情報通信のトップへ

インデックスへ 調査研究会

「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」
(第7回)議事概要

1 日時
  平成1412月5日(木)午前10時〜12

2 場所
  総務省8階 第一特別会議室 (中央合同庁舎2号館8階)

3 出席者(敬称略)
(1)  構成員
 齊藤 忠夫 座長、醍醐 聰 座長代理、大谷 和子、加藤 彰一、黒川 和美、佐藤 治正、三邊 夏雄、田村 次朗、中空 麻奈、根岸 哲、米澤 明憲(欠席 磯辺 浩一、清藤 正、立花 宏)
(2)  オブザーバ
 青木 敏(電算)、有馬 彰(NTT東日本)、井崎 直次(ニフティ)、加藤 義文(日本電気)、桑田 昭(東京電力)、櫻井 浩(日本テレコム)、庄司 勇木(イー・アクセス)、滝沢 光樹(テレコムサービス協会)、辻村 清行(NTTドコモ)、藤野 利行(KDDI)、リサ・スーツ(C&W IDC)、田辺 治(公正取引委員会事務総局)
(代理 高嶋 幹夫(NTTコミュニケーションズ)、友納 一義(Jフォン)、野津 卓哉(東京通信ネットワーク)、吉松 康夫(NTT西日本))
(3)  総務省
 鍋倉 眞一 総合通信基盤局長ほか

4 議事概要
(1)  意見提出者からのプレゼンテーション
1)  資料1「オブザーバ(事業者)から提出いただいた意見」2〜3頁に基づき、有馬 彰(東日本電信電話株式会社取締役企画部長)オブザーバから説明が行われた。
2)  資料1「オブザーバ(事業者)から提出いただいた意見」7〜13頁に基づき、櫻井 浩(日本テレコム株式会社総合企画本部担当部長)オブザーバから説明が行われた。
3)  資料1「オブザーバ(事業者)から提出いただいた意見」2559頁に基づき、辻村 清行(株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ 取締役経営企画部長)オブザーバから説明が行われた。

(2)  討議(ケーススタディ)その2
 市場画定に関する視点について、資料2「市場の画定に関する緒論点」及び参考1「市場の画定の考え方」に基づき、事務局より説明の後、構成員及びオブザーバの間で質疑応答がなされ(上記(1)に係るものも含む)、大要次のような意見等が出された。

 有馬 彰(東日本電信電話株式会社取締役企画部長)オブザーバのプレゼンテーションについて
 構成員より「資料1 3頁については、ブロードバンドアクセスサービスとしては、ビジネスモデルの差異にかかわらず、ADSL、CATV、FTTH及びFWAは代替性を有するとの意見と理解して良いか。」との主旨の質問があり、これに対し、プレゼンテータより「その理解で良い。」との主旨の回答があった。

 櫻井 浩(日本テレコム株式会社総合企画本部担当部長)オブザーバのプレゼンテーションについて
 構成員より「固定電話の基本料を単独で取引分野として画定しているが、その理由が理解できないので、補足説明願いたい。」との主旨の意見があり、これに対し、プレゼンテータより「加入電話の基本料を別市場として捉える理由は、現時点においてもほぼ独占状態であること、料金設定権も競争事業者が有していないこと等による。」との主旨の回答があった。
 構成員より「資料1 8頁及び資料2の「基本料」は、メタル回線のアクセスサービスと理解している。」との主旨のコメントがあった。

 辻村 清行(株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ 取締役経営企画部長)オブザーバのプレゼンテーションについて
 構成員より「固定電話の加入数は、加入電話のみに限ると減少しているが、ISDNを含めるとそこまで減少していないのではないか。また、資料1 34頁の加入電話加入数推移には、局預かりの休止加入数は含まれているのか。それにより実態と変わりうるので確認願いたい。」との主旨の意見があり、これに対し、オブザーバより「休止加入数は含まれていないと思うが、誤っていた場合には改めて提示する。」との主旨の回答があった。
 構成員より「流動的な市場だからこそデータのストックでなくフローで評価すべきというご指摘には同感。プレゼンテーション中、報酬率が3%とのことだが、「能率的な経営のもとにおける適正原価に適正利潤を加えたもの」であることと規定されている二種指定設備のアクセスチャージの妥当性について、総務省では検証しているのか。」との主旨の意見があった。
 構成員より「公表されている14年度中間決算によると、我が国の厳しい経済状況にもかかわらず、他社に比べて、NTT年ドコモの営業利益率及び経常利益率は極めて高い。競争評価の際、利益率を比較するようなミクロ的な検証も重要。」との主旨の意見があり、これに対し、プレゼンテータより「企業努力により獲得した結果のみを捉えることは理解しがたく、利益率は競争評価の尺度足りうるのか極めて疑問。ただし、適正な報酬率の在り方については、今後、コストの分配と併せて別途検討したい。」との主旨の回答があった。
 構成員から「競争評価の際、ご指摘のようなグローバルな視点の確保は重要。昨今の厳しい経済情勢の中、国内の過当競争により国際競争力を有する企業の活力を失わせることには反対。」との主旨の意見があった。
 構成員より「音声通話の携帯電話発信については、ご指摘のとおり競争が進展していると承知。3%の報酬率では経営を維持できないとのことだが、その中で他事業者との競争上用いられた広告宣伝費等のコストがどの程度か検証が必要。」とのコメントがあった。

 移動電話と固定電話の代替性について
 構成員より「市場の変化が急激で、サービスの融合も進展しつつあるため、市場の画定は困難という意見には同感であるが、時間軸の観点から、将来的な予測は困難でも、少なくとも現時点までの事実から、一定の目的のために何らかの仮定をすれば、市場画定も可能ではないか。その点、現時点までは固定電話と携帯電話・PHS年は別市場として認識していたとの理解でよいか。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「PHS年を含む移動電話については、従来は固定電話と異なるセグメントとして認識。ただし、固定電話及び移動電話の加入数推移等から、両者の代替性は、一部の若年層等を中心として既に顕在化してきている模様。今後、両者の融合の急速な進展が予想され、それは既に始まっていると考えられ、今般の事業法改正の想定するタイムスパンは将来にもわたっていることから考慮が必要。」との主旨の回答が、また、他のオブザーバより「基本的には同様の認識。」との主旨の回答があった。
 構成員から「KDDI年はグループ内で固定電話のマイラインと携帯電話のセット割引を設定しているが、固定電話と携帯電話の代替性についてどのように認識しているのか。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「固定電話と移動電話については、今後はともかくとして、現時点では別市場と考えている。」との主旨の回答があった。
 オブザーバから「固定と移動の融合については、加入数推移等の数字の上では進展しているように見えるが、社会面からは実際どうなのか疑問。例えば、1) クレジットカードの審査の際に固定電話と異なり携帯電話では受付不可、2) 移動電話の場合、ユーザは通話中に回線が切れることを許容するが、固定電話の場合はそうならないことが挙げられ、ユーザは両者を別市場と捉えているのではないか。」との主旨の意見があり、これに対し、構成員より「現在、クレジットカードの認証に携帯電話番号が使われていないのは、セキュリティ面等の別の観点が大きいと考えられ、今後、新たな認証技術等の開発により、そのような状況も変わりうるのではないか。」との主旨のコメントがあった。
 構成員から「今後の技術・サービスの進展により、固定と移動の区別が困難になってくるとのご指摘だが、資料1 52頁において、例えば、ADSLの伝送レートを10Mbpsメガビットパーセカンドと仮定した場合、同程度の無線系サービスが実現するのはいつ頃を想定しているのか。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「数年後おそらく2、3年後には、3Gの拡張サービスが登場すると考えられ、現在研究開発中なので確定的ではないが、10〜20Mbpsメガビットパーセカンド程度は実現されるのではないか。」との主旨の回答があった。
 構成員から「移動と固定の代替性は、5%テスト等を用いて実際に検証してみればよいのではないか。」との主旨の意見があった。

 インターネット接続サービスの捉え方について
 構成員から「ADSLについては、NTT年東の意見のようにアクセス媒体の提供としてマーケットを捉えることも可能。その一方で、イーアクセスからは異なる意見が提出されているが、ADSLを含む垂直統合型のインターネットアクセスサービスの存在をもって、同一市場として画定されるとは限らない。」との主旨の意見があり、これに対し、オブザーバより「今後のブロードバンド化の進展により、市場画定が困難になりつつあるという点については、NTT年東と同意見。しかしながら、資料1 17頁にあるように、現状においては、ISPではなくADSLの品質等で選択するユーザが多いので、アクセス手段としてのADSL単体を市場として捉えるべき。エンドユーザへのADSLサービスの提供形態に差異があるホールセール、リテールについても、流動的ではあるが、同じ競争状態と考えられる。ただし、資料1 18頁に記載したように、VoIPの普及に伴ってADSLがVoIPのアクセス手段として認識されるようになれば、今後1年間でADSLの競争状況は劇的に変化する可能性がある。」との主旨の回答があった。

 市場画定の困難性等について
 構成員より「市場画定の困難性は認識しているが、競争状況の検証の中で、ある程度補正は可能ではないか。」との主旨の意見が、また、他の構成員より「時間軸の観点から、長期間にわたって妥当な市場画定は困難であるが、例えば一定の期間を想定して代替性を検証し、当該期間後に定期的に見直すなど、制度面で補うことは可能ではないか。」との主旨の意見があった。
 構成員より「参考1 10頁に記載されているように、英国の有効競争レビューにおいて市場画定の検証がなされているのは64kbpsキロビットパーセカンド以下のナローバンドサービス。ADSLのような10Mbpsメガビットパーセカンド程度のブロードバンドサービスについては、英国に比べて我が国の市場環境は大きく異なっており、これを検証しようとした場合、英国のような手法で可能か疑問。また、技術進展が急速で、2、3年のスパンで行政がなんらかの措置を講ずるのであれば、僅かの期間で市場を検証することとなり、十分な検証も困難。これが、市場の競争環境整備の観点から良いことなのかどうかも疑問。整理すると、1) 英国の有効競争レビューの方法は、新しい、サイクルが短い市場に対応可能か、2) このような市場に対する規律として、事前規制は妥当か。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「例えば2年程度のスパンを想定すれば、一定の市場画定は可能ということであり、その後の規制の在り方については別の議論。事前規制・事後規制の在り方等については、公正取引委員会でも検討しているのでそれも参考になろう。」との主旨の回答があった。

 市場画定のためのデータ・ファクト等について
 構成員より「技術の進展が急速な電気通信市場においては、あまり長期間を想定した市場画定は意味がない。であればこそ、ユーザが各種サービスの代替性をどう考えているか等について利用者意識調査を行い、そのデータに基づいて議論すべく、事務局に用意願いたい。」との主旨の意見があった。
 構成員より「資料2に記載されている論点を議論するために必要なデータやファクトがないと、感覚的な議論になるので、今後それらを随時ご用意願いたい。例えば、固定電話とIP電話の代替性の議論では110119への通話制限等のIP電話の機能、インターネット常時接続サービスの捉え方の議論では各社のサービスの現状、固定と移動の代替性の議論では消費者意識などが必要と思料。」との主旨の意見があり、これに対し、事務局より「次回会合において、ユーザサイドの代替性を検証するための消費者アンケートの項目(案)を提案し議論いただく予定。また、必要なデータについては事業者から協力を仰ぎつつ収集に進めて参りたいが、詳細については事務的に詰めて行きたい。」との主旨の回答があった。

 その他
 構成員より「現在の接続会計によってアクセスチャージの妥当性を検証可能か疑問なので、その点についてご教授願いたい。」との主旨の質問があり、これに対し、オブザーバより「現在の報酬率は、日本の主要企業の過去5年間における自己資本比率の平均により算定されており、その水準では資本を維持できない。また、接続料は、最新技術による最も効率的な設備の使用を仮定したLRICによって、経営の実態と全く異なる形で算定されており、非常に不満。」との主旨の回答があった。
 構成員より「LRICを用いた場合、接続料は安くなることも高くなることもある。モデルも完璧でないが、事業者が提出したコストも完璧でない。」との主旨の意見があった。
 構成員より「参考1 16頁に記載されているとおり、市場の画定にあたって、地理的市場は重要な判断要素と考える。個人的には、特定エリアで営業活動を行っている事業者の有する当該エリア内の市場シェアが1位で、かつ2位の事業者との市場シェアの格差が大きい場合、1位事業者は市場支配力を有すると推定されるため、当該エリアを市場として画定することに一定の意味があると考える。ただし、マイナーな場合にはそうする必要はない。この点、自社の営業区域を基準として市場画定を行うことについて異論あるか。」との主旨の意見があり、これに対し、オブザーバより「実態として、東日本エリアでしか営業していない。」との主旨の回答があった。
 構成員より、NTT年東からNTT年西へ年間300億円程度の資金援助を行う制度を設ける旨の新聞報道に関する事実関係等について質問があり、これに対し、事務局より「東西NTT年の接続料については、衆・参総務委員会において15年度以降も東西均一を維持する旨の決議がなされたところ。仮に東西均一とした場合、NTT年東は超過収入、NTT年西はコスト以下の収入しか得られないものであり、NTT年西の経営に深刻な影響を与える懸念がある。このため、総務省において、NTT年東からNTT年西に交付金を交付することも含めて、当該格差を是正するための方策を検討しているところ。」との主旨の回答があった。

(3)  その他
 次回会合は1212日(木)午後2時から開催し、詳細については事務局から別途連絡することとなった。


以上




トップへ