電気通信事業法施行規則改正案に対する意見

平成9年 9月 12日
日本電信電話株式会社

 電気通信事業法施行規則の一部を改正する省令案に対し、NTTは次の通り考えます。
1.  NTTは、ネットワークのオープン化を公表して以来、競争の促進に向けて、相互接続の推進に積極的に取り組んできているところであります。相互接続の一層の円滑化を図るため、電気通信事業法の一部改正を始めとする一連の法制度の整備が進められているものと理解しており、NTTとしても公平・中立な接続ルールの早期実現に向け努力していく考えであります。
2.  今回の接続ルールの法制化により、指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者には、接続に関する会計の整理、会計結果に基づいた接続料の算定、接続に関する契約約款の制定、機能の追加・変更に関する計画の届出等、従来以上に規制が課されることになります。
 従って、電気通信事業法施行規則(以下「施行規則」と言います。)等により規定されるルールの細目は、ユーザの利便向上、競争の長期的かつ国際的な進展、株主の利益、私企業に保障された財産権、経営の自主性の確保等の観点から、ゴーイング・コンサーンとしてネットワークの安定的な維持・運営が可能であり、国際的にも通用するバランスのとれたものとする必要があると考えております。
 また、施行規則の具体的運用に当たっては、上記の観点から、明確かつ透明な手続・基準に則り適正性を確保するとともに、競争の進展状況に応じ、弾力的に随時規則の見直しを行い規制緩和を推進していく必要があると考えております。
3.  具体的項目については、次のように考えています。
(1) 指定電気通信設備の指定の範囲
 指定は、米英における接続ルールの適用対象、接続要望の見込み、競争の進展状況、NTT再編後の設備の帰属等を勘案し、公正競争の確保、相互接続の円滑な推進に必要な範囲とすることを要望します。
(2) 接続約款の記載事項に関する手続
 今後の接続形態の多様化、技術進歩による接続条件の変更等に迅速に対応できるよう、手続の簡素化を要望します。
 接続約款の認可事項の範囲は限定的なものとし、他の電気通信事業者(以下「他事業者」と言います。)との接続に与える影響が軽微な事項等については届出で対応できるようにするなど、弾力的な運用を要望します。
 電気通信事業者間で意見交換が行われ、合意が形成されている事項(例:電信電話技術委員会(TTC)標準)については、届出事項とすることを要望します。
 仮に、認可事項とされる場合であっても、全ての案件について、改めて意見や再意見の提出を求める必要はないと考えられることから、認可手続の簡略化を要望します。
(3) 機能の変更又は追加に関する計画
 網改造工事の着手前における機能の変更又は追加に関する計画の公表については、NTTは、平成7年度から、「接続協議の手順等の明確化に関する具体的な措置」の一環として、他事業者との相互接続条件に影響を及ぼす可能性が想定される機能を自主的に公示してきており、今後とも積極的に取り組んでいく考えであります。
 本件は機能の高度化計画等電気通信事業者の経営に及ぼす影響が大きく、特に自己使用のために行う機能の変更又は追加の届出・公表は、米英を含め世界的に例をみない制度であり、ユーザサービス提供上、重大な遅延等を生じさせかねないものであることから、次の事項を要望します。
開発インセンティブの確保
 自己使用のために行う機能の変更又は追加の届出・公表については、サービス先行開始利益及び公表された機能を他事業者が利用する場合の費用回収の保障等、サービス開発のインセンティブが確保できる仕組みとする必要があると考えます。
届出対象外とする機能
 機能の変更又は追加に関する計画の届出・公表は、サービス開発に関する公正競争条件の確保上及び接続の円滑な推進上、必要最小限の範囲に限定する必要があると考えます。
 届出の対象外とする機能として、次の2項目の追加を要望しますが、新たに届出を要しない機能が出現した場合には、施行規則の改正等迅速な対応を要望します。
指定電気通信設備に構築されるデータベースにおけるデータ検索又は索引に関する機能(番号案内の電話番号検索機能)
 番号案内サービスについては、104により番号案内オペレータへ接続する機能と、エンジェルラインにより番号情報データベースへ接続する機能の双方を他事業者に提供する必要があると考えており、その変更又は追加に関し届出を行うものと考えます。
 しかし、オペレータが番号案内を行う際に利用する検索支援機能については、オペレータの操作と一体となって機能しているものであり機能単位にアンバンドルすることが技術的に困難であること、また同等の機能については他事業者においても自ら実現することが予想されるものであること、さらには不断に機能改善を行い業務運営の効率化・収支の改善を図っていくことが事業運営上の喫緊の課題であること等から、届出の対象外とすることを要望します。
 なお、ハローページ情報については、郵政省の個人情報保護に関する研究会の報告書でも慎重な取扱いが求められ、また、米国においても顧客情報授受に一定の制約を設けていることから、慎重な検討が必要であると考えます。
他事業者から指定電気通信設備への全ての着信に提供され、他事業者と指定電気通信設備との接続に影響を及ぼさない機能(LS系着信サービスの機能)  加入者交換機の利用者への着信時における機能で、全ての電気通信事業者との相互接続において無条件かつ自動的に提供され、相互接続条件に全く影響を及ぼさない機能については、全ての電気通信事業者に公正競争上不利益が生じないものであることから、届出を不要とすることを要望します。
届出期限
計画変更の届出の場合
 他事業者との意見調整による計画の変更を届け出る時期については、工事着手60日前とされていますが、標準的な協議期間を勘案すると他事業者との協議を短期間で終了せざるを得ず、協議がまとまらなければ、次の開発着手まで6ヵ月間は待つことになることから、協議期間を最大限確保するため、届出は30日前とすることを要望します。
TTCによる標準化機能の届出の場合
 TTCによる標準化機能については、原則に従い200日前に届け出ることとされていますが、全ての電気通信事業者が参画しうるオープンな場において議論の上決定されているものであることから、短期間の手続で標準化機能の網改造工事に着手できるよう、届出は30日前とすることを要望します。

(以 上)