意 見 書

平成9年10月17日

電気通信審議会
 電気通信事業部会長 殿

郵便番号  111            
住  所  東京都台東区浅草橋5−20−8
氏  名  日本高速通信株式会社     
       代表取締役社長  東 款  



 電気通信審議会議事規則第5条の2及び接続に関する議事手続規則第2条の規定により、平成9年9月26日付け郵通議第64号で公告された郵政省令案に関し、別紙のとおり意見を提出します。



(別 紙)

 「指定電気通信設備接続会計規則及び指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則の制定案」について、このような意見提出の機会を設けて頂きまして、誠にありがとうございます。
 本省令案の内容は、基本的には「接続の基本的ルールの在り方について」に沿うものであることから、概ね妥当であると認識しております。
 しかしながら、公正競争条件確保の観点から、本省令の運用にあたってご配慮頂きたい点がいくつかございますので、以下に弊社の意見を申し述べさせて頂きます。
 意見については条文に沿って記載致しますので、よろしくお取り計らい下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。


I.指定電気通信設備接続会計規則案への意見

1.第2条第2項第3号、4号関連
「支援設備」、「全般管理」についてはその適用範囲を限定し、かつ可能な限り第7条及び第8条によることなく「指定設備管理部門」と「指定設備利用部門」に直課すべきと考えます。

2.第3条第1項関連
本省令によらず接続会計を整理する「特別な理由がある場合」としては、「初年度における接続会計報告書の提出期限を繰り延べる等の場合を想定」しているとのことですが、それ以外にはどのような事例を想定されているのかご教示頂きたい。
また、「特別な理由」の適用についてはその範囲を可能な限り限定し、本件に係る許可申請時には内容及び理由について公表して頂きたいと考えます。

3.第5条第2項関連
指定設備管理部門と指定設備利用部門の取引を認可接続約款等に定められていない金額で整理する場合については、会計の透明性確保の観点から、その利用設備・金額・総振替額及び算定根拠を公表して頂きたいと考えます。
また、認可接続約款等に定められていない金額で整理する接続料(振替接続料)は極めて限定したものとし、将来的に他事業者の利用が見込まれる機能については原則接続約款に記載することとして頂きたい。

4.第6条関連
「項」及び「目」については、指定設備管理部門の適正な費用把握を行うためにも解釈通達等を通じて詳細に規定すべきと考えます。
その解釈通達等の策定に当たっては、規制の透明性確保の観点から事業者への意見聴取及び公開のスキームを取って頂きたい。
なお、特定事業者が行う「項」及び「目」の設定が解釈通達に基づいているか否か、また指定設備管理部門に帰属された費用項目を他事業者が負担すべき合理的理由については、接続約款認可申請時に明らかにして頂きたいと考えます。

5.第7条、第8条、第9条関連
第7条、第8条第1項及び第9条の規定に基づき使用される「資産、費用、収益」の帰属に係る「適正な基準」については、あらかじめ解釈通達等により詳細に規定すべきと考えます。
なお、解釈通達の策定にあたっては、規制の透明性確保の観点から事業者の意見聴取及び公開のスキームをとって頂きたい。
また、使用された「適正な基準」は、「会計報告書第1部3.会計処理の基準(2)」等において、明記して頂きたい。

6.第10条関連
接続会計報告書の記載項目については、基本的にその内容をすべて公開すべきと考えます。しかしながら、やむを得ず公開されない部分であっても、例えば接続協定を締結している事業者に対しては、協定の守秘義務を前提とすること等により開示することを可能として頂きたいと考えます。

7.別表第一関連
(1)勘定科目表 資産
管理部門の「投資」については、その適正性が検証できるよう、詳細に「目」を設定して頂きたい。

(2)勘定科目表 費用
純粋基礎技術の研究費用は他事業者が負担する理由のない費用であると認識しておりますので、指定設備利用部門に帰属されていることは適当であると考えます。
指定設備管理部門に試験研究費を帰属させる場合は、詳細な「目」を設定すると共に、接続約款認可申請時に当該研究費が接続に関係する旨を明確に立証することとして頂きたい。

8.別表第二関連
(1)別表第二全般
別表第二様式第1から様式第5(「注」を含む)の作成は、指定設備利用部門の費用把握を行い、接続会計の費用配賦に係る適正性を担保するために、必須と考えます。

(2)様式第3
「指定外有形固定資産」の記載については、同一の特定事業者の指定設備と指定外設備の資産配賦状況が把握できることから、当該内容で適当と考えます。

(3)様式第4、第5
利用部門の会計情報は、管理部門との費用配賦において適正に行われているか判断するために必須であると考えますことから、当該内容で適当と考えます。
仮に、利用部門における詳細な情報を開示することが困難な場合であっても、配賦等が適正に行われることを担保することが必要であることから、配賦に関する基準及び具体的な数値を提示する等の措置を講じて頂きたいと考えます。

(4)「注」
「一般共通」、「一般管理」の費用配賦の基準として「支出額比」が用いられておりますが、接続ルールの主旨に鑑みて、現在実務上の問題等により業務の活動量に即した基準が設定できないものに関しても、今後可能な限り設定可能とするよう運用して頂きたいと考えます。

9.別表第3
参考情報の記載については、接続会計報告書の内容検証のためには必須であり、当該情報に係る詳細な開示を要望します。
また、回線情報の把握に当たっては予備回線の状況を明確にし、必要以上の予備回線を他事業者が負担することのないようにして頂きたい。

10.その他
本会計規則案に規定されている事項は、会計の透明性を図るためには極めて有効な手法であると考えますが、電気通信事業は非常に変化の激しい分野であることから、その技術変化及び環境変化への迅速な対応を図るべく、適宜適切な弾力的運用を行って頂きたい。
また、本省令及び解釈通達については、その遵守に固執するあまりに技術動向等の実態と乖離することのないよう、定期的・適宜の見直しを行って頂きたい。
その見直しに当たっては、規制の透明性確保の観点から事業者への意見聴取及び公開のスキームを取って頂きたい。

II.指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則案への意見

1.第3条(遵守義務)
本省令によらず接続料を算定する「特別の理由がある場合」は、極めて限定した適用として頂きたい。例えば、番号案内の赤字は以下の理由により「特別な理由」には該当しないものと考えます。
またこの場合においても、当該接続料の算出根拠は明示して頂きたいと考えます。

(番号案内の赤字)
接続ルールでは、合理的な理由がない限り特定事業者の赤字を他事業者が負担する必要はないとされており、番号案内の赤字分についても他事業者が負担する必要はないと考えます。
仮に負担せざるを得ない場合であっても、赤字の解消を前提とせず、あらかじめ負担期間及び負担額を定める等の合理化を促進するような措置が必要です。計画的な回収が担保されなければ、迅速な合理化は不可能と考えます。

「特別な理由がある場合」として、既に設置された設備について経過的な措置を考慮する必要があると御省作成の解説の趣旨に記載されておりますが、長距離系NCCが費用負担を行っているIGSも当該設置済み設備に該当するものと思われます。この場合、仮にNCCの単独IGSの個別費用負担を継続しつつ、IGS機能を有する新たな再編後NTTの中継交換機の費用を接続料に算入すれば、NCCはIGSに係るコストの二重払いを行っていることになり、NTT長距離会社との費用負担の公平性が担保されないこととなります。
つきましては、公正競争条件の確保の観点から、新たに設置される特定事業者の中継交換機のうちIGS機能に係る費用を接続料から控除するか、NCCのIGSを接続料の費用に算入する等の措置を講じて頂きたい。

2.第4条(接続料の原価)
(1)第2項
ISDNについては、既にサービスを開始しておりますが、今後も相当の需要増が見込まれること及び現在も相当量の設備投資が継続されていることから、将来原価方式に基づき料金を算定すべきと考えます。
信号網についても初期コストの負担を軽減し、料金を平準化するとの観点から将来原価方式を採用して頂きたい。
将来コスト、将来需要の合理的な算定方法を通達等にて定める場合には、今回の省令と同様に事前に公開し、事業者への正式な意見聴取等を行った後に決定するとのスキームをとって頂きたい。

3.第5条(設備管理運営費の算定)
「省令で定める機能に係る指定設備管理運営費は、接続会計規則の設備区分別費用明細表に記載された費用の額を基礎として算定する」とありますが、接続会計規則の各設備区分別費用と原価算定規則の機能の対象設備との関係が、名称等の表現の不一致から不明確であるため、よりその関係を明確にして頂きたい。
専用サービスのアンバンドルにより提供される局間専用線は、「交換伝送機能」に該当すると理解しております。この場合、局間専用線には、局舎内での接続も含まれることから、距離区分の設定等において接続形態に見合ったアンバンドル料金の設定をして頂きたい。

4.第6条(設備管理運営費の算定の特例)
(1)第1項
接続会計規則別表第二の設備区分費用明細表において個別に整理されないものについては、整理できない理由を指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者が明示することにより、可能な限り限定して頂きたいと考えます。
取得固定資産価額の把握にあたっては、接続の基本的ルールにおける「特定事業者の不可欠設備運営の著しい不経済性により生じた費用が接続料金原価に導入されることのないよう制度の適正な運用を行うべきであり、その旨を接続料金算定要領で明らかにすることが適当である。」に従い、不経済性を排除した取得固定資産価額とすることを担保して頂きたい。
具体的には取得固定資産価額の中身を開示する規定がないため、例えば、物品費、稼働単金、開発工数等の費用内容、諸掛費及び内製・外製の区分等を取得固定資産価額明細表において開示する必要があると考えます。(なお、本件については一般の商慣習では広く行われている程度の内容であります。)

(2)第3項
「合理的な予測に基づき算定された対象設備の購入価格」については、再調達価格を示す規定とも判断されかねません。
従って、既存の管路、とう道及び電柱等の負担すべき金額については、差別的な料金設定を防止する観点から、再調達価格ではなく、NTT自身が使用するときのコストである帳簿価額をベースに算定することを規定して頂きたいと考えます。
また、負担すべき金額については、詳細な算定根拠の提出及び公開が必要と考えます。

5.第8条(自己資本費用)
(1)第3項
事業リスクの小さいNTT地域網との接続に係る報酬率は、事業リスクの大きい長距離を含めた全社に係る報酬率(ユーザー料金の報酬率)を越えないばすと考えます。
仮にユーザー料金算定上用いられた自己資本利益率よりも上回っている場合は、NTTが独占力を行使し自らのユーザには低料金で提供し、接続事業者には高い料金を提供することによって接続を阻害しているものとも考えられます。

従って、「指定設備管理部門」と「指定設備利用部門」との事業リスクの差が申請書類において挙証され、ユーザ料金の算定に当たって接続料金で仕入れる形での算定方法が取られていない限り、接続料金で適用する自己資本利益率とユーザ料金で適用する自己資本利益率とは同一であるべきであり、ユーザー料金の報酬率との乖離を防止する観点から、他事業者との接続料金に係る報酬率はユーザ料金の報酬率の幅の中で設定すべきと考えます。

また同時に、接続料金で適用する自己資本利益率の上限は、「事業者と類似していると認められる者の自己資本利益率」の平均以下であるという条件を同時に満たすべきと考えます。

6.第13条(接続料の再計算)
接続料の再計算の結果及び算出根拠を関係者が閲覧可能なように公表して頂きたい。

7.第14条(精算)
将来予測の方法としてコスト削減のインセンティブが機能するようなスキーム(長期増分費用方式、価格上限規制等)が確立されるまでの間は、精算を行う必要があると考えます。
こうした点からも長期増分費用方式及び価格上限規制等のインセンティブ規制の早期導入を要望します。

8.その他
本省令におかれましては、定期的、適宜に見直しを行うこととして頂きたい。


以 上