再 意 見 書

平成9年11月7日

電気通信審議会
 電気通信事業部会長 殿

郵便番号  111            
住  所  東京都台東区浅草橋5−20−8
氏  名  日本高速通信株式会社     
       代表取締役社長  東 款  



 電気通信審議会議事規則第5条の2及び接続に関する議事手続細則第2条の規定により、平成9年9月26日付け郵通議第64号で公告された郵政省令案に関し、別紙のとおり再意見を提出します。



(別 紙)

 各社殿のご意見に関しまして、弊社の再意見を以下に述べさせていただきますので、宜しくお取り計らい下さいますよう、お願い申し上げます。

●日本電信電話(株)殿のご意見について

1. 指定電気通信設備接続会計規則の制定案に対する意見(具体的項目)

(1) 純粋基礎研究に係わる費用の帰属について

日本電信電話(株)殿のご意見

 純粋基礎研究については、その研究テーマの性格から、将来的な研究成果の反映先は広範であり、応用研究、実用化開発の段階へ移行していく過程で、指定設備利用部門のみでなく、指定電気通信設備の効率化・高度化に寄与する面も持つことから、それに係わる費用は指定電気通信設備管理部門にも帰属させることが合理的であると考えます。(別表第一 勘定科目表 営業費用)

弊社の再意見

 接続に関係する応用的技術の研究との関係の不透明性及び接続ルールの趣旨に鑑みまして、純粋基礎技術の研究費用は他事業者が負担する理由のない費用であると認識しておりますので、指定設備管理部門への帰属を行う必要はないと考えます。
 仮に純粋基礎研究の費用を他事業者が負担する場合には、他事業者もその研究に対してNTTと同等の各種権利を有するものと考えます。

(2) 使用平均資本及び資本報酬計算書の扱いについて

日本電信電話(株)殿のご意見

 使用平均資本及び資本報酬計算書については、料金算定に係る内容であり、会計報告書としてはなじまないため、削除することが適切と考えます。

弊社の再意見

 使用平均資本及び資本報酬計算書は、指定設備管理部門と指定設備利用部門の資産等の把握を併せて行うことにより、接続会計の資産等の配賦に係る適正性を検証すると共に、接続料金算定のためのレートベース等の適正性検証のためには必須と考えます。

(3) 指定設備利用部門に係る情報の扱いについて

日本電信電話(株)殿のご意見

 指定設備利用部門に係る情報については、競争分野に関する情報も含むことから、今回の制度の目的達成のために必要最小限の範囲とすることが適当と考えます。
 特に、公表については他事業者との均衡、事業者の企業秘密等に配慮するなど慎重な取り扱いが必要と考えます。

弊社の再意見

 指定設備利用部門に係る情報の開示については、費用配賦の適正性検証等のために必須と考えております。
 指定設備利用部門は、指定設備管理部門と同一法人であることから、内部相互補助の可能性があるため、指定設備を利用する一般の他事業者よりもより詳細で広範な情報を開示する必要があると考えます。特に、指定電気通信設備を有する事業者と接続協定を締結している事業者は、利害関係が深いことから、指定事業者の情報を得る権利があると考えており、仮に企業秘密にあたるものがある場合であっても守秘義務を前提として情報開示をすることで問題ないと考えます。

2. 指定電気通信設備の接続料に関する原価算定規則の制定案に対する意見(具体的項目)

(1) 基本的な接続機能について

日本電信電話(株)殿のご意見

 平成8年12月の答申にあるネットワークが本来有すべき「基本的な接続機能」の範囲が明確になっていないことから、省令又は通達により明確化することを要望します。

弊社の再意見

 基本的な接続機能については、接続約款の認可申請に先立ち、郵政省において現行の主要機能について基本機能か否かを判断され、解釈通達等により、本件に係る指針を示していただくのが適当ではないかと考えます。なお、本通達等を策定する際には、関係者の意見を十分に反映させるようなスキーム(グリーンペーパー方式)を担保していただきたいと考えます。

(2) 経過措置の適用範囲について

日本電信電話(株)殿のご意見

 経過措置の具体的内容は今回の省令案に記載されておりませんが、既存のIGS交換機(併合IGSを含む)だけでなく、平成8年12月の答申以前に申し込みがあったハード及びソフトについても、経過措置の対象とし、次回の見直し時期である平成12年度末までは、網使用料ではなく個別に負担していただきたいと考えます。また、経過措置対象設備を増設ないしは後発事業者と共用する場合は、先発事業者と同じ扱いとするべきものと考えます。
 なお、経過措置の適用範囲については網使用料算定の前提条件となることから、早期に決定し省令又は通達により明確化することを要望します。

弊社の再意見

 長距離系NCC用の既存IGS(併合IGSを含む)は、接続に係る基本機能であることから、当該費用は原則接続料の費用に算入して頂きたいと考えます。
 仮に個別費用負担を認める場合であっても、NTT等との費用負担の同等性の観点から再編成時までの期間に限定した措置とすべきと考えます。
 NTTの再編成後にもNCCが個別費用負担を継続しつつ、IGS機能を有する新たな再編後NTTの中継交換機の費用が接続料に算入されるとすれば、NCCはIGSに係るコストの二重払いを行っていることになり、NTT長距離会社等との費用負担の公平性が担保されないこととなります。

 また、仮にNTT殿の主張のように再編成後にもNCCの既存IGSについて個別費用負担を行う場合には、費用負担の同等性を確保すべくNTT長距離会社等の他事業者も経過措置対象設備を共用する後発事業者の一人としてNTT地域会社の中継交換機のうちIGS機能に係る費用(長距離系NCC用の既存IGSを含む)を個別負担して頂きたい。

 なお、GC接続機能は事業者からの個別の申込み依頼により提供されたものではなく、基本機能としてNTTが自ら提供準備を行ったものであることから、経過措置の対象にならないものと理解しております。

(3) 法定耐用年数経過後の減価償却費相当額の扱いについて

日本電信電話(株)殿のご意見

 第六条(指定設備管理運営費の算定の特例)において、法定耐用年数経過後の減価償却費相当額の控除については、設備の管理運営において個別管理が可能な設備のみを対象とするものと考えます。

弊社の再意見

 第六条に該当する設備は個別管理が可能であると考えております。従って、当該設備全般について法定耐用年数経過後の減価償却費相当額の控除は可能であると考えます。

(5) 接続料の自己資本利益率の設定の考え方について

日本電信電話(株)殿のご意見

 接続料の水準及びその決定要素である自己資本利益率の水準については、諸外国を参考とするとともに、株主の利益保護や投資インセンティブの付与にも配意し、インフラネットワークを安定的に維持・運営するためにふさわしい水準とすべきと考えます。

弊社の再意見

 自己資本利益率の設定について本原価算定規則案は、「事業者の発行する社債券の格付けその他の指標に照らして類似していると認められた企業の自己資本利益率」を一方の指標とするとしておりますが、仮にその水準が無条件に担保されたとすれば、特定事業者が高コスト体質の企業であった場合、不当に高い報酬を保証し、当該事業者の効率化のインセンティブを失わせることになります。
 従って、特定事業者の自己資本利益率については、前回の意見書に述べたとおり他事業者との接続料金に係る自己資本利益率は利用者料金の自己資本利益率の幅の範囲内で設定し、その場合の上限を「事業者と類似していると認められる者の自己資本利益率」の平均以下とすることが適当と考えます。

 また、自己資本利益率の水準について諸外国を参考とすることについては、欧米との金利や配当金の水準の相違等の周辺状況に鑑み(一般に日本企業の自己資本利益率が欧米諸国に比して概ね3分の1から4分の1程度の水準)、自己資本利益率の数値のみを取り上げて高低を議論し参考とするようなことは適当でないと考えます。

(6) GC〜ZC間設備を維持するための料金の設定について

日本電信電話(株)殿のご意見

 これまではZC接続が主であり、ZC交換機やGC−ZC間伝送路等の設備は、NTTの網内に終始する通信だけでなく、他の事業者の接続トラヒックを交換・疎通するために必要となる規模も反映して構築したものでありますが、接続ポイントの下位(GC接続)への変更により、今後急激に使用効率が低下する恐れがあり、結果として網使用料が大きく変動する可能性が高いものと考えます。
 このような事業者都合による接続の変更については、設備の減設に時間を要することから、原因者負担の原則により、トラヒックを減少させた事業者に対し、応分の負担をしていただくことが可能となる料金設定ができることを要望します。

弊社の再意見

 他事業者要因により接続料が急激に変化することは、事業者の安定的な経営を損なうことから、問題があると考えます。しかし、NTT殿の主張するように、接続形態の変化による接続料の変動分を原因者が負担することは、これまで事業者間で可能である接続形態に相違があった(ZC接続しかできなかった事業者とGC接続を当初から選択できる事業者が存在する)ことから、事業者間の公平性に欠ける措置であると考えます。
 また一方、ZC接続事業者が他事業者要因により負のタイムラグ精算を負ったり、接続料が劇的に変化してしまうことも、事業者間の公平性を欠くことになると考えます。
 従って、この場合の費用負担方法の検討にあたっては、どの事業者の責任とも特定できるものではないことから、全事業者で負担する又は劇的変化緩和のために将来予測による料金算定を用いる等、事業者間での公平性を十分に配慮したものとすべきと考えます。
 また、NTT殿におかれましては、今後のネットワーク設計にあたり、GC−ZC間の設備の転用等により、ZC接続のコスト削減を行って頂きたいと考えます。

(7) 番号案内機能の間接的利用料の設定について

日本電信電話(株)殿のご意見

 長距離系NCCへの番号案内機能の間接的利用料については、番号案内の収支改善が図れるまでの期間は、従来同様、現行方式を継続して適用するよう要望します。

弊社の再意見

 間接的な利用を理由に他事業者にコスト負担を求めることは英米においても前例がなく、グローバルスタンダード的な視点からも間接的な利用に基づくコスト負担は認めるべきではないと考えます。
 仮にこうしたことが認められるのであれば、NTT以外の民間企業が番号案内事業を行いその事業が赤字となった場合、NTTを含めた電話事業者に間接的利用を理由にその赤字負担又はコスト負担を一方的に求めることも理論的には可能と考えられます。
 「接続の基本的ルールの在り方」答申において、合理的な理由がない限り特定事業者の赤字負担を他事業者が負う必要はないとされており、NTT殿の述べられる間接的利用は前述のごとく合理的な理由には当たりません。従って、番号案内に係る赤字分を他事業者が負担する必要はないと考えます。

(8) 加入者回線に係わる料金の設定について

日本電信電話(株)殿のご意見

 指定電気通信事業者の判断の基礎となっているNTTの加入者回線部分に係わるコストは、現在ユーザ料金で回収することになっておりますが、実際にはZC交換機及びGC交換機接続等を行っている他事業者も共用して使用していることから、米国で実施されているように、網使用料の中に加入者回線利用料を含め、実際に使用する他事業者も負担する仕組みが必要であると考えます。

弊社の再意見

 加入者線のユーザー料金の設定権はNTT殿が保有しているため、仮に加入者線の赤字分を接続事業者が負担することとなれば、NTT殿のユーザー料金設定により接続事業者の負担が恣意的に決定される可能性があり、NTT殿の加入者線事業に係るコスト削減のインセンティブも働きません。このような、NTT殿の経営判断が接続事業者の経営に著しい影響を及ぼすような措置は認めるべきではないと考えます。
 また、減価償却費が計上されている加入者回線の約1/3は長期にわたって未使用となっているとのデータもあり(*)、当該未使用設備の減価償却を停止して加入者線部分の費用から除外すれば、加入者線部分の収支は劇的に改善されるものと考えます。(*出典:「電気通信の料金と会計」醍醐 聰 編著)

 米国の長距離系事業者は、優先接続事業者として自社を指定している加入者線についてのみ加入者線部分の固定費用を負担しています。従って、仮に日本において同じロジックにより長距離事業者が加入者回線の費用を負担するとしても、現在優先接続を行っているNTTのみがその対象となると考えます。
 また、米国においては、長距離系事業者の加入者線費用負担について、その合理性が薄いことから、当該費用負担を利用者へシフトしつつあり、英国においても加入者線を保有しない事業者へ加入者線のコスト負担を求めるADC制度が廃止されており、NTT殿の主張はコストベースの料金負担を原則とする現在の潮流に反すると考えます。

 ユニバーサルサービスの問題については、NTT殿は既に全国均一の料金で全国均一のサービスを提供しており、かつ加入電話役務全体の総括原価で加入者線部分のコストも回収されていることから、日本におけるユニバーサルサービス維持のシステムは実現済みであると考えます。


●タイタスコミュニケーションズ殿のご意見について

5.その他 質問事項

タイタスコミュニケーションズ殿のご意見

 接続費用のなかには、NTT分離分割に伴う費用は含まれるべきではないと考えます。

弊社の再意見

 タイタス殿のご意見のように、NTT再編成に伴い発生するコストについては、直接的に接続に関係すると立証されない限り、接続料金の費用に算入すべきでないと考えます。


●DDI東京ポケット殿のご意見について

3.(3)別表第二様式第2

DDI東京ポケット殿のご意見

 「原価算定規則」において、資本費用のベースとなるレートベースの算定方法では、当該財務諸表(使用平均資本及び資本報酬計算書)から導き出される投資等比率及び繰延資産比率を用いることとなっておりますが、貯蔵品比率に関してのみ、接続会計からは算定できないこととなっております。
 レートベースに関わる値に関しては、いずれも接続会計の結果から算出することが望ましいと考えられることから、当該財務諸表に貯蔵品の額を記載するか、或いは「原価算定規則」において指定設備に関連のない貯蔵品がレートベースに計上されないような措置が必要と考えます。

弊社の再意見

 DDI東京ポケット殿のご意見に賛同します。
 原価算定規則第7条2項で貯蔵品比率を使用することとなっておりますが、会計上のどの部分から比率を算出するのかが不明なため、算定根拠の透明性確保の観点から明示して頂きたいと考えます。また、貯蔵されている段階でその費用の管理部門と利用部門の区分が不明確なものがあるとしても、区分可能なものについては直課すべきと考えます。


●第二電電殿のご意見について

原価算定規則に対する要望等について

主要な意見等(1/6)

第二電電殿のご意見

 今回の接続会計では、設備区分毎に活動実態に即した費用を把握することが可能となるものと理解しております。
 しかしながら、設備区分毎に把握された費用に不経済な調達等による費用が介在していることが想定されます。
 したがって、さらに適正な接続料金を算定するためには、原価を算定する段階(原価算定規則、もしくは接続約款申請時)において不経済性を排除する措置(例えば、コストにCAPをかける等)をとっていただきたいと考えます。

弊社の再意見

 第二電電殿のご意見のように、指定設備管理部門にはコスト削減のインセンティブがないため、原価を算定する際にはCAPをかける等の措置を講じるのが適当と考えます。


●日本テレコム殿のご意見について

1.指定電気通信設備接続会計規則案について

 附則

日本テレコム殿のご意見

 指定電気通信設備を設置する事業者の事業が、他社もしくは承継会社等に引き継がれる場合において、その指定設備管理部門の事業を引き継いだ事業者については、本省令に基づく会計の適用は引き継いだ年度から適用されるものと考えます。

弊社の再意見

 日本テレコム殿のご意見のように、再編成の行われる99年度についても、98年度と同様に接続会計を継続して頂きたい。
 NTT及び再編後の東西NTT地域会社が指定事業者となることは明らかであり、指定電気通信設備の指定の時点で接続会計の継続が担保されるような通達等の措置を講じて頂きたいと考えます。


●弊社の追加意見

 前回の弊社意見書で触れていなかった点について、以下に改めて意見を述べさせていた だきます。

  1. 接続会計の開始されていない年度の予備回線の扱いについて
     接続会計規則への弊社意見書において、予備回線の把握の必要性を述べたところですが、接続会計の開始されていない年度については、接続約款認可の際に予備回線に係る接続に不要な費用を排除するような措置を講じて頂きたい。

  2. 将来原価方式の機能に係る精算方法について
     接続原価算定規則への弊社意見書において、将来原価方式で接続料を算定した機能についても精算を行うべきとの意見を述べたところですが、その精算方法については、以下のような措置が適当と考えます。
    (1) 5年以内の算定期間をもって接続料金を算定する。
    (2) 当該接続料金適用から1年間経過後に当初の予測で初年度に回収することとなっていたコストが回収されたかどうか検証し、コストと収入の乖離分についてその時点で精算を行う。
    (3) 1年間経過後の要回収コストと収入実績の誤差を修正し、改めて残余の年数について将来予測による接続料の再計算を行う。
    (4) 当該料金の算定期間内は毎年度(2)(3)の作業を行い、実額に基づくコスト負担を担保する。

  3. 負のタイムラグ精算について
     負のタイムラグ精算の必要が生じた機能について、NTTのコスト削減努力が十分になされたと証明されたもの以外は他事業者が精算によるコスト負担を行う必要はないと考えます。
     従って、タイムラグ精算については、原価算定規則においてその旨を担保して頂きたい。

以 上