪っていると思う。
    • IT企業群の下請け・孫請けという構造が問題なのではないか。人材育成が行われない一つの要因になっている気がする。
    • ご指摘の通り、ヒエラルキーの下の方では、仕事がある時だけ呼ばれるということになり、小さな企業では社員の教育原資が出てこないという問題はある。
    • 産業界における現状と課題を指摘することで、何が浮かび上がってくるのか。前置きとして必要なのかもしれないが、高度ICT人材を育成しようというテーマにどのように論旨がつながっていくのか気になる。
    • 「4 具体的な高度ICT人材育成策」の「(1)ICT人材の活躍の場の整備」につながり、企業も頑張って下さいということではないか。
    • 高等教育機関等における取組みの充実だけでは、なかなか人材育成にはつながらないという議論が、この研究会であったと思う。
    • いろいろ細かく羅列しても、やはり魅力のないことを増幅するだけにならないか。
    • 中等教育までの問題意識については、産業界等から指摘されており、文科省は、情報活用能力の育成などに取り組んでいる。
    • フィンランドでは、教育を重視するという国家政策の結果、教員という職業に魅力が出た。教員が非常に重要であるという施策を、あらゆる面で打っていくべき。尊敬される先生になれるような人が教員を目指すような施策を考えてほしい。
    • 中等教育以下においては、地方自治体がかなり影響力をもっているため、自治体を巻き込まないとそういった社会風潮は生まれてこない。
    • 中等教育、特に国語力は重要であるが、重要なことを全部書くのではなく、その中でできるものから取り組んでいくということを記述してほしい。
    • ICT企業とICT利用企業という2つの側面で論ずることに、無理があるのではないか。日本の求められる人材が、例えば、基幹系の人材なのか、設計開発を支援する人材なのか、R&Dを行う人材なのか、どこに注力して育成すべきかがはっきりすれば、自ずと提言に盛り込むべき教育や仕組みの方向も出てくるのではないか。
    • 今の分類だと基幹系のIS人材が中心となると思う。それを企業で分けるのか、職種で分けるのかがいいのかという問題はあるが、ICT利用企業をICT利用部門と読みかえてもいいのではないか。
    • コンピュータ関係はお金がかかるが、教育機関では十分まかなえる仕組みがあるのか。お金がない中で頑張っているのか。
    • 国立大学では、運営交付金が減ってきて、競争的資金になり、つながりが悪くなっているように思う。研究しながらの人材育成なので、教員個人に負担がかかっている。
    • 運営費交付金が削られて、インフラにお金をかけることが非常に難しくなっている。競争的資金は特定の目的のみにしかコンピュータなどの機材を買うことができず、研究と教育両方の面を持つ現場としては使い勝手が悪く、そのあたりのバランスが悪くなってきている。基盤的なインフラ等をどうするのかは、問題がある。
    • 公立大学ではもっと資金がない。外部資金の導入に努めているが、研究にウエートが置かれがちになるのが実状であり、教育インフラにかける経費は非常に少なくなっている。教育と研究を混在させるとどうしても研究に流れるので、キャリア教育に集中させるのがよい。
    • PCは、学生自身でも研究室でも手当てできるが、グループワークをする際に学生が利用できる広いスペースがないのが問題だと思う。
    • 一部の大学を除けば、環境としてプアなところで頑張っているということだと思う。
    • 修士課程に進む学生に、トレーニングの意図で何かをさせるのではなく、何らかの研究プロジェクトに配属させ、そこに時間をとられていることが問題である。
    • 就職活動と教育との兼ね合いを考えてもらいたい。実質的に大学3年生までしかトレーニングできない。4年生からは研究室に入って研究に時間をとられるし、学部3年生後半〜4年生前半は、就職活動の時期と重なる。修士も同じ状況。産業界と一緒に何かうまい仕組みをつくれないだろうか。
    • 産業界側のニーズと高等教育機関の教育とのミスマッチや、ICTに関する基礎的知識が不十分という問題に関して、具体的なデータや裏づけをはっきりさせるべき。
    • 社会人のリカレント教育、リフレッシュ教育は非常に重要。社会の中で眠っている才能を取り戻すべく来ている学生は、勉学意欲を持っている。
    • 高度ICT人材育成の現状と課題について、産業界と教育機関の整理がなされているが、政府にはICT利用者と人材育成の施策の実施者としての側面がある。官が抜けているのが気になる。また、大学については、情報利用者としての側面もあり、教育や研究においてのICT技術者の支援が十分なのか、といった見方もある。
    【「(2)わが国において求められる高度ICT人材像」「(3)高度ICT人材育成に特別な手段をとることの必要性」について】
    • 必要な人材像は常に変化するもの。今必要な人材像は何か、それを育成するためにどういう教育をどういうメンバーにどういう機会で与えるか、産学官一緒になって常に考える集団が必要。これがナショナルセンターの議論に結びついていると思う。
    • 教育については、長い時間をかけてやる必要がある。当面だけ必要ということではない。
    • 情報系の卒業生の2/3が他分野に進んでいることを、どう考えるかにもよるが、全産業がICTを基盤にしてしか競争力が得られないという時代に入りつつあるのではないかという認識が必要。我が国としては、人材が、自律的に輩出されるメカニズムそのものを構築する必要があるという論調にすべき。
    • 自律的メカニズムが働くまで何かしなきゃいけないというのは、間違いだと思う。常に変化に対して追随して色々なことを考えていくことが重要。今後は産学でやっていかないといけないと思う。
    • 「高度ICT人材育成に特別な手段をとることの必要性」の書きぶりは、よく考えないといけない。
    • これを永続的にやろうとすると、ニーズのない大学は切れという議論になると思う。
    • 経団連が自分で大学をつくれという議論があるが、それに対しては、経団連は納税者であり、税金で運営されている国立大学工学部がなぜ納税者のニーズに合った技術者育成をやらないのか、それを正当化しておいて経団連や財界が別に金を出して教育をやれと言うのなら、その分減税して欲しいという議論がある。
    【「3 高度ICT人材育成に向けた取組の基本方針」「4 具体的な高度ICT人材育成策」について】
    • 研究と教育は徹底的に分けるべき。研究と教育とを一体化すると、学生を研究要員とする意識が働く。技術者に必要な能力と研究者に必要な能力は異なるので、双方の教育を同じ場所でしようとすると不自然になる。育成の場のイメージは、教育に特化したものにすべき。
    • ナショナルセンターが専門職大学院だとすると、大学院としての縛りがあるため、これまでとあまり変わらず、本当のICT人材育成の場ができるのかどうか懸念がある。
    • 経団連の提言では、ナショナルセンターと大学院は別のものとしている。ナショナルセンターは、人材育成について恒久的に議論する場として、そこで議論した色々な機能を、専門職大学院を付設して実証するという位置づけである。
    • 実務家教員が、一定期間終了後に復帰する場がないことも問題。ナショナルセンターがその役に立つかもしれない。
    • カーネギーメロン大学では、企業が修学後の復帰の場を用意している学生しか受け入れなかった。一定期間教員として来て、その後企業に戻っていくというような専門職大学院でなければ、やめた方がいい。
    • 経団連の取り組みでも、教員として2年間で派遣して、延長してほしいという話をいただくこともある。一線の技術者を出す場合、産業界側は長期間行かれては困るし、大学側もいつやめられるか冷や冷やする。実務家教員派遣は1年契約にして、大学側から再要請があれば認めるようにしようと検討している。
    • 現実には、教員が非常勤講師ばかりだと、組織運営を誰が行うのかという問題が生ずる。大学の教員が全くタッチしない経営でいいのか。また、「多様な人間が集まる場」をどう実現するかが難しい。
    • プロトタイプ的なプロジェクトを国が委託して、それを学生と先生が行い、そこは教育と研究をやって、運営その他の細かいところはナショナルセンターが引き受ける。そういうナショナルセンターであってほしい。今の大学の中にそういう専門職大学院をつくるのは不可能であろう。
    • 経団連では、ナショナルセンターはファンクションの集合体と考えている。機能を1箇所に集約し、関係する人々のコミュニティーでもある物理的な場を提供する。また、実践する場をもたない組織は多分機能しないので、高度な教育のあり方を継続的に極める場として専門職大学院を提案している。
    • ナショナルセンターは、こうした議論を続けたり、各大学の実績を他に普及させたり、産学連携に協力するなど、ハブ機能として考えている。大学を変えるためにも、ナショナルセンターが必要。
    • ナショナルセンター自身が専門職大学院であるかどうかについては、議論の余地がある。現場を持つと、伝統的な大学の文化を持ち込む懸念がある。大学の立場として、ナショナルセンターに期待することは、競争相手が生まれることではなく、サポートしてくれる組織が生まれること。
    • 経団連と産業界は、大学に対して人材育成に関するリアルなコラボレーションをやらないかと言っているのではないか。
    • 今までのものに引っ張られないように、ナショナルセンターを新たに設立したいとした。専門職大学院としたのは現在の制度の中で最も制約が少ないためである。
    • どういう形態にせよナショナルセンターが作られる時には、その性格が誤解なく広報されて浸透することが重要である。誤解があると、既存の大学や大学院から反発を受け、結局機能しない可能性もある。
    • 学生から見て、普通の大学院とは違うという魅力が必要である。
    • ICT人材育成の場について、場のあり方や予算について、基本的な枠組みを明確にする必要がある。例えば、ナショナルセンターから支援を受けられる条件があるのか、ナショナルセンターはお金を配分するのか、ある程度大学の指導はできるのか、教育の現場を持つのかが曖昧なまま議論されており、もう少し深く設計していくことが必要である。
    • ナショナルセンターの機能を果たすような長期的な仕掛けが必要なことには賛同するが、そこから先具体的にどうするのかのイメージが未だない。大学側で絶対的に足りていないと思うことは、実際にソフトウェアを作る場が教育の現場にないこと。それが、企業でインターンシップで引き受けていただくことで、少し動き始めた。プロジェクトのような仕組みについては、今、何が欠けているのか、何が本当に必要なのかがはっきりしないと、イメージが固まらないと思う。
    • 欧米では、院生や先生が会社をつくるなど、強い意欲を原動力に一生懸命勉強している。一方、お金がない国では、大学にもお金がなく、食べていくために政府のシステム構築を大学が安く受託したりしている。どちらの場合も、先生も学生も実力をつけている。日本はちょうど中間で、非常にまずい。日本では、大学の先生がシステム開発を受注できるのか。例えば、民間企業が受けて、それを大学に出して大学では学生のトレーニングにも使うことができるのか。
    • 北大で、企業が受注し、先生と学生がアルバイトとしてやった例がある。
    • ただし、学生に社会人のような責任は持たせられないという点が難しい。
    • 実務教育の教育法自身が成熟していないという問題があるのではないか。
    • IT系の人間が足りないと言うが、日本で働いてくれるなら日本人でなくてもいいのではないか。対象を日本人に限定するかどうかで、議論は大分変わってくる。
    • 日本の国益になるのであれば、外国人の技術者を取り入れてもいいのではないか。
    • 経団連プロジェクトで人が育つという実感があり、場を継続的に提供できる仕組みは必要である。今は個別の企業と大学のボランティアベースであり、それを長く続けるのは無理である。
    • ナショナルセンターは、いろいろな識者により継続的に議論を続ける場であって、そこで何をやるかは今の段階ではっきりとは決められないと思う。
    • 本研究会の報告書としては、「4 具体的な高度ICT人材育成策(2)ICT人材育成の場の充実」は、新たな育成の場のイメージやナショナルセンターはどういう形であるべきかという辺りに重点をおいて、取りまとめたほうがいいのではないか。
    • 「3 高度ICT人材育成に向けた取組の基本方針(3)高度ICT人材予備軍の能力向上」はソフトスキルに重点をおいた記述なので、「人材育成の場」の問題意識と合わせた方がよい。
    • この研究会が終わった後も議論を続けるとすれば、前向きな形の報告書にすべきだと思う。
    • 今の大学がだめで、何か新しいことをやらなければと言うが、今の大学のどこが何で悪いか、はっきりしておくべき。専門職大学院を前提にするかどうかについてはもう少し議論があってよい。
    • 経団連の提言は、今の大学が悪いから全く違うものを作ろうというのではなく、皆がよく分からないから、新しい実験の場を作って、うまくいったらそれを大学にも普及しましょうという趣旨である。
    (3) 閉会
以上


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