(2)欧州 欧州統合により域内事業者の再編が進展  欧州では、欧州統合によりEU域内市場の統合も進み、電気通信事業者の再編が加速している。かつて代表的国営通信事業者であったドイツ・テレコム(DT:Deutsche Telecom)、フランス・テレコム(FT:France Telecom)等は多様な買収・合併活動によって、EU域内の他の国々に進出している(図表1))。また、EUは情報通信政策についても、規制の枠組みの見直しや電子商取引にかかる法整備を中心に以下のとおり積極的に展開している。 1)電気通信事業者とCATV事業運営の分離に関する指令  欧州委員会は、1999年6月、EU加盟各国に対する電気通信事業とケーブルテレビ事業運営の分離に関する指令を採択した。本指令は来るべきデジタル経済社会に向けて、欧州市民のネットワークへのアクセス環境を改善するため、90年6月に採択された「電気通信サービス市場における競争に関する指令」を改正したものであり、通信事業者が以下に定義する条件に該当する場合は、同じ法人がCATVネットワークを所有することを禁止すべきであるとしている。 ( i )その事業者がEUの加盟国(即ち政府)等によって保有されている。 (ii)その事業者が公衆通信ネットワーク及び公衆音声電話市場の相当な部分で支配的位置にある。 (iii)同じ地域内で特別及び排他的権利をもってCATVネットワークを運営している。  この指令が発出された理由は、特定事業者が通信ネットワークとCATVネットワークの双方を保有した場合、地域アクセス市場において競争力が低下したり、マルチメディア・インフラの発展が遅れ、消費者、サービス・プロバイダー、または欧州経済全体に弊害をもたらす恐れがあると判断されたためである。なお、本指令は、2002年12月までにすべての加盟国で達成させることを規定している。 2)EUによる電気通信規制枠組みの見直し  1999年11月、欧州委員会は4つのコミュニケーションを採択し、現行の規制枠組みの包括的な見直しを行なうことを公表した。4つのコミュニケーションとは、(i)1999年コミュニケーションレビュー(通信インフラストラクチャーと関連サービスの新たなフレームワークを目指して)(ii)電気通信規制パッケージの実施に関する第5次レポート、(iii)EUにおけるデジタルテレビ市場の発展、(iv) 周波数政策における次のステップ、である。また、欧州委員会はこれらのコミュニケーションを踏まえて規制枠組みの見直しを行い(図表2))、最終的にはEUの情報通信関連の法規定を、現行の20から6に統合し、簡素化を図ることを提案している。なお、1999年12月には、「デジタル時代のオーディオビジュアル政策に関する原則と指針」と題するコミュニケーションを採択し、コンテンツ分野の現行の規則と支援に関しても、見直しを行うことを公表した。 3)電子商取引に関する指令案  1999年12月、EU閣僚理事会は、「電子商取引に関する指令案」について、「共通の立場」を採択し同指令案を承認した。同指令案では、EU域内の電子商取引について、原則的に商品やサービスを提供する企業の所在地の法律を適用する一方で、消費者側の懸念を考慮し、消費者保護の観点から必要と認められる場合には、消費者が住む加盟国が例外的に制限を課すことができるとするものである。また、将来の技術進歩に即するため3年以内の見直しを条項に盛り込んでいる。今後は、欧州議会で審議されていく予定である。 4)電子署名の共通枠組に関する指令  EUは、1999年12月に「電子署名の共通枠組に関する指令」を発出した。本指令の内容は、電子署名と手書き署名を同等と認めることや、電子署名の使用対象についても商取引だけではなく、幅広いサービスと商品を対象としており、電子署名にかかる登録、タイムスタンプ、コンサルタントサービス等にも適用されるものである。  また、電子署名を認定する条件として(i)電子署名は「先進的電子署名」であること、(ii)認可された認証に基づくものであること、(iii)安全な署名生成機により作られること、を挙げており、EU加盟諸国はこの指令に合わせて、2001年7月までにこの指令に合致するように、各国の関係法令を整備する義務が課せられている。なお、2000年3月現在ドイツ及びイタリアで「電子署名法」が成立している。 5)eEurope計画  欧州委員会のプローディ委員長は、1999年12月のヘルシンキEUサミットで、「eEurope」について発表した。eEurope計画とは、欧州の人々が情報化社会で利益を享受できるような体制づくりをするため、教育や輸送、ヘルスケア、障害者対応等の優先的な10分野を定め、それぞれの分野における努力目標を提示したものである(図表3))。