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インデックスへ ・ 電気通信


第I章 現状

1 現行制度

  電気通信事業分野においては、競争導入による多様な形態での複数の電気通  信事業者の参入を前提に、これらの事業者のネットワークが接続されることが、  利用者の利便を増進し、公共の利益に適うとの観点から、電気通信事業法にお  いて、接続に関する制度を設けている。   現在の接続に関する制度は、原則として接続は事業者間の協議に委ねること  とし、接続を義務として規定せず、例外的に、当事者間の接続協議が不調に終  わった場合に公共の利益を確保するための手段として、郵政大臣による接続命  令、裁定手続が規定されている。                       また、接続条件に関しても、同様の考え方から、事業者間合意によるものと  し、一方当事者が不当な条件を設定することを防止する観点から、合意された  接続協定について、認可を要することとされている。

2 接続料金の現状

  市内交換機の接続料金を国際的に比較すると、現在NTTが他事業者に提示  している接続料金は、3.66円/3分(平成7年度決算ベース)であるが、  米国の場合、FCCが本年8月に決定した接続ルール(注)においては約0.  2円〜0.4円(0.2セント〜0.4セント)/1分とされており、また、  英国BTの場合は約0.76円(0.451ペンス)/1分となっており、1  加入当たりのトラフィックが異なること及び米国においては不完了呼にも課金  していること等異なる条件の下での比較であることに留意する必要があるが、  我が国の接続料金は、我が国と同様に競争原理を導入している米国及び英国と  比べて高い水準にある。 (注)米国では、上記の料金に加え、月額約120円〜220円(1.1ドル〜   2.0ドル)/回線の料金が課される。(FCCの接続ルール訂正(平成8   年9月27日)による。)

3 接続協議の現状

  NTT地域通信網のように他事業者にとって当該ネットワークとの接続が不  可欠な設備との接続に関しては、当該設備を有する事業者は接続協議において  圧倒的に優位な立場にあることから、接続協議が円滑に進んでいない事例が生  じており、事業者間協議を原則とする現行制度は必ずしも有効に機能しないも  のとなっている。 (1)協議期間の長期化    例えば、NTT地域通信網との接続に関して、接続協議が長期化している   事例が生じている。    具体的には、長距離系NCC(新規参入事業者)のVPNサービスに関す   る長距離系NCCとNTTとの協議については、平成元年9月に長距離系N   CCから接続の申入れを行って以降、接続協定の締結まで5年以上を費やし   ている。    この間、長距離系NCCは平成6年11月に郵政大臣に接続命令の申立て   を行い、これを受けて同年12月に郵政大臣がNTTに対し接続命令を行い、   平成7年4月に接続協定が締結されるという経緯をたどっている。 (2)接続料金の算定根拠に関する問題    NTT地域通信網の接続料金の対象となる費用の範囲について、長距離系   NCCとNTTは、平成5年の事業者間接続料金の導入に関する協議以来、   4年間にわたって協議を行ってきており、平成7年11月にNTTの商品の   販売活動に関する費用等を除外することに合意したが、試験研究費の扱いな   どについて現在なお協議が行われている。 (3)ネットワークの改造に関する問題    NTT地域通信網に接続する場合、NTTのネットワークが接続を前提と   した構造となっていないため、新たな形態での接続の場合、ネットワークの   改造に概ね2年を要している。    例えば、NTTは平成7年9月にアクセス系のオープン化として加入者交   換機接続の実施方針を明らかにしたが、平成8年1月に接続協定締結の申込   みのあった地域系NCCのNTT加入者交換機接続は平成9年12月末実施   の予定であり、申込みから数えて実施まで概ね2年を要する状況にある。    また、接続のためのネットワークの改造費用が発生するとして、他事業者   はNTTからその費用負担を求められているが、このような費用負担は、特   に事業基盤が確立していない新規参入事業者にとっては、大きな負担となる。   現在、複数のCATV事業者が電話サービスに関してNTTと接続協議を行   っているが、ネットワークの改造費用の負担の在り方が論点の一つとなって   いる。    なお、本特別部会において実施した海外調査によれば、米国及び英国にお   いては、ネットワークの改造に関するこのような問題は、大きな問題とはな   っていない模様である。 (4)第二種電気通信事業者に関する問題    NTTと第二種電気通信事業者との接続について、ユーザー・網インタフ   ェース以外での接続の在り方、網機能の細分化(アンバンドル)等を巡り、   接続協議が円滑に進まない等の事例が生じている。    例えば、NTTのINS−P(ISDNパケット通信サービス)と複数の   特別第二種電気通信事業者との協議については、接続インタフェースの在り   方を巡り、協議が長期化し、特別第二種電気通信事業者のサービス開始は協   議開始から2年、機能によってはサービス開始まで4年を費やしている。ま   た、第二種電気通信事業者によるファクシミリ網の無鳴動着信機能(ファク   シミリ通信を受信する際に、ベルを鳴らさず自動受信させる機能)の利用に   ついては、平成3年以来、約6年間の協議が行われ、平成8年度末に実現さ   れる予定である。 (5)その他    平成6年度以降、デジタル携帯電話事業者、PHS電話事業者及びCAT   V通信事業者の新規参入が行われ、第一種電気通信事業者数は急激に増加し、   平成6年4月1日時点では86社であったが、平成8年9月1日時点では1   31社となっている。    従来、サービス提供は、ニ事業者のネットワークが接続されることにより   行われることが一般的であったが、このような多数の事業者の参入に伴い、   三事業者、四事業者のネットワークが接続されることを通じてサービスが提   供されるようになってきている。    このような中で、PHS電話については、携帯電話との接続について、暫   定的な方式によりサービス開始後1年後の本年7月に実現したが、本格的な   方式は平成9年末実施の予定であるほか、現在でも依存型PHS電話と接続   型PHS電話相互間の利用や国際電話及びNTTのフリーダイヤルサービス   の利用ができない状況が生じている。

第II章 基本的な考え方

1 接続の基本的ルール

  現行制度の枠組みの下で生じている第I章で述べたような現状や問題に対処  し、今後電気通信サービスの多様化・高度化、料金の一層の低廉化を実現して  いくためには、原則として事業者間の協議に委ねる現行制度を見直し、接続に  関し利用者利益及び公正有効競争条件を制度的に確保するための措置を講じる  必要がある。   接続の基本的ルールとは、このような措置の総称と考えるべきである。

2 接続の基本的ルールの策定に当たっての基本的な考え方

(1)基本原則    接続の基本的ルールとして定めるべき具体的な内容を検討するに当たって   は、上記1で述べたような接続の基本的ルールの性格にかんがみ、   1.利用者利益を増進させるものであること。   2.公正かつ有効な競争を促進させるものであること。   を、基本的な原則とすべきである。 (2)接続の基本的ルールの対象    接続は、ネットワーク設備が有する機能に着目して行われるものであり、   事業者は、電話サービス、データ系サービスなどの様々なサービスを提供す   るために当該機能を利用するものであることから、接続の基本的ルールは、   今後の新しいサービスも含めたあらゆるサービスに対応するものである。 (3)具体的な目的    上記(1)の基本原則に則り、接続の基本的ルールは、次の具体的な目的   を実現するものであるべきである。   1.利用者利益の増進    (ア)料金の低廉化につながるものであること。    (イ)エンドエンドのシームレスサービスの提供を確保するものであるこ       と。    (ウ)マルチメディア化に対応した新しいサービスの提供を可能とするも       のであること。   2.公正かつ有効な競争の促進    (ア)透明、公平、迅速かつ合理的な接続を実現するものであること。    (イ)円滑な接続を阻害する反競争的な行為を防止するものであること。 (4)情報の非対称性への対応    事業者間において接続費用や技術情報などの接続条件に関する情報量に格   差が存在する場合には、合理的な接続条件を設定することが困難となる。    したがって、接続の基本的ルールにおいては、情報を公開させることや、   挙証責任を情報を有する事業者が負うこととするなどにより、このような情   報量の格差(いわゆる情報の非対称性)に可能な限り対応するための措置を   講じるべきである。 (5)国際的な調和    今後、我が国の電気通信市場に外国事業者が参入し、また、我が国の電気   通信事業者が外国の電気通信市場に参入するといったグローバルな競争が展   開されていくことを念頭に、WTOにおける議論や、我が国と同様に競争原   理を導入している米国及び英国の接続ルール化への取組み、更には、EUに   おける欧州レベルでの接続ルール化に関する動向を踏まえつつ、可能な限り   国際的に調和のとれた制度を構築していくべきである。 (6)接続の基本的ルールの柔軟な見直し    電気通信市場は、急速な技術革新等による変化の激しい分野であり、接続   の基本的ルールについても、具体的事例を積み重ねる中で、このような変化   に対応して柔軟に見直していくべきである。

3 接続の基本的ルールの概要

  以上の基本的な考え方に基づき、以下の内容を骨子とする基本的な接続ルー  ルを策定することが適当である。 (1)一般的なルールと特別なルール    第一種電気通信事業者すべてについて適用されるルールを定めるとともに、   NTT地域通信網のような他事業者のサービス提供に不可欠な設備を有する   事業者に対する特別なルールを追加的に定める。 (2)一般的な接続ルール    第一種電気通信事業者に対し接続を義務づけるとともに、接続協定の閲覧   等の措置を行う。 (3)特別な接続ルール    他事業者のサービス提供に不可欠な設備を有する事業者に対し、以下を義   務づけることとする。   1.接続条件の料金表・約款化    (ア)技術的に可能なすべての不可欠設備上のポイントにおける接続が提       供されること。(接続のための建物・管路等の提供等を含む。)    (イ)接続料金が、接続会計の結果に基づき、適正に算定されていること。    (ウ)不可欠設備の構成要素や機能のアンバンドル(細分化)された形態       及び接続料金による接続の提供。    (エ)不可欠設備との接続条件は、自己の同様なサービスより不利でない       条件であること。    (オ)接続の技術的条件を記載すること。    (カ)番号ポータビリティの提供。    (キ)番号案内サービス、番号データベース等へのアクセス。    (ク)緊急通報の提供。    (ケ)接続に要する標準的期間の明示。   2.接続に関する会計報告書の作成・公表   3.網機能提供計画の作成・公表   4.不可欠設備との接続に必要な情報の提供 等

第III章 第一種電気通信事業者に関する一般的な接続ルール

1 接続の義務化

  第I章で述べたように、多数の事業者が複雑に接続する競争環境下において  は、事業者間の協議のみでは、必ずしも公共の利益に適う接続が確保されない  可能性がある。   したがって、利用者利便の増進及び公正かつ有効な競争の促進の観点から、  いわゆる公益事業特権を認められて構築される公共的なインフラストラクチャ  ーである第一種電気通信事業者のネットワークについては、国民生活や社会・  経済活動の基盤となる公共性の高いものであり、利用者に対する役務提供義務  (電気通信事業法第34条)と同様に、正当な理由がある場合を除き、他事業  者に対する接続協定の締結を義務づけることが適当である。   接続を拒否し得る正当な理由については、接続協議の円滑化を図るとともに、  接続行政の公正な運営を確保する観点から、接続ルール施行までに、可能な限  り類型化して定めることが適当である。典型的な例としては、自らのネットワ  ークを損傷し、又はその機能に障害を与えるおそれがある場合、不当な条件で  の接続の提供を求められる場合及び業務運営上の支障が生じる場合が該当する。   接続を義務化する趣旨にかんがみ、その違反に対しては、他事業者からの申  告等に基づき、行政措置としての業務改善命令による対応を行うこととすべき  である(業務改善命令の見直しについては第IV章第10節参照)。   正当な理由を示さずに接続の申入れを拒否することは、その行為そのものが  業務改善命令の対象となり得る。

2 接続協定の公開

  第I章で述べたように、多数の事業者が複雑に接続する競争環境下において、  不当な差別的取扱いを防止し、透明、公平かつ迅速な接続を確保する観点から、  認可された接続協定は、閲覧に供されることとすべきである。

3 裁定手続の活用の容易化

  現行制度においては、接続条件に関して事業者間で協議が調わないために接  続協定を締結できない場合でも、接続協定の締結命令の申立てを行い、当該命  令を受けた後でなければ接続条件に関する裁定の申請ができない仕組みとなっ  ている。   このような仕組みにおいては、裁定手続に要する期間に加えて、接続命令手  続に相当の期間を要することとなり、事業者間の紛争の迅速な解決を図り、迅  速な接続を確保することにより競争を促進するという裁定制度の趣旨が十分生  かされないおそれがある。   この点については、上記1の接続の義務化により、接続条件に関して事業者  間で協議が調わない場合に直ちに裁定の申請が可能となることから、事業者間  の紛争の迅速な解決のために裁定手続を活用することが容易となる。

4 第二種電気通信事業者の取扱い

  第二種電気通信事業者が、第一種電気通信事業者から電気通信回線設備を調  達して構築しているネットワークについても、利用者利便の増進及び公正かつ  有効な競争の促進という観点からは、第一種電気通信事業者のネットワークと  区別して取り扱うべき合理的な理由はないので、第二種電気通信事業者も第一  種電気通信事業者のネットワークに対して、他の第一種電気通信事業者と同様  に自己のネットワークの接続を求めることができることとすべきである。   他方、第二種電気通信事業者は、電気通信回線設備を第一種電気通信事業者  に依存していることや、第一種電気通信事業者のサービスとの差別化を図りな  がら、多種多様なサービスを提供するところに事業としての特性があることか  ら、第二種電気通信事業者に対してまで接続を義務化する必要性は乏しいもの  と考えられる。   また、接続料金については、一般の利用者向けサービスとのコスト上の相違  が前提とされた料金設定を行うこととしているが、第二種電気通信事業者と第  一種電気通信事業者との間の接続については、実態として利用者約款において  行われることが多いことから、第一種電気通信事業者が利用者約款においてい  わゆる卸料金を設定することが、透明、公平かつ迅速な接続という観点から望  ましい。   なお、卸料金の設定に当たっては、第一種電気通信事業者がインフラ整備の  インセンティブを維持できるよう配慮する必要がある。







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