情報通信のトップへ

インデックスへ 調査研究会


高度ICT人材育成に関する研究会(第6回) 議事要旨



  1.  日時
     平成20年2月19日(火) 14時00分〜16時00分

  2.  場所
     総務省第2会議室

  3.  出席者:
    (1)   構成員
      村岡座長、石島座長代理、大西構成員、大場構成員、筧構成員、北川構成員、斎藤構成員、重木構成員、大力構成員、中島構成員(大島代理)、原沢構成員
    (2) オブザーバー
      高橋参事官(内閣官房IT担当室)、藤原課長(文部科学省高等教育局専門教育課)、八尋課長(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課)、上田グループ長(日本経済団体連合会事務局)
    (3) 総務省
      中田政策統括官、松井官房審議官、鈴木総合政策課長、松川情報通信利用促進課長、久恒技術政策課調査官、小原情報通信利用促進課課長補佐

  4.  議事概要
    (1) 開会
    (2) 資料6-1に基づき、事務局から「産業界の側のニーズと教育内容とのミスマッチ等について」の説明が行われた。
    (3) 資料6-2に基づき、事務局から「報告書骨子(案)」ついて説明が行われた。主な意見は以下の通り。
      【新たな「育成の場」について】
    • 幅広い連携・連続性を意識しながらも、既存の枠組みにとらわれない新たな取組みとして行われることが必要。組織形態については、一般の大学院等を排除しようということではないが、まずは専門職大学院に比重を置くということでもよいのではないか。
    • 経団連提言の専門職大学院は、ナショナルセンターの下の一機関として、具体的な機能の実証・改良等をしてはどうかというもの。新しい教育を実証するためのモデル大学院であり、実証結果を一般の大学院に普及していく基地である。人材の量としてのニーズに応えるものではない。
    • 企業の第一線で働いている人にはドクターを持っている人は少なく、一般的な大学での教員としての雇用は難しいだろうから、専門職大学院が良いと考えた。また、大学のソフトウェア・エンジニアリングを中心とした分野は、学生が実際にプロジェクトにタッチして、その中から基礎を学ばない限り、力がついていかないと思う。
    • ドクターを持っていないと大学で教員として雇用できないというのは、極言ではないか。そうでもないところも結構ある。
    • 産業界が求める実践型の教育をやろうとすると、相当なコストがかかるので、相当な覚悟が必要である。関係者の間でネゴシエーションができていないと実現は難しい。また、産業界は人材育成機関を作ってくれというが、学生を集める保証は誰もしてくれない。お客さんを供給できるのかという市場メカニズムがあるかどうかを、まず精密に調べておくことが必要。
    • 高度ICT人材が不足しているという意味は、コンピュータそのものの設計をする人などが足りないというわけではなく、それを利用して色々な製品に組み込んだり、社会のシステムとして開発等する人のニーズが非常に大きくなってきて、追いついていないということである。従来通り、大学で計算機科学を学ぶ学科もあってもよいが、利用技術に重点をおいた教育を研究していく必要がある。
    • 社会の仕組みと、社会に対するコンピュータの利用可能性の両方を知っている人材が求められている。企業の中の教育訓練はOJTが中心だが、学問体系が確立していないので、それを追体験させるPBLのような手法も取られている。学問体系の確立のためにも、研究を行うナショナルセンターとそれを実践的に試す専門職大学院のような組織が必要ではないか。
    • 大学でもドクターを持たない教授を産業界から受け入れたり、変わりつつある。一番問題となるのは、企業側が活躍している人を大学に出す余裕がないとの話を聞くこと。潜在的には実践的な指導ができる人は大勢いると思うが、専門職大学院を作るとしても教える人を確保できるのか。また学生の側にもニーズがあると思うが、産業界においても、実践的な教育を受けた学生を正当に評価する枠組みがないと、長続きしない。
    • 大学によっては、企業からの教員の派遣に積極的に取り組んできたところがあり、そのような大学をどうスキームとして組み込むかが重要。企業の優秀な人間は忙しく、ボランティアベースでは長続きしないので、支援する仕掛けや名誉を重んじるような仕掛けを構築できるといいのではないか。例えば、ITSSの一番上をプロフェッショナル認定につなげて、ナショナルセンターに登録し、大学で教えると一番上のプロフェッショナルに認定されるような仕組みがあれば、企業側も人を派遣しやすい。
    • これまでのPBL教育や実践教育から、良いものを選定し共通化することも有効ではないか。
    • 教育にはお金がかかるものなので、ナショナルプロジェクトとして実施するのであれば、企業からの講師に名誉を与えることも必要だが、きちんとした対価も支払うべき。
    • 学問体系については、現場ごとの様々な特色や流派のようなものが出てくると思う。その教え方について、どの方法がよいのかを評価し、一般化するしくみが必要になる。新たな「育成の場」ができることには賛成だが、取り仕切る組織や人をどうするか、運用・立ち上げをどうするか、続いていく仕組みをどうするか、相当な準備と検討が必要だと思う。
    • モデルケースとして1つだけ作るのか、複数作るのがいいのか。
    • 産業界が継続的に、費用を拠出してくれるか一流の講師を出してくれるかが問題。モデル校は1〜2校とし産学で資金と人を出して、ナショナルセンターでは情報を共有し、レベルアップを図りながら3〜5年後に全体に広がって行けばよいのではないか。
    • 日本全国にあまねく作って、多くの人を教育することは不可能。モデル校でトップエンジニアを集めて方法論を確立させるのがよい。その上で、その方法論で全国に広げていくという方法もある。
    • 先導的な組織を少数作り、それに対して産業界を挙げて協力するということであれば、元気がでてくるのではないか。
    • 産業界は1つの組織ではないので、コミットする人が誰もいない。
    • CIO戦略フォーラムでは、日本の経営者はITやISに無理解であるという議論が出ている。企業全体でのICT活用の最適化を考えている企業は3割で、後の7割は部門最適か業者に丸投げだとしている。人材育成は、企業のITの理解促進と同時に進める必要がある。
    • 企業内でのICTの利活用の重要性を、経営トップ層に理解してもらうことが重要。経団連としても提言を考えている。人材育成をしながら、経営層への啓発は進めるという、全体を回すプロセスを強力に進めていきたい。九州大学、筑波大学については、経団連という名の下に何とか進めているが、国が旗を立ててくれれば、ボランティアであっても企業人は参加しやすくなると思う。
    • 大学のIT担当者のステータスをあげることも必要。
    • 企業も同様。コーポレートのIS担当者を元気にする取り組みも必要。
    • 中学校・高校の教員であっても、ITを担当すれば尊敬されるようになって欲しい。
    • 大学生がこの分野に関心を示す割合が低くなっている。産業界の関心は低いかもしれないが、基礎学問・サイエンスとしてのコンピュータサイエンスのステータスが高くなると、その分野全体に対する若い方の意欲が上がるように思う。大学でのサイエンスの部分についても底上げ策を検討することが必要。
    • サイエンスとしての中核になる部分のレベルをどう上げるかは、重要な問題。
    • 高等専門学校は、ミドルエンジニアを育成するために設立されたが、今やほとんどの人が忘れている。専門職型の教育組織を作るのであれば、ある程度の永続性と、状況に応じて変化させることができる組織としておく必要がある。その意味でも、財政的な裏づけが必要。
    • 大学院のコンピュータサイエンスは人気が高いが、学部は以前ほどの人気がない。情報関係の技術は、高校生から見たときには理解しにくいのかもしれない。なお、高等専門学校の卒業生は優秀な学生が多いと思う。
    【「ICT人材育成の場を支援するための仕組み(ナショナルセンター的機能)」について】
    • 各省庁や大学や企業で様々な取組みがあるが、いずれも短期で終わって、相互の交流がないこと、比較的小規模なものである。一つ一つ見ると頑張っているので、これに横串を通すような仕組みが必要。そのために、永続的に議論を続けられる場をまず作りたい。人、金についてはまず公的資金を考えているが、産業界も相応の負担をする覚悟はある。
    • 企業の立場としては、社員を学生として送ること、講師を3年くらい派遣すること、採用で配慮することなどは対応できることである。
    • 教育機関からみて、中央集中型で政府をバックにしたというイメージにはならないよう、他校への広がりがある制度としてほしい。
    • 産官学すべてに対してオープンの運営で、その成果はどこで活用してもよいということが重要なこと。
    • ナショナルセンターの運営については、機能をある程度グルーピングして、グループごとに産学官での議論や具体的な運用を考えていく必要がある。
    • ある程度ノウハウが蓄積されるまでは、産学で連携をした上で衆知を集めて運営していくしかないと思う。
    • 色々な機関で既に様々な取り組みが行われているので、それらとうまく連携しないといけない。
    • 将来横展開するためには、共通化、教材の汎用化、教員への教育も検討課題だと思う。
    • 各取組みの関係者が集まって、意見交換、相互派遣、カリキュラム交換などを行うことが必要。まずは、ナショナルセンター準備会のようなものから始まるのではないか。
    • 日本の10年後を引っ張る人材を育成するためには、これまでとは違う新しいモデルをナショナルセンターが中心となって構築してみるべきではないか。
    • これまでのプロジェクトの経験や思いを集めた上で、新しいモデルを構築してはどうか。
    【「高度ICT人材育成に特別な手段をとることの必要性」について】
    • 一般の職種であれば、当然マーケットメカニズムの中で人材が供給されていく。今、高度ICT人材が質量ともに足らないというのは、マーケットメカニズムが十分に機能していないからではないか。ではマーケットメカニズムが機能しない理由は何か。共通認識がないと、処方せんとの間に説得力がないと思う。
    • 2つある。1つは、産業界としては利用技術者のニーズが増えているのに対し、教育の場の利用技術のニーズを満たす人材の供給が追いついていないということ。2つ目は、インド・中国などの人件費の安い人材が台頭し、国内のIT技術者は不足しているにもかかわらず賃金も国際競争にさらされて厳しい状況に陥っており、日本国内における自立的なマーケットメカニズムが働きにくくなっているということ。
    • 大学教育と産業界のニーズの違いについては、ICT分野特有の話ではないのではないか。また、インド・中国の台頭により、人材の流動性が増してきているのは、マーケットメカニズムの観点からはいい兆候なのではないか。
    • ITはIT業界だけでなく、産業のあらゆる分野で使われているので、それに対応できる非常に多様なIT人材を育成しなければならないといけないという課題がある。また、インド・中国に人材を依存し、日本国内にIT人材が存在しなくなってもよいのであればそれでよいが、我が国の産業全体・日本の国際競争力という観点から、国内にIT人材を確保する必要があるのではないか。
    • マーケットメカニズムに任せると全部外国の人材に依存することとなり国としてまずいという指摘だと思うが、それならマーケットメカニズムには任せては駄目だという理屈で整理すべき。マーケットメカニズムがうまく働いていない部分を除去するという理屈とは、アプローチが違う。
    • 情報系に限らず工学系は学ぶことが非常に多いので忍耐力が必要な分野だが、きちんとした評価をせずマーケットだけで動いてきたので、工学系の人気が落ちてきたのだと思う。工学系の人気不足は先進国共通の傾向だが、日本は資源を持たない国なので、人材育成が特に重要。長い間、きちんと勉強をしてきた人を正当に評価することが必要である。トップの人材も、下からの訓練を積み上げていく中から出てくるものである。
    • ミスマッチは他分野でもあるが、情報の利用技術に関するミスマッチは特に大きいと感じている。情報サービス産業が学科を問わない採用をしている理由は、専門職としての育て方がまだ確立していないことの現れではないか。
    • 海外の安い賃金の人材を活用することは受け入れたとしても、トップ層だけは国として人材を確保しておかないと、国が生き残れないのではないか。
    • トップを育てるためには、全体的なレベルアップが必要。ここでは、大学院、理工学系の大学である程度力をつけた方を対象とし、さしあたりトップリーグを作ることにより、下への波及効果を狙う議論をしているものと理解している。
    (4) 閉会
以上


トップへ