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第2章 コラム3

コラム3 放送機器・放送局設備

デジタル放送開始に向け、機器・設備のデジタル化が加速

 1926年(大正15年)7月にラジオ本放送が、そして1953年2月にテレビ本放送が、ともにNHKにより開始されて以来、放送技術は着実に進歩を遂げてきている。とりわけ、映像によって、日本はもとより世界中で起こる出来事を、視聴者に瞬時に伝えることのできるテレビジョン放送は、20世紀を代表する情報通信メディアであり、放送番組の取材(撮影)・制作、編集、送出の各段階において、その時代の最先端の放送技術を結集した放送機器が重要な役割を果たしてきた。我が国においても、12年12月のBSデジタル放送を皮切りに本格的なデジタル放送時代が到来することから、放送機器・放送設備のデジタル化の動きが加速している。ここでは、主な放送機器・放送局設備についてデジタル化への対応状況を概観する。
 1970年代の後半、従来のフィルム取材に代わって、取材現場で撮影から記録、編集までの作業が可能な小型・高性能のU-マチック(3/4インチ)が開発され、ENG(Electronic News Gathering)と呼ばれるビデオによるニュース取材システムが確立した。1980年代には、小型・軽量化と撮影スタッフ削減を目的に開発されたカメラ一体型VTR(1/2インチ)の使用が一般化し、撮影から編集、番組送出までを同一規格のVTRを使って行うことが可能な編集機能付きレコーダーが普及した。1990年代に入ると、衛星デジタル放送の開始に端を発する放送デジタル化の流れの中で、デジタル方式によるVTRが開発され、普及してきた。デジタル放送時代への過渡期にある今日では、過去の資産である放送番組ライブラリを活かすため、デジタル方式でありながら従来のアナログ方式のテープが再生可能な据置型VTRが普及する一方、デジタル方式のカメラ一体型VTR(1/2又は1/4インチ)が投入されており、既に放送局が保有するVTRの多くがデジタル方式となっている。
 放送局設備では、放送関連機器のデジタル化の加速に伴い、即座に必要な情報にアクセスできるハードディスク等が記録メディアとして採用されてきている。民放では、CM送出業務の効率化と特別番組の挿入等に弾力的に対応していくため、CM素材をデジタル化し、従来のテープではなくサーバーに登録しておき、放送時に直接送出できるシステムの導入が進んでいる。
 また、デジタル放送時代を間近に控え、現行のSDTVに比べ、高品質の映像を用いるHDTVでの番組制作等を目的とする放送機器・放送局設備も登場しており、在京キー局等においては、HDTV対応のスタジオが建設されている(2-5-9参照)。 

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