〈資料22〉


「第2次情報通信改革」に向けた規制緩和の推進について


 I.基本的考え方

(1) 1985年(昭和60年)の「第1次情報通信改革」以来10年が経過し、我が国 の情報通信市場には、活発な新規参入が行われるとともに、競争的な分野における料 金の大幅な低廉化が実現し、国民利用者の利便の向上がなされてきた。
他方、地域通信網はNTTの事実上の独占が継続し、独占的な分野では基本料金を はじめ、料金の値上げが行われてきている。
こうした経過の中で、急速な技術革新を背景としたマルチメディア化、情報通信市 場のグローバル化の進展、消費者・ユーザーニーズの高度化など情報通信を取り巻く 社会経済情勢が変化する一方、我が国経済の重要課題である構造改革を促していく上 で情報通信の果たす役割は一層高まりつつある。
郵政省としては、これらの状況を踏まえ、競争の一層の促進を通じて、情報通信市 場の活性化と我が国の高コスト構造の是正を図るため、「第2次情報通信改革」の早 期実現に向けて取り組む考えである。その際には、通信と放送の融合の流れに則して 電気通信、放送の両分野にわたり幅広く推進していく。

(2) 郵政省は、これまでも累次の閣議決定等を踏まえ、積極的に規制緩和に取り組んで きたところであるが、平成7年12月14日に行政改革委員会から「規制緩和の推進 に関する意見(第1次)」が提出され、政府としても、これを最大限に尊重する方針 を決定している(平成7年12月25日閣議決定「当面の行政改革の推進方策について」)。

(3) こうした観点から、郵政省としては、規制緩和の一層の推進に向け、当面、以下に 掲げる措置を順次講じていくこととする。
これらの措置のうち平成8年度以降に実施する者については、政府として平成8年 3月末までに改定することとしている規制緩和推進計画に盛り込み、その着実な実施 を図っていくこととする。

(4) また、情報通信インフラの円滑な整備を促進するため、道路占用等に関する規制の 見直しを進めるとともに、医療、教育、行政、商取引等、社会の幅広い分野において、 情報通信の高度化のメリットを最大限に活用するため、政府として、高度情報通信社 会推進本部制度見直し作業部会の検討結果等を踏まえ、諸制度の見直しについて積極 的に取り組むことが強く期待されていると考える。



 II.具体的措置

  1 電気通信事業の規制緩和

  (1) 参入規制の見直し

行政改革委員会の意見を踏まえ、第一種電通信事業の参入許可の基準の一つである 過剰設備防止条項の削除を検討する。
第一種電気通信事業はネットワーク設備を設置する必要があるが、現在、各種の公 益事業特権(国公道、公用水面等の有線的利用や他人の所有に属する土地等に対する 強制的使用権)により、こうしたネットワーク・インフラの構築が強力にサポートさ れている。したがって、過剰設備防止条項を削除する場合は、同条項と切り離して公 益事業特権を付与する新しい仕組みが確立されることが前提条件となる。
郵政省は、この新しい仕組みについて、既に関係省庁と調整を開始したところであ るが、具体的な成案が得られれば、同条項削除のための電気通信事業法の改正につい て検討する。


  (2) 退出規制の趣旨に沿った運用

行政改革委員会の意見を踏まえ、当面、「公共の利益が著しく阻害されるおそれが あると認める場合を除き許可しなければならない」(電気通信事業法第18条)とい う現行の退出規制の趣旨に厳格に沿った運用を行う。


  (3) 業務区分の非規制に係る明確化

行政改革委員会の意見を踏まえ、業務区分の規制はNTT及びKDD以外にない旨 を明確にする観点から、電気通信事業法施行規則を改正し、許可申請書の様式を改め るとともに、「電気通信事業参入マニュアル」を作成・公表し、上記の趣旨を明記す る。


  (4) 料金規制の緩和

移動体通信市場における公正有効競争条件の整備や競争の進展等を踏まえ、現在認 可制となっている携帯・自動車電話、PHS(簡易型携帯電話)、無線呼出(ページ ング)等の移送体通信の料金について、平成8年度中の事前届出制への移行を検討す る。
その他の料金については、平成8年2月に予定されている「NTTの在り方につい て−情報通信産業のダイナミズムの創出に向けて−」についての電気通信審議会の答 申(以下、「電気通信審議会の答申」という。)も踏まえ、更に検討する。


  (5) 接続規制の見直し

接続条件の透明性を確保し、NTT地域通信網との多様な形態での相互接続を推進 する観点から、NTT地域通信網について、
a.接続の義務化
b.接続条件の料金表・約款化
c.接続に関する会計、接続費用の細分化(アンバンドル化)等接続に関する会計方法・基準
d.接続に必要な機能のアンバンドル化等接続の技術的条件
e.接続に必要な局舎の提供(コロケーション)、電柱・管路等の使用に関する条件
f.番号ポータビリティ(事業者を変更しても同一の番号が利用できること)の実施方法
g.優先接続(4桁の事業者番号をダイヤルすることなく利用者があらかじめ登録し た事業者に接続すること)の実施方法
等の事項について、電気通信審議会の答申を踏まえ、平成8年中に相互接続の基本的
なルールとして策定すべき具体的な内容を決定し、電気通信事業法の改正について検 討する。


  (6) 公専公接続の早期実現

情報通信ネットワークを活用したニュービジネスの展開や料金の低廉化等を促進す る観点から、平成9年中に実施予定とされている公専公接続の実施について、平成7年 度の公専片端接続の開放の影響の評価を踏まえ、平成8年中の完全自由化を目指し、 可能な限り早期化する。


  (7) 国際専用線の利用の完全自由化の早期実現

国際VANサービスにおける基本音声サービスについても、ニュービジネスの展開 や料金の低廉化等を促進する観点から、平成7年度の公衆網との接続のない形態での 開放の2年後の評価等を踏まえ、公衆網との接続の実施について、平成9年中の完全 自由化を目指し、可能な限り早期化する。


  (8) 業務委託の弾力化

第一種事業者が弾力的にネットワークを構築することを可能とするため、業務委託 における受託者要件を緩和し、CATV事業者、下水道管理用光ファイバを所有する 地方自治体、送電監視用光ファイバを所有する電力会社等の第一種事業者以外の者が 受託することを弾力的に認める。
(平成7年度中、関係通達改正)


  (9) 第二種電気通信事業の基準の見直し

特別第二種電気通信事業の要件として、電気通信事業法施行令に回線規模の基準が 規定されている。一般第二種電気通信事業の範囲を拡大するため、国内特別第二種電 気通信事業者の数を半数程度に縮減する。
(平成8年7月目途、電気通信事業法施行令改正)


  (10) 国際業務協定に関する規制の緩和

国際通信サービスに関して第一種電気通信事業者及び特別第二種電気通信事業者が 外国事業者との間で締結する業務協定の認可については、事業者間の機動的な事業展 開に資するため、その範囲を国際電話サービス及び国際総合デジタル通信サービスに限定する。
(平成7年度中、電気通信事業法施行規則改正)


  (11) 国際電気通信事業者の通信回線の設定に関する規制の緩和

国際電気通信サービスを提供する第一種電気通信事業者が対地拡大を行う場合、相 手国との間に直通回線を設定することを原則としているが、当該事業者の直通対地拡 大の状況を踏まえ、直通回線によらず第三国中継による回線設定を行うことを弾力的 に認める。
(平成7年度中)


  (12) 外資規制の緩和

我が国の電気通信市場には多数の外国資本が既に参入しているところであるが、平 成8年4月末を交渉期限としてWTO(世界貿易機構)で行われている基本電気通信 交渉の結果等を踏まえ、世界的な自由化に向け、外資規制の一層の緩和について検討する。
なお、NTT及びKDDの外資規制の在り方については、電気通信審議会の答申を 踏まえて検討する。


  (13) NTT法及びKDD法の在り方

NTT法及びKDD法の在り方については、電気通信審議会の答申を踏まえて検討する。


  (14) 非対称規制の在り方

非対称規制の在り方については、電気通信審議会の答申を踏まえて検討する。


  2 NTT及びKDDの在り方

NTTの在り方については、電気通信審議会の答申を踏まえて検討し、平成7年度 中に結論を得る。
KDDについては、NTTの在り方について検討を行う中で、その在り方について 検討を行う。


  3 放送の規制緩和

放送のデジタル化、グローバル化を展望しつつ、放送ニュービジネスの振興を図るた め、必要な規制の見直しを引き続き着実に進める。


   (1) 衛星デジタル多チャンネル放送の着実な導入

本年度春頃からの事業化が期待される衛星デジタル多チャンネル放送の導入を図る ため、マスメディア集中排除原則の大幅な緩和等について、現在、電波監理審議会に 諮問しているところであるが、本年2月に予定されている答申を踏まえ、平成7年度 中に制度整備を図る。


   (2) 有料放送市場における標準契約約款制等の導入

衛星デジタル多チャンネル放送の導入による新規参入の増加、新たな放送サービス の提供等を踏まえ、有料放送市場における競争の一層の促進のため、標準契約約款の 導入、有料放送料金の事前届出制への移行について、平成8年度中に検討する。


   (3) 映像国際放送用周波数帯域の拡大

国際化の進展に対応し、放送による映像情報の国際交流を促進するため、映像国際 放送に用いられる放送用周波数帯域の拡大について、平成8年度中に検討を進める。


   (4) 地上データ多重放送と文字多重放送との融合的利用の促進

電子新聞やパソコンソフト等の各種データを簡便な方法により提供できる地上デー タ多重放送と既存の文字多重放送との融合的利用を促進するため、平成8年度早期に 免許手続の簡素化を図る。