第3章 情報通信が牽引する社会の変革−「世界情報通信革命」の幕開け−






 インターネットの普及をはじめとする情報通信の高度化によって、ネットワー
クを通じて、双方向、高速、マルチメディアの情報流通が実現されることにより、
情報の自由な創造・発展・共有化がグローバルなレベルで行われ始めている。
 これにより企業活動や就業形態、国民生活、地域社会、国際社会等のあらゆる
分野で、大きな変革が起きつつある。特に、従来の工業化社会では不利な立場に
置かれていた個人・小規模組織、過疎地域、開発途上国等に、これまでの立場を
逆転させる可能性も与えつつある。21世紀を目前に「世界情報通信革命」とも
呼ぶべき大きな変革が始まりつつあるといえる。
 本章では、このような「世界情報通信革命」が既に幕を開けつつある現状を、
紹介・分析していくこととする。
 世界の情報通信においては、グローバルネットワークとしてのインターネット
の急速な普及や、米国の1996年電気通信法の成立、EUの1998年を期限
とする音声電話サービス・電気通信インフラの完全自由化、アジア・太平洋地域
各国における移動通信の本格的な導入やアジアサットによる国境を越えた衛星放
送等、ダイナミックな進展・変革が起こっている。海外においては、このような
国内市場における企業間の活発な競争、業種を越えた提携を通じたダイナミズム
が、ボーダレス経済の中の激しい国際競争に対応する競争力強化を促し、企業の
グローバルな戦略的展開の動きに結びついている。
 このような世界の情報通信のダイナミックな展開の中で、我が国においても、
産業・経済活動に関して、情報通信を活用した新しいビジネス・スタイルが登場
し、小規模組織でもグローバルなビジネス展開を可能とし、規模の格差を越える
活力がもたらされている例がある。また、情報通信産業自身の成長・変化も著し
く、新規産業創出をもたらすなど、我が国経済の成長に大きな貢献をしている。
 一方、情報通信の高度化は、産業・経済活動のみならず、社会生活に対しても、
大きな変革をもたらしている。テレワークの登場によるライフスタイルの変化な
どである。また、これらの情報通信手段により、過疎地域、地方都市等において
も活力が出てきている。物理的な国土空間を越えた情報空間が出現し、新しい国
土概念が展開しつつあると言える。
 以上のように、情報通信の高度化がもたらす社会の変革の大きさを考えると、
その変革をより望ましい方向へ導き、促進するために、社会の各分野で積極的に
国際的視野の下に、情報通信の高度化を推進していくことが重要である。
 特に米国とは情報化の状況に格差があり、情報通信市場のダイナミズムの創出
等を通じて、情報通信の高度化を一層推進していく必要があり、そのために、郵
政省としても情報通信の高度化に向けた「中期計画」の策定、「第2次情報通信
改革」の推進等に取り組んでいる。


        第1節 世界の情報通信のダイナミックな展開

  1 グローバルネットワークとしてのインターネットの急速な
   普及
 (1) インターネットの普及状況
  インターネットは、世界中のコンピュータ・ネットワークをつなげたグロー
 バルなネットワークであり、ここ数年、爆発的な膨張を続けている。1996
 年1月現在、全世界では約947万台のホストコンピュータがインターネット
 に接続され、その利用者は1億人に迫ろうとしているが、なおその勢いは衰え
 ることなく増加を続けている。
  インターネットに接続されているホストコンピュータ数(1996年1月現
 在)について、主な国別に見ると、米国が約 605万5千台(全体の63.
 9%)と圧倒的に多く、2位以下を大きく引き離している。一方、我が国は約
 26万9千台で世界第6位であるが、数の上では米国の20分の1以下であり、
 ドイツ、英国の約6割となっている。
  また、1996年1月までの1年間の成長率を見ると、日米欧の各国ともお
 おむね倍増しているが、インドネシア(13.3倍)、シンガポール(4.3
 4倍)、中国(3.77倍)のように、主要先進国よりさらに大きく増加して
 いる国もある。さらに過去3年間の成長を見ると、ニュー・ジーランド(26
 .1倍)、シンガポール(16.7倍)、日本(11.6倍)、南アフリカ共
 和国(11.1倍)、インド(9.97倍)の成長が目ざましい。
  経済規模から見たホストコンピュータ数(ホストコンピュータ数/GNP)
 については、ホストコンピュータ数では米国に大きく劣るニュー・ジーランド
 がトップで、次いでオーストラリア、さらに米国、カナダがほぼ同じ水準で続
 いている。一方、我が国は、総数では世界第6位であるが、これを経済規模か
 ら見ると、ホストコンピュータ数では我が国より少ないフランス、ニュー・ジ
 ーランド、南アフリカ共和国、韓国、台湾、シンガポール、香港よりも低い水
 準となっている。
  1995年6月現在、インターネットとIP接続が可能な国は世界65か国
 であり、電子メールによる情報交換が可能な国まで考慮すると、アジアとアフ
 リカの一部の地域を除いて、全世界は、インターネットというコミュニティで
 一つにつながっている。
  さらに、利用目的別のドメイン数によりインターネットの利用主体の傾向を
 見る。我が国では、企業の占める割合は58.8%で、大学等の学術機関は1
 4.0%となっている。一方、米国では、企業の占める割合は82.0%で、
 大学等の学術機関は4.3%となっており、企業ユースが多い傾向は我が国以
 上に顕著である。
  一方、7年12月末現在、インターネット・サービス・プロバイダとしてサ
 ービスしている第二種電気通信事業者は 278社(届出ベース)であり、こ
 れは第二種電気通信事業者全体の約1割にあたる。また、第一種電気通信事業
 者についてはKDD1社のみである。また、6年3月以降の事業者数の推移を
 見ると、7年夏ごろから急速に増加していることが分かる。

 (2) インタ−ネットのビジネスへの活用
  (企業におけるインターネットの利用状況)
  郵政省が7年9月に行った「平成7年通信利用動向調査(企業対象調査)」
 により、最近の我が国における企業のインターネット利用状況を見ると、自社
 でインターネットを利用している企業の割合は11.7%であった。また、現
 在は利用していないが具体的な利用予定があるという企業は19.4%で、既
 に利用している企業と合わせると、31.1%の企業で利用が見込まれている。
  これを企業属性別に見ると、産業別の利用率では、「不動産業」(20.9
 %)、「サービス業・その他」(19.2%)、「金融・保険業」(16.2
 %)等で高くなっている。また、利用見込み(「利用している」と「具体的な
 利用予定がある」の割合の合計)では、「不動産業」(42.7%)、「金融
 ・保険業」(39.2%)、「サービス業・その他」(37.3%)、「製造
 業」(37.1%)等で高くなっている。一方、従業員数別の利用率では、従
 業者2,000人以上が一番多く34.3%で、利用見込みでは60.6%に
 及んでいるが、従業員の少ない企業でもインターネットの利用が進展している。

  (インターネット活用方法の類型化)
  インターネットのビジネス分野における活用形態をみると、電子メール等の
 「コミュニケーション」機能、電子ニュースやWWW上でのホームページの開
 設等の「情報公開・情報提供」機能のビジネスへの活用に始まり、現在では、
 インターネットの環境下で社内業務システムを構築する「イントラネット」と
 いう形での活用も盛んになる一方で、インターネットそのものをビジネスある
 いはビジネス支援のツールとして活用する電子出版・電子新聞、ディレクトリ
 サービス等の「情報流通サービス」、仮想店舗・仮想商店街、電子取引等の「
 電子商取引」、電子決済あるいは電子現金等の「電子金融」のような社外に向
 けた活用へと範囲が拡大している。
  企業による情報公開・情報提供だけでなく、国や地方公共団体あるいは非営
 利団体も積極的にインターネットを通じて情報を提供している。郵政省では、
 6年9月にホームページを開設し、インターネットにより通信白書、郵政省の
 施策、電気通信審議会答申等の情報を広く提供してきたが、インターネットの
 利用者の拡大等を背景にアクセス回数は増加する傾向にある。

 2 欧米の情報通信市場の構造変革
  (米国における主要な情報通信政策及び情報通信市場のダイナミックな
 展開・再編)
  米国では、1984年のAT&T分離・分割等の情報通信市場における競争
 促進政策が採られてきている。その結果、長距離通信分野(以下、国際通信を
 含む。)では、AT&T分割以降、AT&T、MCI、スプリント等のキャリ
 ア間での競争が促進され、AT&Tの市場占有率は、売上高で見ると1984
 年に約90%であったが1994年には約55%に低下してきている。また、
 競争の結果、1983年末には1.85ドルであったAT&Tの最遠距離平日
 昼間の3分間の通話料金が1994年末には1.02ドルになるなど料金の低
 廉化も進んできている。
  1996年2月、1996年電気通信法が制定された。本法は、米国の情報
 通信市場の競争促進と規制緩和を図るものであり、その主な内容は、次のとお
 りである。

  1. RHC(地域通信を提供する地域持株会社)に対し長距離通信市場へ
    の参入を認めること
  2. 長距離通信事業者に対し地域通信事業へ参入するに際しての障壁を除
    去すること
  3. ケーブルテレビ事業者に対し地域通信市場への参入を認めること
  4. 放送局の所有規制を緩和すること
  5. 暴力・わいせつ情報への対応

  本法の制定により、米国情報通信市場は、地域通信事業者と長距離通信事業
 者との相互参入等が原則的に可能な構造となった。
  また、米国の情報通信市場では、事業者間のダイナミックな競争・提携等の
 動きが見られる。

  (欧州における主要な情報通信政策及び情報通信市場のダイナミックな
 展開・再編)
  EUでは、電気通信サービスへの競争導入については、すべての電話サービ
 スへの競争導入の達成期限を原則として1998年1月とすることが、199
 3年7月にEC(当時)閣僚理事会で採択された。
  電気通信インフラ分野への競争導入についても、その達成期限を原則として
 1998年1月とする決議が、1994年11月にEU閣僚理事会で行われた。
 また、1994年12月に音声電話を除く電気通信サービスの提供のため、ケ
 ーブルテレビジョンのインフラを代替インフラとして開放することを内容とす
 るケーブルテレビジョン自由化に関する委員会指令案を採択した。本指令案は、
 EU加盟国等の関係機関との協議を経て、欧州委員会で1995年10月に採
 択され、1996年1月に発効した。さらに、電力・鉄道等の代替インフラに
 よる、音声電話を除く電気通信サービスへの競争導入については、1996年
 7月から実施するとの内容を含んだ電気通信全面自由化指令が、1996年3
 月に欧州委員会により採択された。
  英国では、1991年に、国際通信を除くすべての分野において競争を導入
 する政策転換を行った。しかし、現状ではBTの売上高の割合は約90%とマ
 ーキュリーの約8%に比べて圧倒的なシェアとなっている。そのため、199
 5年7月、OFTEL(英国電気通信庁)は、「有効な競争:行動のための枠
 組み」と題する報告書を発表した。
  フランスでは、1993年10月に移動通信と代替インフラの接続を認める
 方針を発表していたが、1995年5月にこの方針に基づきフランス国鉄の持
 つネットワークを移動通信網と接続することを認可した。これにより、フラン
 スでは、インフラ分野においてフランス・テレコムによる独占状態から競争状
 態へと入った。
  ドイツでは、ドイツ・テレコムの独占を崩し競争を本格化させるため、新た
 に交付する事業者免許の数を制限しないこと、地域通信市場への参入を認める
 こと等を内容とした通信改革法案が1996年2月に連邦議会に提出されてい
 る。

 3 アジア・太平洋地域の情報通信市場の拡大
 (1) 情報通信サービスの動向
  100人当たりの電話回線数は、香港が54.0回線と最も高く、次いでオ
 ーストラリアの49.6回線、シンガポールの47.2回線、ニュー・ジーラ
 ンドの47.0回線であり、我が国(48.0回線)と同レベル又はそれ以上
 となっている。一方、インドでは1.1回線、インドネシアでは1.3回線と
 なっており、基本的電気通信インフラである電話網の整備状況において、各国
 間での格差は大きい。しかし、1984年から1994年にかけての年平均伸
 長率は、中国で25.7%、タイで18.4%、インドネシアで16.7%、
 インドで13.0%、マレイシアで12.9%、ブルネイで12.5%、韓国
 で12.2%と2けたの伸長率となっており、世界平均の5.2%を大きく上
 回っている。
  100人当たりの携帯・自動車電話の契約数では、シンガポールが 8.4
 と最も多く、香港が7.4、オーストラリアが7.0、ニュー・ジーランドが
 6.5、ブルネイが5.6であり、我が国(3.4)以上の水準となっている。
 また、1990年から1994年にかけての年平均伸長率は、中国で204.
 1%、フィリピンで113.2%と大きく拡大してきている。

 (2) 情報通信インフラ整備等の動向
  (情報通信市場の状況)
  1995年7月現在で、韓国、香港、マレイシア、シンガポール、フィリピ
 ン、インドネシア、オーストラリア、ニュー・ジーランドで既に電気通信事業
 者の民営化が行われており、タイでは民営化が計画されている。
  情報通信市場の自由化についても固定通信分野では、フィリピン(約60社)
 をはじめとし、香港(4社)、マレイシア(3社)等で競争が導入されている。
 また、移動通信分野では、ブルネイ(12社)、インド(8社)、フィリピン
 (5社)、香港(4社)、オーストラリア、マレイシア(各3社)等多くの国
 において競争が導入されている状況にある。

  (情報通信インフラの整備のための政策等)
  シンガポールでは、自国を世界の電気通信のハブとする計画を進め、世界の
 情報通信基地としての地位を確立しようとしている。今後、2005年までに
 すべての家庭へ光ファイバ回線を敷設する予定である。マレイシアにおいても、
 1994年5月、「電気通信に関する国家政策」を発表し、世界の電気通信の
 ハブとなることを目指す姿勢を示した。
  インドネシアでは、1999年末までに500万の電話回線を増設すること
 を目標としている。500万の電話回線中300万回線は、PTテレコムがジ
 ャカルタ首都圏とスラバヤで敷設し、残りの200万回線を外国資本を含めた
 民間コンソーシアムで敷設する計画である。
  タイでは、1990年10月に民間委託方式を取る電話回線敷設計画が決定
 され全国で 300万回線の増設が進められている。
  中国では1987年に携帯電話サービスが開始され、1993年現在800
 以上の都市でサービスの提供が行われている。
  フィリピンでは、静止衛星を利用した移動通信サービスを提供するための合
 弁会社が設立されている。
  香港では、1995年12月、アジアサット2号の打上げが行われた。本衛
 星を利用した香港の衛星会社による衛星放送のカバーする範囲は、アジア全域
 とオーストラリア等の世界53か国・地域となっており、約2億人の視聴者が
 いる。
  インドでは、テレポートが、インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロー
 ル市周辺を含む全国5か所に設置され、国際データ通信、テレビ会議等を提供
 し、インドのソフトウェア開発を急成長させている。

 4 世界の情報通信市場における戦略的展開
 (1) 日米欧キャリアの海外展開の動向
  累積海外投資額では、AT&Tが約7,300億円、BTが約4,800億
 円、C&Wが約3,900億円、GTEが約2,300億円であり、RHCで
 は、アメリテックが約1,200億円、USウエストが約1,100億円、ベ
 ル・アトランティックが約1,100億円となっており、NTTの約300億
 円、KDDの約90億円に比べ高くなっている。
  これを各社の総資産額に占める比率で見ると、C&Wが34.8%、BTが
 20.7%と高い。AT&Tが9.2%、USウエストが7.0%、アメリテ
 ックが6.0%、GTEが5.4%、ベル・アトランティックが4.6%とな
 っており、これに対してKDDは1.7%、NTTは0.3%であり、米国及
 び英国の主要なキャリアに比べ海外への投資が低いことが分かる。

 (2) 日米欧キャリア間での競争・提携等
  ボーダレス経済の中の激しい国際競争に対応する国際競争力強化のため、各
 国キャリアはグローバルな戦略的展開を図ろうとしている。そのため、国際間
 の提携等が活発化してきている。
  各国キャリアによる主要な国際コンソーシアムにおける出資状況を見ると、
 ワールドパートナーズでは、AT&Tが40%を出資し、コンサートには、M
 CIが25%の出資を行うなど米国企業が活発な出資を行っている。英国では
 、BTがコンサートに75%の出資を行っている。また、1996年2月、ス
 プリントが50%を出資し、フランス・テレコム及びドイツ・テレコムが各2
 5%を出資しグローバルワンが設立された。

 (3) 日米欧のアジア・太平洋地域への展開
  インドでは、地域電話サービスへの競争導入のため地域電話の新規免許の入
 札に対し、AT&T及びナイネックス等のRHCを中心とする各国の企業が応
 札している。また、GSMサービスについて、ベル・サウスがマドラス地域で、
 フランス・テレコムがボンベイ地域で各合弁会社に資本出資するなど、欧米の
 キャリアの展開が見られる。
  アジア地域では、静止衛星を利用した移動通信サービスを提供するための合
 弁会社の設立がみられる。日本からも大手商社がこれらの計画に参加意向を示
 している。


      第2節 情報通信がリードする我が国経済の構造変革

  1 ニュービジネスの起爆剤としての情報通信
 (1) 新しいビジネス・スタイルの出現による効率化
  (企業内の生産性の向上及び協調的な業務遂行)
  企業においては、社会のめまぐるしい変化に的確に対応するため、意思決定
 の迅速化を図り、業務遂行の協調化を図っている。これらの企業活動を支える
 ツールとして、電子メール、グループウェア、移動通信端末等の情報通信ソフ
 トウェア・機器が活躍している。

  (企業間のオープンかつ機動的な関係の形成)
  企業は、生産・物流等の分野でのコストダウンや製品開発期間の短縮等の理
 由から、電子データ交換(EDI)、CALS等の情報通信ネットワークに関
 連したツールによって、オープンかつ機動的な企業関係を形成してきている。
 また、バーチャル・コーポレーションの登場により個人・中小企業がオープン
 に結集することで、活力あるビジネスを展開している。
  郵政省が行った「平成7年通信利用動向調査(企業対象調査)」(7年9月)
 によると、EDIを利用している企業は40.0%あり、前回調査(5年12
 月)と比較して10ポイント以上伸びており、利用予定がある企業まで含める
 と、半数近くの利用が見込まれる。

  (企業と消費者の新しい関係の構築)
  情報通信ネットワークを利用して、企業と消費者が直接取引を行うことので
 きる電子商取引が始まりつつあり、企業と消費者の新しい関係が構築されつつ
 ある。

 (2) 情報通信の支援による企業の積極的な海外展開
  我が国経済の急速なグローバリゼーションの進展とともに、企業の海外展開
 が拡大してきている。このような企業活動の海外展開を支援するためには、情
 報通信は必要不可欠となってきている。

 (3) 情報通信の高度化による産業の新たな展開
  情報通信の高度化により高い成長が期待できる産業分野として企業活動支援
 関連分野、学習関連分野、医療関連分野及び余暇関連分野について取り上げる。
 企業活動支援分野では、特に、企業活動の海外展開にともなって、中小企業が
 インターネット等の情報通信を利用して海外の現地スタッフを活用した翻訳サ
 ービスを低コストで提供するなど、情報通信を利用した新しいビジネスが生ま
 れてきている。

 (4) 産業の情報化に関する日米比較
  我が国と米国との間で、産業のそれぞれの側面において、比較可能な最近の
 データ項目により、情報化に関する比較を行った。産業の情報化について、我
 が国の状況を100として米国の状況を見ると、ISDN回線契約率では我が
 国を下回っているが、その他の項目では、我が国を上回っている。

  2 情報通信産業の活力ある展開
 (1) 情報通信産業における最先端ビジネス
  (移動通信を利用したニュービジネス)
  7年度から新たにPHSサービスが始まり、さらに、将来的にはMMAC
 (マルチメディア移動アクセス)、周回衛星システム、IMT−2000
 (International Mobile Telecommuni−
 cations−2000)/FPLMTS(Future Public
 Land Mobile Telecommunication 
 Systems)等の新たなシステムの導入も検討されている。

  (ケーブルテレビを利用したニュービジネス)
  テレビジョン放送以外の新サービスへの取組は、まだ始まったばかりである
 が、現在までに、広域電話サービス、インターネットへの接続、ビデオ・オン
 ・デマンド、教育・在宅医療支援について、多彩な実験が展開されている。

 (2) 他産業の情報通信産業への積極的参入
  電気通信事業者のうち第一種電気通信事業者について筆頭株主の業種を見る
 と、最も多く登場するのは電気通信事業者であり、ほぼ半数を占めている。以
 下、電力会社、メーカー(電機、自動車)、商社の順である。また、各社の上
 位5位以内の株主の業種を見ると、最も多く登場するのは商社である。

 (3) 情報通信産業の設備投資の動向
  我が国の電気通信業、放送業に対する設備投資を見ると、6年度は伸び率は
 やや鈍化したものの年々着実に増加を続け、6年度は3兆945億円(対前年
 度比0.3%増)に達し、昭和63年度の1.39倍で、この期間の年平均伸
 び率は5.7%であった。また、全産業の設備投資(法人企業動向調査(経済
 企画庁)による)に占める割合でも、昭和63年度は6.2%であったものが、
 6年度は7.6%に拡大している。
  電気通信業における設備投資について日米比較を行うと、国民一人当たりの
 設備投資額は、我が国では2,001円であるのに対して、米国では3,72
 8円となっており、米国は我が国の1.86倍と日米間で大きな格差が見られ
 る。
  電気通信業と放送業における設備投資と他の公益的分野に対する設備投資と
 比較すると、5年度の総額では、ここで調査した分野の中で情報通信は、道路
 (10兆8,031億円)、電力(4兆9,340億円)、下水道(3兆5,
 340億円)に次いで4番目(3兆863億円)となっているが、その額は道
 路の3分の1以下であり、電力の6割強に過ぎない。

  3 技術創造立国に向けた情報通信技術の開花
 (1) 情報通信技術の研究開発をめぐる最近の動向
  研究費について見ると、情報通信分野の中核を占める通信・電子・電気計測
 器工業は、3年度に2兆3,728億円に達した後、4年度、5年度は連続し
 て減少したが、6年度は前年度比0.4%増の2兆576億円とやや回復の兆
 しが見られる。
  研究者数について見ると、通信・電子・電気計測器工業は、昭和61年(4
 月1日現在)は6万2千人であったが、その後堅調に増加を続け、7年(4月
 1日現在)は10万4千人まで増えている。

 (2) 情報通信技術の先進的な研究開発事例
  情報通信技術は、その進化に伴い、従来意識されてきた厳密であるが冷たい
 機械的な側面だけでなく、親しみやすい人間的な側面をも兼ね備えるようにな
 ってきた。この変化は、情報通信技術の利用者の広がりに伴うユーザニーズへ
 の対応に起因しており、これを受けて研究開発の場面における技術開発の課題
 や達成目標は、ハード・硬直性からソフト・柔軟性へ、あるいは一次元性能か
 ら多次元性能へと重点を移しつつ広がりを見せている。

 (3) 情報通信技術の研究開発における我が国の国際競争力
  情報通信分野の研究費は、我が国の約201億ドルに対して、米国は約35
 1億ドルとなっている。また、科学技術全体の研究費に占める割合でも、我が
 国の16.3%に対して、米国は21.8%となっており、情報通信の研究費
 の絶対額においても、全体の中の比率においても米国の方が高い水準にある。
  また、研究者数について見ると、情報通信分野の研究者数は、我が国の約7
 万8千人に対して、米国は約21万8千人となっている。また、科学技術全体
 の研究者数に占める割合でも、我が国の14.4%に対して、米国は23.0
 %となっており、研究費同様、米国の方が高い水準にあるといえる。
  科学技術庁の「民間企業の研究活動に関する調査」によれば、情報通信分野
 を含む日本企業の研究開発力は、3年前と比較すると、全般的に欧米の評価の
 向上が見られるが、中でも通信・電子・電気計測機器工業において米国の評価
 の向上が顕著であり、1994年には、米国優位へと評価が逆転した。

  4 経済発展をもたらすリーディング産業としての情報通信産業
 (1) 成長する情報通信産業
  (情報通信産業の国内生産額の動向)
  情報通信産業の実質国内生産額の推移を見ると、昭和60年が52.0兆円、
 2年が80.6兆円及び6年が88.3兆円である。年平均成長率は、昭和6
 0年から2年にかけてが9.1%及び2年から6年にかけてが2.3%であり、
 我が国産業全体の実質国内生産額のそれぞれ同期間の年平均成長率 4.6%、
 1.9%と比較すると、より高い水準で推移している。また、情報通信産業の
 実質国内生産額が我が国産業全体の実質国内生産額に占める比率も、昭和60
 年が7.6%、2年が9.3%及び6年が9.5%と拡大してきている。情報
 通信産業は、我が国産業全体と比較して、成長率が高く、我が国産業全体に占
 める比率も高まりつつある成長産業であることが分かる。

  (情報通信産業の雇用者数の動向)
  情報通信産業の雇用者数の推移を見ると、昭和60年が327万人、2年が
 392万人及び6年が401万人である。年平均増減率は、昭和60年から2
 年にかけてが3.7%及び2年から6年にかけてが 0.6%であり、増加の
 伸びは鈍化しているものの、着実に雇用を創出していることが伺える。
  年平均増減率について部門別に見ると、情報ソフトが特に高い水準で推移し
 ており、6年は昭和60年に比べ、約3.5倍で約30万人の雇用増となって
 いる。

  (情報通信産業の労働生産性の動向)
  情報通信産業の労働生産性の推移を見ると、昭和60年が雇用者1人当たり
 1,591万円、2年が2,053万円及び6年が2,256万円で、我が国
 産業全体のそれぞれ同期の労働生産性1,492万円、1,675万円、1,
 684万円と比較すると、高い水準にある。その年平均上昇率は、昭和60年
 から2年にかけてが5.2%及び2年から6年にかけてが2.4%で、我が国
 産業全体のそれぞれ同期間の労働生産性の年平均上昇率2.3%、0.1%と
 比較すると、極めて高い水準で推移している。

  (国内生産額、粗付加価値の日米比較)
  我が国と米国の情報通信産業の国内生産額及び粗付加価値を、比較可能な最
 新の年次である2年について「1990年日米国際産業連関表(速報)」(通
 商産業省)をもとに、産業連関分析の手法を用いて比較する。
  情報通信産業における各部門の産業全体に占める比率を比較すると、我が国
 と比べ米国は、情報通信産業がハード部門よりソフト部門に傾いており、また、
 情報通信産業の中では特に「通信」部門がリードしている構造であることが分
 かる。

 (2) 情報通信産業の我が国の経済成長への寄与
  (情報通信産業の経済成長への寄与)
  情報通信産業の成長が我が国の経済成長にどの程度寄与しているかを、我が
 国の経済成長率(SNA1990年基準の実質GDP成長率)に対する寄与度
 及び寄与率で見てみる。寄与度は、昭和60年から2年にかけては年平均経済
 成長率4.6%に対し0.6%であり、2年から6年にかけては年平均経済成
 長率1.4%に対し0.2%であった。これを寄与率で見ると、昭和60年か
 ら2年にかけては11.4%であり、我が国景気の後退期があった2年から6
 年にかけても12.0%であった。これから、情報通信産業が我が国の経済成
 長に大きく貢献していることがうかがえる。

  (産業の情報化の各産業の成長への寄与)
  産業の情報化を表す指標として、産業連関表を利用し「情報化傾注度」を指
 標化した。情報化傾注度を、昭和60年、2年及び6年について推計すると、
 ほとんどの産業において情報化傾注度は上昇している。昭和60年から6年ま
 での各産業の国内生産額の成長率と情報化傾注度の関係を見てみると、情報化
 傾注度の増加が大きい産業ほど、国内生産額の成長率も高いという相関関係が
 伺える。

 (3) 情報通信産業の経済波及効果
  「通信産業設備投資等実態調査」によれば、電気通信事業者及び放送事業者
 の6年度の、土地の取得等を除いた投資実績額は、電気通信事業者全体が約2
 兆5,775億円、放送事業者全体が約1,340億円の合計約2兆7,11
 5億円であった。この時の生産誘発額を推計すると、約5兆2,592億円で
 あり、生産誘発額を投資額で除した生産誘発係数は1.94であった。また、
 生産誘発額の部門別構成を見ると、情報通信機器製造(49.3%)や研究
 (5.7%)等の情報通信産業のほか、電気機械(7.7%)、卸売業(3.
 7%)、対事業所サービス(3.7%)等の広範囲の産業に生産誘発が及んで
 いる。
  「通信産業設備投資等実態調査」によると、電気通信事業者及び放送事業者
 の6年度の、土地の取得等を除いた設備投資による誘発就業者数を推計すると、
 約22万1千人であった。この雇用創出の部門別構成を見ると、情報通信機器
 製造が8.3万人(37.5%)、研究が2.0万人(8.9%)、電気機械
 が1.8万人(8.3%)、卸売業が1.8万人(8.1%)、対事業所サー
 ビスが1.6万人(7.3%)等と、広範囲の産業にわたって雇用創出が生じ
 ている。


 第3節 情報通信の高度化による国民生活の変化と新しい国土概念の
    展開

 情報通信の高度化により、産業面のみならず、生活面においても空間的・時間
的制約から解放される、現実の生活圏における人間関係に加えてネットワークを
通じた新たな人間関係が形成されるなどの、ライフスタイルの変化がもたらされ
る。
 情報通信の高度化によるこのような社会的変化の中で、情報空間が新しい生活
活動の場となり、現実の空間である物理的国土を越えて情報空間をも取り込んだ
新しい国土の概念が生まれつつあると言える。

  1 情報通信の高度化による国民生活の変化
 (1) ライフスタイルにおける変化
  (家庭における情報通信の利用動向)
  情報通信機器の普及状況として世帯当たり情報通信機器の保有率について見
 ると、各機器とも増加傾向であり、7年においては、ファクシミリが16.1
 %(対前年同期比2.4ポイント増)、無線呼出しは15.0%(同3.1ポ
 イント増)、パソコンは15.6%(同2.0ポイント増)及び携帯電話は1
 0.6%(同4.8ポイント増)となっている。また、世帯における情報通信
 機器等の個人利用が進展している。

  (情報通信の高度化による新しいライフスタイル)
  最近では、電子メールやパソコン通信等の情報通信を利用し、事務所に通勤
 するかわりにサテライトオフィスでの勤務や在宅勤務等が可能となる「テレワ
 ーク」という勤務形態を導入する例が見られるようになってきている。
  テレワークにより、個人の都合に合わせた働き方が可能となり、個人のプラ
 イベートな生活において時間的余裕が生まれるばかりでなく、移動が困難であ
 ったり、長時間の拘束に対応できないために就労が阻害されていた、主婦や高
 齢者等の社会参加が実現し、新しいライフスタイルが進展しつつある。
 (社)日本サテライトオフィス協会の「日本のテレワーク人口調査研究報告書」
 (8年2月)によると、我が国で何らかの形でテレワークを実施している人口
 は、約95万人と推定されている。さらに、郵政省郵政研究所が7年度に実施
 した調査研究によれば、テレワーク人口は、普及シナリオにもよるが、12年
 には全労働者の4%にあたる300万人弱が、22年には最大で全労働者の2
 0%にあたる1,300万人となるものと予測されている。

 (2) 公共分野における変化
  (保健・医療・福祉の分野)
  保健・医療・福祉の分野における情報化は、まず業務の効率化の観点からの
 コンピュータの導入が先行してきた。しかし、高齢社会の進展に伴う患者の絶
 対数の増加に対し、保健・医療・福祉の分野においても、利用者の利便性の向
 上に直結したネットワークシステムの導入による情報通信の高度化が進みつつ
 ある。

  (教育の分野)
  高度情報通信社会に向けて、今後、情報の入手・加工・発信に関する基礎的
 な能力を身に付けることが求められており、学校教育においても積極的な取組
 が進められている。6年度末のコンピュータの設置率につき教育機関別に見る
 と、小学校が77.7%、中学校が99.4%、高等学校が100%、盲学校
 が98.5%、ろう学校が100%、養護学校が96.7%となっている。ま
 た、元年以降の伸び率の推移を見ると、設置率が最も低い小学校においても、
 ここ数年間で急速に設置率が伸びている。

  (行政の分野)
  最近では、窓口業務の改善、システムの統合による住民サービスの向上等、
 地域住民と接点がある分野において情報通信の利用が進んでおり、これに伴い、
 情報通信端末のネットワーク化が進展し、情報通信が高度化してきている。地
 方公共団体におけるパソコンの総設置台数及びホストコンピュータや他のパソ
 コン等と接続されたネットワーク化率の推移を見ると、都道府県、市区町村と
 も近年、パソコンの総設置台数及びネットワーク化率が急激に伸びていること
 が分かる。

 (3) 家庭の情報化に関する日米比較
  我が国と米国との間で、家庭のそれぞれの側面において、比較可能な項目に
 より、情報化に関する比較を行った。家庭の情報化について、6年度における
 我が国の状況を100として米国の状況を見ると、パソコン普及率では我が国
 の約2.5倍、ケーブルテレビ加入数では約12倍となっており、大きな差が
 ある。

  2 情報通信の高度化による新しい国土概念の展開
 (1) 地方公共団体による地域情報化
  (地域情報化計画の策定状況)
  既に何らかの計画を策定済み及び策定中であるのは、都道府県及び政令指定
 都市(以下、特に記載がない限り「都道府県等」という。)では59のすべて
 の団体、市区町村では3,245団体のうち565団体(同17.4%)とな
 っており、計画策定の状況から見ると、都道府県等では地域の情報化への取組
 は早い。また、都道府県等の策定済計画数は143であり、計画策定済の1団
 体あたり平均策定数は2.42、市区町村の策定済計画数は732で同1.3
 0となっており、都道府県等においては地域の情報化に対し多様な取組が実施
 されていることが分かる。

  (具体的な取組の現況)
  郵政省の委託調査による「地方公共団体の地域情報化施策等に関するアンケ
 ート」(7年12月)により、地方公共団体における地域情報化施策の取組の
 現況を見てみると、導入分野の傾向については、都道府県等では産業分野が最
 も多く、次いで教育・文化分野、行政分野となっている。これに対し、市区町
 村では防災分野が最も多く、2位の行政分野と合わせて回答全体の過半数を占
 めている。このように、都道府県等では導入分野が多岐にわたっているのに対
 し、市区町村では防災分野と行政分野に集中する傾向にある。
  利用が多いメディアについては、都道府県等ではパソコン通信、データベー
 ス、専用回線、インターネット等となっているのに対し、市区町村では、防災
 無線が圧倒的に多くなっており、以下パソコン通信、ケーブルテレビ等が続い
 ている。

 (2) 地域内情報交流の充実
  (財)過疎地域問題調査会の「過疎地域における定住推進方策に関する調査
 研究」(6年3月)によると、都市からのUターン者・Iターン者の29.5
 %が、地方へ移り住んだ際の問題点として「情報が入手しにくくなる」と回答
 しており、同9.5%が、「どこで地方の情報を得ればよいのかわからない」
 と回答している。
  地方に移り住むに際しては、情報不足が問題点の一つであるが、都市型ケー
 ブルテレビ及びコミュニティ放送が、各地域において、放送の多チャンネル化
 という側面のみならず、地域内の各種情報の交流手段として活用され出してき
 ている。これらは、従来の放送と異なり、地域密着情報を地域住民に提供する
 とともに、住民が参加しながら情報を受発信するための手段として活用され、
 多様化する地域住民の生活ニーズの充足や定住の促進に貢献している。

 (3) インターネットを利用した地域からの情報発信
  現在、首相官邸や郵政省等国の行政機関、地方公共団体、個人や企業におい
 て全国からインターネットを活用した情報発信を行っている。インターネット
 の特長としては、過疎地域、離島、半島、山村等条件不利地域においても世界
 に向けて情報発信できることであり、また、どこからでも必要とする情報にア
 クセスできることである。

 (4) 情報通信の利用による企業の機能分散及び地域での起業
  情報通信を活用して仕事を行うテレワークが最近注目されており、テレワー
 クによる在宅勤務等を利用して企業の機能分散も可能となる。郵政省の委託調
 査による「地方公共団体に対するテレワークセンターのニーズ調査」(6年6
 月)によると、テレワークセンターに関心がある地方公共団体は、73%にの
 ぼっている。また、地域においてテレワークセンターが必要だと思われる理由
 として、雇用機会の拡大、地域経済・産業の活性化を期待する回答が多くなっ
 ている。

 (5) 非常災害・緊急事態における情報通信の役割
  非常災害その他緊急事態が発生したときには、まず、情報が迅速に、かつ、
 正確に伝わることが必要である。そのために携帯電話等最近の新しいメディア
 の登場とあいまって、情報通信が果たす役割はますます重要になってきている。

  (情報通信が果たした役割)
  携帯電話は、加入者線部分は無線を使用しているので、有線とは異なり、災
 害時でも断線による被害がなく、基地局が復旧すれば使用することができる。
 また、持ち運びができるので、一部の基地局が使用不可能になっても、隣接す
 る使用可能なエリアへ移動することにより、使用することができる。
  阪神・淡路大震災において、被災地への救援活動や復旧活動のために各地か
 ら被災地にきたボランティア等は、携帯電話を使用することにより互いに連絡
 を取りながら機動的に活動することができた。

  (地方公共団体による防災情報システム構築)
  郵政省の委託調査による「地方公共団体の地域情報化施策等に関するアンケ
 ート」を見ると、防災情報システムを運用している都道府県等は83.1%、
 そのうち現在運用している防災情報システムの見直しをしている(又は見直し
 をする予定がある)都道府県等は53.1%である。回答のあった市区町村
 (1,166)のうち防災情報システムを運用している市区町村は56.1%、
 そのうち現在運用している防災情報システムの見直しをしている(又は見直し
 をする予定がある)市区町村が31.5%あり、見直し時期は、7年(見直し
 をしている市区町村の24.8%)及び8年(同29.6%)が多くなってお
 り、阪神・淡路大震災が契機になっていると思われる。


          第4節 情報通信政策の課題と取組

  1 情報通信の高度化に向けた「中期計画」の策定
 (1) 社会の変革の基礎にある情報通信の高度化
  「世界情報通信革命」が幕を開け、産業・経済構造、国民生活といった社会
 の様々な側面で変革が起こりつつある。
  政府の高度情報通信社会推進本部において7年2月に決定された「高度情報
 通信社会推進に向けた基本方針」においても、高度情報通信社会を制度疲労を
 起こした従来のシステムに代わる新たな社会経済システムとして、その早期構
 築の必要性が述べられている。また、7年12月に閣議決定された「構造改革
 のための経済社会計画−活力ある経済・安心できるくらし−」においても、高
 度情報通信社会の早期構築を目指す必要性が述べられ、発展基盤の確立のため
 になど、それぞれの対応すべき重点課題における情報通信の高度化の重要性が
 述べられている。
  このような高度情報通信社会の構築に向けて、社会の各分野における変革を
 推進していくためには、情報通信の高度利用を可能とする高度な情報通信基盤
 の整備が必要である。

 (2) 情報通信基盤の整備に向けた情報通信政策
  情報通信基盤の整備に当たっては、基本的に民間主導で進めるべきであるが、
 多大の投資を伴うものであることから、公的部門も一定の役割を果たすべきで
 あり、情報通信政策の主要な役割の一つとして、情報通信基盤整備の方向性を
 示し、その支援を行うことが挙げられる。
  郵政省では、情報通信基盤整備のための政策として、光ファイバ網の全国整
 備の目標時期を2010年とし、その実現のために様々な施策を実施している。
  さらに、情報通信の高度化を推進するためには、情報通信基盤の整備、情報
 通信技術の研究開発等の施策を総合的・計画的に進めていくことが必要である
 ことから、「中期計画」を策定するため、8年1月に電気通信審議会に対し、
 高度情報通信社会の構築に向けて、2000年までの情報通信高度化の推進目
 標とその実現のために講ずべき推進方策について諮問を行っている。


  2 情報通信産業の振興の推進
 (1) 情報通信産業の成長と産業・経済構造の変化
  近年、情報通信の高度化によって、企業においては、新しいビジネス・スタ
 イルが登場してきている。このような中、中小企業や個人も、グローバルなビ
 ジネス展開等、従来の大企業を越えるような活力を見せつつあり、まさに「世
 界情報通信革命」の流れが我が国経済にも変革をもたらしている。
  また、情報通信産業の成長が他の産業・我が国経済全体の成長に及ぼす影響
 も大きなものがある。情報通信産業は新たなリーディング産業として、新規産
 業創出・雇用拡大による経済・産業構造の改革に貢献できるものと期待されて
 いる。

 (2) 情報通信産業の振興に向けた情報通信政策
  このような観点から、情報通信産業の振興のための政策として、税制支援、
 政策金融支援等の資金面での支援や、情報通信技術の研究開発の推進・支援が
 行われている。
  また、8年1月には、情報通信技術の研究開発を総合的・計画的に推進して
 いくため、電気通信技術審議会に対し「技術創造立国に向けた情報通信技術に
 関する研究開発基本計画」について諮問を行っている。

  3 国民生活の向上と新しい国土概念の展開
 (1) 情報通信と国民生活の変化・新しい国土概念の展開
  近年、家庭生活や保健・医療・福祉等の公共分野における情報通信の高度化
 により、単に生活利便が向上するだけでなく、ライフスタイルが変化しつつあ
 る。
  また、情報通信の高度化により、地理的制約が緩和され、過疎地域、地方都
 市等においても世界へ情報発信することが可能となり、活力を持つことができ
 るようになっている。こうして、「世界情報通信革命」の流れは経済面のみな
 らず、社会全体に浸透してきている。

 (2) 国民生活の向上と新しい国土概念の展開に向けた情報通信政策
  郵政省では、通信・放送機構による遠隔健康相談システムの研究開発をはじ
 めとする身体障害者・高齢者用情報通信システムの研究開発を推進している。
  また、「マルチメディア時代のユニバーサルサービス・料金に関する研究会」
 において、新たなユニバーサルサービス・料金の在り方について検討を行って
 いる。
  次に、「テレトピア構想」、公共投資である「電気通信格差是正事業」、
 「地域・生活情報通信基盤高度化事業」が実施されている。さらに、情報通信
 の「信頼性向上施設整備事業」を推進している。

 4 NTTの在り方の検討、規制緩和の推進等の「第2次情報通信改革」
  に向けての取組
 1980年代半ばの時期は、世界的にみて「第1次情報通信改革」と呼ぶべき
時期であった。
 現在、「第1次情報通信改革」から約10年が経過し、急速な技術革新、マル
チメディア化、インターネットの急速な普及をはじめとするグローバル化等、情
報通信分野をめぐる状況は大きく変化しており、現在、欧米の先進諸国において
は、競争、通信・放送の融合を推進するための政策が展開されている。また、ア
ジア・太平洋地域においては、移動通信、衛星放送をはじめとする情報通信市場
の急速な拡大が見られ、情報通信インフラの積極的整備のための政策が推進され
ている。
 このような状況の中、郵政省は、NTTの在り方について、2年3月の政府の
「日本電信電話株式会社法附則第2条に基づき講ずる措置」を踏まえ、7年4月
に電気通信審議会に諮問し、8年2月に「日本電信電話株式会社の在り方につい
て−情報通信産業のダイナミズムの創出に向けて−」と題する答申を得た。本答
申においては、NTTを長距離通信会社と2社の地域通信会社に再編成し、長距
離通信会社を完全民営化、地域通信会社を特殊会社とすること等が提言されてい
る。そして、8年3月の政府決定において、NTTの在り方について、電気通信
審議会の答申の趣旨に沿って、関係者の十分な意見も聴取しつつ、規制緩和と、
接続関係の円滑化を積極的に推進するとともに、次期通常国会に向けて結論を得
ることができるよう引き続き検討を進めることとされた。
 郵政省は、競争の一層の促進を通じて情報通信の活性化と我が国の高コスト構
造の是正を図るため、規制緩和の一層の促進に向け当面講ずる措置について、8
年1月、「「第2次情報通信改革」に向けた規制緩和の推進」と題して公表した。