凡例 第1章 特集 ITがひらく21世紀 第2章 情報通信の現況 第3章 情報通信政策の動向 情報通信年表・注記・調査概要

第2章 第10節

1 全国の情報流通

(1)概況

テレビ、専用サービスによるデータ伝送が20世紀の消費情報量増加に寄与

1)情報流通量等の10年間の推移
 「情報流通センサス調査」(資料36参照)によれば、各情報流通量の過去10年間(昭和63年度〜平成10年度)の年平均増減率は、原発信情報量が17.0%、発信情報量が13.6%、選択可能情報量が8.3%、消費可能情報量が5.7%、消費情報量が8.4%、情報ストック量が3.8%となっている。これに対し、各情報量の7年度から10年度の3年間の年平均増減率は、原発信情報量が28.3%、発信情報量が23.4%、選択可能情報量が13.1%、消費可能情報量が7.5%、消費情報量が14.8%及び情報ストック量が2.5%となっており、近年では原発信情報量、発信情報量の伸びが著しい(図表1))。これは、「専用サービス(データ伝送)」、「ISDN(データ伝送)」、「デジタルデータ伝送サービス」等の電気通信系パーソナルメディアによる情報流通量が、ネットワーク化の進展に伴い急増しているためである(2-10-1(2)参照)。
 9年度では選択可能情報量の対前年度増減率(20.5%)が、消費情報量の対前年度増減率(14.2%)を大きく上回ったが、10年度では対前年度増減率は選択可能情報量が12.8%、消費情報量が13.5%となり、やや消費情報量のほうが高いもののほぼ同じ程度となった。これは、9年度において大きな動きを見せたケーブルテレビの選択可能情報量の増加傾向が、10年度ではやや落ち着いたためである。
 10年度では実質国内総生産がマイナス成長を示したが、情報流通量の増減には大きな影響を及ぼしてはいない。
2)消費情報量の推移からみた20世紀(図表2)、3))
 10年度の調査では、2000年という節目に当たって、消費情報量について1901年までさかのぼって推計し、100年間の動きについて概観することとした。消費情報量の100年間の変化をみると、人々の情報の消費は飛躍的に拡大したことが分かる。
 20世紀初頭、消費できる情報は日常生活の対話や学校教育以外では、はがきや封書等の郵便物か、新聞や書籍等の出版物に限られていた。
 1925年ラジオ放送が開始され、消費情報量は比較的緩やかに増加し始めたが、1953年にテレビ放送が開始されると急速な増加に転じた。
 NHKラジオ受信契約数が1931年に100万件を超えた後、1952年に1000万件を超えるのに20年以上要したのに対し、NHKテレビ受信契約数は1958年に100万件を超えたわずか3年後の1961年に1000万件を超えた。このことからもいかにテレビが急速に普及し、消費情報量の増加に貢献したかがうかがえる。高度経済成長による国民所得の増大もテレビの普及促進の一因であった。
 しかし、1973年の第1次オイルショックを過ぎたあたりから、消費情報量の増加の速度が鈍化した。1975年にはカラーテレビの普及率は90%を超えており、1970年代後半にはテレビの消費情報量は飽和状態にあり、テレビによる消費情報量の急速な拡大は終わりを迎えた。
 テレビの次に消費情報量の牽引役を務めたのは専用サービスによるデータ伝送であった。専用サービスによるデータ伝送の消費情報量は1980年代中頃より急速に拡大した。1980年代中頃は、一般家庭にパソコンの普及が始まった時期であり、経済も半導体等ハイテク関連産業が景気をリードした時期であった。このような時期に企業においては専用サービスによるデータ伝送への需要が増加し、消費情報量が急速に拡大した。
 データ伝送による消費情報量の拡大は、1990年代後半になって更に加速した。1990年代後半では、専用サービスによるデータ伝送の拡大に加え、デジタルデータ伝送サービスやISDNによるデータ伝送が拡大した。消費情報量の増加に占めるデジタルデータ伝送サービスやISDNの増加分の割合は専用サービスよりも小さいが、徐々に大きくなってきている。
 このように、1980年代中頃までは、新聞、ラジオ、テレビ等、マスメディアを中心として生活者の情報消費の主体となるメディアが消費情報量を牽引してきたが、これに加えて1980年代中頃以降はネットワーク化などを背景に、専用サービスによるデータ伝送等、主として企業が情報消費の主体となるメディアが消費情報量を牽引し始めている。

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※ ( )内は、対前年度増減率
「情報流通センサス調査」により作成

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「情報流通センサス調査」により作成

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※1 データが利用できない年度や、大きく外れた値を示す年度は除いてグラフ化した。
※2 寄与率の合計は100%となる。ある年において消費情報量が増加したメディアの寄与率の合計が100%を超える場合には、他のメディアの情報量は減少しており、寄与率はその分マイナスとなっている。
「情報流通センサス調査」により作成