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第3章 第5節

4 電波利用環境の整備

健全な電波利用環境を維持するために

 郵政省では、健全な電波利用環境を維持するため、不要電波問題、電波の人体に与える影響等の問題、不法・違法無線局問題等に対応している。
1)不要電波対策 
 不要電波問題への取組として、国際無線障害特別委員会(CISPR)の国際規格が改訂されたことに伴い、11年2月に電気通信技術審議会から、無線妨害波の電波強度などの測定装置及び測定試験場に関する技術的条件について答申を受けた。これを踏まえ、10月に電波法施行規則第6条第2項に基づいて定められている「発射する電波が著しく微弱な無線局の電界強度の測定方法」を定めた告示の一部を改正した。本改正により、一つのアンテナで広帯域の周波数を測定できるアンテナや測定場として電波暗室が認められ、無線妨害波のより迅速で正確な測定が行えることとなった。
 また、12年1月に電気通信技術審議会から、パソコン等の通信ポートに伝導する電磁気的ノイズの許容値について答申を受けた。これによりパソコンやプリンタ等の情報処理装置、ファクシミリ等の電気通信装置、複写機やPOS端末等の事務用機器などの通信線から発生する電磁的ノイズに対して適切な対策をとるための国際基準に対応した。
 そのほか、無線通信や都市雑音等を把握するため、8年度より4年計画で電磁環境計測技術等の調査研究を実施してきた。その結果を踏まえ、11年度から、今後の新たな移動通信サービスのための信頼性の高い技術基準の策定等のため、これまで行われていなかった1GHz以上の周波数帯における都市雑音データを取得する。
2)人体電波防護対策
 昨今の携帯電話等の急速な普及に伴い、無線設備が生活圏の付近に整備されるようになったことにより、これらの無線設備から発射される電波が人体に好ましくない影響を及ぼすのではないかという懸念が提起されるようになった。このような状況を踏まえ、安全な電波利用の一層の徹底を図るため、電波の強度に対する安全施設の規定の追加を内容とする電波法施行規則の一部改正を10年10月に行い、1年間の周知期間を経て、11年10月より施行した(資料50参照)。
 また、電波による人体への影響を科学的に解明するため、9年度より5か年計画で「生体電磁環境研究推進委員会」を開催し、電波の生体安全性評価に関する研究・検討を行っている(図表1))。本委員会により、11年9月、脳へのばく露レベルが携帯電話よりも非常に大きい場合でも熱作用の影響がない場合には、電波ばく露による「血液-脳関門」(BBB)に対する影響がないことが確認された。
 今後、長期的な電波ばく露による影響調査を行うほか、疫学調査の実施可能性の検討を行う予定である。
 そのほか、9年度より日本と韓国で生体電磁環境問題に関する研究及び国際協力を推進してきたが、11年10月にEUを加え、「第1回日本・韓国・EU生体電磁環境ワークショップ・専門家会合」を東京で開催した。本会合では、日本、韓国、EUの行政官及び研究者が、現在の電波防護に関する政策、今後の対応等に関し意見交換を行い、生体電磁環境問題に対する研究を推進し、日本、韓国、EUの協力を継続するとともに、生体電磁環境研究推進委員会(日本)、韓国電磁気工学会、EU、特にCOST244bis(欧州科学技術研究協力機構、電磁界の生物医学影響分野)相互の調整を図っていくこととなった。次回会合は、12年にブラッセルにて開催し、さらに他の国々の参加を求めていく予定である。
3)不法・違法無線局対策 
 電波利用拡大とともに、不適正な電波利用による障害が多発している。このため、不法・違法無線局の探査活動を強化、捜査機関との共同取締りの実施とともに、未然防止策として、周知啓発活動の強化や不法・違法無線設備の製造販売の防止等に取り組んでいる。
 5年度からは、電波の監視及び規制並びに不法に開設された無線局及び法令に違反している無線局の探査等を効果的に行うための電波監視システム(DEURAS: Detect Unlicensed Radio Stations)の整備を進めている。
 衛星通信については、軌道及び周波数の使用状況が高密度化し、混信等の発生が現実化している。このため、宇宙電波監視施設を整備し、10年度から静止衛星のL、Ku、Ka帯ダウンリンクの監視を開始し、11年度からは監視周波数をS、C帯にも拡張した(図表2))。

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※1 脳局所SAR:2W/kg(携帯電話やPHSから発射される電波の強さはこの指針値レベルより低い。)
※2 ドイツのFritzeらは1997年に脳平均SARが7.5W/kgの時にBBBの透過性がこう進すると報告

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