意 見 書

平成9年10月17日

電気通信審議会
 電気通信事業部会長 殿

郵便番号  105                 
住  所  東京都港区虎ノ門3丁目5番1号     
名称及び  ディーディーアイ東京ポケット電話株式会社
代表者氏名  代表取締役社長  小山 倭郎     



 電気通信審議会議事規則第5条の2及び接続に関する議事手続細則第2条の規定により、平成9年9月26日付け郵通議第64号で公告された郵政省令案に関し、別紙のとおり意見を提出します。



(別 紙)

平成9年10月17日


「接続会計規則」及び「原価算定規則」の制定案に対する意見

DDIポケット電話グループ代表
DDI東京ポケット電話株式会社



  1. はじめに
     この度は、施行規則案に引き続き、「指定電気通信設備接続会計規則(接続会計規則)」及び「指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則(原価算定規則)」の制定案に対して意見を述べる機会をご提供いただき深く感謝申し上げます。
     今回の「接続会計規則」及び「原価算定規則」は、高額な接続料金に苦しんでいる我々のような事業者にとって、最も重要かつ影響の大きい部分であることをご理解いただき、以下の意見を是非ご考慮下さいますようお願い申し上げます。

  2. 接続料金の算定に関する弊社の考え
     今回の「接続会計規則」及び「原価算定規則」は、接続の基本的ルールに沿って作られており、接続に関係のある費用のみを正確に把握する新しい会計制度と、その結果によって設備ごとにアンバンドルされた接続料金を算定することが制度として実現することとなり、関係者の方々のご努力に改めて感謝申し上げます。
     しかし、残念ながら今回の制定案においては、接続の基本的ルールで約束されていた『不可欠設備運営の著しい不経済性により生じた費用が接続料金原価に算入されることのないよう制度の適正な運用を行うべきであり、その旨を接続料金算定要領で明らかにすべき(第4章)』という内容が盛り込まれておりません。接続料金の低廉化を実現するためには、指定設備の運用の効率化を促すような施策が必須であり、そのためにも、例えば同種の装置の購入価格が一般に比べて高くなっているような『不経済性により生じた費用』を接続料金の算定には含めないということが、極めて有効な手法であると認識しております。
     接続ルールの内容を制度化することができなかった理由を弊社なりに解釈すると、制定案のように設備に対して発生した費用を全て原価に含めるいわゆる「総括原価方式」を採用する場合には、『不経済性により生じた費用』を排除するというスキームを盛り込むことが極めて困難であるからだと理解しております。
     このことは、接続料金の算定に「総括原価方式」を用いることの限界を示しており、接続料金の低廉化を実現するためには、『不経済性により生じた費用』を除くことができるような全く新しい算定方法が必要であることを、再認識せざるを得ないと考えております。
     現在、接続料金の算定方法として長期増分費用方式等の新たな算定方法についての議論が始まったと伺っておりますが、指定設備の効率化を促し接続料金の低廉化が実現できるような算定方法が、早急に導入されるようお願い申し上げます。

  3. 今回の「接続会計規則」に対する意見
    (1)「接続会計規則」の全体について
     今回の「接続会計規則」に関しては、接続ルールの趣旨に沿った内容となっており、これにより適正な接続料金算定の基礎データを提供するということが実現されることとなるため、概ね問題ないと認識しております。
     但し、以下の事項についてご留意いただきたくお願い申し上げます。

    (2)費用帰属の基準について
     会計単位もしくは設備単位での資産や費用等の帰属の基準について、ほとんどが『適正な基準により』(第七条、第八条、第九条)という文言で表現されておりますが、その基準については『(指定設備を設置する)事業者が定める』(第四条)こととなっております。
     事業者が自由に費用の帰属の基準を定めることを認めると、指定設備へ帰属する費用等を膨らますことが可能となるため、費用の帰属に関しては恣意性が働かないよう運用していただきたく要望いたします。

    (3)別表第二様式第2(使用平均資本及び資本報酬計算書)について
     「原価算定規則」において、資本費用のベースとなるレートベースの算定方法では、当該財務諸表(使用平均資本及び資本報酬計算書)から導き出される投資等比率及び繰延資産比率を用いることとなっておりますが、貯蔵品比率に関してのみ、接続会計からは算定できないこととなっております。
     レートベースに関わる値に関しては、いずれも接続会計の結果から算出することが望ましいと考えられることから、当該財務諸表に貯蔵品の額を記載するか、或いは「原価算定規則」において指定設備に関連のない貯蔵品がレートベースに計上されないような措置が必要と考えます。

    (4)規則の柔軟な見直しについて
     「接続会計規則」については、今後の指定設備の網構成の変更や、料金算定方法の変更などによってその内容を適宜見直していくことが必要であると考えます。
     よって、柔軟に見直しを行うように運用していただきたくお願い申し上げます。

  4. 今回の「原価算定規則」に対する意見
    (1)「原価算定規則」の全体について
     接続の基本的ルールでは、接続料金に関して、『現状では、我が国の接続料金は、米国及び英国に比べて高い水準にある(第1章)』と指摘したうえで、新しい制度は『料金の低廉化につながるものであること(第2章)』という目的を実現すべきであると書かれております。
     しかしながら、今回の公表された接続料金の算定方法では、従来から事業者間で行われていた方法、すなわち過去のコスト及びトラヒックから接続料金を算定して、翌年度に精算する方法が基本となっており、コスト又はトラヒックの変動により接続料金の低廉化を期待することができる反面で、逆に接続料金が高くなる可能性も残されております。
     全ての電気通信サービスに不可欠な指定設備の接続料金が高くなった場合には、全ての事業者の仕入れコストが高くなることとなり、円滑な電気通信サービスの提供に支障が出ることが懸念されるとともに、最悪の場合は一般ユーザの利用料金の値上げにつながることも予測されます。
     また、接続料金が高くなる可能性があると、新しい接続を行うことに対しても慎重にならざるを得ず、電気通信サービスの多様化や高度化を実現しようとしている接続ルールの目的と懸け離れた結果となってしまうことも懸念されます。
     よって、「原価算定規則」の内容については、接続ルールにおいて述べられている
      (1)利用者利益を増進させるものであること
      (2)公正かつ有効な競争を促進させるものであること
    という2つの基本原則を再度念頭において、見直しをすることが必須であると考えており、以下に具体的な条文変更案を提案させていただきます。

    (2) 第四条(接続料の原価)第2項について
    ア.制定案
     2 接続料の原価の算定期間は一年とする。ただし、指定電気通信設備にその電気通信設備を接続する電気通信事業者が省令で定める機能を利用して提供しようとする電気通信役務が新規であり、かつ、今後相当の需要の増加が見込まれるものであるときには、省令で定める機能に係る接続料の原価の算定期間を五年までの期間の範囲内で定めることができる。

    イ.弊社の意見
     今後、新規の接続を行う場合だけでなく、既存の役務に用いる設備に関しても、網の高度化や効率化のための大規模な設備投資が発生することが予想されます(例:FTTH、新ノード交換機など)。また、昨年度のISDN用設備のように、需要の急増により設備増設を行った結果として、通信量の増加分を上回るコスト増となってしまうような場合もあります。
     しかし、制定案に従うとこれらの設備の料金は全て算定期間が一年となるため、一時的に設備管理運営費が高くなることとなり、接続料金が値上げとなってしまうことが懸念されます。
     解説にも書かれている通り、「初期負担の軽減」を考慮するために五年での算定を可能とするのであれば、既存設備の更改等において国民全体がメリットを享受するような大規模な設備投資においても、初期負担を軽減するような施策を取るべきであると考えます。
     更には、今回の接続料金が『設備(機能)』及びその設備(機能)の『アンバンドル』に着目して作られているため、『役務』によって算定期間を違えるという考え方を用いるべきではないと考えます。
     よって、以下の通り修正すべきであると考えます。

    ウ.当該条文の修正案
     2 接続料の原価の算定期間は一年とする。ただし、新規の設備構築に関して今後相当の需要の増加が見込まれるものであるときには、省令で定める機能に係る接続料の原価の算定期間を五年までの期間の範囲内で定めることができる。

    (3) 第六条(指定設備管理運営費の算定の特例)第3項について
    ア.制定案
     3 前項の取得固定資産価額は、合理的な予測に基づき算定された対象設備の購入価格又はそれに相当する額及び設置工事費等とする。

    イ.弊社の意見
     接続の基本的ルールでは、現在簡易な算定方式(算定方式B)を用いている設備の費用の算定においても、『原則として当該装置に関する償却・除却費等の会計数値を個別に積み上げることが適当(第4節)』並びに『費用の個別把握が著しく困難な場合には、現行方式を踏襲した方法も認められる(同)』となっております。
     しかし制定案では、償却費の算定に用いる取得固定資産価額に関して、個別に把握せずに『合理的な予測に基づき算定』することとなっており、接続ルールの趣旨が反映されていない内容となっております。
     弊社としては、簡易な算定方式においても、原則として個別に取得固定資産価額を把握できるものについてはその金額を用いるべきであり、例えば一体として開発されたソフトウェアに含まれる個別機能の金額等のように個別の費用把握が困難な場合に限り、予測した金額を用いることを可能とすべきであると考えます。
     よって、以下の通り条文の修正を要望いたします。

    ウ.当該条文の修正案
     3 前項の取得固定資産価額は、対象設備の購入価格及び設置工事費等とする。但し、対象設備の購入価格を個別に把握できない場合には、合理的な予測に基づき算定した額とする。

    (4) 第七条(他人資本費用)第4項について
    ア.制定案
     4 第二項の繰延資産比率、投資等比率及び貯蔵品比率は、それぞれ、接続会計規則別表第二に記載された指定設備管理部門の電気通信事業固定資産の額に対する繰延資産及び投資等(指定電気通信設備の管理運営に不可欠、かつ、収益の見込まれないものに限る。)の額の占める比率並びに電気通信事業会計規則別表第二に記載された電気通信事業固定資産の額に対する貯蔵品(電気通信事業に関連するものに限る。)の額の占める比率の実績を基礎として算定する。

    イ.弊社の意見
     繰延資産比率及び投資等比率に関しては、接続会計の結果として作成される財務諸表から算出することとなっているため、指定設備の管理運営に不要なものは除かれていると考えられますが、貯蔵品比率に関しては、指定事業者の営業部門も含む電気通信事業全体の数値から算出することとなっているため、指定設備の管理運営に不要なものまで全て含まれてしまう恐れがあります。
     貯蔵品比率の算出においても、指定設備の管理運営に不要なものは除かれるべきであると考えるため、以下の通り修正を要望いたします。

    ウ.当該条文の修正案
     4 第二項の繰延資産比率、投資等比率及び貯蔵品比率は、それぞれ、接続会計規則別表第二に記載された指定設備管理部門の電気通信事業固定資産の額に対する繰延資産及び投資等(指定電気通信設備の管理運営に不可欠、かつ、収益の見込まれないものに限る。)の額の占める比率並びに電気通信事業会計規則別表第二に記載された電気通信事業固定資産の額に対する貯蔵品(指定電気通信設備の管理運営に不可欠なものに限る。)の額の占める比率の実績を基礎として算定する。

    (5) 第七条(他人資本費用)第8項について
    ア.制定案
     8 前項の有利子負債に対する利子率は、有利子負債の額に対する他人資本費用の額の比率の実績値を基礎として算定する。

    イ.弊社の意見
     有利子負債に対する利子率とは「外部からの借金に対する利息」であるため、利率を低くするために借入れ期間を短くしたりすることも経営努力のひとつであると考えます。そのため、「指定設備の運営の不経済性を排除する」ということを勘案して効率的な運営をしたと仮定すれば、指定設備に係る他人資本利子率については、全額を当該年度に一年間借入れた場合の金利(例:短期プライムレートの一年間の平均値)を適用することが理想的であると考えます。
     しかし実際には、過去の事業運営の過程で調達した借入金があり、それに対して利息を支払っていることも事実であるため、他人資本利子率に関して実績値を用いることは、現実的な解であると考えます。
     ただし、制定案では『実績値を基礎として算定する』となっているため、過去数年の実績値の平均を用いることも可能となるように読めますが、「発生した費用を個別に積み上げる」という接続ルールの趣旨に従うのであれば、算定期間を一年とする場合には一年間の支払利息の実績値(五年間で算定する場合は過去の実績等を勘案した合理的な値)を用いるべきであると考えており、より明確化されるように、条文に具体的な計算方法を明示していただきたく要望いたします。

    ウ.当該条文の修正案
     8 前項の有利子負債に対する利子率は、次に掲げる式により計算する。ただし、第四条第二項ただし書及び第六条の規定に基づき原価を算定する場合には、過去の実績値等を勘案して合理的な数値とする。

       有利子負債に対する利子率=支払利息/((前年度末有利子負債+当年度末有利子負債)/2)

    (6) 第八条(自己資本費用)第3項について
    ア.制定案
     3 第一項の自己資本利益率は、事業者の発行する社債券の格付けその他の指標に照らして事業者と類似していると認められる者の自己資本利益率及び事業者の電気通信役務に関する料金の算定に用いられた自己資本利益率を勘案した合理的な値とする。

    イ.弊社の意見
     自己資本利益率に関しては、『事業者の発行する社債券の格付けその他の指標』を勘案すると書かれておりますが、指定設備は独占状態にあることを考えると、競争状態にある企業も対象となるような「社債券の格付け」を指標とすることは妥当ではないと考えます。そのため、他企業の自己資本利益率の水準を目安として用いる場合には、指定設備の運営と同じように独占状態にある企業体の利益率を目安とすることが 妥当であると考えます。
     また、自己資本費用は、投資リスクの大小によって得られる水準が異なることが一般的であるため、全ての接続料金に対して同一の自己資本利益率を適用すべきではなく、例えば、費用の全額を接続事業者が負担をするような設備の料金算定においては自己資本利益率を低くするなど、設備の性格(リスクの大小)によって自己資本利益率に幅を持たせることが好ましいと考えます。
     以上を勘案して、以下のように条文の変更を要望いたします。
     更には、一般的な企業の自己資本利益率は、景気の動向や為替水準等により年度ごとに大きく変動する場合がありますが、接続料金の算定において大きく変動すると、接続料金の水準自体が変動することになるため、年度ごとに自己資本利益率の水準が大きく変動しないように運用していただきたいと考えます。(例えば、景気回復等により指定事業者の利益率が大幅に上昇した場合でも、接続料金に含まれる自己資本費用が高くならないように運用していただきたい)

    ウ.当該条文の修正案
     3 第一項の自己資本利益率は、指定設備の運営と類似していると認められる者の自己資本利益率事業者の電気通信役務に関する料金の算定に用いられた自己資本利益率及び設備に対する投資リスクを勘案した合理的な値とする。

    (7) 第十四条(精算)について
    ア.制定案
     事業者は、接続料を再計算し、その結果に基づき接続料を変更したときは、省令で定める機能ごとに、当該機能に係る変更前の接続料と変更後の接続料との差額に当該機能に対する需要の実績値を乗じて得た二分の一に相当する額を、指定電気通信設備にその電気通信設備を接続する他の電気通信事業者と精算するものとする。ただし、第四条第二項ただし書及び第六条の規定に基づき当該機能に係る接続料の原価を算定した場合は精算することを要しない。

    イ.弊社の意見
     (1)でも述べたように、今回の「原価算定規則」では接続料金が値上がりする可能性がありますが、値上がりした場合に更に前年度の分を精算することとなると、接続事業者にとって二重の負担となり、電気通信サービスの円滑な提供の妨げとなることが懸念されます。
     そのため、再計算の結果接続料が値上がりするような設備については、例えば、需要の拡大(或いは費用の削減)が見込める数年間の期間で料金を算定するように変更する等、接続料金が値上がりしないように運用していただきたく要望いたします。

    ウ.当該条文の修正案
     特にございません。

以 上