情報通信のトップへ

インデックスへ 調査研究会

「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」
(第5回)議事概要

1 日時
  平成1411月6日(水)午後2時〜午後4時10

2 場所
  総務省 7階会議室 (中央合同庁舎2号館8階)

3 出席者(敬称略)
(1)  構成員
 齊藤 忠夫 座長、醍醐 聰 座長代理、磯辺 浩一、大谷 和子、佐藤 治正、清藤 正、田村 次朗、中空 麻奈、根岸 哲、米澤 明憲(欠席 加藤 彰一、黒川 和美、三邊 夏雄、立花 宏)
(2)  オブザーバ
 青木 敏(電算)、有馬 彰(NTT東日本)、加藤 義文(日本電気)、木全 紀元(Jフォン)、桑田 昭(東京電力)、庄司 勇木(イー・アクセス)、高瀬 充弘(NTTコミュニケーションズ)、滝沢 光樹(テレコムサービス協会)、藤野 利行(KDDI)、リサ・スーツ(C&W IDC)、田辺 治(公正取引委員会事務総局)、(代理 富永 寛(NTTドコモ)、野津 卓哉(東京通信ネットワーク)、宮坂 修史(ニフティ)、吉野 充信(日本テレコム)、吉松 康夫(NTT西日本))
(3)  総務省
 鍋倉 眞一 総合通信基盤局長ほか

4 議事概要
(1)  関係者ヒアリング
1)  資料1−1「磯辺 浩一 構成員 プレゼンテーション資料」に基づき、磯辺 浩一(全国消費者団体連絡会事務局次長)構成員から説明が行われた後、構成員の間で質疑応答がなされ、大要次のような意見等が出された。
 構成員より「利用者からの苦情・相談の実状把握については、各事業者に過去の実例等の蓄積があるのか。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「消費者団体は知りうる立場になく、実際に消費者対応の最前線に立つ事業者にはその蓄積があるはずだが、事業者からそのような話は聞いたことがない。今後は、行政に頼るだけでなく、各事業者、業界団体の自主的な対応が重要になると思料。」との主旨の回答があった。
 構成員より「現時点では業界団体による苦情処理機関は組織されていないと思料。実際には業界団体による対応は困難ではないか。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「消費者が訴訟を含めて自分自身で解決することが最も良い方法。それに対するサポート体制の整備が必要なことは言うまでもない。日本の現行制度では、消費者自身による少額訴訟は困難なため、それらを消費者団体で取りまとめ集団訴訟ができるようにすることも必要。本来なら競争の進展に応じて事業者の消費者への対応も向上すべきところ、総務省への電気通信サービスに係る苦情・相談件数は、今年度も、インターネット接続、ADSL等に関する相談が増加した昨年度並で推移しており、いっこうに減る状況にない。競争評価の際には、競争阻害要因としてそれらの分析も有用ではないか。」との主旨の回答があった。

2)  資料1−2「リサ・スーツ オブザーバ プレゼンテーション資料」に基づき、リサ・スーツ(C&W IDC株式会社 制度担当ヴァイスプレジデント)オブザーバから説明が行われた後、構成員及びオブザーバの間で質疑応答がなされ、大要次のような意見等が出された。
 構成員より「資料の13頁の「結論の前の一時中断とコンサルテーション」では、1) レビュー結果に基づく規制の見直しのみならず、レビュー方法の是非を含めて意見募集するのか。それともレビューの方法は是として、レビュー結果に基づく規制の見直しについてのみ意見募集するのか。2) レビュー結果に基づき、現行規制を継続する場合でも意見募集するのか。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「1) については前者。意見募集の際には、市場画定についても、規制の見直しについても、OFTELに対して新たな情報を提供する機会が与えられており、その情報によってはOFTELの最終判断が変更されることもあり得る。2) については、EU指令により現行規制を継続する場合でも意見募集の実施が義務づけられている。」との主旨の回答があった。
 構成員より「OFTELは、通信法と競争法の両法を執行していると承知しているが、競争促進のため、どのような場合に両法を使い分けているのか。同じ競争上の問題でも、反復的に発生する蓋然性が高いものは通信法により、反競争的行為等は競争法により、それぞれ対処する旨を英国の研究者から聞いたことがある。これについて事後でもよいので、確認の上、ご教授願いたい。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「一般的には、事後的措置は競争法、事前措置は通信法で対処するものと認識。例えば、ドミナント事業者による接続、コロケーション等に係る差別的取扱等、反復的・継続的に発生する蓋然性が高い反競争的行為については通信法に基づき事前規制を課している。」との主旨の回答があった。
 構成員より「差別価格、割引の設定等は、ある意味では競争であり、それらが競争上問題と認定された場合には企業のインセンティブをそぐのではないか。2) 行為の継続が問題となる一定期間とは具体的にどの程度か。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「1) 差別価格、割引の設定等は競争という側面も持つが、ドミナント事業者が行うと全く意味合いが変わってくる。重要なのは、当該行為を誰が行うかであり、ドミナント事業者が継続的に大幅な割引料金を設定した場合、競争事業者に与えるダメージは甚大。2) 競争上問題となり得る行為の継続期間については、当該行為の競争に与える影響を考慮する必要があり、その明示は困難。例えば、ドミナント事業者の設定する割引料金によって、比較的短期間でも小規模な事業者なら倒産することもあろうし、長期間ならば、それ自体が参入障壁にもなり得る。」との主旨の回答があった。
 構成員より「市場画定については、1) 規制機関がアプリオリに画定する方法、2) 消費者の苦情等に基づき問題がありそうなところからアドホック的に画定する方法が考えられるが、EUはどちらに該当するのか。技術革新や変化が著しい電気通信市場では、1) の採用は困難ではないか。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「EUでは、事前規制が必要な市場の特定の際、「参入障壁が存在」、「適切な期間内に自然に有効競争的な状態に移行しない市場」及び「競争法単独では対応できない市場」の全てに該当することが判断基準。これらの基準に基づき、欧州委員会がトップダウンで選定した市場のリスト草案が公開中であり、今年中には確定予定。その一方で、国内規制機関が個々の国内事情を勘案して市場を選定し、欧州委員会に申請するというボトムアップ的なアプローチも可能。」との主旨の回答があった。

3)  資料1−3「田辺 治 オブザーバ プレゼンテーション資料」に基づき、田辺 治(公正取引委員会事務総局経済取引局調整課企画官)オブザーバから説明が行われた後、構成員及びオブザーバの間で質疑応答がなされ、大要次のような意見等が出された。
 構成員より「競争促進の観点から、総務省と公取委の役割分担について具体的に教授願いたい。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「公正競争確保の観点から、事業法に基づくボトルネック設備やユニバーサルサービス等に係る事前規制は必要と認識しているが、それ以外の料金・契約約款に係る事前規制は不要ではないか。また、ボトルネック設備を梃子にした不当な差別的取扱、電力会社の電気通信への参入、移動通信分野での独占的な課金システムの保有に係る問題等、市場支配力の濫用行為については、独禁法に基づく事後規制により公取委が対処すべきと思料。」との主旨の回答があった。
 構成員より「具体的には、iモードのプラットフォームについては、総務省でなく公取委が規制すべきということか。Lモードについてはどうか。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「独禁法に基づくガイドライン等で対処可能な問題であり、iモードのプラットフォーム機能のオープン化は不要ではないか。Lモードについては、ボトルネック設備との関連性の検証が必要。」との主旨の回答があった。
 構成員より「ジョイントマーケットについては、独占部門と競争部門の間のファイアウォールが必要と考えるが、不要か。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「ボトルネック設備を保有する事業者の当該設備部門と他部門間のファイアウォールは必要と認識。」との主旨の回答があった。
 構成員より「マイクロソフトのように競争の過程において独占力を有するに至った場合と、ボトルネック設備のように過去の経緯から独占力を有する場合があり、それぞれへの対応は異なってくると思料。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「電気通信分野は、国家独占から競争導入を政策的に推進してきた経緯から、分野特殊なボトルネック設備等に係る規制は現時点では必要と認識。」との主旨の回答があった。
 構成員より「競争の結果として市場支配力を有するに至った場合には、基本的には独禁法に基づく事後規制で対処すべきと考えるが、公取委が電気通信分野の事後規制を担う用意はあるのか。資料中の事業所管官庁と「競争当局との協働」について具体的なビジョンを教授願いたい。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「公取委の役割は反競争的行為の防止にある一方、電気通信分野の極めて技術的な問題には総務省の紛争処理委員会が対処することが現実的であり、両者の連携について検討していきたい。また、公取委では、IT・公益事業タスクフォースの設置等の取組を進めているが、体制面の不備を指摘する声もあることから、より一層迅速な審査・相談体制の強化に努めたい。さらに、ドイツでは、SMP指定の際に規制当局と競争当局が協働することとされており、我が国の競争評価においても、独禁法を所管する観点から公取委の一定の関与が必要。」との主旨の回答があった。
 構成員より「今般の競争評価は、これまでの情通審での議論の経緯から、従来のボトルネック設備との関連性が低い分野に対する一律の規制を競争の進展状況に応じたものに改めるべくその導入を提言したものであり、ボトルネック設備のレバレッジに起因する範囲のみに限定されるものでない。この点、ボトルネックが存在しない移動体通信分野についても競争評価の対象となり得るが、固定発携帯着の料金設定権の固定通信事業者への委譲問題については公取委としてはどのように考えるか。公取委のフレームワークでは、ボトルネック性が存在しない移動体通信分野はそもそも検討の遡上に載り得るのか。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「ボトルネック設備に係る非対称規制を含めて制度全体を見直すのであれば異論ないが、従来の規制を温存したまま、競争評価による料金・サービスに係る新たな非対称規制を導入することは問題。料金設定権の問題については、当事会社が公取委にも調査を依頼しているため、コメントを差し控えたい。」との主旨の回答があった。
 構成員より「競争評価の基本認識は、真に必要な規制のみを柔軟に課していくためのツールを提供するもの。また、従来の規制緩和は、規制対象の事業者の要請をトリガーとして当該事業者の情報提供により行うものであったのに対し、競争評価に基づく規制緩和は、ある意味で行政が説明責任を負うこととなる。」との主旨の意見が、また、他の構成員より「市場支配的事業者による競争阻害行為に対して、事前的に事業法で対処するのか、それとも、そこまでの必要はなくて、事後的にその都度独禁法で対処するのかという違いのみであって、ボトルネック性がないから独禁法で対処すべきというような問題ではない。市場の画定及び当該市場における市場支配力の存在の検証は、事業法でも独禁法でも重要。EUでも同様だが、結局のところ、事前規制を残すべき領域と独禁法あるいは競争法による事後規制に委ねるべき領域の仕分けの問題。」との主旨の意見があった。
 構成員より「合併審査の際、持株会社の下での親子会社、兄弟会社等の合併は競争上問題ないと判断されるとのことだが、持株会社の有する事業会社の持ち株比率の低下等の問題については、独禁法では対応困難ではないか。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「50%超の株式を保有する関係にある親子会社では個々が独立して競争することは考えにくい。」との主旨の回答があった。
 構成員より「公取委で開催中の「政府規制と競争政策に関する研究会(電気通信WG)」の検討内容は本研究会でも有用と考えられるので、検討状況について情報提供願いたい。」との主旨の意見があり、これに対しプレゼンテータより「当WGについては、先週金曜に最終会合を開催したところであり、今週取りまとめの後、来週以降に公表される予定。」との主旨の回答があった。
 構成員より「評価プロセスの中立性・透明性の確保のための競争当局との協働は非常に重要であり、今後、議論していきたい。」との主旨の意見があった。

(2)  電気通信サービスの現状等について
 ケーススタディの進め方について、資料2−1「日本の電気通信サービスの現状について」、資料2−2「第4回会合「論点(案)」議論を踏まえた整理」及び資料3「検討スケジュール(案)」に基づき、総務省から説明が行われた後、構成員の間で意見交換がなされ、大要次のような意見が出された。
 ・  構成員より「今後の議論の進め方の方向性については了承。ケーススタディは事業者に直結する問題なので、次回、オブザーバとして参加している事業者からも是非意見が聞きたい。そのため、事務局から研究会メンバーに討議資料を事前に送付願いたい。」との主旨の意見があり、これに対し事務局より「基本的にはその方向で進めたいが、資料の事前送付については、スケジュール的にタイトなため、不完全な段階で送付する可能性があることは了承願いたい。オブザーバの意見も、次回のみならず随時、是非拝聴したい。」との主旨の回答があった。
 ・  構成員より「デュープロセスの公平性・透明性の確保は、資料2−2では明示されていないが、競争評価への社会的信頼を得るためにも必須であり、これを論点として明確に位置づけることを提案したい。」との主旨の意見があり、これに対し事務局より「ご指摘については十分認識。資料2−2では項目として特出ししていないが、8頁に「2 判断過程の透明化」として明示しているところ。」との主旨の回答があった。

(3)  その他
 次回会合は1114日(木)午後2時から開催し、詳細については事務局から別途連絡することとなった。


以上




トップへ