加入者系ネットワークにおけるxDSLの可能性

第4章 地域アクセス回線のアンバンドル


   1 ルータ等の他事業者設置

   2 xDSL装置の他事業者設置





 地域事業者によるサービス提供と併せて、それ以外の電気通信事業者(以下「他事業者」)によるxDSLサービスの提供を可能にするために、地域事業者の所有する地域アクセス回線のアンバンドルが必要となるが、アンバンドルには以下の2つの方法がある。

1 ルータ等の他事業者設置

 地域アクセス回線のアンバンドルの一形態として、下図のように、xDSL装置は地域事業者が設置し、他事業者のルータ等の地域事業者へのコロケーションを認めるとの形態が考えられる(ルータの開放)(*)。

(*)ルータの開放は、既に、地域事業者により実施されている。






2 xDSL装置の他事業者設置

(1) xDSL装置の他事業者設置の意義
 xDSLには、多様な技術が存在することに加え、技術革新も激しいことから、電気通信事業者が提供するに当たっては、多様な利用者ニーズに対応して、できる限り多様なサービスが提供されることが望ましく、そのためには、アクセス回線アンバンドルの一環として、xDSL装置に関しても、他事業者による設置を認めることによる競争の促進が望ましいとの指摘がある。

【参考】xDSL装置の他事業者設置のイメージ


(2) 他事業者によるxDSL装置設置に当たっての問題
 他事業者が地域事業者の局舎にxDSL装置を設置するに当たっては、以下のような点が問題となりうる。

 技術上の課題について
  ア)課題
 地域事業者が、他事業者のxDSL装置の設置を認めると、
i)様々な方式のxDSL信号が同一ケーブル内を流れるようになることから、漏話防止のための心線管理が複雑になる、
ii)試験・切分等を行うことにより、電気通信設備としての正常性を保証することが困難になる、
といった問題があるとの指摘がある。

  イ)意見
 これに対しては、地域事業者側が、他事業者のxDSL装置設置を認めるに当たって、xDSL装置に関する利用可能周波数帯域、インターフェース等の技術的基準を定めることにより、対応可能ではないかとの意見がある。
 この点に関しては、地域事業者は、オープンな実証実験を実施し、接続に係る技術的課題を明確にすることが早急に求められる。

 通信インフラ整備上の課題について
  ア)課題
 いったん地域事業者以外の事業者に対して、他事業者のxDSL装置の設置を認めると、当該事業者にとっては、自ら回線を引くよりも地域事業者の回線を借りてサービスを提供した方が有利になりかねず、そうなれば新規の回線敷設のインセンティブが働かなくなり、競争体制の下での地域網の整備が困難になるのではないかとの指摘がある。

  イ)意見
 これに対しては、CATV網や無線網を別とすれば、そもそも新規の地域網の敷設には、費用・期間面の困難性が伴うことから、現実的な競争政策としては、他事業者のxDSL装置の設置を認めることにより、地域網における競争を促進すべきであるとの意見がある。
 また、新規事業者は、いずれにせよ、光ファイバ敷設により参入することが想定されるので、他事業者のxDSL装置の設置を認めても、通信インフラ整備にはさほど影響しないのではないか、との意見もある。

 制度上の課題について
  ア)課題
 地域事業者が、他事業者のxDSL装置の設置を認めることは、回線の伝送速度等を定義して提供する既存の電気通信サービスとは全く異なり、いわゆる「心線貸し」になるので、地域事業者の電気通信役務ではなくなるのではないかとの指摘がある。

  イ)意見
 いわゆる「心線貸し」とは、典型的には、物理的な回線を何らの使用条件も課さずに他事業者に使用をさせる場合を指すと考えられる。
 これに対して、他事業者のxDSL装置の設置を認めるに当たっては、地域事業者側は、無条件でアクセス回線の他事業者による使用を認めるわけではなく、使用可能周波数帯域等の接続条件を定めてアクセス回線をアンバンドルすることになることから、単なる物理的な回線の貸出(心線貸し)には該当しないとの指摘がある。
 この点に関しては、早急に検討を行い、結論を出すことが必要との意見がある。

 経営上の課題について
  ア)課題
 他事業者のxDSL装置の設置を認めると、地域事業者のサービスに対する需要が流出することにより地域事業者の経営に影響が出るとの指摘がある一方、現在開始されつつあるCATV事業者の同様なサービスに対する需要を流出させることも予測されることから、現在、地域網整備について新しい役割を担うCATV事業者の経営に与える影響も大きいとの指摘がある。
 また、大都市を中心に、地下管路の不足が発生している状況の下で、老朽化したメタル回線を新しいメタル回線に更改しなければならなくなるといった非効率な投資コストが発生し、経営に与える影響が大きいとの指摘がある。

  イ)意見
 これに対しては、短期的に地域事業者の収益に影響が出る可能性があるとの意見と、長期的には情報通信の市場拡大により、地域事業者やCATV事業者の利益増大につながる可能性があるとの意見がある。また、メタル回線から光ファイバへの更改については、xDSLの提供に当たって、光化までの時限的なものであることを明確にする等の対応により、光化時点でサービスを停止することが許容されるとの意見がある。