意 見 書

平成10年3月11日

電気通信審議会
 電気通信事業部会長 殿


日本BT株式会社



 電気通信審議会議事規則第5条の2及び接続に関する議事手続細則第2条の規定により、平成10年2月4日付け郵通議第122号で公告された「日本電信電話(株)の指定電気通信設備に係る接続約款案」に関し、別紙のとおり再意見を提出します。




(別 紙)

日本BT株式会社
平成10年3月11日

NTTの相互接続料金案について

はじめに

日本BT株式会社(以下、日本BT)は、相互接続料金に関するNTTからの最新の提案に意見を述べる機会を得て大変喜ばしく思っております。弊社は発表済みの他社の意見も拝見致しました。ここに述べる弊社の見解は意見聴取の第二段階に基づいて提出致します。

日本BTは、このNTT案の中に示されている新提案の全体の方向性については、賛成致します。その理由としては第一に、NTTの今回の提示料金は以前の料金レベルよりも安くなっている点、第二に、個々のネットワーク要素を把握し、各要素に基づく課金方針が採用されている点、そして第三に、交換機を通じて行われる相互接続サービスについてアンバンドリング方式が提案されている点があげられます。

また日本BTでは、長期増分費用方式による課金の導入の目標年次2000年に予定されていることは理解していますが、更に早まるのではないかとも考えております。この長期増分費用方式による課金方法を導入することで、エンドユーザに対する消費者価格と業界のコストを下げることができます。したがって当社では長期増分費用方式はあらゆる国にとって最も効率の良い方法と考えます。

しかしながら、弊社は現状の相互接続料金案には考慮していただきたい点がいくつかあると考えています。

電気通信市場に競争を確立するには、相互接続の契約と価格に透明性のあるコスト・ベースのシステムを作り上げることが肝要です。既存事業者に支払う相互接続料は新規参入事業者にとって大きなコスト要因のひとつであり、経費の40%−50%に達することもあります。相互接続料が適正でない場合、競争の発展を妨げます。これは世界の各国に言えることで例外はありません。これは、ユーザ及び社会全般が自由化のメリットを初期段階から享受できなくなることを意味します。従って、以下の点について更に検討されることが重要と考えます。

  •  
  • 互接続料金が依然として高く、提案されている削減では不十分である。
  •  
  • 体的に料金請求の方法に関して透明性が低い。
  •  
  • アンバンドリングの度合をもっと高めるべきである。
  •  
  • 公平性には改善の余地がある。
  •  
  • 貴省におかれては、相互接続料金に関する各種事項を効果的に処理するために、内外を含めた組織作りをする必要がある。
  •  
  • ユニバーサル・サービスによる損失が料金にどれだけ反映されているか明確にすべきである。
  •  
  • 2社間の交渉が不調であった場合、どちらかの会社の要請により貴省が仲裁に乗り出す日程も含め、期限と日時を相互接続の規定の 中に明確に定めるべきである。英国などでは規定されている。

    相互接続料金のレベル

    NTTが提案する相互接続料金は、他の先進国と比較すると依然として高く、更に検討を要すると考えます。

    この判断の根拠として次の2つのデータを提示致します。

    (1)NTTの採用している方式の単位原価と同方式によるBTとの単位原価の比較
    (2)NTTと他国の接続料金の比較

    (1)いわゆる総合分配費用方式(通信サービスとネットワーク要素の全てのコストを加算して割り出す)によるBTの単位コストは、弊社が(オフテルの要請により)英国で公表した資料の中にあります。それでみると、BTのコストはNTTよりもはるかに低く(約3分の2)なっています。BTとNTTの単位原価比較を別表Aに示します。

    (2)相互接続料金の国際比較でも同様の結果が出ています。日本の場合、低料金政策の国と比べると、最高で3倍も高くなっています。

    購買力平価からみた接続料比較

    当社ではこのデータがそのまま相互接続料金を設定するベンチマークになると考えている訳ではありませんし、またこれは日本の相互接続料金の長期にわたる枠組みを作る基礎になるとご提示している訳でもありませんが、しかしこれで見る限り、いくつかの要素に関して、早急に追加調査が必要ではないかと考えます。しかもそれは、日本における相互接続料金の適切なレベルを明らかにする調査でなければならないと思います。

    結論が出るまで時間がかかると予想されますが、NTTが提案する料金に修正を加えて適用されるべきだと考えます。それによって市場の発展の弊害を回避し、またNTTの料金は国際的なレベルに合致するものになるはずです。この措置は、競争市場の発展に効果があると考えています。また、より適した判断を下すまでNTTの料金を国際的にみて最も適切な価格帯に合わせることが可能になります。

  •  
  • NTTのコスト・レベルの調査。NTTと他国の事業者のコストの違いを明らかにする。
  •  
  • 貴省による各国の相互接続料金の比較、再確認。
  •  
  • こうした分析結果が出るまで、NTTの提案の承認留保、及び提案よりも低い接続料金を適用する。

    以上の調査は最長でも6ヶ月以内にまとめられるべきだと考えます。

    透明性

    相互接続料金に関する透明性は、以下の点でまだ改善の余地があるように思われます。
  •  
  • ネットワーク構成要素のコスト算出規則が示されていない。
  •  
  • 独立した第三者によるコスト審査の証拠がない。
  •  
  • 費用算定に際して他業者の関与がほとんどないように見受けられる

    以上の各分野において改善を行い、透明性を高めることは、競合する各事業者とユーザにこの相互接続料金の妥当性を信頼させる上で重要です。

    アンバンドリング

    NTTは2つのアンバンドルな相互接続サービスを提案しています。ひとつは事業者がエンドユーザの直近のローカル交換機に接続する方法。もうひとつは事業者が直近のタンデム交換機で接続する方法です。

    しかしこのアンバンドリングなサービスは限定的なもので、いたる所でサービスを提供しようとする事業者はNTTの各通信センターに自らインフラを構築しなければなりませんが、これは大きな負担です。万一、新規事業者がネットワークを構築しなければならないとしたら、ネットワークが重複することになり不要で効率の悪いものになります。

    加えて、アンバンドルされた長距離相互接続サービスと中継相互接続サービスについても提示されるとともに、NTTの長距離通信会社の責任事項が明確に規定されることなども非常に重要なことと考えます。

    多くのアンバンドルな接続サービスが提供されれば、競争は促進され、ネットワーク重複投資の必要性が減少し、その結果、業界全体の効率の向上につながります。

    ネットワーク使用料金について、NTTによる他の業者への不当な差別がないように確認される必要があります。

    競争の発展は、競争抑止行為、特に競争を抑止する価格設定が発生した場合、それに対してどれだけ早く、適切に対処するかにかかっています。その意味で弊社は貴省に多いに期待しております。

    NTTとしても当然、同社の小売料金が競争を抑制するものでないことを実証しなければならないと存じます。料金に内部補助金が含まれるべきではないでしょう。またあるひとつのサービスで市場参入をしようとする他事業者を締め出す意図で料金が設定されてはいけないと考えます。

    次の点はNTTに競合する他の事業者に対して特に重要です。

  •  
  • NTTの一般向け料金は競争促進を考慮して設定されること。
  •  
  • 万一、価格設定が競争促進に反したものである場合、対抗措置が適切に行われることが自明になっていること。

    NTTは自社の一般向けサービスの各費用をそれぞれについて明示するべきだと考えます。こうしたサービスのネットワークコストは、NTTの相互接続サービスコスト算出と同様の方法に基づいて算出されるべきです。最終消費者にサービスをデリバリーするのに必要なその他(リテール)費用は、貴省が決定した方式によって算出されるべきです。

    この公平性に関する他の問題は、今後予定されているNTT再編に関する議論の中で一定期間検討されることと思います。しかしながら、競争抑止的な価格設定がないことを実証することが重要です。貴省には、こうした行為を判別し対処する透明なプロセスの確保をお願いしたいと存じます。

    差し迫った課題としては、公平性に関して、NTTが相互接続料金の認可を得る前に、NTTから開示を求めるべきだと考えます。

    貴省の役割

    今後3年間の貴省が果たされる役割は、日本の電気通信産業ならびに日本経済全体の将来にとって非常に重要なものです。相互接続の規制は特にその検討時期においては複雑で、様々な関係機関等とのコンタクトが必要となります。この検討作業に参加される貴省と業界の代表の方々は、議論を重ねた枠組みが効果的に働き、当初の目的が達成されるまで、多大な時間と労力を強いられます。英国やその他の国におけるBTの経験を踏まえると、貴省はこの分野にもっと人員を投入する必要があるのではないかと存じます。

    規制を担当される部署には次から次へと起こる様々な課題に対処できる要員が必要です。さもなければ、利害が衝突する分野において、人的、財務的に規模の大きい既存事業者に有利な決定が下される可能性があります。

    他の関係機関の意見

    これまで述べてきた弊社の意見は、ある程度アメリカの連邦通信委員会(FCC)やイギリスのOftelの意見と重複している所があります。 この2つの機関の主張を要約すると次の2つになります。
  •  
  • 料金設定の根拠−歴史的な総合分配費用方式(HFAC)−は日本の電気通信産業の適正な発展にそぐわない。
  •  
  • この方式をとるにしても、NTTが提案する料金は高すぎる。

    日本BTはFCCの見解に同意し、長期増分費用方式による接続料金算定方式を早急に採用されることを期待しています。当社はこれまでにも同様の意見を申し上げましたが、上記「相互接続料金のレベル」の項でも再びこの方式に賛成である旨をご提示させていただきました。

    要約

    日本BTはNTTの相互接続料金案には改善の余地があると考えます。貴省の尽力によりこの料金の大幅な削減を達成していただきたいと存じます。

    その他、今回の相互接続料金の設定と認可に関しては、透明性、アンバンドリング、公平性、他諸機関等とのパートナーシップや情報入手といった面で、貴省のリーダーシップを強く希望致します。

    別表A BTとNTTのコンポーネント・コスト比較
    サービス: 単価
    (現地通貨)
    3分間あたりの通話料
    (購買力平価からみた円)
    NTTとの差異
    NTT BT   NTT BT
    (HFDC)
    BT
    (LRIC)
    NTT BT
    (HFDC)
    BT
    (LRIC)
    BT総合
    配分方式
    BT長期
    増分方式
    ZC タンデム交換機 1通話あたり 1.28              
        1秒あたり 0.0647 0.0087 0.0078 12.93 1.57 1.41 +231% +267%
    GC ローカル交換機 1通話あたり 0.99              
        1秒あたり 0.0289 0.0051 0.0055 6.19 1.10 0.99 +125% +151%

    NTT料金案の期間は1997年4月から1998年4月まで。
    BTの単位原価は同期間の総合配分方式による単位原価。
    BTの相互接続料金は、長期増分費用方式によるため、総合配分費用より低い。


    NTTが提案する料金(NTTの総合分配費用方式による)は、BTよりも2.5倍から3.7倍高く設定されている。

    同じ方式で料金を算出して比較するため、NTT料金とBTの総合分配費用とを比較すると、差はやや縮小するが、それでも2.3倍から3.3倍の開きがある。


    以 上