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「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」
(第6回)議事概要

1 日時
  平成141114日(木)午後2時〜午後4時10

2 場所
  総務省 8階第一特別会議室 (中央合同庁舎2号館8階)

3 出席者(敬称略)
(1)  構成員
 齊藤 忠夫 座長、醍醐 聰 座長代理、磯辺 浩一、佐藤 治正、三邊 夏雄、清藤 正、立花 宏、田村 次朗、中空 麻奈、根岸 哲、米澤 明憲(欠席 加藤 彰一、大谷 和子、黒川 和美)
(2)  オブザーバ
 木全 紀元(Jフォン)、桑田 昭(東京電力)、櫻井 浩(日本テレコム)、庄司 勇木(イー・アクセス)、塚本 博之(東京通信ネットワーク)、辻村 清行(NTTドコモ)、藤野 利行(KDDI)、リサ・スーツ(C&W IDC)、田辺 治(公正取引委員会事務総局)(代理 尾崎 秀彦(NTT東日本)、高嶋 幹夫(NTTコミュニケーションズ)、吉松 康夫(NTT西日本))(欠席 青木 敏(電算)、井崎 直次(ニフティ)、加藤 義文(日本電気)、滝沢 光樹(テレコムサービス協会))
(3)  総務省
 吉田 靖 料金サービス課長ほか

4 議事概要
(1)  討議(ケーススタディ)
 資料1「日本の電気通信サービスの競争状況について」、第5回会合提出資料2−1「日本の電気通信サービスについて」及び同資料2−2「第4回会合「論点(案)」議論を踏まえた整理」に基づき、事務局より説明の後、構成員及びオブザーバの間で質疑応答がなされ、大要次のような意見等が出された。

 今般のケーススタディの進め方について
 参考1−2 リサ・スーツ(C&W IDC)オブザーバ ご提出意見に対して、事務局より「これまで研究会においては、具体例に則さず、概念の整理を行ってきたところ。これに対して、議論の上滑りを懸念する意見が多数出されたため、今般、具体的な事例に即して競争評価手法の検討を行うこととしたもの。したがって、ケーススタディでは、その対象市場について競争状況の判断を出すことが目的でなく、具体的事例に基づき、その市場を対象とすることの妥当性及びその理由、市場画定にあたって考慮すべき要因、競争評価の指標及びその総合評価のあり方、情報収集の現実性等について検討を行うもの。」との主旨の回答があり、これに対し、オブザーバより「そのような進め方なら了承。」との意見があった。
 オブザーバより「ケーススタディの対象サービスとして、ADSL、固定電話及び携帯電話を事務局が選択した理由を教授願いたい。」との主旨の意見があり、これに対し、事務局より「現に多くの利用者が活用し、これまでの研究会の議論でも例として多く用いられたサービスをピックアップしたもの。具体的には、1) ADSLは加入者数が急増するなど、市場構造がダイナミックに変化していること、2) 固定電話は現時点でも典型的な通信サービスであり、IP電話との代替性など興味深い点があること、3) 携帯電話はボトルネック性はないものの電波の有限性から発生する問題など興味深い点があること。」との主旨の回答があった。
 構成員より「今後、競争評価が行われることを前提として、本研究会では必要となる基準を議論するものと認識しており、この点を再度確認したい。」との主旨の意見があり、これに対し、事務局より「デタリフ化の際の競争評価の法的根拠は、今後、閣法として法律案が国会に提出され、その審議の結果確定。また、法律の成立後、具体的な競争評価は審議会等でご審議いただくことになろうが、事務局としては、研究会において、競争評価に係る一定の基準等を含め、何らかの成案を取りまとめ願いたい。」との主旨の回答があった。

 ケーススタディの対象について
 構成員より「供給側のみの論理では市場画定は困難であり、本来は需要側の視点を重視すべき。インターネット接続市場を例にとると、ISP側から見た接続形態の違いを把握しなければ、当該市場の正確な評価は困難ではないか。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「ケーススタディと言っても、ADSL、固定電話及び携帯電話の3例では比較が難しい。例えば、インターネット接続で言えば、ダイアルアップ、CATV等の他サービスについて本日と同様の資料が提出されれば比較が容易。」との主旨の意見があった。
 構成員より「マスユーザ向けサービスのみではなく、企業向けサービスもケーススタディとして取り上げれば、バランスがとれるのではないか。」との主旨の意見があった。

 ADSLサービス等について
 オブザーバより「資料1の3例は、公表データが中心ということもあり、供給側の視点が中心。ADSLのユーザは、ハードとしての回線とISPをセットで選択するにも係わらず、資料1では、ハードを提供する5社の記述のみ。また、当該5社についても、1) 回線のみを提供する社、2) グループ内事業者の提供する回線及びインターネット接続をセット販売する社、3) 卸売形態で回線を提携ISPに提供する社といったそれぞれ異なる3パターンのビジネスモデルを採用しており、実際の競争状況は複雑。」との主旨の意見があり、これに対し、他のオブザーバより「ADSL事業者のビジネスモデルの相違についてはご指摘のとおりであるが、ADSLはダイナミックに市場が変動しており、ケーススタディの対象として取り上げるのは妥当。」との主旨の意見があった。
 構成員より「一見同じようなサービスのようでも、ユーザがどのように情報を収集して選択しているのか単純でない。」との主旨の意見があった。
 オブザーバより「ユーザの視点では、DSLについては、資料1で挙げられている5社から選択されているのか疑問であり、より広い観点も重要。今後のアンケート調査により、ユーザの観点を是非取り入れるべき。固定電話については、加入者回線は東西NTTが独占しているが、ビジネスユーザ向けの専用線サービスやダークファイバについては、例えば丸の内や汐留再開発地区などのビジネス街で直収サービスも出現しており、ユーザ層の違いによっても競争状況は大きく異なる。このように、基本料だけの競争ではなく、それ以外のサービスも含め、より広い視点からの競争評価が重要。」との主旨の意見があり、これに対し、構成員より「ご意見は理解するが、例えばADSLについては、各種バンドルサービスもあれば、速度が異なる各種サービスもあるので、ユーザ層で分けることは困難ではないか。」との主旨の意見があった。

 参考1−3 醍醐座長代理 ご提出意見について
 構成員より「参考1−3は、市場シェアや消費者満足度だけで競争状況を判断することの難しさを示す一例として挙げたもの。この問題は、事前規制がボトルネック設備に係る接続規制だけに限定されるものでないことを示唆。競争評価にあたっては別の観点も必要ではないか。」との主旨の意見があった。他の構成員より「ご意見には、1) 携帯電話市場を発信・着信のサブカテゴリに細分化して画定するという市場画定の観点と、2) どのような指標を選択して競争状況を捉えるかという2つの観点が含まれていると考えるが、そのような理解でよいか。」との主旨の質問があり、これに対し、構成員より「1) については、英国等では発信・着信を別市場とする捉え方が定着しているが、それが日本になじむか疑問。とは言うものの、日本では着信側が料金設定権を有していることが問題を複雑化。2) については、ご指摘のとおり。」との主旨の回答があった。
 構成員より「試しに、発信・着信市場を分けてみることも必要ではないか。」との主旨の意見があった。
 オブザーバより「携帯電話においてもネットワークの複雑化が進行しており、今後さらにIP化が進展すれば、発信−中継−着信で複数の中継事業者を介し、合計4社以上のネットワークを経由することも想定される。このような状況において、現行のアクセスチャージのような料金設定自体が現状に即したものか疑問。市場の画定については、ユーザにとって、例えば携帯電話と固定電話は、ある時は代替的、またある時は補完的なサービス。インターネット接続におけるADSLと3Gも同様。冒頭にあったとおりユーザの視点が重要。さらに、資料1のうち、10頁の加入数シェアについては、累積数といった静的データのみでなく、純増数等のフローにより市場を動的に捉えることも重要。12頁の価格水準の変化についても、ある一部分のみでなく、全体を正確に記するべき。13頁の価格の国際比較についても、通話料金だけでなく、基本料を含めて全体として必要な金額で比較すべき。」との主旨の意見があり、これに対し、他のオブザーバより「アクセスチャージの見直しの必要性については同意。また、携帯電話事業者は、発信市場では激しく価格競争を行っており、特定の部分のみを取り出してコストベースの規制を課すことは規制緩和に逆行。発信・着信を別市場として画定すべきとのご意見もあるが、ある程度自由な料金設定を事業者に認めるべきであり、まずは携帯電話市場全体の評価を実施すべき。」との主旨の意見があった。
 構成員より「着信については、欧米では、ユーザは一切事業者を選択できないことから、着信事業者はドミナント性を有すると考えられている。日本では、固定電話発携帯電話着と携帯電話発固定電話着では、同じネットワークを使用するにもかかわらず、通話料金が異なるという素朴な疑問が出発点。着信料金でコスト回収するビジネスモデルを選択することも事業者の選択の自由という指摘も一理あるが、それをユーザがどのように考えるか、ユーザの観点から評価すれば良いのではないか。また、携帯電話市場と一言で言っても、音声通話、インターネット接続又は端末の垂直統合型ビジネスモデルのどれが問題か、市場画定の議論がないと論点が曖昧になると思料。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバから「電気通信事業紛争処理委員会の答申を受け、総務省で検討中とのことであるので、コメントは差し控えたい。」との主旨の回答があった。
 オブザーバより「英国OFTELから1年前に公表された携帯電話の有効競争レビューの結論では、1) 着信と発信は別市場、2)携帯電話事業者は自網着信の場合、それぞれ100%のシェアを有しているため、着信料市場は有効競争的でなく、この解決策として、向こう4年間PRI-4%の料金規制が提案されている。また、EUレベルでも、携帯電話の着信市場は市場分析を行うべき市場の1つとされている。」との主旨のコメントがあり、これに対し事務局より「英国の携帯電話着信の料金規制については、OFTEL及び事業者間で合意に至らず、競争委員会に審査を付託しており、現時点では未決と承知。」との主旨のコメントがあった。
 構成員より「ビジネスモデルの選択は事業者の自由とのご意見だが、異なる事業者間の料金設定についてはコストベースが基本であり、問題が発生すれば、最終的な結論はともかく検討は行うべき。アメリカの携帯電話のように、発信側と着信側がそれぞれ「ぶつ切り」で通話料金を負担する形式は、コストは明確。一方、エンドーエンドのワンストップビリングが実現している日本において、かつてのように「ぶつ切り」のコスト負担方式が妥当かどうかは議論が必要。このような点にかかわらず、着信網使用料のコスト構造が不明瞭なことは問題であることに変わりない。」との主旨の意見があり、これに対し、オブザーバより「アクセスチャージを見直すべきという先程の意見は、「ぶつ切り」の料金設定が良いという主張ではなく、ネットワークのIP化に対応したアクセスチャージの方法を検討すべきと言う主旨。アメリカでは、携帯電話のネットワーク構成が日本と異なっているため、そのような課金方法を採用しているが、ユーザには非常に不評と聞いている。」との主旨の回答があり、また、他のオブザーバより「発信・着信市場に分けて検討する前に、まずは携帯電話市場全体を俯瞰して競争状況を評価すべきという主張。」との主旨の回答があった。
 事務局より「先般の紛争処理委員会の答申は、特定事業者の直収接続についてのみ見解が示されてものであり、中継接続については議論が未了との理由で差し戻されている。会見で大臣が申し上げたとおり、本件は根が深い問題であり、利用者利益の確保と競争促進の観点から検討を行い、全体としてある程度の方向性が出れば裁定を行っていくことになる。米国の携帯電話の課金方法については、かつて、着信側の一括課金方式に変更しようとして意見募集まで行ったが、これまでの経緯から、早急な変更は困難として、現行通りとされたものと承知。」との主旨のコメントがあった。
 構成員より「携帯着信料金については、米国では着信側エアに含まれているが、翻って我が国の現状で考えると、基本料金の中に着信料金が含まれていると想定することもできるかも知れない。」との主旨のコメントがあった。
 オブザーバより「電気通信事業紛争処理委員会の答申の、二種指定設備の接続約款の作成事業者には料金設定権がないというロジックを理解しかねる。弊社も一種指定設備の接続約款を作成しており、その影響を図りかねているところ。」との主旨のコメントがあった。
 構成員より「有効競争の結果として大きな市場シェアを獲得することは誇るべきことであり、本研究会では、そのような議論にしたい。携帯電話着信料についての唯一の問題は、消費者から見るとアクセスチャージの根拠が全く開示されていないこと。この解決にあたっては、基本的には事業者のディスクロージャに尽きるのではないか。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員から「販売奨励金による端末価格の抑制と通話料金によるコスト回収といった我が国特有の一体的ビジネスモデルについても、その評価の第一歩は販売奨励金のディスクロージャなのかも知れない。」との主旨のコメントが、また、他の構成員より「ディスクロージャは問題解決へのスタートであって、ゴールではないと思料。」との主旨の意見があった。

 規制緩和と競争ルール整備について
 構成員より「今般の制度改革にあたって、規制緩和は大前提。ケーススタディとして3分野を取り上げているが、競争評価基準の検討のためといっても、取り上げられた3分野を一種の先入観をもってマーケットを捉えてしまいがちとなる点に留意が必要。もう一つの視点は、技術の変化・革新の方向性をしっかり捉えていくこと。この難しさは認識しているが、技術の方向性を正しく捉え、先を見据えた規制緩和を行うべき。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員から「参考1−3は、競争評価の結果として一定の政策措置が必要な場合もありうることを示唆しており、競争評価が規制緩和のみを目的とするものでないことの一例。競争評価は規制緩和のためという前提に立つと、議論が膠着する。」との主旨の意見があった。
 構成員より「本研究会は、競争評価のための市場画定、評価指標等を検討する場であり、限られた時間内で効率的に議論するためには、関連する議題に限定すべき。」との主旨の意見があり、また、他の構成員からも同主旨の意見があった。
 構成員より「携帯電話着信料金の問題については、慣習的に現在の状況に至ったものであり、なぜこのような状況に至ったのか独禁法上の問題点を含め分析する必要があるので、新たな規制を導入するとの前提に立った議論はいかがなものか。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員から「競争評価は、市場における有効競争を機能させる適正なルール整備を行うためのツールであり、規制緩和のためでも規制強化のためでもない。」との主旨の意見があった。
 構成員より「議論の進め方は、前回提出資料2−2の方向性でよいと考えるが、今般の規制改革の出発点として、情通審最終答申の「全般的な規制水準の低下を図る」という提言は非常に重要。この点、同資料6頁「市場画定」については、規制緩和の観点からは、最初は分析対象となるサービスを小さく捉え、必要に応じて大きく捉えていくというアプローチもあるのではないか。また、同資料7頁「評価の着眼点」のうち、「他市場で有する市場支配力の影響」については基本的には独禁法で対処すべき。」との主旨の意見があった。
 構成員より「この議論のすれ違いは「規制」という言葉の捉え方の相違によるものと理解。規制を「競争ルール」と置き換えれば、主張は同じであり、競争環境整備のためのルール作りが必要ということには同意。事業法又は独禁法のいずれに基づく規制で対応するかはその後の議論。」との主旨の意見があった。

 その他の意見について
 構成員より「企業秘密は公表できないということは十分認識しているが、米国の情報公開システムであるARMIS(Automated Reporting Management Information System)を参考に、我が国でも公開マーケット情報の充実を図るべき。同システムでは、企業の負担軽減の観点から、規模が小さい企業には免除規定も設けられており、このような点にも留意しつつ、可能な限り情報を公開していくべき。」との主旨の意見があり、これに対し、事務局より「本研究会は、情報公開システムの是非について議論する場ではない。本研究会では公開を前提に、公表データを基本として検討していきたい。」との主旨の意見があった。
 構成員より「市場画定の議論において、万人が納得する結論を導くことは困難。今回の研究会でも、例えば、ADSLが単独で一市場という結論にはおそらく至らず、ケース1、ケース2という列挙方式になるのではないか。さらに、今後、ユーザへのアンケート調査を行うとのことだが、事業者に対しても調査を行い、どのマーケットでどの事業者を競争相手として捉えているか提示願いたい。」との主旨の意見があった。
 構成員より「競争評価を公正明大に行うための実施主体については、別途検討して行きたい。」との主旨の意見があった。

(2)  次回会合の進め方
 次回会合は12月5日(木)午前10時から開催し、詳細については事務局から別途連絡することとなった。
 また、オブザーバとして参加している事業者から、市場の画定、競争評価についてのその他考慮すべき事項や具体的事例として挙げている市場に関する各社保有のマーケッティング情報等に基づく競争状況等について、事前に意見を事務局へ提出し、それを基に議論を進めていくことになった。なお、期限等の詳細については事務局から別途連絡することとなった。


以上




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