電波監理審議会意見の聴取(平成12年2月23日公表)
第三世代移動通信システム(IMT−2000)の導入のための無線局(放送局を除
く。)の開設の根本的基準(昭和25年電波監理委員会規則第12号)、電波法施行規
則(昭和25年電波監理委員会規則第14号)、無線設備規則(昭和25年電波監理委員
会規則第18号)及び特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則(昭和56年郵政
省令第37号)の各一部を改正する省令案について、電波法第99条の12第1項及び第
2号の規定により、意見の聴取を行った(平成12年2月8日)結果、下記のとお
り意見を決定する。
平成12年2月23日
主任審理官 安 成 知 文
記
第1 意 見
各省令改正案は、それぞれ適当である。
第2 事実及び争点
1 郵政省の陳述の大要
郵政省では、ITUにおいて標準化が行われてきた第三世代移動通信システ
ム(IMT−2000)の導入に向けて検討を続けてきたが、今般、平成10年7
月に公表した「次世代移動通信システムの導入に関する基本的考え方」に対す
る関係者の意見及び平成11年9月の電気通信技術審議会の一部答申を踏まえ、
第三世代移動通信システムの無線局免許に関する基本的方針を決定した。
本件は、この基本的方針に基づき、第三世代移動通信システムの円滑な導入
に必要な規定の整備を図るため、
(1) 第三世代移動通信システムの無線設備の技術基準等の整備
(2) 競願処理が必要となる場合の比較審査の実施に係る規定の整備
等を行うものである。
2 改正案の内容等
(1) 改正案の内容
ア 第三世代移動通信システムの導入に必要な技術基準等の整備を行うこと。
(ア) 電波法施行規則(第15条の3関係)
第三世代移動通信システムの陸上移動局の無線設備の技術基準を、
包括免許の対象となる特定無線局の無線設備の規格に追加すること。
(イ) 無線設備規則(第7条、第14条、第24条、第49条の6の4関
係等)
第三世代移動通信システムを「符号分割多元接続方式携帯無線通信を
行う無線局の無線設備で、1920MHzを超え1980MHz以下、又は2110MHzを
超え2170MHz以下の周波数の電波を送信するもの」として規定し、その
無線設備について技術的条件を定めること。
(ウ) 特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則(第2条、第8条、
別表第3号等関係)
第三世代移動通信システムの無線設備を、技術基準適合証明の対象と
なる特定無線設備に追加し、その無線設備の特性試験項目を定めること。
イ 第三世代移動通信システムの導入に併せ、比較審査の実施に係る規定の
整備を行うこと。
(無線局(放送局を除く。)の開設の根本的基準(第9条関係)
(ア) 電気通信業務用無線局について、割当可能な周波数が不足する場合
には、優先順位付け(比較審査)を行うとする規定を追加すること。
(イ) 比較審査を行うに当たっての審査の考え方を規定すること。
ウ その他規定の整備を行うこと。
無線設備規則(第7条等関係)、特定無線設備の技術基準適合証明に関す
る規則(第2条等関係)、無線局免許手続規則(別表第2の4関係)
携帯電話におけるデータ通信利用の増大と車載型の利用形態の減少とい
った最近の利用実態の変化にかんがみ、「携帯・自動車無線電話通信」と
いう名称を「携帯無線通信」に変更すること。
(2) 施行期日
制度改正に関する周知期間を確保するため、公布の日から起算して1ヶ月
を経過した日から施行する。ただし、特定無線設備の技術基準適合証明に関
する規則は、公布の日から施行する。
3 利害関係者の陳述等
本件省令改正案に関し、利害関係を有する4者が準備書面を提出し、このう
ち3者が意見の聴取の期日に出席して陳述した。また、意見の聴取の期日に欠
席した日本電気株式会社については、電波監理審議会が行う審理及び意見の聴
取に関する規則第42条において準用する同規則第17条の規定により、当該
準備書面のとおり陳述したものとみなした。
4者の省令改正案に対する賛否は、次のとおりである。
利害関係者
|
賛 否
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備 考
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(財)テレコムエンジニアリング
センター
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賛 成
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(社)電気通信事業者協会
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賛 成
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(社)電波産業会
|
賛 成
|
|
日本電気(株)
|
賛 成
|
欠 席
|
第3 理 由
1 本件は、西暦2000年頃からの実用化を目標に国際電気通信連合(ITU)に
おいて標準化が鋭意進められてきた第三世代移動通信システム(IMT−2000)
の我が国での導入を図るため、関係規定の整備を行うものである。
IMT−2000は、現在の携帯電話(第二世代移動通信システム)に比べ、2
00倍以上の情報伝送能力を有し、携帯端末等から高品質の音声、データの他、
映像等のマルチメディア情報の送受信を可能にするシステムである。
2 本事案は、平成11年9月の電気通信技術審議会の一部答申「次世代移動通
信方式の技術的条件のうち符号分割多元接続方式で周波数分割複信方式を使用
する無線設備の技術的条件」及び平成10年7月に郵政省が公表した「次世代
移動通信システムの導入に関する基本的考え方」に対するパブリックコメント
での意見等を踏まえ、第三世代移動通信システムの導入に必要な以下の規定の
整備を行うものである。
(1) 第三世代移動通信システムの無線設備の技術基準等の整備
第三世代移動通信システムの陸上移動局(携帯端末等)を既存の携帯電
話などと同様に、包括免許の対象とすること。(電波法施行規則の一部改
正)
第三世代移動通信システムの無線設備の技術的条件として、電気通信技
術審議会から答申された符号分割多元接続方式で周波数分割複信方式を使
用する2つの無線方式について、所要の基準(周波数の許容偏差、占有周
波数帯幅の許容値、空中線電力の許容偏差、伝送・制御方式等)を定める
こと。(無線設備規則の一部改正)
第三世代移動通信システムの無線設備を技術基準適合証明の対象設備と
し、その無線設備の特性試験項目を定めること。
(特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則の一部改正)
(2) 比較審査の実施に係る規定の整備
第三世代移動通信システムについては割当て可能な周波数に制約があるた
め、免許申請に対して割当て可能な周波数が不足する場合の比較審査(優先
順位付け)の実施に係る規定を整備すること。(第三世代移動通信システム
を含む電気通信業務用無線局に適用)
(無線局(放送局を除く。)の開設の根本的基準の一部改正)
(3) その他規定の整備
最近の携帯電話及び自動車電話の利用実態の変化を受け、従来の名称「携
帯・自動車無線電話通信」を「携帯無線通信」に変更すること。
(無線設備規則、特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則等の一部改
正)
3 本事案に対して、利害関係者4者からそれぞれ賛成の意見が述べられ、また
このうち、日本電気株式会社から第三世代移動通信システムの早期導入につい
ての要望があり、これに対し郵政省は早期導入に向け努力したい旨、回答を行
った。
4 本事案については、第三世代移動通信システムに関する技術基準、免許手続
の公正を確保するための規定等を整備しようとするものであり、いずれも同シ
ステムの円滑な導入に必要不可欠な規定と認められる。
利害関係者はいずれも賛意を表明しており、また、本件措置により、携帯端
末等から多様なマルチメディア情報の受発信を可能にすることで移動通信サー
ビスに対する国民の需要に応えるとともに、我が国における移動通信市場の一
層の拡大、電波利用の高度化等が図れることから、本案は適当と認められる。