4 放送の高度化の推進 (1)地上放送のデジタル化に向けた環境整備 地上デジタル放送の本放送開始に向けた法制度・技術基準等の整備を推進  放送のデジタル化は、番組・サービスの多様化による視聴者の選択範囲の拡大、情報通信・コンピュータとの連携・融合による放送サービスの高度化等を実現するものとして、現在世界各国で進められている(図表1))。我が国においても、すでにCS放送(3-3-4(3)参照)やケーブルテレビの一部でデジタル放送は開始されており、今後、地上放送、衛星放送(3-3-4(2)〜(4)参照)、ケーブルテレビ(3-3-4(5)参照)の3つのメディアを、全体として整合性のとれた形で早期にデジタル化していくことが放送行政の重要な課題となっている。  地上放送のデジタル化については、10年10月に出された地上デジタル放送懇談会報告を受けて、関東・中京・近畿の3大広域圏については15(2003)年末まで、その他の地域については18(2006)年末までに本放送が開始されることを目標に、現在、環境整備を進めているところである(図表2))。 1)地上デジタル放送パイロット実験等  地上デジタル放送の円滑な導入に向けて、郵政省は、放送事業者・メーカー・通信事業者等により構成される東京パイロット実験実施協議会と共同で、10年11月より2年間の予定で地上デジタル放送パイロット実験を実施している。また、新技術・サービスの開発を推進し、早期の全国的普及を図ることを目的として、通信・放送機構は、全国10か所の地上デジタル放送研究開発用共同利用施設及びこれらを接続する全国ネット中継実験設備を整備し、11年8月から7か所で、11年12月から全10か所で、デジタル放送の実証実験を開始した。 2)法制度の整備  11年11月には、「放送法の一部を改正する法律」及び「高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法」が施行された。前者は、デジタル放送の特長である映像又は音声に文字、図形等のデータを組み合わせた高度かつ多様な放送の普及を図るため、テレビジョン放送等の定義に関する規定を変更すること等を内容とするものであり、後者は、地上デジタルテレビジョン放送の早期の普及を図るため、地上デジタルテレビジョン放送を行うための施設(高度テレビジョン放送施設)の整備を支援するための債務保証業務を、通信・放送機構の業務に追加すること等を内容としている。  このほか、11年度には、放送事業者及び番組制作事業者の地上放送のデジタル化に関する設備投資に係る負担を軽減するため、税制、日本政策投資銀行等の融資による支援措置を創設した(3-3-4(6)参照)。 3)放送方式の策定  地上デジタルテレビジョン放送の放送方式については、10年9月に取りまとめられた暫定方式に基づく実用規模の実証実験等を経て、郵政省は11年5月に電気通信技術審議会より放送方式の技術的条件に関する答申を受けた(取りまとめられた方式の主な特長については図表3)参照)。また、これを踏まえてまとめられた技術基準案については同年11月に電波監理審議会より原案を適当とする旨の答申を受け、省令等の改正を行った。  地上デジタル音声放送の放送方式については、10年11月に取りまとめられた暫定方式に基づいて実証実験が行われていたが、11年11月に電気通信技術審議会よりその技術的条件に関する答申が出された。郵政省では、今後、本答申等を踏まえ、技術基準に係る関係省令等の改正を行うこととしている。 4)地上テレビジョン放送のデジタル化に向けた実地調査等  郵政省では地上テレビジョン放送のデジタル化を実現するため、デジタル放送用中継局について、その周波数配置を効率的に行うため、測定用車両を用いた電波伝播の実地調査・分析等を12年度に実施する。  また、当該デジタル放送の導入過程で生ずるアナログ周波数変更を円滑に進める上で、周波数変更に関する情報を一元的に管理する等のため、これらの情報を電子地図上に表示し検索するシステムをあわせて開発する。 5)地上デジタル放送の円滑な導入に向けた情報提供活動  地上放送のデジタル化の推進に当たっては、国民に一定の負担をかけざるを得ない面もあることから、国民的理解を得ながら推進する必要がある。そのため、具体的なデジタル放送の意義や利点の紹介、経済・社会・生活に及ぼす影響、デジタル化の過程における受信機器の購入が必要となること等について、広く国民に周知を図ることを目的とし、11年度においては、リーフレットの頒布及び郵政省ホームページの活用による周知活動を実施した。12年度においては、これに加え、デジタル放送の新たなサービス内容のイメージを紹介するためのデモンストレーション用ソフト等を作成し、各地イベントでの展示等による周知活動の展開を予定している。 6)デジタル放送端末の共用化  デジタル放送端末の共用化は、視聴者の利便性の向上、デジタル放送端末の低廉化、デジタル放送の普及にとって重要である。このため、郵政省は、各デジタル放送メディアの技術基準をできる限り共通化するとともに、放送端末等の民間規格を策定している(社)電波産業会や放送事業者及びメーカーに対し、共用化を実現する規格や共用端末の開発等を要請しているところである。これを受けて、(社)電波産業会等は、鋭意、共用化に取り組んでいるところである。