FTTHの実現に向けたネットワーク展望と課題
第2章 FTTH実現に向けたネットワークの展望


1 2010年のネットワークイメージ


   (1) 光ファイバ網の位置づけ

   (2) 通信・放送での伝送路の共用

   (3) フレキシブル・ネットワーク化

   (4) 無線系ネットワークとの関係






第2章 FTTH実現に向けたネットワークの展望

1 2010年のネットワークイメージ

(1) 光ファイバ網の位置づけ
 加入者系光ファイバ網については、NTTをはじめ複数の電気通信事業者、CATV事業者により民間主導で、競争的に整備され、2010年までには、全国整備が完了する。大容量性、低損失性等の優れた特性を有する光ファイバ網は、固定系通信のネットワークとして基幹の通信インフラとなっており、ユーザが光ファイバによる高速・広帯域のサービスの利用を希望すれば、すぐに利用でき得る状況が確立されている。
 また、電話等のメタルケーブルで提供可能なサービスについても、ユーザの直近まで光化されたネットワークにより提供されている。 企業では、ビル内に光ファイバケーブルを引き込むFTTO(FiberTo The Office)が一般化し、家庭にも、FTTH(Fiber To The Home)が相当程度普及している。





(2) 通信・放送での伝送路の共用
 ネットワークの高速・広帯域化、デジタル化の進展により、通信と放送の融合、それに伴う伝送路の共用が進み、通信ネットワークを利用した放送サービス(例:ビデオ・オン・デマンド)、放送ネットワークを利用した通信サービス(例:CATV網を利用したインターネット接続サービス)等、多様な形態のサービスが実現している。
 光ファイバの高速・広帯域性を用いれば、通信サービスと放送サービスの双方を、各家庭において1本の光ファイバケーブルで利用することは可能であるが、複数の事業者により光ファイバ網が競争的に整備されることから、それぞれを別のケーブルで利用する形態も併存していよう。





(3) フレキシブル・ネットワーク化
 光ファイバ網の整備の進展に伴い、その特性を活かした、従来のメタルケーブルでは実現できなかったサービスが可能となる。すなわち、従来のメタルケーブルをベースとするネットワークでは、基本的に媒体とサービスが一体化していたが、光ファイバをベースとするネットワークにおいては、その大容量性等から複数のサービスが選択的あるいは同時に提供されるようになる。具体的には、従来の電話サービスから、数100Mbpsの高速・広帯域サービスまで、多様な伝送速度のサービスが提供されるようになる。また、コネクション型/コネクションレス型、音声等のリアルタイム伝送保証の有無、上り下りの伝送容量が対称/非対称、障害発生時の対応(予備系の有無)など、様々なサービスの種類、サービス品質でのサービスが提供されるようになる。
 さらに、これら様々な伝送速度や品質の複数のサービスを1本の光ファイバで、同時に利用できるようになる。例えば、テレビ電話を使いながらインターネットにアクセスしたり、ビデオ・オン・デマンドのサービスを同時に受けることも可能となる。
 光ファイバをベースとするネットワークは、これら様々なサービスの提供に柔軟に対応できるフレキシブル・ネットワーク化している。





(4) 無線系ネットワークとの関係
 無線系ネットワークは、高速・広帯域化され、モバイル・コンピューティング等移動通信用として、大きく発展している。
 また、固定通信用としては、光ファイバ網の補完的ネットワークとして暫定的に、特に次のような場合に活用される。

 ア 離島や山間僻地、過疎地等
 離島や山間僻地など電柱やケーブル等の敷設工事が困難な地域においては、固定衛星通信等の高速・広帯域の無線系ネットワークが、回線設定の容易性から活用され、光ファイバ網とシームレスに接続される。
 また、過疎地のように広い地域に需要が分散しており、FTTHを実現することは、きわめてコストが高く経済的に困難な場合にも、無線系ネットワークの活用が考えられる。この場合であっても、一般的に一定の需要密度を有するエリアまでは光ファイバが使用され、それから先に無線を用いるハイブリッドなネットワークが経済的なアクセス網と考えられる。
 このように、ネットワークにおいて光ファイバと無線をどのように使い分けるかは、ネットワーク構築コスト、需要の多寡等により判断される。将来、高度情報通信社会の進展に伴い、過疎地等においても高速・広帯域通信に対する需要が高くなることが考えられる。したがって、過疎地等においても、順次、光ファイバネットワークの比重が高まり、無線系ネットワークの活用は限定的なものになると予想される。
 イ 都市部での早期の事業展開
 線路・管路等の線路設備を有しないNCCが、需要密度の高い都市部において、早期に面的に事業展開を図る必要がある場合には、回線設定の容易性から、当面無線を加入者系ネットワークとして活用することも考えられる。ただ、この場合においても、加入者系無線アクセスシステム等無線系ネットワークには、伝送容量や加入者収容能力の制約があること、また、現在ボトルネックとなっている線路設備の整備も徐々に進捗していくものと考えられることから、光ファイバに置き換わる可能性がある。