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「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」
(第9回)議事概要

1 日時
  平成15年3月26日(水)午後2時〜4時25

2 場所
  総務省8階 第一特別会議室 (中央合同庁舎2号館8階)

3 出席者(敬称略)
(1)    構成員
   齊藤 忠夫 座長、醍醐 聰 座長代理、磯辺 浩一、加藤 彰一、黒川 和美、佐藤 治正、三邊 夏雄、清藤 正、立花 宏、田村 次朗、根岸 哲(欠席 大谷 和子、中空 麻奈、米澤 明憲)

(2)    オブザーバ
   青木 敏(電算)、井崎 直次(ニフティ)、木全 紀元(Jフォン)、櫻井 浩(日本テレコム)、庄司 勇木(イー・アクセス)、塚本 博之(東京通信ネットワーク)、辻村 清行(NTTドコモ)、藤野 利行(KDDI)、田辺 治(公正取引委員会事務総局)
 (代理 会田 雄一(テレコムサービス協会) 、飯田 修久(C&W IDC)、尾崎 秀彦(NTT東日本)、木野 雅志(NTTコミュニケーションズ)、吉田 哲也(東京電力)、吉松 康夫(NTT西日本))
   (欠席 加藤 義文(日本電気))

(3)    総務省
   武内 信博 事業政策課長ほか

4 議事概要
(1)    討議(ケーススタディ)その4
   これまでの経緯、今後の進め方等について、資料3「検討スケジュール(案)」に基づき、総務省から説明が行われた。
   引き続き、市場画定の緒論点、競争評価の指標等について、資料1「ケーススタディについて」、資料2「競争評価の指標等について」に基づき、総務省から説明が行われた後、構成員及びオブザーバ等の間で意見交換がなされ、大要次のような意見等が出された。

 市場画定の方法論について
   構成員より「市場画定の際に需要代替性を中心に見ていくというアプローチは妥当。また、利用者アンケートによって需要側の意向を把握することは非常に重要。今回のアンケートは、対象を個人に絞っているが、ユーザ属性によって市場画定が変わってしまうこともあるので一定の考慮が必要。」との主旨の意見があった。
   構成員より「社会科学では、自然科学のように実験が出来ないため、過去のデータを用いて検証することとなるが、そのような方法であれば多くの蓄積がある。市場画定についても、過去のデータの蓄積があれば一定の推定は可能であるが、そのようなデータは存在しない場合の方が多い。」との主旨の意見があり、これに対して、他の構成員より「電気通信に限らず、どのような財・サービスについても、需要曲線を推定することは難しい。概念的には、過去のデータがあれば、需要曲線を推定することは可能であるが、現実的には非常に困難。」との主旨の意見があった。
   構成員より「これまでの本研究会の議論においては、競争評価の段階では需要代替性及び供給代替性を考慮するが、市場画定の段階では主に需要代替性を考慮するという方向と承知しているが、ナンバーポータビリティ等の問題があるので、個人的には本当にそれでよいか結論付けられていない。」との主旨の意見があった。

 上記のうち特にSSNIPテストについて
   構成員より「SSNIPテストについては、欧米でも事務局の説明のような考え方に沿って実施していこうということであり、概念的な手法として用いるということは現時点では妥当と考える。計量経済学的なSSNIPテストについては、日本ではどのような方法が可能か、今後、本研究会に参加している経済学者等によって検討願いたい。」との主旨の意見があった。
   構成員より「SSNIPテストについては、電気通信の場合、5%程度の値上げに対して本当に利用者がサービスを変更するのか前々から疑問があった。例えば、携帯電話であれば電話番号の変更が必要であり、また、インターネット接続サービスであれば、各種設定の変更が必要。これらに要する費用・時間は、5%程度の料金変動よりも遙かに大きいと思料。今回のアンケートでは、自分の直感と同じ結果が得られている。」との主旨の意見があり、これに関し、他の構成員より「SSNIPテストは、個人的な感覚を問うものでなく、よりマクロに、料金変動に対して利用者全体の何%がサービスを変更するかを把握するもの。確かに電気通信の場合は、SSNIPテストがなじみにくい諸要因が多くあるが、それでも、5%程度の値上げは、サービスを変更しようかどうしようかと迷っている利用者のサービス変更への後押しにはなるものと思料」との主旨の意見があった。
   それに対し、事務局より「SSNIPテストについては、電気通信の場合、様々な制度や料金規制の存在等により単純な適用が困難と思料。同テストは、我々が調査した限りでは、欧米においては、全ての財が対象となり、定量データを用いる場合と思考過程として用いる場合がある模様。前者については、価格の需要弾力性等の所要データが存在しないため、実施不可能。今回のアンケート調査では、アンケートによる単純な置き換えが難しいことを検証したものであり、当初の予想通りの結果が得られた。」との主旨のコメントがあり、構成員からも賛同する旨の意見があった。
   オブザーバより「ある電気通信サービスの現在の利用者を対象としてSSNIPテストを適用する場合、サービス変更には変更コストが必要なため、変更費用を引く等の修正が必要。未利用者であれば、SSNIPテストをダイレクトに適用することが可能。」との主旨の意見があった。
   構成員より「市場画定については、あるサービスAとBの間の閾が高いかどうかを検証することと理解。SSNIPテストの料金変動を5%から50%に修正した場合には、料金を変動させたサービス自体が変質してしまうため不適当。市場画定は、あくまで、サービスAとBの質に変動がないことを前提に、両者の閾が高いか低いかを判断するものであり、事務局の結論は妥当かつ有意義と思料。」との主旨の意見があった。
   構成員より「SSNIPテストの米国における適用事例として興味深いのは、オフィスデポの例。この事例においてSSNIPテストが有効に機能した理由として、当該事案に係る取引分野たる文房具は、1) 過去の料金変動等のデータの蓄積が存在、2) 市場構造が単純、3) 他に考慮すべき要因が少ないことがあげられる。一方、電気通信においてSSNIPテストが適用可能かどうかについては、今後、継続的かつ詳細に検証すべき課題と認識。」との主旨の意見があった。

 地理的要因について
   構成員より「地理的要因については、都道府県等の行政区域ではなく、事業者のサービス提供エリアの問題であれば、現在の利用者の通信環境として捉えることが可能であり意味がある。」との主旨の意見があり、他の構成員からも同趣旨の意見があった。
   これに対し、事務局より「今般の競争評価は、定点観測として、様々な電気通信サービスを対象として俯瞰的・網羅的に行うもの。そのためには客観的データが必要であるが、その際の地理的区分については、データの収集可能性や事業者負担等を勘案し、どの程度が妥当か今後検討したい。また、地理的市場については、基本的には全国、地域、都道府県と重層的に考えることとなるが、問題設定によっては、より詳細に市町村レベルまで掘り下げる必要もあると思料。」との主旨の回答があった。
   構成員より「地理的区分をどの程度細かく設定すべきかについては、議論が必要であるが、一定の地理的区分について一定の期間毎に全事業者がデータを提供していれば、自ずと市場は明らかとなる。事後規制に移行した場合、問題発生後初めてデータの収集を開始するのでは手遅れであり、そのような事態に、客観データに基づき対応可能な体制を予め整備しておくことが重要。」との主旨の意見があった。
   構成員より「地理的要因について、定点観測の「観測地点」の問題と、市場画定における「地理的市場」の問題は別。データ収集やアンケートを行っても、地理的市場の回答が得られるものではない。」との主旨の意見があった。

 変更障壁の取扱について
   構成員より「ADSLの未利用理由として、「手続が煩雑」が第一位にあげられたのは意外。その類推で、ADSLそのものが競争的かどうかということを消費者の立場から見ると、事業者変更が容易かどうかという点が重要となるが、例えば、「手続が煩雑」で事業者変更が出来ないようであれば問題。ついては、事業者におかれては、実状を教授願いたい。」との主旨の意見があり、これに対し、オブザーバより「ADSLの加入手続が煩雑という点については、ADSL提供事業者の申込手続の他に、NTTの加入電話に係る手続が必要であり、連絡窓口がわかりにくいとの意見はよく耳にしていた。ただし、現状では、かなり改善されてきていると承知。」との主旨の回答があった。
   オブザーバより「資料1−3 5頁のISDNからADSLへの変更障壁に関する記載については、人為的・制度的なものか、あるいは事業者の努力による差別化かについての検証がなく、これに基づき競争評価を行うことはいかがなものか。」との主旨の意見があり、これに関し、他のオブザーバより「市場画定と競争評価は区別して考える必要あり。ISDNからADSLへの変更に際しては、実際に変更手続、工事、機器の購入等が必要であり、障壁があるのは事実。この障壁の善し悪しを判断するのはあくまでも競争評価の段階と思料。」との主旨の意見があった。
   これに対し、事務局より「市場画定の段階における変更障壁については、人為的、自然発生的、制度的如何に無関係。これらの差異は利用者にとっては無関係であり、変更障壁の有無のみが事実として現に存在。その善し悪しについては、その次の段階で判断するものであり、区別して議論すべきものと承知。」との主旨の回答があり、構成員からも同趣旨の意見があった。
   構成員より「SSNIPテストは、マクロな視点で市場を画定するツールとのことであるが、そのようなアプローチの場合、変更障壁はマクロな視点から埋没してしまうことにならないか。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「方法論はともかくとして、定点観測ができるような一定のデータを全事業者が一定の間隔で継続的に公表し、それが蓄積されていけば、自ずと市場画定できるものと考える。どのような方法で市場を画定するにせよ、そのようなデータは絶対に必要なもの。市場画定の方法も1つでなければならないこともないし、ドミナントが単数である必要もなく、データの蓄積によって日本に特有な方法も見つかるかも知れない。」との主旨の回答があった。

 競争評価の留意点等について
   構成員より「最終的に競争状況を評価する際には、総合判断を行うこととなるが、その際には各要因の軽重・思考の順序についての基本的考え方を検討しておく必要があり、その点が非常に重要。そうでないと、恣意性の排除や論理的な繋がりで問題が生じるおそれがある。」との主旨の意見があった。
   構成員より「EUにおいては、ある電気通信サービスについて小売市場を分析した後、関連する卸売市場も分析することとされている。今般の競争評価の対象が小売市場のみで、接続等の卸売市場が対象外ならば不十分。」との主旨の意見があり、これに関し、他の構成員より「小売市場における競争上の問題であっても、関連する卸売市場の問題に起因することもあるので、その点についてはチェックすべき。」との主旨の意見があった。
   これに対し、事務局より「他市場が当該市場に与える影響、特に卸売市場やインフラ市場が与える影響については特に重要と承知しており、競争評価の指標として例示しているとおり考慮して参りたい。」との主旨の回答があった。

 競争評価の用途等について
   構成員より「競争評価の目的は、「有効競争」を確保することであって、ドミナントに対する規制緩和のみでは本来的なレビューの意義を矮小化。」との主旨の意見があり、これに関し、他の構成員より「およそ事業者は、ある特定の得意分野を有しており、そこから新たな分野に進出して、範囲の経済を追求していくもの。このため、市場を細かく画定しすぎることによって、事業者が競争上問題のない方法によって獲得した優位性を有する分野において、ドミナントと認定されるような方法は避けるべき。」との主旨の意見があった。
   これに対し、事務局より「本研究会の目的は、当面のデタリフ化に限った話ではなく、行政の説明責任を果たすツールとして、また事業者が自ら反証する際のツールとしての競争評価手法について、幅広くご議論いただいているもの。」との主旨の回答があった。
   他の構成員より「本研究会は、「競争評価手法」を検討する場と承知しているが、当該手法が今後どのように活用されていくのか未だに不明瞭。他の構成員が指摘されたとおり、今後とも、定点観測的・ケーススタディ的に競争評価を継続していくことに意味があると思料。」との主旨の意見があった。
   構成員より「市場を常時監視していることによって、問題行為が発生したとき、即座に対応できることが最も良い方法。しかしながら、競争の結果として得られた地位を行政がチェックすることは、事業者を萎縮させることになりかねないため、留意が必要。また、総合評価は非常に曖昧にならざるを得ないが、プロセスの透明性・客観性の確保の観点から、公正取引委員会の企業結合審査においても最近改善が図られつつあるので、参考にされたい。」との主旨の意見があり、これに対し、オブザーバより「競争評価はどのように使うのかが重要であって、個人的には「悪い」競争が発生したとき、その対応のために用いるのが良いアプローチであると思料。また、公取委の企業結合審査においては、総合評価のプロセスが不透明との批判に応え、その改善を図りつつあり、今後とも、その透明化に努めて参りたい。」との主旨の回答があった。
   構成員より「事実認識と価値判断を区別することについては違和感。本研究会でも、どのような政策課題があるかという点は踏み込むべき。」との主旨の意見があり、これに対し、事務局より「その点については、本研究会で議論いただくことで結構。」との主旨の回答があった。
   構成員より「ドミナントに対する非対称規制は行政手続法上の不利益処分に該当し、事業者に対して当該不利益処分を行う場合、行政は確たる確証が必要となる。このため、レビューのような方法に基づき事前規制を課す場合、実際の運用が極めて重要となり、慎重に対処すべき。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「何も行動しないことが不作為を生む場合もある。事前規制と事後規制のどちらが効果的かについては、マーケットの状況を見て判断すべきものであり、アプリオリには決められないと思料。」との主旨の意見があった。

(2)    今後のスケジュールについて
   資料3「今後のスケジュール(案)」について、構成員より、1) 最終報告書の素案を検討する「起草委員会(仮称)」の設置、2) 同委員会メンバーは構成員の互選により選出すること、との主旨の提案があった。
   上記提案に対し、構成員より「最終報告書としてどのような性格のものをどの程度までまとめるのか明確でないため判断できかねるが、少人数の構成員による議論の場を設けた方がいいような気はする。このような大人数で、あと2,3回会合を開催しても、どの程度議論できるか疑問。」との主旨の意見があった。
   上記提案に対し、構成員より「本研究会は、今後の制度を議論する場ではないと認識しており、このように様々な立場の参加者がなオープンかつ自由に議論できる環境であったことが良い方向に作用したと考えている。今後の制度のあり方について一定の方向性を示す報告書をまとめるのであれば、そのような主旨の研究会を6月以降に改めて開催すればよいのであって、本研究会において、従来のような形式の報告書をまとめる必要性を全く感じない。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「本研究会への参加を受諾したからには、本研究会の構成員として何らかの責任を果たすべきと考えている。今後の課題として、どのようなメッセージを盛り込むかを中心に議論することが重要であり、議論がまとまらなければ複数案を併記すればよい。構成員が主体的に報告書をまとめることが肝要。」との主旨の意見があった。
   これに対し、他の構成員より「哲学としては指摘のとおりであるが、構成員自ら報告書(案)の起草に参加しようという意志の有無の問題と思料。」との主旨の意見が、また、他の構成員から「現在の議論に参加していない欠席又は中座した構成員の意見はくみ取るべき。」との主旨の意見があった。
   上記提案に対し、起草委員会については、構成員の時間が割けるのであれば設置する方向で進めるが、他の構成員から異論が出た場合には改めて検討することとし、また、報告書骨子案を検討する前提として、これまでの議論を事務局にて整理し、それに基づき、次回会合でその方向性等について議論することとなった。

(3)    その他
   第10回会合は4月15日(火)14時から、第11回会合は4月24日(木)14時から開催することとし、詳細については事務局から別途連絡することとなった。


以上




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