Policy Reports 郵政省

目次線 電気通信審議会

意 見 書

平成10年12月18日

電気通信審議会
 電気通信事業部会長 殿

郵便番号  105−8477
住  所 東京都港区虎ノ門3丁目5番1号
氏  名 ディーディーアイ東京ポケット電話株式会社
 代表取締役社長  小山 倭郎 


 電気通信審議会議事規則第5条の2及び接続に関する議事手続細則第2条の規定により、平成10年11月27日付け郵通議第84号で公告された接続約款案に関し、別紙の通り意見を提出します。




(別 紙)

平成10年12月18日


接続約款に対する意見書

DDIポケット電話グループ代表
DDI東京ポケット電話株式会社

【意見1】
ISM交換機能の網使用料について、どのような理由により今回の申請では1年間の将来原価にて算定することにしたのか教えていただきたい。

 今回の接続料金の算定において、ISM交換機能については将来原価にて算定しておりますが、その結果当該機能の網使用料がより低廉化されており、インフラとしてのISDNの普及に貢献するものとしてNTT殿の決断を高く評価します。
 ISM交換機能の網使用料を将来原価で算定することについては、昨年NTT殿が接続約款を申請した際にも10社以上の事業者等から意見として出されておりましたが、NTT殿では「近年の需要動向から合理的な将来予測は困難」や「ISMだけ将来原価で算定することは電話との整合性が図れない」などの理由により、従来通りの算定に固執されておりました。
 それが一転して、今回の申請ではISM交換機能だけを将来原価にて算定するようにした理由を、是非とも教えていただきたくお願い申し上げます。

【意見2】
将来原価での算定を『例外的』な扱いとせずに、ISM交換機能の網使用料以外の接続料金についても、将来原価にて算定することをご検討いただきたい。

 弊社としては、接続料金の算定に将来原価を用いることには、以下のメリットがあると考えます。
(1) サービスの初期段階などにより費用に対して需要が少ない場合の接続料金を低廉な水準にすることが可能である。
(2) 原価を予測する段階で、不経済的な費用を除外することが可能となるため、指定設備の効率化を促すために極めて有効である。
(3) 上記により新規参入による相互接続や多様なサービスの提供が推進され、国民利益の増進につながる。
 そのため、今回NTT殿がISM交換機能の料金算定に将来原価を用いたことは高く評価しておりますが、その他の接続料金については従来通り過去の実績値により算定したことは非常に残念に思っており、将来原価による算定を可能な限り幅広く適用すべきであると考えます。
 また、原価算定規則では「接続料金の原価は接続会計の結果を基礎とする」ことと「算定期間は1年間とする」ことは規定されておりますが、過去の実績を用いるか将来の予測を用いるか明記されていないことから、1年間の将来原価を用いることは決して『例外的』な算定ではないと考えます。(『例外的』な扱いになっているのは、新規でかつ相当の需要が見込まれるために算定期間が複数年に渡る場合だけであると認識しております)
 確かに、今までは過去の実績で算定することが原則となっておりましたが、今後は、将来原価を用いることが国民利益の増進につながると考えられるものについては、将来原価で算定することを原則とすべきであると考えます。
 しかしながら、将来原価で算定するかどうかについて事業者には決定することができないため、将来原価により算定するメリットを今一度ご理解いただいた上で、ISM交換機能を『例外的』な扱いとすることなく、幅広く将来原価による算定を行うことを審議会からの答申内容としていただきたくお願い申し上げます。

【意見3】
網改造料に適用する設備管理運営費比率の算出方法について、非効率的なコストを除外し指定設備の合理化インセンティブを高めるために、将来原価による算定方法を導入していただきたい。

 昨年の意見提出の機会に『指定設備は合理化のインセンティブが働かない独占設備であるため、効率的に運営されているかどうかの確認が困難であり、設備管理運営費比率が低下していく可能性は小さい』との考えを述べさせていただきましたが、予想通り網改造料の算定に用いる設備管理運営費比率が昨年に比べてほとんど低下しておりません。
 NTT殿の算定根拠を見ると、指定設備にかかる施設保全費や共通費・管理費が前年に比べて増加しておりますが、固定資産価額や従業員数が減少していることから想定すると、設備管理運営費比率の算定においてNTT殿の都合により増加した費用が含まれていることが懸念されます。(下表参照)
 何度も述べておりますが、不経済的な費用を控除し指定設備の合理化のインセンティブを高めるためには、単純に会計結果から導き出される比率を用いるのではなく将来原価にて算定することが有効であると考えます。
 特に、網使用料については長期増分費用方式が導入されることが決まっている一方で、網改造料だけを今後も実績原価により算定することは好ましくないので、このような観点からも網改造料に対して将来原価による算定を導入すべきと考えます。

<参考:網改造料の算定に用いる機能の資産、費用等>

単位:百万円
   

平成8年度

平成9年度

変動率

資 産

取得固定資産

12,406,171

12,273,388

−1.07%

費 用

施設保全費

405,483

419,218

+3.39%

共通費

96,643

103,661

+7.26%

管理費

58,497

68,593

+17.26%

その他

従業員数(全社)

183,970

163,928

−10.89%


固定資産が減少している=効率的な設備に更改されている
従業員数が減少している=少ない人数で業務が行われている
しかし、施設保全費・共通費・管理費は増加している

 ◎実績値ではなく、指定設備の効率化を見込んだ将来原価で算定すべき

【意見4】
ISM交換機能を将来原価にて算定する際に、施設保全費や管理費(特に物件費)など費用が過大に見込まれているものは是正していただきたい。

 ISM交換機能を将来原価で算定する際に、NTT殿では当該機能にかかる固定資産や費用を下表のように予測しております。

単位:百万円

平成9年度(実績)

平成10年度(予測)

  伸び率  

取得固定資産

369,183

470,920

127.56%

正味固定資産

189,524

219,479

115.81%

施設保全費

25,483

33,967

133.29%

人件費

12,109

14,448

119.32%

物件費

13,374

19,519

145.95%

共通費

6,560

8,104

123.54%

人件費

2,219

2,648

119.33%

物件費

4,351

5,453

125.33%

管理費

5,000

6,421

128.42%

人件費

2,976

3,551

119.32%

物件費

2,024

2,870

141.80%


 NTT殿の予測を見ると、固定資産の伸び率に比べて施設保全費や管理費(特に物件費)の伸び率が大きくなっておりますが、必ずしも費用は固定資産に比例して増加するものではなく、むしろ固定資産が増加しても設備の運用に必要となる費用はさほど変わらない場合が多いと思われます。
 従って、NTT殿が原価を予測する際に不経済的な費用を含んでいるために施設保全費や管理費(特に物件費)が過大になっていることが懸念されますので、過大に見込まれた費用については原価から除外するなどの是正が必要であると考えております。
 なお、将来原価による算定は今回が初めてのケースですが、弊社としては指定設備の効率化を促すという観点から、例えば『物件費の上昇率は固定資産の伸び率を上限とする』等の措置が有効であると思われますので、ご検討をお願いいたします。

【意見5】
附則(平成10年3月24日営企第301号)の第5条「網改造料の算定式に関する経過措置」に定められている算定式(算定方式B)に用いる比率のうち、報酬率及び利益対応税率の部分は見直ししていただきたい

 原価算定規則に基づく網改造料の算定式に用いる比率は、今回の申請により見直されておりますが、その結果として以下のような状況となっております。

原価算定規則による算定式

算定方式B

平成8年度

平成9年度

(変更なし)

保守運営費比率

0.050〜0.119(※1)

0.046〜0.123(※1)

0.055〜0.066

報酬率

0.0402(※2)

0.0349(※2)

0.0414

利益対応税率

1.0084

0.8730

1.008


※1: 設備管理運営費比率(機能により比率が異なる)
※2: 自己資本利益率と他人資本利子率との加重平均値

 網改造料の料金額は、上記以外にもさまざまな数値をベースとして算定されるために、算定の一部に用いる比率だけを単純に比較することは必ずしも正しいことではなく、また、算定方式Bは『急激な費用負担の変動を避けるため』に特例的に設けられていることから考えると、必ずしも年度ごとに見直しが義務付けられているものではないことは、弊社としても十分に理解をしております。そのため算定方法の変更により急激に費用負担が変動する最大の要因となっている保守運営費比率(設備管理運営費比率)については、意見3で述べたような理由により改善が必要である現状では見直しは必要ないと考えます。
 しかしながら、コストの変動といったNTT殿の内部要因により保守運営費比率と異なり、報酬率(自己資本利益率及び他人資本利子率)や利益対応税率は、主に経済情勢や政策等の外部要因により決まってくるため、そういった変動要素については、経過措置である算定方式Bに対しても適用すべきであると考えますので、是非ともご理解いただきたくお願い申し上げます。
 以下、報酬率及び利益対応税率に関する弊社の考えを記載します。
  →別紙の参考資料もご参照下さい

<報酬率(他人資本利子率及び自己資本利益率)>
 今年度の網使用料等に適用する他人資本利子率の水準が変動(0.0424→0.0367)したのは、金融情勢の変化により市場の金利水準が低下したことが要因です。
 もし仮に報酬率に金利低下分を考慮しないと、NTT殿が自らの調達金利と事業者の支払金利の利差により金融業を営んでいることとになってしまうため、算定方式Bにおいても金利低下分を考慮することが適切な措置であると考えます。
 また、自己資本利益率の水準は、接続料金研究会で議論いただき、電気通信審議会から答申として出された内容に従って見直しされております。
 算定方式Bで用いている現在の報酬率(0.0414)は、過去に『NTT全社で経常利益が4,000億円となるために必要』という極めて恣意的な理由によりNTT殿が算定した報酬率をそのまま適用したものです。以前は、報酬率について明確な算定手法が定められていなかったために、止むを得ずNTT殿の主張に従っておりましたが、昨年〜今年の議論により報酬率(自己資本利益率)の算定方法が確立されてきましたので、答申の内容に従って見直しが必要であると考えます。

<利益対応税率>
 利益対応税率には、事業税、法人税、道府県民税、市町村民税が含まれておりますが、政府の税制改正により平成10年4月1日より事業税及び法人税の税率が引き下げられており、今回の網使用料の算定に用いる利益対応税率を算出する際にはその引き下げが見込まれております。
 NTT殿が納める税額以上の額を事業者がNTT殿に支払うことは適切ではないため、経過措置である算定方式Bにおいても税率の引き下げ分を考慮して見直すことが必要であると考えます。

【意見6】
作業単金については条件付きの認可とし、早急に有識者等により妥当な算定方法を協議いただいた上で、その結果を遡って適用していただきたい。

 今回の接続約款には、新たに工事費・手続費の実額とその算定に用いた作業単金が記載されるようになりましたが、作業単金は1人1時間当たり9,000円を超えるかなりの高額であると共に、近年のデフレ環境の中でも昨年度よりも上昇していることから、世間相場と著しく乖離した水準であると言うことができます。
 このことから、弊社としてはNTT殿の申請通りに作業単金が認可されることには反対であり、算定方法を含めて抜本的な改善を図るべきであると考えておりますが、仮に時間的な制約のため今回の水準で認可をする場合でも、条件付きの認可(早急に見直して得た結論を平成10年4月に遡って適用)としていただくことを要望いたします。
 なお、現行の算定方法の問題点について、弊社の考えの一部を以下に記します。

ア: NTT殿では、継続して業務の効率化を進められているはずであるが、現在の算定方法では逆に作業単金は上昇する傾向にあり、NTT殿に効率化のインセンティブが働かない算定方法になっている。
イ: 現場での工事や保守作業についてはNTT殿の子会社(例:NTT−TE社)などの外部の業者に委託するケースも多いと思われるが、NTT殿の全従業員の労務費の平均値をベースとして作業単金を算定することが妥当かどうか検討が必要である。(公共工事等の目的で建設省が調査した結果では、通信工事技術者1人1時間当たり2,000〜4,000円程度が標準的な賃金である)
ウ: 管理共通費(比率)は直接費の31.9%となっているが、他の通信事業者の場合は10〜20%程度(決算値より推定)であるため、NTT殿の過去の実績により算定した比率をそのまま作業単金に適用することは好ましくない。

以 上

トップへ戻る