意 見 書

営料発9第30号 
平成9年10月17日

電気通信審議会
 電気通信事業部会長 殿

郵便番号  108            
住  所  東京都港区芝浦4丁目9番25号
氏  名  東京通信ネットワーク株式会社 
       代表取締役社長  岩崎 克己



 電気通信審議会議事規則第5条の2及び接続に関する議事手続細則第2条の規定により、平成9年9月26日付け郵通議第64号で公告された郵政省令案に関し、別紙のとおり意見を提出します。



(別 紙)

平成9年10月17日



指定電気通信設備接続会計規則
及び指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則
の制定案に対する意見

東京通信ネットワーク株式会社


 今回の指定電気通信設備接続会計規則及び指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則の制定において、広く事業者の意見を聴取していただきありがとうございます。
 当社は、この接続会計規則及び接続料に関する原価算定規則は当社が指定事業者に支払う接続料金に重大な影響を与える省令と認識し、ここに意見書を提出いたします。

[総論]
 接続料金の水準は当社経営に多大な影響を与え、結果的にお客さまへのサー ビス料金をも左右する課題となります。したがって、この接続会計規則及び接続料に関する原価算定規則が、当社が算定根拠として十分に検証し得る資料としての位置づけであっていただきたいと考えています。
 つきましては、この接続会計規則及び接続料に関する原価算定規則で、当社が「接続料金は合理的で妥当なものである」と納得できるかという観点から意見を述べさせていただきます。

[指定電気通信設備会計規則]
  1. 郵政省令案第4条(会計の基準の整備等)
     事業者は、次の各号に掲げるところにより指定電気通信設備との接続に関する会計を整理しなければならない。
     資本的支出と収益的支出との区分に関する適正な基準を定めるほか、この省令の規定に基づく資産並びに費用及び収益の計算を正確に行うための規程その他経理に関する制度を整えること
     設備区分において直接発生する費用を正確に把握するよう努めること
    (当社の意見)
     資産、費用、収益の整理は、直課が原則であると考えます。ついては、 直課比率の向上に努めると同時に、直課比率を公開すべきと考えます。

  2. 郵政省令案第6条(勘定科目、接続会計財務諸表及び接続会計報告書)
     事業者は、別表第1によりその勘定科目を分類し、かつ、別表第2の様式による損益計算書その他接続に係る会計の計算に関する諸表(以下「接続会計財務諸表」という。)及び別表第3による接続会計報告書を作成しなければならない。
    2 (略)
    (当社の意見)
     指定設備管理部門の費用の内容を理解するため、勘定科目の内容及び負担すべき理由について、指定事業者に説明義務を課すべきと考えます。

  3. 郵政省令案第7条(資産の整理)
     別表第1の勘定科目の2以上の項に関連する資産は、回線数比その他の適正な基準によりそれぞれの項に整理しなければならない。
     支援設備及び全般管理に整理した資産は、適正な基準により指定設備管理部門又は指定設備利用部門に帰属させなければならない。

    郵政省令案第8条(費用及び収益の整理)
     別表第1の勘定科目の2以上の項に関連する費用及び収益は、適正な基準によりそれぞれの項に整理しなければならない。
    2 (略)
    (当社の意見)
     適正な基準について、項目毎に使用した基準を接続会計報告書に明記すべきと考えます。

  4. 郵政省令案第10条(接続会計報告書の公表等)
    1〜3 (略)
     前2項の規定にかかわらず、事業者は郵政大臣の許可を受けて、その事業上の秘密の保持の必要により接続会計報告書の一部を公衆の縦覧に供しないこと又は公表しないことができる。
    (当社の意見)
     接続協定を締結している事業者に対しては、協定の守秘義務を前提として基本的に全て公表されるべきと考えます。

  5. 別表第1(勘定科目表)
    (当社の意見)
     適正な費用把握のため、「項」の下に「目」を設定すべきと考えます。現行の勘定科目表では、何のためのどのような費用なのか理解できない可能性があると考えます。

  6. その他(接続会計の見直し)
    (当社の意見)
     今後、接続形態の更なる多様化やNTT再編成に関連して、ネットワーク等の大幅な変更が想定できることから、接続会計を毎年度見直すことが必要と考えます。したがって、見直しのスキームについて明確にしていただきたいと考えます。

[指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則]
  1. 郵政省令案第4条(接続料の原価)
     接続料の原価は、電気通信事業法施行規則(略)第23条の4第2項に規定する機能(略)ごとに、当該機能に係る指定電気通信設備管理運営費(略)に第7条から第9条の規定に基づき計算される他人資本費用、自己資本費用及び利益対応税の合計額を加えて算定するものとする。
     接続料の原価算定期間は1年とする。ただし、指定電気通信設備にその電気通信設備を接続する電気通信事業者が省令で定める機能を利用して提供しようとする電気通信役務が新規であり、かつ、今後相当の需要の増加が見込まれるものであるときは、省令で定める機能に係る接続料の原価の算定期間を5年までの期間の範囲内で定めることができる。
    (当社の意見)
    (1)  接続の基本ルールでは、「特定事業者の不可欠設備運営の著しい不経済性により生じた費用が接続料金原価に算入されることのないよう制度の適正な運用を行うべきであり、その旨を接続料金算定要領で明らかにすることが適当である。」とありますが、その趣旨を徹底していただきたく考えます。具体的には、情報開示による不経済性のチェックやコストに上限を設けるなどの策を講じていただきたく考えます。
    (2)  ISDNサービスについて、著しく需要が増加している現状から、5年以内の将来予測により接続料金を算定することを運用上担保していただきたく考えます。

  2. 郵政省令案第5条(指定設備管理運営費の算定)
     省令で定める機能に係る指定設備管理運営費は、次の表の上欄に掲げる機能の区分ごとに、同表の下欄に掲げる設備(略)に係る接続会計規則別表第2様式第5の設備区分費用明細表に記載された費用の額を基礎として算定するものとする。
    (略)
    (当社の意見)
     指定事業者がZC接続料、GC接続料等を算出する際に、接続会計規則別表第2様式第5の設備区分明細表に記載された費用の額をどのように基礎として接続料を算出したかについて、当社が検証できるよう詳細を明らかにしていただきたく考えます。

  3. 郵政省令案第8条(自己資本費用)
     省令で定める機能に係る自己資本費用の額は次に掲げる式により計算する。
    (略)
     (略)
     第1項の自己資本利益率は、事業者の発行する社債券の格付その他の指標に照らして事業者と類似していると認められる者の自己資本利益率及び事業者の電気通信役務に関する料金の算定に用いられた自己資本利益率を勘案した合理的な値とする。
    (当社の意見)
    (1)  「事業者の発行する社債券の格付その他の指標に照らして事業者と類似していると認められる者の自己資本利益率」とありますが、日本の主要企業の中で、指定事業者と同様な経営を行ってきた企業があり得るのでしょうか。このような基準を設定すべきではないと考えます。
    (2)  したがって、接続料金に算入する自己資本利益率は、最大でもユーザー料金に算入された自己資本利益率とすべきであると考えます。
    (3)  なお、報酬率に幅を持たせた場合、独占領域であるGC接続料の報酬率を高めに設定し、競争領域になりうるZC接続料の報酬率を低く抑えることが想定されます。本来、独占領域の方が事業リスクが少ないと考えられることから、むしろGC接続料など独占領域の報酬率が過大にならないような歯止め策を講じていただきたく考えます。

  4. 郵政省令案第11条(交換機能の料金)
     交換機能の接続料は、少なくとも、通信路の設定を行う機能及び通信路を保持する機能の別に、それぞれの機能に関連する部分の価格が対象設備の価格に対して占める比率等を勘案して設定するものとする。ただし、合理的な理由がある場合には、この限りではない。
     前項の場合において、通信路の設定を行う機能の接続料は通信回数を単位として、通信路を保持する機能の接続料は通信時間を単位として、それぞれ設定するものとする。この場合において、合理的な理由があるときは、通信ビット数その他の単位を組み合わせて定めることができる。
    (当社の意見)
     指定事業者がいわゆる「セットアップチャージ」と「秒課金」の料金水準を算出する際に、対象設備に係る費用をどのような基準に基づき算出したかについて、当社が検証できるよう詳細を明らかにしていただきたく考えます。

  5. その他(算定結果からの検証)
    (当社の意見)
    (1)  この接続会計規則及び原価算定規則により接続料金が算出されるわけですが、算定結果の接続料金が合理的であるかの最終的な検証が必要と考えます。
    (2)  一例をあげますと、かつてNTTは加入電話のZC接続料金をアンバンドルした結果として次のような数値を提示したことがあります。
     ZC 0.31円/呼+0.0009円/秒
     GC〜ZC 0.0401円/秒
     GC 1.34円/呼+0.0303円/秒
     合計 1.65円/呼+0.0713円/秒
    (3)  NTTが合理的に算定した結果、GC秒課金がZC秒課金の約30倍という結果になっています。(GC=0.0303、ZC=0.0009)
    (4)  数値の絶対値はともかく、市内交換機のコストが中継交換機の30倍というのは国際的にみても合理的ではないと考えます。
    (5)  したがって、しかるべき算定要領により算定したのだから結果について問答無用というのではなく、算定結果からみた最終的な検証が必要であると考えます。

  6. その他(番号案内費用負担)
    (当社の意見)
     指定事業者が提供する番号案内サービス費用負担について、当社は基本的に指定事業者の番号案内サービス料金設定の問題であると考えます。すなわち、どのように費用を投下する計画をたて、それをどのように料金回収していくのかという、経営判断の問題に帰着するものと考えます。
     したがって、番号案内サービス料金収入に赤字が生じた場合には、収入水準に見合うようコストダウンされるか、さもなければ、収支相償うよう料金改定を行うか、いずれかにより解決されるべきものと考えます。
     また、接続ルールに関する答申においても、「特定事業者のサービスの赤字については、原則として他事業者に負担を求めることは認めるべきではなく、仮に、赤字負担に一定の合理性がある場合においても、負担の水準については、赤字解消に向けて経営改善努力を行うことを考慮して決定されるべきである。」と述べられています。
     当社は前述のとおり、番号案内サービス費用負担について負担の必要が無いと考えていますが、仮に合理的な理由があるとされ負担せざるを得ない場合であっても、経営改善努力を促進するような措置が必要と考えます。

  7. その他(長期増分費用方式の早期導入)
    (当社の意見)
     今回の接続会計規則及び接続料に関する原価算定規則は、実績会計値 を用いることから、以下の諸課題の根本解決については限界があります。
    • コストの不透明性:最終的に確認不能なコストデータについては指定事業者を信用するしかなく、恣意的なコスト配賦をチェックすることは困難。
    • 不経済なコストの混入:取得価格が適切か、過大な予備設備,先行設備,遊休設備が含まれていないか、無駄な支出が無いか、等のチェックが困難。
    • 地域競争の進展によって接続料金の単価が上昇するという、競争阻害的な構造:「要回収額÷需要=接続料金単価」という算出方法の矛盾。
     そこで、これらの諸課題を解決して一層競争促進的な仕組みに変えるために、長期増分費用方式を可及的速やかに導入することを希望します。


以 上