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「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」
(第10回)議事概要

1   日時
      平成15年4月15日(火)午後2時〜

2   場所
      総務省8階   第一特別会議室   (中央合同庁舎2号館8階)

3   出席者(敬称略)
(1)    構成員
   齊藤   忠夫   座長、醍醐   聰   座長代理、磯辺   浩一、大谷   和子、加藤   彰一、黒川   和美、佐藤   治正、立花   宏、田村   次朗、中空   麻奈、根岸   哲(欠席   三邊   夏雄、清藤   正、米澤   明憲)

(2)    オブザーバ
   青木   敏(電算)、石津   浩二(KDDI)、加藤   義文(日本電気)、木全   紀元(Jフォン)、桑田   昭(東京電力)、櫻井   浩(日本テレコム)、庄司   勇木(イー・アクセス)、ジョナサン・サンドバッチ(C&W IDC)、滝沢   光樹(テレコムサービス協会) 、塚本   博之(パワードコム)、辻村   清行(NTTドコモ)、田辺   治(公正取引委員会事務総局)
(代理   尾崎   秀彦(NTT東日本)、木野   雅志(NTTコミュニケーションズ)、木村   孝(ニフティ)、吉松   康夫(NTT西日本))

(3)    総務省
   有冨   寛一郎   総合通信基盤局長ほか

4   議事概要
(1)    討議(ケーススタディ)その5
   本研究会への初めての出席者の挨拶等に続き、競争評価の指標等について、資料1「競争評価の指標等に係る論点について」及び参考1「ケーススタディ対象サービス及び周辺サービスの競争状況について」に基づき、総務省から説明が行われた後、構成員の間で意見交換がなされ、大要次のような意見等が出された。

   競争評価の指標について
   構成員より「資料1   23頁の価格水準の変化に関する基本的考え方については、電気通信サービスのように技術革新が急速な分野は、一般的には消費者物価指数よりも下落率が大きく、現在の消費者物価指数との単なる比較では望みが低いので、書き方の工夫はできないか。」との主旨の意見があり、これに対し、事務局より「資料1の記載のとおり、競争状況の目安として、まず料金水準の推移を考慮するということであり、明確な基準化は困難ではないか。」との主旨の回答があった。
   構成員より「競争評価の各指標のうち、明示的に含まれていない項目についても、記載されている各指標と関連し、広い意味では包含。このため、競争評価の指標としては、資料1   3頁の整理で妥当であると思料。また、9頁のシェア算出のベースについては、画定された市場における「価格をコントロールする力」を検証する観点から重要であり、当該市場の特性に応じて適切に定めるべきではあるが、現実には、データの公開・取得可能性に問題があるのも事実であり、資料1の方向性で基本的には妥当。」との主旨の意見があった。

   うち顧客満足度等について
   構成員より「総務省によるマーケット情報の収集と利用者アンケートは、競争評価に当たっての車の両輪であり、このバランスを取っていく必要がある。この点、顧客満足度については、競争評価との関連性が不明確との意見もあるが、顧客への情報提供に努め、顧客満足度の向上を図っていくことは事業者として当然であり、情報としては押さえていく必要があるのではないか。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「利用者アンケートや顧客満足度については、個人的には信頼していない。」との主旨の意見があった。
   これに対し、当該構成員より「利用者アンケート、顧客満足度については、これまでの経験上、不満がある場合の把握など、ネガティブチェックには有効と思料。」との主旨の意見があった。
   構成員より「顧客満足度については、市場の状況を捉える観点から、定常的に把握していくべき指標であると思料。」との主旨の意見があった。

   総合評価の手順等について
   構成員より「市場画定と競争状況の評価は明確に区別して考えるべきであり、今回からは、競争状況の評価について議論していくと理解しているが、競争評価の各指標は、単独では状況証拠に過ぎず、それのみでは分析対象となる市場の競争状況は分からない。このため、それぞれをどのような順序でどのように考慮していくのかが重要となるが、これは今後議論していくという理解でよいか。」との主旨の質問があり、これに対し、事務局より「競争状況の評価については、各指標をどのように考慮していくのかという点について、まず議論いただきたい。さらに、総合評価の際の各指標の考慮の順序や優先順位については、目的に応じて個別具体的にならざるを得ず、定型化は困難と考えるが、その場合であっても、それらについて一般的なルール化ができるのであれば、是非ご議論いただきたい。なお、総合評価の際の各指標の考慮の順序や優先順位等について、現時点において事務局で想定しうるものは資料1に記述している。」との主旨の回答があった。
   構成員より「我々が議論しているのは競争評価であって、資料1の「総合判断」という記述には違和感。あくまで、市場の競争状況についての総合評価ではないか。」との主旨の質問があり、これに対して、事務局より「ご指摘のとおり。記述ぶりについては適宜修正したい。」との主旨の回答があった。
   これに対し、他の構成員から「競争評価の当面の目的は情報収集であるが、それを政策のレビューに繋げていくことが必要であり、両者は表裏一体。このため、競争状況の「総合判断」ではなく、「総合評価」であるという点については危惧。」との主旨の意見があった。
   構成員より「資料1   32頁及び35頁における各指標の考慮の順序や優先順位については、抽象的な記述ではあるが、本研究会で検討中の手法を用いた競争評価の目的が、時系列的な情報の収集、「市場モニタリング機能」の場合、この考え方は妥当であり、一般的な方向性としては正しい。また、得られた結果を政策に反映していく場合、多少の修正は必要となるものの、一般的な方向性としては妥当と思料。」との主旨の意見があった。

   うち醍醐座長代理私案「競争評価の体系図」について(同私案については、途中、席上配布)
   同私案について、構成員より「競争評価の手順を私案としてフロー化。このポイントは、競争評価を、1) 客観的に行うために定量的指標を重視する一次レビュー、2) それにより非競争的と判断された市場について定性的な競争制限的要因を考慮する二次レビューにアンバンドルすること。それにより、競争状況に応じて市場支配的な事業者に対し非対称規制を課す場合には当該規制は不利益処分に該当するので慎重に対処することが必要というご指摘を踏まえ、レビューの結果に基づき競争的でないと判断された場合でも規制に直結しないようにすることが可能。報告書のとりまとめに当たって、本研究会における各構成員の意見の集約を図る意味で席上配布を依頼したもの。」との主旨の意見があった。
   構成員より「私案における二次レビューにおいて判断することとされている競争制限的要因と、競争制限行為との相違如何。」との主旨の質問があり、これに対し、他の構成員より「同要因は、レバレッジや参入障壁であって、個別具体的な競争制限行為ではない。二次レビューの際、それらの行為を参考としてもよいが、既に事業法において禁止行為規制が導入されており、それに関するガイドラインも公表されていることから、屋上屋を重ねることになると思料。」との主旨の回答があった。
   構成員より「一次レビューは簡易審査、二次レビューは詳細審査のように思えるが、一次レビューにおいて競争的との評価が下された場合であっても、定性的要因は考慮すべきではないか。主に定量的指標によって一次レビューを行い、定性的要因を考慮しないということについては、コストとの兼ね合いではあるが、よく議論すべき問題と思料。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「一次レビューと二次レビューは、性質が全く異なるものであって、定量的指標等によってマーケットの状況を見ていくことは当然必要であるが、その場合であっても、定性的要因の考慮も必要と思料。」との主旨の意見があった。
   また、その他の構成員からも、同主旨の意見があった。
   構成員より「二次レビューで競争制限的要因なしと判定された場合は一次レビューを継続するとあるが、一次レビューでもまた非競争的と判定されても、二次レビューでまた同じ結果となり、結局何ら対策は構ぜられないこととなるのではないか。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「事業者の創意工夫・自助努力により獲得した高いシェアをもって非競争的と判断されることには反対というオブザーバの意見には共感しており、その意味でも一次レビューと二次レビューを区別したもの。競争評価においては、事業者のインセンティブも考慮すべきであり、今後、オブザーバを含め、何らかの方法で議論を収斂させていきたいという意図の下、私案としてフローを提案したもの。」との主旨の回答があった。
   これに関し、その他の構成員から「私案に賛成。競争評価の対象サービスのスクリーニングには手間をかけないよう、一次レビューは簡潔にすべき。二次レビューで競争制限的要因の存在が認められないグレーなものについては、疑わしきは罰せずで、レビューを継続することで良いのではないか。また、これは提案であるが、この場で実際にあるサービス市場について競争状況の評価を行ってはどうか。」との主旨の意見があった。
   構成員より「一次レビューで非競争的と判断され、二次レビューでも競争阻害要因が発見された場合の「制限排除措置」とは、具体的にはどのようなものを想定しているのか。行為に問題がないのに何らかの規制を行う場合、構造規制に該当し、慎重に対処すべき。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「制限排除措置としては、例えば、参入障壁が問題と判明した場合には参入規制の見直しを図る、他市場からのレバレッジが問題と判明した場合にはファイアウォールの徹底を図る等が想定。また、競争評価の判断にバイアスがかかると、そもそも意味のないものとなってしまうおそれがあるので、競争評価は公正かつ中立に行われる必要あり。この点、競争評価の実施主体が重要となり、政策判断の主体と競争評価の実施主体の利益相反が生じないよう予め議論する必要があるのではないか。」との主旨の回答があった。
   構成員より「競争評価は、単に規制緩和のための手段でなく、競争ルールを創造するための手段であり、競争促進の目的が利用者利益の最大化を図ることであることから、一次レビューにおいても利用者の視点を含めるべき。」との主旨の意見があった。
   構成員より「簡易審査たる一次レビューで競争的と判断された場合であっても、論理的には詳細審査たる二次レビューに進む可能性も十分に想定される。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「競争評価に当たっては、実行可能性が重要であり、これを確保するためには精査を要する市場の峻別が必要となる。例えば、一次レビューにおいて、定性的要因を考慮しない危険性を勘案して、シェア等に関する基準値を低めに設定して、二次レビューに進む間口を広くすることとしてはどうか。」との主旨の回答があった。
   構成員より「例えば「揺籃期」における関心事項は市場シェアではなく、参入障壁の有無であって、一次レビューにおいても、これまで問題となった事項を念頭に評価することとなるが、心配なのは二次レビュー。ここで考慮することとされている競争制限的要因については、通常、二者間の紛争処理が多く想定されるが、それ以外の場合を考慮するのであれば、市場の状況を予測しないと二次レビューに進めないこととなる。しかしながら、そのような予測は困難であり、これまでの本研究会の議論においても、そこまで想定したものではないと思料。」との主旨の意見があり、これに関し、他の構成員より「競争制限的要因か競争制限行為かの判断が微妙な場合が多いのではないか。」との主旨の意見があった。
   これに対し、その他の構成員より「二次レビューにおいては、個別具体的な競争制限行為は想定していない。また、「揺籃期」における先行者利益は尊重すべきであるが、シェアが高い場合には二次レビューに進み、そこでは、高いシェアが持続する要因として参入障壁の有無等を勘案することとなるのではないか。」との主旨の回答があった。

(2)    今後のスケジュール等について
   報告書の取りまとめに向けた今後の進め方について、資料2「これまでの議論の整理について」及び参考2「「IP化等に対応した電気通信分野の競争評価手法に関する研究会」これまでの検討状況について」に基づき、総務省から説明が行われた後、構成員の間で意見交換がなされ、大要次のような意見等が出された。

   構成員より「今後、報告書の取りまとめに向けた5月、6月の議論の進め方については、起草委員会を発足して、何名かの構成員が集まって議論することも一つの方法。構成員のスケジュールや負担の観点から、それが難しいのであれば、対案として、研究会の開催回数を増やし、主に構成員間の議論を行うこととしてはどうか。」との主旨の提案があり、これに関し、他の構成員より「事業者の事業活動の自由を確保する観点から、競争評価手法の透明化・客観化をいかに図っていくのかを議論することが極めて重要。この点、本日の競争評価の指標等に関する論点についての議論を深めていく必要があり、構成員の時間が許す限り、1回でも多く開催回数を増やして議論すべきではないか。」との主旨の提案があった。
   上記提案に対し、構成員より「起草委員会の発足については、引き続き提案するものであるが、構成員の総意として、研究会の開催回数を増やすこととするのであれば了解。その際には、パブコメまでに報告書(案)ドラフトに関する議論が2回、また、パブコメ後に最低2回の議論が必要。また、報告書(案)の起草を事務局に一任する場合でも、報告書の項目立て、記述すべき基本的方向性等を骨子(案)として事務局にて作成の上、構成員及びオブザーバに対して意見照会すべき。なお、報告書骨子(案)について構成員及びオブザーバから寄せられた意見は、事務局にて整理・集約の上、会合の場で配布願いたい。その後、報告書(案)のドラフトを、早い段階、例えば議論の1週間前までに構成員に送付し、その上で、議論を行うことが必要。」との主旨の意見があり、これに対し、他の構成員より「パブコメ後、2回の議論が必要という点については、パブコメで寄せられた意見の分量・内容にもよるが、基本的には賛成。また、パブコメまでに、報告書(案)について議論できる場を、最低1回、願わくは2回設けることが望ましい。」との主旨の意見があった。
   これに対し、事務局より「基本的には賛成。パブコメ後、2回議論の場を設けることについては、時期的な制約もあり、1回はパブコメ期間中に設定することも視野に入れ調整して参りたい。次回会合以降の開催日程については、時間的余裕もないので、早急に調整を進めたい。」との主旨の回答があった。
   事務局より「本研究会の議論は、今後も引き続き、オブザーバも含め、公開とすることでよいか。」との主旨の確認があり、これに対し構成員から了解する旨の回答があった。

   研究会として構成員同士で議論を尽くすことは極めて重要であるので、研究会の開催回数の増加、開催時間の延長等により、特に論点として挙げられた事項については、時間の許す限り、構成員の間で議論を尽くすこととし、今後の開催日程については、事務局にて至急調整を図るとともに、座長からの「事務局にて報告書骨子(案)を至急作成し、本日から2、3日後までにメール等で構成員及びオブザーバに意見照会・意見集約すれば、次回会合において報告書(案)ドラフトについて議論することが可能となる。」との主旨の提案に基づき、今後、いかに能率良く議論できるか、事務局にて検討することとなった。

(3)    その他
   第11回会合については、4月24日(木)14時から開催する旨、案内済であるが、1時間延長して3時間程度議論することとし、詳細については事務局から別途連絡することとなった。


以上




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