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「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」
(第3回)議事概要

1 日時
  平成1410月1日(火) 午後2時〜午後4時40

2 場所
  総務省 第一特別会議室 (中央合同庁舎2号館8階)

3 出席者(敬称略)
(1)  構成員
 齊藤 忠夫 座長、加藤 彰一、黒川 和美、清藤 正、立花 宏、田村 次朗、中空 麻奈、米澤 明憲(欠席 醍醐 聰 座長代理、磯辺 浩一、大谷 和子、佐藤 治正、三邊 夏雄、根岸 哲)
(2)  オブザーバ
 青木 敏(電算)、有馬 彰(NTT 東日本)、井崎 直次(ニフティ)、江部 努(NTT 西日本)、加藤 義文(日本電気)、木全 紀元(J フォン)、桑田 昭(東京電力)、櫻井 浩(日本テレコム)、庄司 勇木(イー・アクセス)、高瀬 充弘(NTT コミュニケーションズ)、滝沢 光樹(テレコムサービス協会)、塚本 博之(東京通信ネットワーク)、辻村 清行(NTT ドコモ)、藤野 利行(KDDI)、田辺 治(公正取引委員会事務総局)、(代理 飯田 修久(C&W IDC))
(3)  総務省
 鍋倉 眞一 総合通信基盤局長ほか

4 議事概要
(1)  関係者ヒアリング
 ヒアリング質問項目に対してオブザーバから寄せられた回答の概要について、資料2「オブザーバから提出いただいたヒアリング質問項目に対する回答(事務局整理・要約)」に基づき、総務省から説明が行われた後、構成員及びオブザーバ間で意見交換がなされ、大要次のような意見等が出された。

 研究会の検討事項について
 構成員より「本日の資料を見て、アプリオリに市場を画定することが困難なことを確信。一般論からすると、本研究会で議論すべきは、事前に市場の競争状況を厳密にチェックする方法ではなく、経済の活性化を図るため新サービスの登場を容易にする環境整備の方法。なお、問題が発生した場合に事後的に指摘できる程度に競争状況を把握する必要性は認識。」との主旨の意見があり、それに対し、事務局より「今回の関係者ヒアリングは今後の議論の出発点であり、競争評価の困難性を共通認識とすることも事務局として意図。電気通信行政としての関心は、市場の監視ではなく電気通信の健全な発達にあり、競争評価はそのための手法。その観点から、本研究会の名称も「競争評価手法」を冠しているところ。本研究会は、サービス市場を詳細に画定してその競争状況を具体的にチェックするのではなく、その際の考え方をまとめることが目的。」との主旨の回答があった。
 構成員より「規制緩和という大きな流れの中で、その手段として競争評価が必要という点については相違ないが、市場支配力が発見された場合の規律にまで議論が及ぶことは問題。変化著しい電気通信分野においては、新サービスは事後規制に委ねるしかなく、事前に安直に市場画定すると、却って競争を阻害する。行政サービスの一環としてサービス市場の競争状況を世の中に提供するというスタンスを明確化してはどうか。」との主旨の意見があり、それに対し、他の構成員より「装置産業たる電気通信は、ボトルネック設備の存在等他産業と異なる特徴を有するが、接続ルールの整備等の努力により、着実に競争的になってきた。事務局の関心は、このような競争的になりつつある電気通信市場において、分野固有の規律をどこまで課すべきか、どこまで非規制にできるのかというものと理解。事前規制は競争阻害要因となるという意見もあるが、新規参入者にとっても一定のルールは予め明らかにしておく必要がある。」との主旨の回答があった。
 構成員より「一種・二種の事業区分の廃止に伴う規制緩和について、段階的に規制の撤廃を行うのか、それとも、専門家によりマーケットを厳密に分析した上でその状況に応じた規制を議論していくことになるのか。」との主旨の意見があり、これに対し、事務局より「必ずしも区別する必要はない。本研究会では、規制緩和についての行政の説明責任を明らかにする必要性から、サービス市場の競争状況を判断するための定性的・定量的手法を組み合わせた方法を検討願いたい。」との回答があった。
 オブザーバより「対象とする時間軸を明確にすべきであり、例えば今後5年間をターゲットとするなどの共通認識が必要。また、e-コマースといった業際サービスをどのように捉えるかについては、トラフィックを流すという電気通信の産業的特性を共通認識としてはどうか。」との主旨の意見があり、これに対し、構成員から「前者は妥当。後者については電気通信サービスのボーダーの捉え方であるが、他サービスにおける市場支配力のレバレッジの問題も指摘されているところ。」との主旨の回答があった。

 仮想独占者テストについて
 オブザーバより「英国の有効競争レビューは、経済理論や産業組織論を背景に、収益分析を重視して市場支配力の存在を検証し、その強弱に応じた規制の在り方を検討するもの。英国では計量経済学等の訓練を受けた専門家がレビューを行っており、現在の総務省の陣容で、仮想独占者テスト等による市場画定が可能か疑問。本研究会でも、まず論じるべきは、市場支配力の定義であり、その強弱に応じた規制の在り方と思料。」との意見があった。
 構成員より「仮想独占者テストは、諸外国において一般的な市場画定手法なのか。また、そのプロセスは対外的に公表できるのか。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「当該テストは、経済学上の原理・原則に基づいて行うものであり、その種の経験と専門知識を有している人材がいれば実施可能と考える。」、他の構成員より「問題となっている企業の経営判断に含まれる事項か、利用者利益を阻害するものかの判断は非常に困難。しかも、どれだけオープンに議論できるかが問題。また、過去に郵政研でも需要分析を行ったことがあり、ある程度のノウハウあり。例えば、シンクタンク3社の専門家に分析を委ね、その推定結果を比較してみるということは出来るが、政策判断は困難。」との主旨の回答があった。
 構成員より「諸外国の先行事例を参考にしていくことも重要なアプローチであり、それらの事例から日本の実状に合わない部分をそぎ落としていくのがよいのではないか。」との主旨の意見があり、他の構成員より「その点について知見を有するオブザーバから別途意見を聞く機会を設けたい」、「他分野の独占度の推定方法は、電気通信分野では必ずしも同一でない。推定の次のステップとして、独占度に応じた規制を判断することは困難。」、「他分野の独占度テストは、どの程度プロセスを公表できるかは別として、一般的な画定された市場ではある程度有効。英国等の先行事例は参考になるが、模倣だけでは現状に即した手法は構築出来ない。」との主旨の回答があった。

 ユーザ属性による市場の区分について
 構成員より「ユーザの属性によって市場を区分する必要がないとの意見の事業者でも、法人・官庁向け営業部とマスユーザ向け営業部を分けている場合があると承知しているが、実際どのように考えているのか。」との主旨の質問があり、オブザーバより「ユーザの属性によって意図的に区分しなくとも、サービスの特性に応じて自ずと区分される。」、他のオブザーバより「どの事業者でもそうだが、新サービスの提供に当たってはユーザドメインを画定した後に社内リソースを配置。ユーザ属性を定義しても本研究会の目的に適うものにならない可能性があり、一部抽象論も入れつつ、サービスの本質性と同義であろうが、利用者の価値観等を考慮していくことになるのではないか。」との回答があった。
 オブザーバより「市場の変動が激しいので、市場は極力細かく区分しない方がよい。また、実際の評価に当たっての情報提供では、事業者によってはユーザ属性の区分がなされていない社もあり、現実的でない。」との主旨の意見があり、他のオブザーバより「実際の情報提供までは考慮していなかったが、サービスによってはユーザセグメントが異なることも事実。」、「揺籃期はともかく、ユーザ側から見たサービス内容が明らかに異なる場合があるのではないか。これによって規制が異なるか否かは別の議論。」、「ISPとしては、ユーザ層はほぼ同じ。」との主旨の意見があった。
 構成員より「企業向けでは相対取引が可能だが、家庭向けにはなじまないという昔からの議論があり、ユーザ属性で区分できるのであれば考慮したいという程度のもの。」との主旨の意見があった。

 地理的市場の区分について
 構成員より「地理的市場の区分についても様々な意見があるが、どのように考えるか。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「サービスエリアは品質の一つと考えており、全国で捉えるのが適当。」との主旨の回答があった。
 オブザーバの「インフラ整備の観点から、1)首都圏とその他の地域、2)都道府県知事の鶴の一声で公的インフラの整備状況が大きく異なることから都道県別で、大きな格差があることは事実。」との主旨の意見に対し、構成員より「都道府県が情報ハイウェーを整備した場合、事業者の調達コストは安くなるのか。」との主旨の質問があり、それに対し、オブザーバより「都道府県により異なるが、安く調達できる場合が多く、公的インフラの整備状況が中堅ISPに与える影響大。」との主旨の回答があった。
 構成員より「地理的市場の画定は競争状況にある場合には、実際には敢えて取り上げる必要はないのではないか。競争状況にあって独占状態が存在する場合でも、参入障壁がある場合や独禁法上問題になっている事例はないのではないか。」との主旨の意見があり、それに対し、他の構成員より「電話の世界ではそうであっても、例えばインターネットアクセスではそうとも言い切れない。」との意見があった。
 オブザーバより「地理的市場については、ユニバーサルサービス的な発想からの社会政策・消費者保護の観点はあっても、競争政策の観点からの議論にはならないと思料。」との主旨の意見があり、これに対し、他のオブザーバより「例えば、ブロードバンド系アクセスサービスではエリア限定のサービス提供事業者の出現も想定され、全国レベルで見ると影響は小さいがエリア限定では市場支配力を有するような状況もあり得るので、場合によっては地理的市場の概念が必要なケースもあると思料。」との主旨の意見があった。

 市場の概念に関するその他の意見について
 構成員より「IP系サービスについては、市場の画定を行うことにより、競争・サービスの発展に歪みをもたらすとする一方で、加入電話等の市場においては競争評価を行う意義が乏しいとの意見があるが、言及されていない移動体のみを規制すべきということか。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「IP電話と加入電話ではサービス面での競争は確実に存在する一方、高コストかつ縮小傾向の加入電話に新規参入する事業者は想定されない。サービスの融合の進展により、将来にわたって新サービスの出現を予見したレディメイドの規制は困難。」との主旨の回答があった。
 構成員より「独禁法では、問題が発生した際、独占者の存在を発見するために市場を狭く捉える傾向があるが、本研究会では、独占者を必ずしも発見するのではなく、独禁法とは少し異なった視点で、中長期的な観点から広めに市場を捉えることになるのではないか。」との主旨の意見があった。

 市場の成熟度の取扱について
 構成員より「成熟期においても需要者から見た効用については差がないのではないか。」との主旨の質問があり、それに対し、オブザーバより「市場の成熟度からサービスの本質的な区分が困難であれば、それによって規制を区分すべきではない。」との主旨の回答があった。
 オブザーバより「揺籃期は代替サービスや新技術が次々と登場する可能性があり、事業者はある種のリスクを負って当該サービス市場に参入。このようなリスクに見合う正当な先行者利益は、確実な競争阻害要因が発生しない限り認めるべきであり、基本的にはサービスの揺籃期は事後規制のみで十分と思料。」との主旨の意見があり、これに対し、構成員より「新サービスの登場の活性化のため、正当な先行者利益の確保は重要。」との主旨の意見があった。
 オブザーバより「独禁法の運用では、事業者努力によってよい商品を供給し、利用者に選択された結果、当該事業者のシェアが上昇した場合、公権力による排除はしていない。電気通信の特性に起因したボトルネック設備のオープン化等は必要と認識しているが、企業努力の結果としてのシェアのみをもって規制することは避けるべき。」との主旨の意見があった。

 接続規制等のサービス市場への影響について
 構成員より「接続ルールが不十分でサービス規制が必要との意見もあるが、具体的に何が問題なのか。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「例えば、東西NTTが活用業務として他事業者と競合する分野に進出する際、ボトルネック設備を保有しているために加入電話ユーザの情報を把握できる立場にあり、営業面で有利になる一因となりうる。」との主旨の回答があった。
 オブザーバより「設備保有それ自体と、それに伴う情報の流用を区別して議論しないと、一定のリスクを負う設備保有に対するインセンティブを阻害。」との主旨の意見があった。

 参入障壁等の取扱について
 構成員より「抽象論と具体論が混在しており、議論を見えにくくしている。現状分析と併せて、IP電話の参入時の障壁が何か検討すれば、具体的な議論になると思料。」、他の構成員より「事業者が事業展開するに当たって何が障害になっているのか整理すべき。」との主旨の意見があった。
 構成員より「相互内部補助やダンピング等の方法が予め禁止されていれば、事業者はその方法を回避するのではないか。地方限定でサービスを行う場合でも同様と考えられるので、地理的市場を意識する必要はあるが重視する必要はないと考えたものであり、チェックすべきは参入障壁のみ。」との主旨の意見があった。
 構成員より「新規参入の阻害要因と促進要因があると考えられるが、前者の議論に終始しており、後者をもっと洗い出し、評価のためのファクターを複数準備した方がよい。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「例えば、ADSLの場合、コロケーション・ラインシェアリングのルール整備によりマーケットが成長したものと考えられるが、参入障壁を撤廃したとも参入促進措置を整備したとも事後的には言えるが、事前では判断しがたい。また、市場評価のみでは参入促進措置は判断できない。」との主旨の意見があった。
 構成員より「電気通信に固有の問題が数多くあり、これらに基づく事前規制は必要。」との主旨の意見があり、これに対し、オブザーバより「加入者回線のオープン化は必要であるが、光ファイバまで含まれる現行のボトルネック設備の範囲の見直しとサービス市場の事前規制の撤廃を主張しているところ。」との主旨の意見があった。
 オブザーバより「ADSLサービスの発展は、ネットワークのオープン化と問題発生後の迅速な対応が有効に機能したものと評価。揺籃期の取扱は難題であるが、少なくともADSLの例では、支配的事業者に抑制力が働いたと考えており、単に非規制というのは危険。」との主旨の意見があり、これに対し、構成員より「ADSLサービスへの参入では、東西NTTは後発であり、世界的にもILECは後発と承知。」との主旨の意見があった。

 競争評価のための事業者からの情報提供について
 構成員より「アプリケーション分野の競争状況を分析するための情報提供はどの程度可能か。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「ボトルネック設備の保有に伴う情報提供は、現行法令に基づき実施中。サービス・アプリケーションに関する情報提供は会社の利益との兼ね合いが必要。」、他のオブザーバより「e-コマース等に係る情報提供については、現在も積極的に情報公開を行っており、一定の議論ができる程度の情報は提供可能。」との主旨の回答があった。
 構成員より「市場全体を把握するためには現行の一種事業者のみならず、サービスによっては二種事業者からの情報提供が必要と考えるが、可能か。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「他社との競争上、1)魅力的な料金、2)機能の差別化、3)ブランド力・営業力、4)資金力が必要。一種事業者に比べて、二種事業者は一部を除き一般的には小規模であり、これまでデータ通信分野において1)2)を中心に展開してきたところ。相対的に大規模な一種事業者が同じサービスに参入すれば勝負にならず、ニッチな市場をターゲットとせざるを得ない。このような現状を踏まえた上で議論するのが現実的。」との主旨の回答があった。
 オブザーバより「市場画定の際の仮想独占者テストをはじめ、既存の競争評価手法は、産業組織論を背景に静的な効率性を評価するものであり、情報通信のような変化の激しい分野に適合する動的な状況を評価する手法はほとんどない。このため、企業秘密に属するような情報を収集したとしても、判断する手段がないので、ボトルネック性やレバレッジ等の参入障壁の存在を検証するのみでよいのではないか。」との主旨の意見があり、これに対し、構成員から「ある市場において独占力を有する事業者がレバレッジを行使して隣接市場を支配することは既に問題となっており、一定の検討は必要。」との主旨の意見があった。

 その他
 構成員より「産業界の観点からは、専用線の料金は非常に高額であり、大きな問題。今後、勉強していきたい。」との主旨の意見があった。

(2)  その他
 今後の検討スケジュールについて、資料3「研究会の検討スケジュール(案)」に基づき総務省から説明が行われ、次回会合は1021日(月)午後2時から開催し、詳細については事務局から別途連絡することとなった。


以上




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